まいど通信
まいど! 編集長の奥野です。今月は編集長のぐだぐだ放浪記をお送りしました。「無銭旅行」などと大見得を切っておきながら、趣旨を貫徹できなかったことは心からお詫びします。仮に旅先に留まって仕事を探しても収支トントンにするのは不可能と判断しました。つまりリタイヤです。昨年末にやった東海道の旅がノープランでもうまくいったので、どこかに慢心があったのかもしれないと反省しています。しかし、旅日記は精魂込めたものを仕上げましたので、お楽しみいただければ幸いです。
●旅ワーキングの装い
今回の旅は、現場で何の仕事をするかわからないので服装選びに苦労しました。最終的に選んだのは、安全スニーカーにベージュの作業着の上下、空調服といった組み合わせです。下着は消臭系のコンプレッションで固め、上着はカバンの中にしまって、長袖が要る現場に備えておきました。綿の作業着は着心地がいいのでネットカフェ泊でのパジャマとしても活躍。いやー、ワークウェアって本当にすばらしいものですね。
物流現場では安全靴の着用義務はなかったのですが、「できれば履いてくるように」と書かれているパターンが多い。チェックされるわけではないものの、あったほうが安心して作業できることはまちがいないでしょう。旅先でケガすると面倒なことになるので、着用するに越したことはありません。実際、ベテラン勢はみんな安全靴でした。
それから、あればいいなと思ったのは長靴です。結果的に、農家系の仕事にはありつけなかったので問題なかったものの(濡れても我慢するつもりだった)、本格的にやるつもりなら用意しておく必要があるでしょう。荷物になってしまいますが、野外フェスなどで人気の折り畳めるレインシューズを持っておきましょう。
続いて「黒パンツと黒シューズ」です。この条件をあげている仕事は意外と多い。閉店後の回転寿司チェーン店の片付けは、まあ飲食の仕事だからわかるものの、エアコン設置や廃品回収まで「黒パンツと黒系の靴を着用」と書いてあるのには驚きました。お客さんの目を気にする必要があるからでしょうか。作業着も黒系カラーのほうが汎用性が高いかもしれません。
あと「エプロン持参」もありましたね。コンビニやショップで働きたい場合に必須アイテムです。余談ですが、タイミーは経験者限定の求人「セブンイレブンのレジ担当」がしょっちゅういろんな地域に出ているので、セブンのバイト経験者は旅先でも仕事にありつきやすいでしょう。
●旅の終わりはフェリー泊
そして現在、編集長は新日本海フェリーで、新潟沖を南に航行しています。さきほど食堂でランチのカツカレーを食べ、給湯室でコーヒーを淹れて展望ラウンジに陣取りました。乗客はまばらで船内はひじょうに静かです。
今日で旅は12日目。自分でもびっくりするくらいの放浪です。なぜこんなことになったのか、函館に到着してからの道のりを語っておきましょう。
8日目の夜は青函に泊まり、どうやって大阪に戻るかを考えました。飛行機は意外とチケットが高い上、空港までの移動が面倒くさいのでフェリーで北海道を脱出することに。翌朝、函館朝市をぶらぶらして海鮮丼を食べ(久々のごちそうなのにそれほど感動はなかった)、18きっぷで丸一日かけて小樽へ向かい、夜に到着してそのまま宿へ。小樽は昔から行ってみたかった街なのでゆっくり観光し、毎日23時に出港する舞鶴行きのフェリーで帰る計画でした。フェリーターミナルはJR小樽駅から3kmほどとアクセスも最高です。
というわけで10日目は小樽観光。灯台や展望台から海を眺めて、ニシン漁で財を成した網元の豪邸を見学し、博物館で蒸気機関車に乗って、ゲストハウスで一緒になったライダーさんとジンギスカンを食べに行く。その結果、小樽で連泊することに。
翌朝、宿で「さあ、今夜のフェリーを予約するか」とパソコンで新日本海フェリーのウェブサイトを開くと、7/24日発の便が出てきません。「おかしいな、毎日運行のはずなのに……、まさか満員?」と首をひねりつつあちこち見ているうちに気が付きました。その日は例外的な運休日だったのです! じゃあ「毎日運行」って書くなよ(よく見るとヨコに「※」が付いていた)。
その場で3泊目の申込みです。宿は小樽商科大学のゼミが運営しているゲストハウスで、宿泊料金は超格安。にもかかわらず施設やサービスは最高で、次々やってくるライダーやサイクリスト、国内外の旅人たちの話もおもしろい。朝晩にリビングでしゃべってるとぜんぜん退屈せず、充実した滞在となったのでした。
●小樽最後の夜
そして12日目の朝、ついに宿をチェックアウト。といってもすぐ帰路に着けるわけではなく、23時のフェリーの出港まで時間を潰さねばなりません。天然温泉の銭湯に行こうと思ったら休業日。人気店っぽい小さなカフェレストランは期待はずれ。うーん、まだ呑みに行くのは早いし……、と街外れにある地元民向けスナック街を歩いていると、やけに一見さんウェルカムな雰囲気のコーヒー店を見つけました。小樽でこの感じは珍しい。
入ってみると、なんと女性店主は奈良出身でした。奥から出てきたご主人はオーストラリア人。もともと夫婦でスキーリゾートに店を出していたのですが、コロナでインバウンドが消滅した結果、小樽に移住して店を構えた、と。旦那さんには旅先で出会ったとのことで、旅の話で大いに盛り上がった結果、ご主人おすすめの炉端焼きの店を紹介してもらいました。「ワタシは魚タベナイ。けれどココのポークチョップはサイコーだよ!」。
ここまで言われては、スルーするわけにいきません。ご主人が電話を入れてくれたおかげで、その地元に愛される炉端焼き店のカウンターに座ることができました。牡蠣や銀だらを肴に酒を飲んでいると、常連客のお父さんからボトルをいただきました。最後はそのお父さんがスナックに行くということで「一緒にフェリーんとこいけばいいべさ!」とタクシー同乗。旅人にとって忘れられない夜です。小樽は最高。食も宿もいいけど、なにより人がすばらしい。旅人は函館や札幌より小樽に向かうべきです。
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そんなわけで、今月も最後までお付き合いいただきありがとうございました。次回も『月刊まいど屋』をお楽しみに!