【寅壱】ネタなしカリスマブランドを斬るimage_maidoya3
不作である、と言っていい。いや、凶作というべきか。衝撃の丸寅デビューから既に一年がたち、期待はいやがうえにも高まっていた。販売開始と同時にスマッシュヒットとなったこのシリーズの新たな展開を、誰もが予感していたはずだ。
  今回、寅壱が発表した新シリーズはわずか2種類。丸寅ブランドが一つ。そして寅壱ブランドが一つ。どちらも前年の丸寅で人気に火がついた細身シルエットを踏襲した意欲作であることは間違いない。だが、期待値の針が振り切れるほど上ブレしていたから、物足りなさは隠しようがない。さらに悪いことに、新丸寅は諸事情で発売が来年に延期になった。そして、追い打ちをかけるように、これまで定番だった数多くの商品が届いたカタログから抜け落ちている。あるべきものがそこにない。これではさらなる前進を信じて待っていた日本全国の寅壱フリークに申し訳が立たない。。。
  寅壱に今、何が起きているのか。われわれを置いて、寅壱はどこに向かおうとしているのか。不安を胸に、急ぎ向かった寅壱の岡山本社。納得のいく説明があるまで帰らない。いや、帰れない。いつになく緊張しながら、営業部の長間主任にじっくりとお話を伺ってきた。
 

寅壱
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インタビューに応じてくれた営業部 長間主任。
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細身仕立ての丸寅8020(上)と超超ロング5309(下)。
「まいど屋さん、かなり手厳しいですね。確かにおっしゃるとおりで、私たちもツライですが、ちょっと弁明させてください。ただ、何をお話ししても言い訳にしか聞こえないでしょうけど・・・」。そう話すのは、営業部の長間武仁(ながま たけひと)主任。
  「まず、丸寅の新作が販売延期になった件。これは、お恥ずかしい話、生地の生産が間に合わなくて、やむなく。この商品は、ウール60%、ポリエステル40%と、ウール比率が高い織り柄生地を使ったもので、毛玉ができにくく、色落ちしにくい。非常にクオリティの高い素材です。お待ちいただいているファンの方には申し訳ありませんが、来年の早い時期に発売しますので、どうか期待していてください」。
   カタログから多数のアイテムが落ちたことについては・・・「お客さまからの支持が高い商品に絞って展開していこうと、1年がかりでアイテムを整理した結果です。これまでラインナップを広げすぎて、とうとう生産が追いつかなくなった。品種、品番、カラーが多くなりすぎて生産のキャパを超えてしまった。納品モノで商品が間に合わなくなってお客さまにご迷惑をおかけしたことも正直ある。廃番になった商品をご愛用いただいていたお客さまには大変心苦しいのですが、やはりご要望の多い商品に集中して常に切らさないようにしていったほうがいい。そうすることで、最後には必ずお客さまにもメリットを感じてもらえると思うんです。また、この他にも、生産ロットの問題があります。あまり動きのよくない商品を追加で小ロット作ると工賃がアップしますよね。これまではお客さまにご迷惑をかけないよう、高いコストにも目をつむって何とか継続させていましたが、なにせ、このご時勢ですから・・・。そんなわけで、大量生産が可能な人気商品だけに絞ったわけです」。納得しないまでも、事情はひと通り聞いた。寅壱も大変だったのだろうが、ファンの皆さんの気持ちが痛いほどわかるまいど屋もやっぱりツライ。これを読んで、「もう、あの品は手に入らないのか!」とお怒りの寅壱ファン諸兄。まいど屋では、既存商品でカタログ落ちした型番についても、在庫がある限り、販売していく。だから、皆さんもどうか辛抱してほしい。
  ところで、せっかくなので、ここでオススメ商品の紹介といこう。まずは、昨年デビューした丸寅8020から。「正直、何が売れるか、読みきれないところがあるんです。丸寅は東日本を中心に非常に人気が高く、予想以上の反響に生産が追いつかなかった。細身のシルエットでポリエステル65%、レーヨン35%のサージ。ご覧いただくとわかるように、ウチの超超ロング5309と比べると、かなり細い。最も幅のあるワタリの部分が36cmで、超超ロングが42cmですから、片身で6cm、周囲では12cmも違ってきます」。
  続いて注目したいのは、シブいレトロネームの新商品7810.シリーズ。「レトロネームというのは、これまで限定品のみに使っていたネームで、今回特別に出しました。7810の特徴は、遠くから見ても織りがわかる、スプラッシュドビーの素材感。ワタリは38cmで、細身の8020と普通の超超ロングの中間ぐらいです。最近は素材にこだわるお客さまが増えてきて、無地では面白みに欠けるという意見が多いんですね。かといって、プリントでは洗濯を繰り返すとみすぼらしくなりますし。織りで素材感を出すと、見た目もよく、クオリティが高く感じられて遊び心もある。それで人気があるんです」。実は、この7810シリーズ、カタログ掲載は今シーズンからだが、商品自体は昨年から生産されていた。まいど屋でも、ホームページには掲載せず、一部のファンからお問い合わせがあった場合にのみ、特別に販売していた。ご購入頂いたお客さまの評判も上々で、今回、正式にカタログに掲載されたため、1年遅れで大々的なお披露目になったというワケ。
  最後に、これからの季節に欠かせない、防寒ウェアの新商品について。「防寒では、現場への通勤ウェアとして電車の中でも着られるデザインを意識しました。防寒ブルゾン3270は、いろいろなワークパンツに合わせやすく、カジュアルショップで売っているようなデザインにワーキングとしての機能性を徹底的に叩き込んだ。普通に街で着ていたら、作業着には見えないシルエットが魅力です。これに対し、パイロットジャンパー3992は、昔のワークの防寒スタイルをおしゃれにグレードアップした感じ。モダンなデザインなので職人さんだけでなく、サービス業の方にも着ていただけます」。3270も3992もベーシックな3色展開だが、今後要望があればカラーバリエを増やしていくかも・・・とのこと。アイテムを絞ったばかりの寅壱の方針に反するかもしれないが、ぜひ期待したいところだ。
  「職人さんは、人と違うものを着たいという思いが強いんですね。周りで着ていないもので自分に合ったもの、自分らしいものをね。私たちはその思いに応えていきたいんです。今年は整理の年となりましたが、来年は何アイテムか出していく予定ですので、どうか温かい目で見守っていてください」。
  その言葉にウソはないと信じて、今回は大人しく引き下がることにする。諸事情を乗り越え、再びあのワクワクするような寅壱が復活することを願って、とりあえず現状ある商品を以下に紹介しておく。重ねて言うが、まいど屋ではカタログ落ちした商品でも、在庫がある限り販売していく。ホームページでの掲載を取りやめた商品でも、色やサイズによっては残っているケースも多くあるので、諦めずにサポートセンターに連絡してみてほしい。
 
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渋いレトロネームの7810。
 

    

名作ロングに独自の素材感が新しい7260シリーズ

「モノトーンが多い中、久しぶりに華やかな色を出してみました」というのは、上品で深い赤のディープワイン。昼夜ヘリンボーンが醸し出す独特の表情に一目ぼれ。


素材感の違いでスタイルもより鮮やか!7160シリーズ

織りによって描き出されたストライプは、光の当たり方によって表情が変わって何とも粋!素材はポリエステル90%、綿10%の昼夜織り。トップスのバリエーションも要注目。