まいど通信
まいど! 編集長の奥野です。今月はいよいよ夏本番ということで、毎年恒例の「空調服特集」をお贈りしました。
この原稿を書いている時点(6月半ば)でも、外を歩いていると汗がボタボタしたたる暑さ。もはや「命にかかわる」と言っても過言ではない日本の夏を乗り越えるため、ぜひ今回の特集記事をお役立てください。
●空調服の「次の展開」
さて今回、取材を通じて感じたのは、「空調服は次の段階に移りつつある」ということでした。
つまり、こういうことです。建設や土木などでの熱中症対策として導入される"特殊装備"だった空調服は、年を経るごとにユーザーを増やし、夏用作業服のスタンダードになってしまった。言ってしまえば「本当に必要な人」には、ほぼ行き渡っているわけで、今や「次の展開」を考える時期にきている、と。
では、「次の展開」をどう描くか。各社の空調服のカタログを見ていると、さまざまな提案がなされていて感心します。いくつか代表的な路線を挙げてみましょう。
まずは「非建設ワーク用」。建設や土木以外の仕事現場でも、暑さに負けないために空調服を使おう、と。
まあ、これは自然な流れですね。物流や倉庫などでの軽作業、イベントスタッフなども空調服で働いてもらった方が、熱中症を防げて快適なのは言うまでもありません。ユニフォームとして導入するとコストはかかりますが、たとえば、炎天下で駐車場の誘導をするといったケースでは「必要」と言っていいでしょう。
さて、続いてふたつ目は「家庭作業用」。庭仕事や草刈りをはじめ家庭農園、園芸、日曜大工などでどうぞ! というわけです。
今回の取材でも、草刈り機を吊り下げるベルト付きの商品を見て、田舎暮らしなんかに重宝しそうだと思いました。空調服なら長袖が着れるし、首や顔にも風が吹くから、虫刺され対策にもなりそうです。それに家庭作業の場合、あまり人に会わないので「見た目」の抵抗感も乗り越えやすいのではないでしょうか。
●「ワーク以外」の可能性
三つ目からはややワーク色が薄れて、「レジャー用」。ゴルフやキャンプ、ハイキング、サイクリングなどへの提案です。
この路線、去年あたりもカタログの後ろの方にチラホラ出ていたのですが、正直、デザイン的にミスマッチ感がぬぐえませんでした。確かに涼しいだろうけれど、あまりにもワークウェア風で、レジャーの雰囲気に合っていなかったのです。
しかし、今シーズンは、各社でカジュアルな印象のウェアが急増。半袖、ベスト、フード付きなどのタイプ別にデザインやガラものも充実し、アウトドアやレジャーにもバッチリ合う雰囲気となっています。わずか1年でここまであか抜けるのかと驚きました。
問題は、活動内容にどこまで合うかでしょう。ゴルフやキャンプはあまり激しい動きがないのでよさそうです。テントやタープの設営など、夏場は死にそうになる作業も、空調服なら楽勝になるはず(先日、運動会を見に行ったときも空調服のお父さんがいました)。一方で、ハイキングやサイクリングとなると、重量のほかにも荷物をどうするかなど、さまざまな問題が出てきそうです。
で、いよいよ最後が「タウンユース」。もういっそ普段着にしましょう! というわけですね。
ありえない? いや、でもファッションってまったく想像もつかない方向に行ったりするんですよ。たとえば今、若者のあいだでは「フィッシングベスト」が流行っています。ごぞんじ、メッシュ地にポケットがいっぱい付いてるアレ(うちの近所では、おじいちゃんがよく着てます)。数年前まで「オヤジ御用達アイテム」と見られていたものが、いまや流行の最先端になっているのです。こういうケースを見れば、絶対ないとは言い切れない。
いま都会の大学キャンパスに空調服で登場すれば、周囲の反応は「お、おう……」といったものになるでしょう。しかし、来年はどうか。再来年ごろには「お、あいつ……オシャレだな」となるかもしれない。さらに数年後には、次のような展開も(以下、フィクションです)。
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この春から高校生になった息子が、突然「バイトがしたい」と言いだした。なんだなんだ? 小遣いが足りないのか? ははーん、さてはギターか、いやドラムセットも高いからなぁ……。
「おい、なにか欲しいものがあるのか。少しぐらいなら父さんが用立ててやってもいいんだぞ」
「じつは、おれ、空調服が欲しいんだ。友達もみんな持ってるんだよ、でも意外と高くてさ……」
「うん? 空調服だって?」
「腰にファンが付いている涼しい服だよ」
「ああ、アレか。……よし、ちょっと待ってろ」
寝室のクローゼットの奥に、それは当時のまま残っていた。スイッチを入れるとランプが光った。ちゃんと充電したら使えるだろう。急いで息子が待つリビングに戻る。
「え? それは……」
「おまえが小さいころ、父さんが使っていた空調服だよ」
「そうなんだ……」
「着てみないか? ……そう、ケーブルはそこに通して、スイッチはそれだ」
久しぶりに聞く空調服の音に、あのころの記憶がよみがえる。当時は現場の担当で、毎日クタクタになって帰宅していたものだ。それでも玄関でわが子を抱きしめると、疲れも吹き飛んだ。そんな息子も、もう青年の顔つきになっている。
「それ、おまえにやるよ」
「えっ、父さん……、ありがとう!」
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どーですかコレ? 意外とイイんじゃないでしょうか。え、どこかで見たことある? まぁ、そんなことはいいじゃないですか。
というわけで、今月も最後までありがとうございました! また次回「月刊まいど屋」をお楽しみに!