【村上被服】鳳凰の羽根はいつもキレイだね♪image_maidoya3
「やっぱり汚いのはイヤじゃけぇ!」。社長のチャーミングな備後弁がオフィスに響いた――。広島県福山市、鳶服ブランド「鳳凰」でおなじみの村上被服である。同社のファン付き作業服「快適ウェア」は今年で4年目。それ以前から、作業服にファン取付用の穴を作る”改造用ワッペン”を提案したりと、自由な発想で独自路線を歩んできた同社だったが、今シーズンはついに「鳳凰」らしい本当にユニークな商品を開発したという。そんな新型「快適ウェア」の売りはメンテナンス性。「うちのお客さんは建設関係が多いから、ひと夏のあいだ使い続けたら土ぼこりや粉塵でファンの中がギトギトになっちゃうわけ。なかには元の色がわかないくらい汚れている羽根もあって、これはなんとかしなきゃいけないと思った」(村上泰造社長)。業界初の「洗える羽根」を引っ提げて、鳳凰はさらなる高みへと飛翔しようとしている。

村上被服
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本社の縫製場で加工も手掛ける
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羽根を外して水洗い可能
●「羽根の丸洗い」が可能に
 
  家の中でしか使わない扇風機でさえ、ひと夏も使えば羽根がホコリだらけになる。ファン付きウェアは屋外の作業現場で使うわけだから、汚れは避けられない。カバーは拭き掃除できるけれど、内部の羽根は厄介だ。隙間から綿棒を入れて拭いたりしているユーザーも多いようだが、ヘンな力をかけると故障の原因になってしまったりする。
 
  そこで、今シーズンから「快適ウェア」のファンは、中から羽根を取り出して洗える仕様になった。ファンガードを開けて、モーター軸の安全蓋を外し、羽根の中心部をつまめば引き抜ける。慣れれば1分もかからない。取り外した羽根は拭くも水洗いするも自由、というわけだ。
 
  「ファンの汚れについては、お客さんからもいろんな声があった」と村上社長は語る。
 
  「風はウェアの首から出て顔に当たるでしょ。ホコリだらけのファンから出る風はイヤだなー、と思っている人はけっこういたんです。あとは奥様の声ね。旦那さんのウェアを洗濯して乾かして、さぁ、とファンを取り付けようとしたら、中がギトギトになっている。せっかくキレイにしたのにこれじゃあねぇ、と」
 
  わかる、わかる。いくら洗濯したてのシャツでも、コーヒーのシミが少しでもついたら着替えたくなるものだ。他人が見てどうかではなく気分の問題である。特に作業服の場合は、気持ちよく仕事を始めるためにも、専用の洗剤でガシガシ洗って一点の曇りなく仕上げておきたい。清潔なウェアに薄汚れたファンを取り付けるなんてありえない――と、やや潔癖の気がある編集長は思う。
 
  さらに、今シーズンの「快適ウェア」は、バッテリーとモーターもより進化。前のモデルと比べて風力もややアップしているという。だが、はやり「メンテナンス性」に勝る性能はないだろう。高性能なエアコンも掃除しなければパフォーマンスを維持できない。「騏驎も老いては駑馬にも劣る」のだ。
 
  こまめにファンを掃除すれば、性能のダウンを防ぐことができ、製品寿命も伸ばせる。何より気分がいい。さらにウェアへの愛着も深まる。
 
  ファンのパワーやバッテリーの容量ではなく「メンテナンス」に目を付けたのは、まさに慧眼だ。
 
  ●4ファンでパワー2倍!
 
  さらに「快適ウェア」には、他社にはない”切り札”がある。通常モデルにさらにファンを2つ増設した「4ファンタイプ」である。別売のツインケーブル(V8110)を使うことで、ひとつのバッテリーで4つのファンを稼働させることもできるのだ。
 
  営業部の小川重光さんが、愛用の4ファン付きウェアを見せてくれた。ウェアだけ見ると「うわ、いっぱい付いてる……」と思ってしまうのだけれど、着てしまえば案外フツーだ。見た目インパクトは普通のファン付きウェアとそう変わらないのではないか。ただし、空調服ユーザーの多い現場では「それどこで買ったの?」と注目を集めるかもしれないけれど。
 
  「4つを最強モードにすれば、パワーは16.8ボルト。業界最強です」
 
  なんだか『キン肉マン』の超人強度みたいだが、風量が増えればより涼しくなるのは間違いない。小川さんの「快適ウェア」はパンパンに膨らんで、首と腕から大量の風を吹き出している。
 
  当然ながら4ファンはバッテリー消費量も倍になる。そのため朝から夕方までずっと使い続けるのにはやや難があるが、「午後から倉庫内作業」「午前中だけ畑仕事」という具合に、限られた時間で使うケースでは非常に効果的だろう。
 
  この「4ファン化」への改造は、「快適ウェア用ワッペン(2323)」を買ってDIYするほか、同社縫製場でのオーダー加工も受け付けている。
 
  ●鳳凰は高所の味方です
 
  さて、いよいよ新作ウェアの方を見ていこう。今シーズンは、まずベスト型が新登場。さらに半袖タイプも一気に充実したほか、ストレッチ素材のモデルもラインナップに加わった。ひとことでいえば「快適ウェア」のバリエーションが大幅に増えたわけが、軽作業などの新たなユーザーを狙った「カジュアル化」ではないらしい。
 
  「うちのお客さんはやっぱり建設系。新商品も主に鳶ブランド『鳳凰』を支持してくれている高所作業者の声を聞いて開発しました」(村上社長)
 
  この言葉が伊達ではないことは、カタログをちょっと開くだけでわかる。なんと新作ウェアの大半がフルハーネスに対応。長袖ブルゾンだけでなく、ベスト、半袖、ストレッチ素材(長袖)とあらゆるタイプにフルハーネス対応モデルがそろっているのだ。
 
  新商品の中で小川さんがイチオシするのは「フルハーネス対応ベスト(V9399)」。2丁対応のフック掛け、背中のランヤード取り出し口、肩パッドに、ファン落下防止ネットといった高所作業の安全機能に加えて、すぐれた涼感性能を実現させている。開発に当たっては呉工業高等専門学校と協同研究を重ねたという。
 
  「当初、サーモグラフィーで体の表面温度を調べてみたら、長袖・半袖・ベストの中でベストがいちばん涼しくなかったんです。このままじゃベストは商品化できないぞ、と思って実験を重ねた結果、脇の下に風を当てる構造にすれば体温が下がることがわかった。そこで、新商品のベストは腕を通す部分の下から風が出る『脇メッシュ仕様』にすることにしました」
 
  熱中症の応急処置マニュアルにも、首や脇の下など、動脈の集中する部分を冷やすようにとある。これを考えれば「脇メッシュ」は非常に理にかなった仕組みと言えるだろう。
 
  さらに、このベストには体温上昇を防ぐメカニズムがある。ポリエステル生地の裏チタンコーティングだ。
 
  「裏チタンコーティングは、生地の隙間からの風漏れを防ぐのに加えて、紫外線と赤外線を90%以上カットしてくれます。とにかく涼しいのがほしい! という人は『裏チタン』を選ぶといいですよ」
 
  体から出る熱は「脇メッシュ仕様」で冷やし、外部から伝わる熱は裏チタン加工でカットする。一見すると、ただ既存のウェアをハーネスに対応させただけのようだが、直射日光にさらされる高所作業での快適性を考え抜いたハイスペックモデルなのだ。
 
  取り外して丸洗いできる羽根に、驚愕の4ファン、ハードな高所環境に対応した涼感仕様など、ユニークなアイデアの中に細かい配慮が光る。「大胆にして繊細」という言葉がピタリとくる「快適ウェア」だった。
 
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ストレッチモデルも登場
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ファンと干渉しないよう設計された「反射ベスト」

    

「裏チタン」が高所で真価を発揮する! 「快適ウェア」のフルハーネス対応シリーズ

肩部分の2丁掛け対応フック、背中のランヤード取出口、そしてファンの落下防止用ネットなど、高所作業のための機能をそろえたプロ仕様「快適ウェア」。ポリエステル100%生地の裏に施されたチタンコーティングは、赤外線と紫外線を90%以上カット。直射日光の下でも涼しく快適に働くことができる。


「涼しさ」も「動きやすさ」も妥協せず! 「快適ウェア」のストレッチシリーズ

動きやすさに配慮したストレッチ素材の「快適ウェア」。ウェア内部に風を送るだけでなく、着用者の動きもサポートする。ブルゾンの襟元はソフトワイヤー仕様で、首回り360度からの風抜けを実現。袖口のボタンでも風抜けを調節できる。フルハーネス対応モデルはファンの落下を防ぐネットカバー付き。