まいど通信


        

まいど! 編集長の奥野です。季節は晩秋を越えてすっかり冬へ、というわけで今月は毎年恒例の防寒特集をお届けしました。数年前、初めて防寒作業着の取材をしたときは電熱ウェアなんてほとんど見ませんでしたが、今回はまるで“電熱アイテム祭”。いやー、劇的な変化を感じますね。しかも電熱ベストだけでなく、パンツに手袋、靴下と全身をカバーするのも夢ではなくなってきました。ただ暖かくて快適なだけではなく、省エネや暖房費の節約にもなる電熱アイテム。ぜひ今シーズンから導入してみてはいかがでしょうか。お買い求めは、もちろん「まいど屋」で!

●わが多拠点生活

じつは編集長は今年の春から、シェアオフィスを借りています。自宅から2駅、歩いても20分くらいの場所です。ここに今年の春、一軒家をリノベーションした施設がオープン。「1カ月無料」のキャンペーンをやっていたので試しに会員になってみました。気に入ったのでそのまま半年以上、使い続けています。

月額会員はシェアオフィスを使い放題です。フロアの真ん中には大きなテーブルがあって、壁際には勉強机のようなデスクもいくつかあるので、空いている席を自由に利用する。もちろん冷暖房にWi-Fi完備で、コーヒーや水も無料。軽食もOKなので、デスクワークに限らず読書や休憩スペースとしても活用できます。

オフィスは道路に面した1階の広間。2階にある2、3の部屋はレンタル会議室になっています。オンライン予約できるので、ミーティングや採用面接なんかでよく使われているようです。こちらは月額ではなく「1時間あたり×円」のレンタル利用。なお、この施設は無人運営なので、メールで届く暗証番号で鍵を解除し、オフィスや会議室に入る仕組みになっています。

そしてここからがスゴいのですが、なんと月額会員は「2階が空室のときは自由に使っていい」というルールがあるのです。予約状況は1階の端末でチェックできるので「今日は会議室の予約はゼロか」とわかったら、階段で2階に上がってもOK。つまり、6畳ほどのミーティングルームを自室のように使えるのです! これはまさに革命的で、シェアオフィスの概念を覆すインパクトがありました。この“裏技”に気づいてからは、1階に空席があっても2階ばかり使っています。シェアオフィスより個室のほうが快適なのは言うまでもありません。

前述したようにこの施設は無人です。たまに管理会社の人が来てトイレ掃除やゴミ出しをして去っていく。ただ手が足りないようで、恐ろしいことに営業時間を過ぎてもシャッターを閉めないんですね。たとえば日曜日は休業のはずなんですけど、試しに暗証番号を入力すると、普通にオフィスに入れてしまう。このあいだは早朝の散歩中に寄ってみたら、やっぱり開いていました。こうなったらフツーに会議室でくつろぐに決まっている。そんなわけで平日は仕事で使うだけでなく、休日でも立ち寄ってコーヒー休憩する。会議室で筋トレする。ほかにも音楽をかけるわ、メシを食うわ、歯を磨くわ……。もはやこの施設はわが家の一部となってしまいました。

●プール付きオフィス?

さらにちょうどいいことに、このシェアオフィスは通っているスポーツクラブから徒歩3分くらいの場所にあります。つまり、施設からいつでも気軽にプールや風呂・サウナに行ける。こちらも月額会員なので通い放題です。平日はオフィスで仕事して、疲れたらジムの風呂。休日はジムのプールで泳いで、運動後はオフィスでコーヒーを飲みながら読書。と、こんな感じで、2つの施設を行き来しながら充実の毎日を送れちゃうわけです。

正直、これはヤバいです。なぜかといえば、衣食住の大半がこのシェアオフィスとスポーツクラブでカバーされてしまうから。本当は9時オープンのはずなのに、暗証番号で早朝から入れてしまうから朝食もとれる上、昼休みは隣のスーパーで弁当やカップ麺を買えば低コスト。ソファで休憩もできるし、スポーツクラブの風呂でリフレッシュしてもいい--。こうなると家にいる理由がなくなってしまう!

私は朝型なので夜間にこのシェアオフィスの前を通ることはありません。しかし、おそらくドアは解錠できるのでしょう。夜中の何時だろうと。そうなると、ここはもはや終電後に夜を明かすシェルター、あるいは山中の避難小屋のように使えるのかもしれません。絶対やらないけど。よく考えれば、この施設とジムとの組み合わせにおいて、できないことは布団で寝ることとキッチンでの煮炊きだけ。いやー、とにかく恐ろしい施設です。こうなるとシェアオフィスというかシェアハウスに近い。もう家なんて帰らなくてもいいんじゃ……。

読者は「そんなに自由でいいわけ?」と思うでしょう。私もそう思います。無人でいつでも入れるなら、いくらでも悪用できちゃうじゃないか、と。ただし、会員はどちらかというと意識の高い人たちが多くて、なんとなく相互監視が成り立っている。そのせいか、風紀の乱れは今のところ起きていません。管理会社があまり掃除しないので、床が髪の毛だらけになっているのがやや気になりますけど。こんど会ったら掃除用具の収納場所を教えてもらおうと思います。

仕事前にはクイックルワイパー的なもので会議室を掃除し、スッキリした気持ちで働く。ランチの前には、ヨガマットを敷いて筋トレやストレッチをして、午後の作業へ。そして夕方、頭が疲れてきたらジムのプールや風呂に行って、運動後はソファでコーヒーを飲みながら読書やYouTubeを--。うわ、マジでシェアオフィスの“住人”になってしまいそうです。

●長いお別れ

と、いつもどおりの当コーナーですが、ここで重要な発表があります。

本誌『月刊まいど屋』は、今月号をもって休刊します!

理由は制作労力とユーザー評価のバランスの問題と聞いています。ごぞんじの通り、デジタルコンテンツ全盛の時代に活字メディアは苦戦している。紙の雑誌や新聞はもちろん、企業のPR誌や機関紙なども廃刊があいついでいます。私が定期購読している雑誌も、ここ数年で3、4つほどなくなりました。それでも『月刊まいど屋』は、大丈夫だろうと思っていたのですが、ひじょうに残念です。もっといろんなメーカーに行ってワークウェアの話を聞きたかった……。

しかし、いっぽうで満ち足りた気分もあります。本誌のおかげで、普通のライター仕事ではできないような体験がたくさんできたからです。東海道も歩いた。小笠原にも行った。ウーバー配達員もやった。料理人にもインタビューした。国際問題や紛争のことも学んだ--。これらの時間は、とてつもなく貴重なものだったと思っています。私は『月刊まいど屋』の仕事を通じて「一生モノ」と言ってもいいほどの財産を得ました。

とくに東海道の徒歩旅行ですね。これはマジで人生が変わりました。なんというか、とてつもなく自信がついた。自分は体力があって根性もある。トラブルだって乗り越えられるし、その過程すら楽しむことができるのだ、と。要するに、皮膚感覚として「どこへ行っても生きていける」というのがつかめた。これは、どんなに仕事で成果を出しても、収入が上がっても実感できなかったことです。

東海道をやる前とやった後とを比べてみると、半分くらい違う人間になったという感覚があります。まさか歩くだけでここまで変わるなんて、想像もしていませんでした。あの旅を終えてからもうすぐ1年ですけど、1日たりとも東海道を思い出さない日はありません。朝の散歩でも街中を歩いていても、あのときの感覚がよみがえってくると同時に歓喜に包まれる。あれ以来、歩くことは私の人生の中心を占めるようになりました。

いま前述のシェアオフィスでこの原稿を書いています。デスクに置いたスマホでは、ウーバーイーツの配達員アプリが稼働中。そう、休刊の知らせを受けてから、家計の足しにするために徒歩配達員としての活動を始めたのです。土日や雨の日なんかは、足の裏がジンジンするほど歩きますが、東海道を踏破した私の敵ではありません。服装は耐滑性のある安全スニーカーに足さばきのいいジョガーパンツ、そして温度調節しやすい電熱ベスト。こういった“最強装備”を選べるのも本誌を担当したおかげです。

いつか、ひとりのワーカーとして読者のみなさんにお目にかかれればと思います。

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というわけで、最後の最後までお付き合いいただきありがとうございました。お元気で!