まいど通信
まいど! 編集長の奥野です。今回の月刊まいど屋は「春夏作業服」特集--。とはいうものの、この原稿を書いている今は梅雨に入ったばかりで、どんよりした空模様が続いています。しかし、近年はずっと梅雨が明けたらいきなり猛暑ですからね。暑さを感じてからファン付きウェアを探しても品切れかもしれませんよ。くれぐれもお買い物はお早めに!
●自転車で府中市へ
今回の広島取材では、以前から温めていたプランを実行してみることにしました。「福山駅からの自転車移動」です!
編集長は20年もハンドルを握っていない筋金入りのペーパードライバー。そんなわけで、広島取材は「福山駅から福塩線で府中方面へ」というのがいつものパターンでした。のんびりローカル線に乗るのは大好きなんですけど、取材が終わって福山に戻ろうとしたら「次の電車が1時間後」なんてことはザラで、取材先からも「レンタカーで回ればラクなのに」とよく言われる。
じゃあ、自転車ならどうだろう? 天気さえ良ければ自転車はどこでも行ける。運動にもなるし経路の融通も効く。なにより次の取材まで時間を潰せる場所を求めてトボトボと歩き続けたりしないで済むぞ、というわけです
旅先でサイクリングすることはよくあるのですが、今回は仕事です。14時には府中市入りしなければなりません。Googleマップで調べてみると、福山から府中までは直線距離で20km。実走距離は30-35km程度と見積もりました。これならママチャリでも3時間くらいで着く。よし、イケる。
当日は、早めの新幹線に乗って11時に福山駅着。まず自転車を調達します。
福山駅前には1日150円の公営レンタサイクルがあります。以前はこれに乗って鞆の浦に行ったけれど、今回はスルーです。さすがにママチャリで70km走るのはイヤなので、地元自転車メーカーのミニベロ(小径車)ロードバイクをレンタルしました。1日3000円の料金は高いけれど、心洗われる田舎道を満喫できる一種のアクティビティと考えることにしましょう。駅前の牛丼チェーンでランチを済ませて、いざスタートです。
●ホロコースト記念館
ルートは、シンプルに芦田川を北上することにしました。やや遠回りです。もっと直線に近いルートもあるものの、土地勘がないから道に迷う可能性があります。川沿いならまず迷わないし、急な登り坂などもまず出てきません。そして景色もいい。知らない土地でわざわざ風情も旅情もない片道2車線の幹線道路なんて走りたくない、というわけです。
福山駅から西に向かって15分ほど走ると、一級河川の芦田川です。どうやら歩車分離のサイクリングロードや遊歩道といったものはないようなので、川を左に見ながら土手の上の一般道を北上していきます。気温は半袖だとちょっと肌寒いくらいで、自転車には最適です。手袋や上着は要らないし、汗もかかない。
芦田川は、風光明媚とまではいかないけれど、広々としていて気持ちいい景観です。ただ、この川沿いの道の交通量が多いことには閉口しました。地元のクルマがガンガン通る上、路肩スペースがほぼゼロなので、自転車を停めて写真を撮ることもできない。普通、川沿いの道ってクルマはあまり通らないし、道路脇に公園やベンチがあったりするものですが、芦田川にそういうのは一切なしです。
走り出して川沿いを30分ほど走って、寄り道スポットに到着しました。前からずっと興味があった「ホロコースト記念館」です。
なんで日本に、しかも福山にそんな施設があるんだろう? と私も思っていました。結論から言えば、地元の牧師さんが欧州に行った際、『アンネの日記』で有名なアンネ・フランクのお父さん、オットー・フランク氏の話に感銘を受けたのが開設のきっかけとのこと。差別や偏見をなくし、世界平和を実現するためにここ福山に記念館を作ったのです。
●平和な福山の夜
展示は素晴らしい。人類史の汚点、ホロコーストを学ぶのに最良の施設といって間違いないでしょう。ただ、内容が内容だけに「圧倒された」とか「感動した」とか、軽々しく口にする気になれません。展示の最後は、ハリウッドで映画化されたオスカー・シンドラーや、「命のビザ」の杉原千畝のエピソードなど、世界各国の「正義の人」を紹介して、「人間は善である」というメッセージで締め括られていました。私はこの言葉を、1カ月経った今でも思い出して考え込んでしまいます。
記念館を出て、のんびり90分ほど走ると府中市につきました。ほぼ平坦なので疲れはない。コンビニ前で10分ほど休憩してから取材先に行って、ミッション完了です。取材後は寄り道せず、ひたすら芦田川ルートを引き返し、2時間もかからず福山駅に到着しました。走行距離は往復で70km。行きはまだ新鮮でしたが、帰りはかなり退屈でした。やはり福山を起点にサイクリングするなら、山側より瀬戸内海側の尾道方面に向かうのが正解でしょう。
福山駅周辺は、やや人通りが少ない気はするものの、飲食店は通常営業です。駅前の居酒屋で、酒類提供禁止の大阪では飲めない生ビールを味わいます。こうしてサイクリングの余韻に浸っているうちに福山の夜は更けていったのでした。
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というわけで、今月も最後までお付き合いいただきありがとうございました。コロナ禍は今後どうなるのか、なかなか見通しは効きませんが、悪いことがあれば、きっといいこともあります。そう信じて、次回の『月刊まいど屋』をお楽しみに!