まいど通信
まいど! 編集長の奥野です。今回の月刊まいど屋では毎年恒例の夏企画「空調服特集」をお送りしました。新型コロナのせいで外出すらできない日々が続きましたが、今月はついにメーカー取材が実現。やっとこさ長いトンネルを抜けた……と喜んでいいのか。ともかく「人に会って話す」という普通のことのありがたさが身に染みた特集でした。マスク着用で熱中症リスクも上がるこの夏、ぜひ空調服で乗り切ってください!
●コロナと仕事
コロナ禍で外出自粛が続いていたとき、よく思ったのは「自分の仕事ってこんなんだったっけ?」ということです。朝起きて、散歩と筋トレをしてから朝食を済ませ、いつものドトールは休業中だから自宅でパソコンに向かう。そのとき心に去来する言葉は、
「つ、つ、つまんねぇ……!」
のひとこと。パソコンをカチャカチャやって、昼食に何か作ってしばらくボンヤリしたら、またパソコンに向かってひと仕事。で、夕方になったら切り上げて、お惣菜をつまみにビールを飲んで寝る。そしてまた朝のルーティンがやってくる。
おかしい……なんだこれは? ライターという職業はもっと自由でエキサイティングだったはず。それなのになんだこの模範囚のような生活は? 自分の仕事ってこんな退屈きわまりないものだったのか? ちくしょう、こんなことになるなら農家とかになっておくべきだった!
考えるまでもなく、理由は家を出ていないからです。コロナ禍の前なら、パソコンを抱えてカフェや図書館で仕事をし、執筆作業の気を紛らわせていました。それほど人付き合いの多いタイプではないけれど、打ち合わせだって月に数回はしていたし、地方に出張する機会もほぼ毎月あった。
つまり、仕事場所をコロコロ変えたり、あちこちで人に会ったり、知らない土地へ足を運んだりするのが、この仕事の醍醐味だったのです。それらを取り除いたあとに残るのは「文字を弄り回す辛気臭い作業」であって、純然たる苦行です。巷でよく言う「表現の喜び」なんてものは、太平洋に溶け込んだ小便くらいしかありません。ただ、苦労の末に原稿を完成させたとき、踊り出したくなるような解放感があるだけで……。
というわけで、自粛期間中は沈み切った気分で悶々と仕事をしていたのですが、このほどついに喪が明けました。今月号の取材で久々に出張することになったのです。
●ついに出張解禁!
そして迎えた出張の前日、たった1泊なのに荷造りに戸惑う自分に気づきました。さらには寝る時間になっても、新幹線に乗り遅れないかとドキドキしてくる。福山なんてもう何度も行っているのに……。慣れとは恐ろしいもので、わずか3カ月のほど間に「どこにも行かない生活」の癖がついてしまったのです。新幹線に乗車するときなんて、間違えてないか5回くらい確認してしまいました。
取材を済ませ、夜は福山駅前のホテルへ。チェックイン時は体調チェックを受けたくらいで、特にコロナ絡みで不便することはありませんでした。ところが、翌朝の朝食ビュッフェは「マスク&使い捨て手袋着用」がルールになっていて、ああ、こういう時代になったんだな……、と。
盛り付けて席についたらマスクを外してすみやかに食べるわけですが、醤油やマヨネーズなんかも全部、弁当についてくるような個包装のヤツになってて面倒くさい。そもそも、感染予防を気にしながら食事をすること自体、かなり人間生理に反するものがありますね。
これで福山での予定はすべて終了。天気も悪いから大人しく大阪に帰るか、と駅に向かって歩いているとき、レンタサイクルの看板を見つけました。電動アシストもついてない古いママチャリだけれど料金は安い。でも雨が降ったら戻ってこれなくなるな……、と雨雲レーダーを見れば、雨雲の切れ間はけっこうありそう。結局、「何もしないで帰るなんて嫌だ!」という心の声に従って走り出しました。目的地は20kmほど離れた名勝地・鞆の浦です。
さすが1日150円(!)だけあって、自転車はこれまででワースト3に入る乗り心地。道も特にどうということはない典型的な郊外です。心躍る要素はあまりないけれど、それでも知らない街を走るのは楽しい。芦田川沿いを下って南へ向かって行くと、1時間半ほどで鞆の浦に到着しました。
さっそく渡船で向かいの無人島、仙酔島に入ります。ここにある国民宿舎は海水風呂が名物で、ずっと前に18きっぷで来たことがある。何年ぶりだろう? と懐かしいドアを開けてみると「本日休業」の張り紙が! 出発前に福山駅の観光案内所で聞いたら「やってます」と言ってたのに……。でもまあいいんです、こういうのがノープランの旅のおもしろいところですから。そんなわけでまた自転車で福山駅に戻って夕方、新幹線で帰路へ――。
久々の出張で体は疲れたものの、精神的にはリフレッシュできました。やはり、何日もキーボードに張り付くためには、事前にしっかり外で遊んでおく必要があるのですね。おかげで今月号のレポートは「あれだけ好きなことしたんだから!」と自分を叱咤しつつ、書き上げることができたのでした。
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ということで、今回もそろそろお別れすることにしましょう。最後までお付き合いいただき誠にありがとうございました。次回も「月刊まいど屋」をお楽しみに!