まいど通信


        

●シンプルかつディープな世界
 まいど! 編集長の奥野です。記録的な酷暑もひと段落し、ようやく9月に入りました。みなさまお元気でしょうか?
 今月の特集テーマは産業用ヘルメット。当初はけっこうマニアックな話かと思いましたが、取材を進めると案外メジャーで王道のテーマであることがわかってきました。よく考えればヘルメットは現場系の仕事では必ず着用するもの。今まで見過ごしていたのが不思議なくらいです。
 それにしても、ヘルメットというのは意外とおもしろいものです。「頭にかぶるお椀型の保護具」というのは、きっと文明の始めからあったでしょうし、今でも形はほぼ変わっていません。それが現代では、飛来落下物や墜落時保護といった検定をクリアした製品だけが産業用ヘルメットとして売られている。
「安全性は全部同じ。そこにどう付加価値を付けるかです」
 こういう話は取材で何度も出ました。お椀型で安全規格を満たすものにどんなふうにメーカーの特色を出すか。このへんの“縛り”にゲーム性があるというか、ディープな商品開発の土台になっているんだろうと思います。
 取材を終えたころには、街中でヘルメットを見ると「どこのメーカーだろう?」と考えるようになりました。山田孝之がゼネコンの管理職の役をしている「ジョージア」のCMなんか、食い入るように見てしまいます。

●いいヘルメットがほしい!
 原稿を作りながら「いいヘルメットが欲しい」と何度も思いました。
 いや、使う機会は今のところないんですよ。それでも、訪問したメーカーで見せてもらった各社のフラッグシップモデルは、どれも高級感と機能美があってグッとくるというか、銀塩カメラや腕時計のように「なんとなく持っておきたい逸品」だったのです。
 美しいフォルムの帽体にクリアに輝くバイザー、そして完璧にフィットするマイ・ヘルメットがほしい、と。
 こう考えてみると、兜や冠なんかが代表例ですが、頭にかぶるものってどこか「威信財」のような側面があるんじゃないかと思います。
 そんなわけで、とりあえず買って3年になるスポーツ自転車用ヘルメットを洗ってみました。「洗いやすい内装」といった文章を書いていたら、衝動的にやりたくなったんです。こんなもん洗ってもしょうがないだろう、と思っていたのですが、案外キレイになっておどろきました。ヘルメットは命を預けるものですから、次は高級モデルを買おうと思っています。
 ちなみに自転車用ヘルメットは未だにすべて発泡スチロールのライナーです。タニザワの「エアライト」のように水でじゃぶじゃぶ洗えるモデルが出てきたらきっとすごく売れると思うんですが、いかがでしょう?

●記録的酷暑の奇跡
 夏休みは、まず妻の九州帰省に付き添い、それから在来線とフェリー、自転車を組み合わせて大阪に帰ってきました。
 最大の目的は、四国から本州に渡るサイクリングロード「しまなみ海道」です。
 別府からフェリーで八幡浜に渡り、鉄道で今治に着いたらホテル泊。普段ならだらだらテレビを見て夜更かしするところですが、明日に備えて食事を終えたら目覚ましを5時にセットしてすみやかに就寝します。
「さあ、明日は地獄のようなサイクリングになるぞ……」
 全長70kmのしまなみ海道はノンビリ走っても7時間程度。距離としはどうってことはありません。しかし、今年の記録的酷暑のハードさは想像を絶する。少しでも暑さがマシな午前中に距離を稼ごう、という考えたわけです。
 朝起きて、コンプレッション系の速乾ウェアに身を包み(暑くなったら頭から水を浴びるため)5時半にホテルを出発。まずは来島海峡大橋を目指します。ところが、走り出して30分ほどして異常に気付きました。
「え、なにこれ? 涼しい……いやちょっと寒い!」
 なんと、この日はお盆ごろ何日か続いた秋のような気候の1日目だったのです。
 向かい風には苦労したものの、結局、汗ひとつかかず6時間で尾道へ。島のどこかでランチでもするつもりでしたが、あまりにもはかどり過ぎて気がついたら本州目前でした。
 こうして「炎天下を汗ドロドロで死にそうになりながらサイクリング」という当初のプランは、「さわやかな秋風に吹かれるお気楽サイクリング」に180度転換されたわけです。
 雨や台風は「あるかも」と思っていましたが、まさか、まさか、この記録的猛暑の夏が超快適なベスト気候になるとは……本当に世の中、何が起きるかわからないもんです。

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 今月も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
 次回の特集は「鳶服」の予定です。ご期待ください!