【関東鳶】失われた二年の謎を解くimage_maidoya3
カントビのラインナップに変化が表れ始めている。ウェアのアイテム数がかなり絞り込まれ、人気モデルばかりがズラリと並ぶ構成にサマ変わりしつつある。広く深かったシリーズ展開がやや狭く、そして浅くなった印象を受ける。胴付きタイプがない。七分や八分、乗馬ズボンなど、短めの丈のモデルがぐっと少なくなった。そして、いくつかのシリーズが丸ごと姿を消した。以前のカントビを知るファンの中には、物足りなさを感じる向きも確かにあるだろう。関東鳶はこのまま縮小していってしまうのか。昔のような、前衛的な輝きはもう戻ってこないのか。
  心配は無用だ。実はカントビは今も進化の途中。過去に蓄積した贅肉をそぎ落とし、新たな飛躍へと向かう挑戦のさなか。ユーザーの支持が特に高いアイテムだけを残し、着実に次世代のラインナップへの衣替えを図っている。その試みの一つがセーフティーシューズやヤッケなど、鳶関連アイテムの強化。そして鳶テイストを残したワーキングウェアの提案だ。
  伝説のカントビスピリットは今も確かに息づいている。それを確かめに向かった今回のインタビュー。東京営業所・所長の平井さんと営業の柴田さんに詳しくお話を伺ってきた。
 

関東鳶
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5900シリーズと、取材に応じてくれた柴田さん
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スタイリッシュなウインドブレーカー 910と911
関東鳶といえば、この「月刊まいど屋」の常連中の常連。前回の登場は、1年前の2011年7月になる。そう、各社の新作春夏商品でにぎわう、あの暑い大阪の商品展示会で取材をしたのが最後だ。新商品を出さなかった関東鳶を批判したその時の取材から1年3カ月。まいど屋も多くのカントビファンと共に新たな展開を期待して見守ってきたが、いまだ表面上は大きな変化が見られない。彼らの新しい方向性が見えてこない。長い沈黙は失われた二年だったのか?その質問に、平井所長は、ひと言ひと言コトバを選ぶように語り始めた。「作業服、ユニフォームという枠の中でも、鳶業界は非常に販売の条件が厳しくなっているカテゴリーの一つです。土木関係がよくない。それに加え、大手ゼネコンをはじめ、作業者の服装に対しての規制が厳しくなってきている」。仕事そのものが減っているだけでなく、現場に鳶装束で出入りできなくなってきている、そんな現実があるというのだ。「そういった状況下で、これまで出してきた商材のなかに、お客さまに支持されなくなったものが少しずつ出てきた。そこで一度集約をかけ、次なるステップに進む。この2年は、そのために必要な時間だったんです。商品改廃は非常にしんどい作業でしたが、これでほぼ目鼻がついた。鳶業界を取り巻く状況を見極めながら、これから新しいことにチャレンジしていくための準備が整った」。新商品が出ない理由について、いくら聞いてもスルリと質問をかわされた昨夏の取材を思い出す。まいど屋はただ不平を述べ立てただけだったが、彼ら自身も断腸の思いだったのだ。考えに考えた上での沈黙だったのだ。
  反転攻勢の準備ができたカントビの今後について、「これは一個人としての意見ですが」、と前置きして平井所長は続ける。「これからは、旬な商材、お客様のニーズにあった物をどんどん提案していかなくてはならない。限定商材、スポット商材、そういったものも織り交ぜながら、ファッション志向が高いファンの方々に向けて、関東鳶らしいカッコよさ提示する。同時に定番の売れ筋商品は、限定品で評判のよかった商品のテイストを取り入れながら、腰を落ち着けて、じっくりと育てていく。そんな二方面作戦を進めていきたいと思う」。
  鳶装束だけではユーザーニーズに応えきれなくなってきている今、鳶テイストを大幅に取り入れた普通ワーキングのシリーズにも力を入れていくと平井所長は言う。「関東鳶ブランドには熱心なファンが大勢いらっしゃる。そのブランド力を生かした、関東鳶らしい雰囲気を残した普通ワーキングがあれば、現場で鳶装束が禁止になって困っている鳶さんたちも違和感なく入っていけると思う。今後の関東鳶コレクションのポイントの一つになるジャンルだと思います」。
  その第一歩として、今期カントビが市場に発表するのが、5900シリーズだ。「関東鳶といえば、和のテイストを全面に出していたブランドでしたが、ロゴを『KANTOBI』とアルファベットにしました。一般の人たちの中には、『鳶』と書いてあるだけで抵抗感がある方もいるので、こうすることで間口を広げました」と柴田さん。背中や袖口から見える裏地も、アーガイル調のカジュアルな柄。カーゴパンツは裾にゴムがしのばせてあり、引っ張って結ぶと裾が絞られる。ニッカのように履きこなせるので、作業性が良く、裾上げの手間も省ける。
  半年前に出たばかりの防寒着、910も好評を博している。冷たい空気の浸入を防ぐスタンドカラ―にフード付き。「ちょっと高級なヤッケというイメージでしょうか。ウインドブレーカーとして風を防ぐだけでなく、防寒着としても着ていただけます」。
  さらに、一見カジュアルなスポーツシューズにも見える安全靴(型番:ZA900他)をはじめ、現場の足元をサポートする関連商品もぐっとオシャレになって登場してきた。
  今回ご紹介できる新商品は、残念ながらここまでだ。だが、取材でわかった通り、カントビは今、飛躍に向けて、厳選したアイテムにエネルギーを集中している真っただ中。新たな挑戦を始めるための準備は整いつつある。まいど屋ではこれからも注意深く、カントビをウオッチしていく。新しい動きが出たら、すぐに皆さんに報告したい。そしてその時期は、そう遠い将来ではないハズだ。
 
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スポーツシューズ風の安全スニーカー ZA900
 

    

7440シリーズ

ざっくりとした肌触り。独特の存在感。同シリーズでシャツ、ベスト、ニッカ、超超ロング、超超超ロングから、ベルト、Tシャツまでそろう! 正統派でありながら、10色展開のカラーバリエがウレシイ


990シリーズ

ポリエステル100%の軽さとしなやかさに、タフな耐久性がプラス!丈夫なツイル織りだから、ハードな現場もどんと来い!汗や汚れも、洗えばすぐ乾く速乾性の良さも魅力。大人気の関東鳶「唐獅子牡丹」シリーズ。