まいど通信


        

まいど!まいど通信編集長の田中です。編集部が本日発表した希望的観測情報によりますと、今年の梅雨は空梅雨となる見込みです。誰の希望かって?だから言ったじゃないですか。編集部です。編集部とは一体何だって?あなた、のみ込みが悪いですね。もちろん、この月刊まいど屋編集部に決まってるじゃないですか。じゃ、どうしてまいど屋の編集部が空梅雨を期待するのかって?そうですか。あなたも相当意地が悪いようですね。非のある者を徹底的に問い詰めてまだ血が滴っている傷口に塩を塗り込み、相手が泣きながら懺悔し始めるのを待っているのですね。おあいにくさま。残念ながら、まいど屋はそれしきのことで音を上げたりはしません。黒も白だと言い続ければ白になるんです。とにかく月刊まいど屋編集部によりますと、6月になっても空はカラリと晴れ渡り、各地のダムは底まで干上がり、日本全国、いたるところで給水制限が始まります。え、何?何故そこまで強情を張るのかって?あなた、ずいぶんタフな取調官ですね。もういい加減にしてくださいよ。私だってここ数日、「今年の梅雨予想」で何度も検索して情報を探し回り、最後はすがる思いで気象庁のホームページにまでアクセスしたけど、今年の梅雨がどうなるかなんてどこにも書いていなかったんだ!それで、やむなく自分で断定するしかなかったんだ!そこまで必死になった動機ですか?もちろん、今年は空梅雨になるっていう確かな裏付けが欲しかったんですよ。どこか、権威のあるところのお墨付きがね。そうすりゃ、それがアリバイになって自分のやらかしたことを正当化できるってわけです。月刊まいど屋は毎年6月にいつも梅雨対策特集をしているのに、今年に限ってついうっかり忘れちゃったもんだから。代わりに梅雨とは全く関係のないジャンルで取材を進めてしまい、気付いたときにはもう手遅れだったんです。これは誰でもアワ食いますよ。でも、業務上の過失は認めるけど、少なくとも意図的じゃあなかった。かつ丼?食べませんよ、そんなもの。代わりに煙草を一本下さい。それから弁護士を呼んで下さい。私は無実なんだ。早くここから出してくださいよ!

というわけで、今月のテーマは春夏作業服
すみません、と一応謝っておきます。今月は作業着の特集です。読者の皆さんがそんなものは要らないと文句を言えば、とりあえずは申し訳なさそうな顔をして見せますが、さっきも申しあげたとおり、今さらどうにもなりません。それに皆さんだって、本当はむさ苦しい雨合羽の話を聞くよりは、これから調達する予定の爽やかな春夏ワークウェアについていろいろと予備知識を得ることを望んでいるはずです。そうじゃないですか?だったら素直にそのまま今月号を受け入れればいいんです。イヤよダメよとまいど屋を困らせようとしたって、皆さんの本音はイブサンローランのシースルードレスみたいに透けて見えていますから、まいど屋としてもそんな雑音はスルーしてさっさと特集を始めちゃいます。
あれ?まだ身を固くして抵抗しようとするんですか。そういう態度はまいど屋をますます燃え上がらせてしまうのに。皆さんの前で仁王立ちをして、本当はこれが欲しかったんだろなんて言ってもらいたいんですか。いくらなんでもここじゃヤバくないですか。そういうことをお望みならば、こうした公共の場を通さず、別途プライベートで編集部宛てにご連絡ください。なお、応募は女性に限らせていただきます。若くて未経験であればさらに熱心に指導いたします。無理やりがお好きなあなたへ、今月は興奮度120%の袋とじ、過激にヤバい春夏作業服特集です。

安心してください
まいど屋?なんか怪しそうなお店だなぁ。画面のデザインがイケてないわりに、商品数が多すぎる。それに、近所の作業服屋さんに比べて値段が安すぎるし、ひょっとして、ヤバいサイトなんじゃない?バスケットにお目当てのアイテムを入れたものの、そう思って最後の最後に購入をためらい、結局はワークマンまで車を飛ばした---そんなひと、きっとたくさんいますよね。そんなことないよって気を使ってもらっても、わかります。むしろ、そう言われると逆に傷つきます。ブ男はブ男なりに、他人の視線に敏感で、そうした感覚が研ぎ澄まされてくるんです。誰よりも醜く、同時に誰よりも献身的である人間は、ある特定のひとたちからは本能的に敬遠される傾向があるんです。ええ、わかってますって、まいど屋が皆さんに心からは信頼されてないことくらい!
この店には何か裏がある。初めてまいど屋を知った皆さんの心に浮かぶそうした疑念は、私たちスタッフがどうがんばったって取り除くことはできない、いわばお約束のおたふく風邪みたいなものなのかもしれません。一度経験すれば、あとはもうすっかり免疫ができるのだろうけど、誰でも、一度は必ずかかる。そしておそらく、少なからぬ数の人びとはショックのあまり後ずさりをしてしまい、抗体ができる前にまいど屋から離れて行って二度と戻ってくることはないんです。そこさえ通過しちゃえば、まいど屋を偏愛するような特異体質に生まれ変われるというのに。
まいど屋では、今月から、そうした不幸なアレルギー症状を持つまいどビギナーの皆さんのために、とっておきの処方箋を用意しました。それがお支払画面にでてくる「NP後払い」です。お支払方法の中からこの後払いを選べば、もうまいど屋にお金だけダマし取られるんじゃないかと心配して不眠症になることはなくなります。商品を受け取ってから、指定された期限内にゆっくりとコンビニに行けばいいんです。これでもまだ不安を感じるひとは、うーん、そうだなぁ、例えばアメリカ陸軍の四個師団に守られたとしても、きっと外出すら怖がるんじゃないかなぁ。もうさじを投げるしかないのかも。
ブ男はブ男なりに、必死になっていろいろ考えているんです。皆さんに安心してもらえるように。本当の自分をわかってもらえるように。

震災と梅雨とまいど君がゆく
九州地方にお住いの皆さまには、改めてお見舞いを申し上げます。本来ならば、地震の直後にでも、まいど屋として公式に、こうしたお話をさせていただきたかったのですが、今まで敢えてそうした機会を設けることはしてきませんでした。お悔やみの言葉をどう丁寧に綴っても、地震をネタにコンテンツを作っているようなある種のうしろめたさを感じてしまい、素直に私たちスタッフの気持ちを表現することができない気がしたからです。言葉を尽くせば尽くすほど、どこか他人事のような匂いが強まってくる気がしたからです。無難で、公式見解的で、口には出さないにせよ誰もが偽善的だと感じてしまうようなことは言いたくなかったんです。それなら、一か月ほどは様子を見て、被災された多くのひとが少しは先の見通しを立てられるようになってからでもいいんじゃないか。それまでの間は、ただ心の中で皆さんのご無事を祈っていようと、そう思ったんです。
こういう場で個人的な話をさせていただいて恐縮ですが、今年の正月には熊本旅行をしたばかりでした。熊本城にのぼり、阿蘇大橋を通って阿蘇山にドライブをしました。阿蘇山のふもとのロードサイドでたまたま立ち寄ったビニールハウスで、イチゴ狩りをさせてもらいました。もぎたてのイチゴは、ほのかに酸味があり、すっきりした甘みがありました。農場のおじさんが、ここはいい所でしょうと言って笑っていました。そして、最初の地震があったあの瞬間、まいど屋の編集室の中で、地震が発生したことをリアルタイムで知ったんです。スタッフの一人が、腕時計型のインターネット端末を持っていて、それに地震速報アプリを入れていたからすぐにわかりました。発生と同時に警報音が鳴り、丸い画面に九州地方の地図が表示されました。そして、その上にゆっくりと同心円状の地震波が広がっていく様子が映し出されました。そのスタッフと私は、二人でただぼんやりとそれを眺めていました。震度は7。ふとデスクのパソコンモニターに目をやると、ちょうど、熊本のお客さまからご注文が入ったところでした。多分、送信ボタンを押した直後に揺れが来たんだと思います。大変なことが起きていると思ってすぐに家に帰ってテレビをつけました。どの局も、熊本の中継をやっていました。やっぱり本当だったんだと思って夜更けまでテレビを見続けましたが、そのときはまだ、二日後に本震が襲ってくることも、熊本城が崩れ、阿蘇大橋が崩落することももちろん知りませんでした。ビニールハウスのおじさんや、お世話になった宿のひとたちや、熊本のお客さまのことを考えて、その日はあまり眠れませんでした。

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ところで、トップページで連載しているマンガ、「まいど君がゆく」なのですが、先月2回目に掲載予定だった原稿が、地震対策のヘルメットの話だったんです。もちろん、熊本の地震の前に作っていたから単なる偶然だったんだけど、ストーリーに「震度6以上」だの、現実に起きてしまったことがたくさん含まれていたため、マンガ家さんに無理を言ってお願いし、急きょお蔵入りにしました。で、新しく書き下ろしてもらったのが、前回お届けした雨合羽の話です。このページの冒頭に書いた通り、今月号は例年のお約束を破って梅雨特集をしなかったから、読者の皆さんに対するせめてもの償いという意味も込めました。まいど屋のキャビネットにしまいこんでしまった地震の話は、九州の皆さまが日常を取り戻し、少しは笑いが欲しくなってきそうな頃、公開しようかなと思っています。九州の皆さまが、一日も早くお元気になりますように。
--まいど屋スタッフ一同--