まいど通信
まいど! 編集長の奥野です。ついに8月となりました。緊急事態宣言下での東京五輪というわけのわからない状況が続く中、本誌『月刊まいど屋』のテーマはなんとミャンマー政変です。これ、なるべく明るいトーンで書いていますけれど、じつは調べたり取材したりすればするほど暗澹とした気分になるんですよね……。政治犯として投獄され拷問を受けている人もいれば、デモへの弾圧で子供や学生も殺されている。とてつもない暴挙です。私は日本人でミャンマーに行ったこともありません。それでも「ダメなものはダメだ」と言わざるを得ない。地球上のどこであろうと、銃口を向けて市民を従わせる政府には正当性がないのです。これからミャンマーがどうなるかはわかりませんが、これだけは強調しておきたいと思います。
●ダイエットの成否は?
先週の「まいど通信」でダイエットの話をしたのを覚えているでしょうか。
「65kg→60kg以下」を目標に5月半ばにスタートした減量生活は、ついに2カ月以上になりました。毎日毎日、主食を計量してライス100gやパスタ60gの「規定量」を食べる。外食するときもご飯の量は必ず「スモール」で(100-150g程度)、出張中の食事はコンビニおにぎりひとつ(約100g)。コーヒータイムには、ポッキー1本(10kcal)を3分くらいかけて、じっくり味わう。
ああ、こうして書いているだけでも心底ウンザリする……。カツ丼とかラーメン&ライスとかモリモリ食いてぇ、アイスモナカにバクリとかぶりつきてぇ! 食の楽しみのない生活なんて、もはや死んでるのと同じだ!
すみません、少し取り乱しましたが、ダイエットは文句なしに成功しているんです。5月15日に65kg近くあった体重が7月20日には60kg台前半と、体重は着実に落ちている。ノルマ達成は時間の問題でしょう。
しかし、私は不満でしょうがないのです。
なぜ、これほどまでに摂取カロリーを抑えているのに、これっぽっちしか体重が減らないのか。早く普通の生活をさせてくれ! と。
周囲の人は編集長の食事を見て「え? たったそれだけ?」と言います。「ダイエット中でももっと食べた方がいいよ」と心配されるし、小食の女性からは「私でもその量はないわ」と呆れられる。自分でも、もう「これ以上は無理」というくらい我慢しています。
具体的に言いましょう。たとえば朝食はパスタ40gとブロッコリー。で、午前中は近所のドトールで仕事して、腹ペコで家に帰るでしょ? 「かさ増し」のために豆乳スープを作り、ライス100gを解凍して一緒に食べると「ああ、ハラ減った……」って無意識に言っちゃうんですよ、想像できます? 食べる前より食べた後の方が空腹を感じることもあるって発見しましたよ、アハハ。いったい人間の体ってどうなってんの? 教えて、ねぇ神様。おい、答えやがれ!
しかも仕事だけじゃなく運動までしてますからね。毎日6kmのウォーキングと10分間の筋トレ(スクワット40回・腕立て20回・上体起こし40回)に、週4回はプールで泳いでいる。自分でも不思議です。こんな食事量でこのサイズの哺乳類がちゃんと活動できるなんて。
これは編集長の仮説ですが、たぶん摂取カロリーと肥満との間に因果関係はないんですよ。
もちろん、強制収容所か何かで1日にパン一切れだけ与えられるような生活でどんどん太っていく人間はいません。物理法則としてありえない。しかし、そこで十分な食事が与えられた場合、太る人とそうじゃない人が出てくでしょう。その違いが生まれる原因は、遺伝子だと思うのです。もちろん、年齢による代謝量の違いといったこともあるけれど、結局は「太るタイプの人は太る」「痩せるタイプの人は痩せる」という話なのではないか。
これも思考実験するしかないのですが、おそらく山で遭難して1週間後に救助されるようなケースでも「痩せ方」には個人差があるはずです。水だけで生き延びて「うわ、ヤバかったね!」と言われる人もいれば、同じ条件なのに「少しやつれた?」程度で済む人もいるでしょう。私は間違いなく後者だと思います。
「背が小さい」とか「顔がデカい」とかと同じす。食事にこと欠く貧困家庭で育っても背が高くなる人はいる。いくら食べても増量できず苦しんでいるアスリートもいる。これと同じで、人体の設計図に「中年以降は太めの体型」と書かれている人は、普通に食ってるだけで太るのです。それを避ける方法は、「設計図」の実現が困難になるほど食事を制限するしかない。
結論としてこんなことが言えます。
スナック菓子やコーラ、暴飲暴食などの生活習慣がないのに「普通に太っていく」という場合、ダイエットは困難だ。なぜなら、それは「その人固有の体型」だから。また中高年の場合、いっそう痩せるのは難しい。チンパンジーやゴリラでも中年はハラが出ているわけで、加齢とともに締まらない体になるのは極めて自然な現象である。
●たったひとつの「太らない方法」
つまり、ダイエットとは「ほぼ勝ち目のない戦(いくさ)」です。
5kg落とすだけでもこれなのに、10kgや20kg痩せるなんてまず不可能。ダイエットの必要性が出てきた時点で、もう手遅れです。私もあと1、2年遅れていたら「こりゃ無理だ。もう腹の出た中年でいいや」と諦めていたかもしれません。
では、どうすればいいのか。
太ってから痩せるのではなく、そもそも太らないように努力をする--。これに尽きます。すでに太ってしまった人は、まずは私と同じように適正体重に戻るまで食事制限に苦しんでください(「たくさん食べても運動すれば大丈夫」などとはゆめゆめ思わないこと)。これから述べるのは「痩せる方法」ではなく「太らない方法」です。
一番大事な心がけは「初期消火」です。消防署がよくいうように、ボヤのうちに消さないと消火は不可能になる。これと同じで「ほんの少しでも増加傾向に入ったら、あらゆる手段をつかって抑え込む」。これです、これ。
もちろん毎日の体重測定はマストです。さらに「わずかな増加傾向」を捉えるためには、常に同じ条件で測定する必要があります。これは「パンツ一丁で」とか「上下パジャマで」とか、好きなように決めてしてください。私は毎朝起きてトイレに行ってから測ることにしています。出張中のホテルでは夜のうちに体重計を借りておく。1日たりとも油断はできないのです。
また、体重はただ測定して記録するだけでは不十分です。必ず「折れ線グラフ」にしてください。今は体重記録のスマホアプリがたくさんありますが、正確で見やすいグラフを作成してくれるものを選ぶこと。私は「WeightFit」というシンプルなAndroidアプリを使っていて、毎日体重を測って入力していくだけで、「測定開始から現在まで」「直近の1カ月」といったグラフを見ることができます。
あとは簡単。増加が2日続いたら「要注意」で、3日続いたら「高確率で増加」です。前述の通り、私は順調に減量しているのですが、それでも2日連続で増加することがある。しかし3日連続でプラスになったことはダイエット開始から一度もありません。つまり3日連続の増加は「肉が付き始めている」か「現状維持」のどちらかである、との結論になります。それ以上になると間違いなく太り初めです。
たとえ1日100gの微増であっても油断はできません。すみやかに緊急事態宣言を発令してください。ランチにカツカレーを食べるのはやめて、おにぎり1個と春雨スープにしましょう。このように増加傾向をできるだけ早期にキャッチすれば、たった1日我慢するだけで体重増加のトレンドから脱出できる。これこそ「初期消火」。早めに気づけば対処は楽なもんです。
言うまでもなく、人間の体重が「毎日ピッタリ同じ」なんてことはありえません。だから、ほとんどの人は多少の増減など気にしない。ところが、ここに大きな罠があるのです。こういう揺れがあるから、人は「ちょっと増えているけど、夜中に水を飲んだからだろう」と楽観してしまう。ひと月に100gづつ肉が付いているのに「現状維持」だと勘違いしてしまう。その結果、数年後に待っているのはめちゃくちゃ辛い「キロ単位のダイエット」です。
今回、日記を読み返して発見したのですが、編集長が60kgから65kgになるのに8年もかかっていました。これでは「太ってきた」という自覚が持てなかったのも当然でしょう。1年1kg以下の体重増なんて、家族はもちろん本人ですら気づけないし、仮に気づいても「ちょっと節制すればすぐ戻せる」と思ってしまうのです。
繰り返します。中高年のダイエットは不可能に近い。だから絶対に太ってはいけません。
そのためには、下記のような体重増加トレンドの回避--「初期消火」が最重要になります。
①毎日体重を測って折れ線グラフで管理する
②「増加傾向」をキャッチしたらただちに食事制限で抑え込む
③たまに長期の体重推移をチェックして「微増の蓄積」を防ぐ
われながら非の打ち所がないダイエット方法論だと思います!
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長々と持論をぶって恐縮ですが、今月号もそろそろお別れです。最後まで読んでいただきありがとうございました。次回も『月刊まいど屋』をお楽しみに!