まいど屋の鳶ラインナップに待望のニューフェイスが登場した。鳳皇と書いてホウオウと読む。割と最近のブランドだが、既に取り扱っているワークショップもあり、何をいまさらと思われる諸兄もいるかと思う。正直に言うと、まいど屋もかなり以前からこのブランドの存在はキャッチしていた。ただ、何となく「寅壱」や「関東鳶」の後追い的なイメージがあり、敢えて取り扱いを避けてきた。本当の意味で揺るぎない個性をもった、芯の通った存在ではないのではないか。勝手にそう判断し、まいど屋のラインナップからはずっと外したままだった。
きっかけは数か月前の、あるお客さまからのお問い合わせ。なんで鳳皇を売ってないの。あったら絶対買うのに。別の鳶ブランドをお勧めしてみても絶対だめ。電話で滔々と鳳皇のよさを説かれ、結局、メーカーに連絡して特別に商品を取り寄せた。届いた商品を見たスタッフの反応はもうお分かりかと思う。結果は今月号でこのブランドの特集をしていることが物語っている。
これまでまいど屋を信頼し、既存のラインナップの中から商品を選んでくれていた諸兄には心からお詫びをしたい。鳳皇は確かにこのブランド特有の存在感がある。寅壱や関東鳶とはまた違った、独自の主張と感性がある。今回のインタビュー相手は鳳皇を手塩にかけて育て上げてきた村上被服の村上社長。このブランドが持つ世界観をじっくりと解き明かしてもらおうと思う。
きっかけは数か月前の、あるお客さまからのお問い合わせ。なんで鳳皇を売ってないの。あったら絶対買うのに。別の鳶ブランドをお勧めしてみても絶対だめ。電話で滔々と鳳皇のよさを説かれ、結局、メーカーに連絡して特別に商品を取り寄せた。届いた商品を見たスタッフの反応はもうお分かりかと思う。結果は今月号でこのブランドの特集をしていることが物語っている。
これまでまいど屋を信頼し、既存のラインナップの中から商品を選んでくれていた諸兄には心からお詫びをしたい。鳳皇は確かにこのブランド特有の存在感がある。寅壱や関東鳶とはまた違った、独自の主張と感性がある。今回のインタビュー相手は鳳皇を手塩にかけて育て上げてきた村上被服の村上社長。このブランドが持つ世界観をじっくりと解き明かしてもらおうと思う。
鳳皇
明るく豪胆な二代目社長、村上氏。
赤文字でインパクトのあるブランド名『鳳皇』。
「ウチは創業1960年の作業服メーカー。ワークの分野では、国内縫製を重視して、これまで手堅くやってきた。鳶服を始めたのは2000年から。ブランド名は幻の鳥“鳳凰”にちなんで『鳳皇』。不死鳥のように生命力があり、勢いがあるようにとネーミングした」。
村上被服が鳶服を手掛けるようになったきっかけは、それまで国内生産で頑張ってきた企業が、生産拠点を次々と海外に移し始めたこと。工場がなくなっていけば、作業着の需要も減る。製造業向けの作業服以外に、培ってきたノウハウを生かせるジャンルはないものか。思案し続けた村上社長が目を付けたのが鳶職人たちだった。個性的な職人たちが着用するウェアには、普通の作業服の枠に縛られない自由な発想が詰まっている。素材やフォルム。そしてカラーリング。自由な分だけ、通常の作業服以上にメーカーの実力とセンスがハッキリ表れる。ワークウェア一筋で技術を磨いてきた村上被服にとって、自社の潜在能力を試せるまたとない分野になるはずだ。そして、自社のアイデンティティーを再構築するための、最後のチャンスになるはずだ。やるからには徹底的に。そして他社が絶対マネできないやり方で。「鳶装束の後発組として、まずは他社との違いを強くアピールする必要があった。知名度がないウチが寅壱さんなどと同じ土俵に上がろうとしても、誰も相手にしてくれないからね。最初は価格で勝負するしかないですわ。実は、超超ロングなどの鳶服は形が特殊で手間もかかるので、それまで海外で縫うメーカーがなかったのですが、腹をくくって、海外生地・海外縫製でスタートしました」。
当時の職人服は、価格という点では無風状態。そこに着目した『鳳皇』2000シリーズはトップブランドと同じような形・デザインの商品が半値以下の価格でリリースされたため、たちまち業界の話題をさらった。発売当初は「こんなに安くて、モノは大丈夫?」と、職人さんたちも半信半疑。それでも、実際に着てみるとイケるということで、次第に売れるようになっていく。「それからですよ、この分野に低価格品が出てきたのは。ある意味、ウチが価格破壊をしたわけで、おかげで『鳳皇』は、リーズナブルブランドの代名詞みたいになってしまった。低価格化の背景には、時代が変わってきたこともある。安全性が強く問われ出して、安全対策にコストがかかるようになった。鳶職人さんたちも仕事着以外での出費が増え、服ばかりにお金をかけられなくなってきたからね」。
チャレンジャーとして新規参入し、ひとまずブランドを確立した村上被服。その後もその歩みは、試行錯誤の連続だったという。「この十数年というもの、ワークショップのお客さんや現場で働く人の声を聞いてやってきたが、失敗もずいぶんした。むしろ、失敗の方が多いくらい(笑)」。どんな失敗をしたのか、気になって仕方ないので、突っ込んで聞いてみると・・・「ジーンズで腰パンが流行っていたので、仕事用の腰パンをやってみた。早めに市場を取ろうとして大量に作ったが、ほとんど売れなかった(笑)。理由は、当時、下着を出す見せパンが流行っていて、ウチのつくった腰パンも、同じようにズリおろしてパンツを見せてはくもんだと誤解されたから。パンツを丸出しにしていたら、現場ではNGになる。他社さんも腰パンをリサーチしていたらしいが、結局、製品化しなかったので、見せパンと勘違いされる危険に気付いたのでしょう。完全にウチの勇み足。実際のところ、普通に腰ではくとぴったりフィットして動きやすいし、カッコいいんだけどね。ベルト部分が邪魔にならずに安全帯も巻きやすいし」。
また、こんな話もある。「シャドー織りの生地で、裏のほうが柄がキレイだからと表裏反対に作ってみたら、生地が引っ掛かりやすくて、ちょっと擦れただけで糸がピンピン出てくる。裏目に出るとは、まさにこのことですわ(笑)」。
こうしたチャレンジは、大胆であるがゆえに成功時の実りも大きく、『鳳皇』をここまでのブランドに押し上げてきた。そして、そのひたむきなチャレンジの歩みは、今、大きな転換期を迎えようとしている。「これまでリーズナブルなブランドとしてやってきたけど、これからは価格訴求以外の部分を強化していきたい。お客さんが必要としている素材感だったり、微妙な色合いだったり、商品の価値をもっと多面的に求めていかんと。最近は着ていただく人の気持ちに一歩踏み込んだモノづくりに力を入れ始めたところです」。
では、具体的にどんな方向に進もうとしているのだろうか。「植木職人さんとか、今60~70代の職人さんは七分ズボンとか乗馬ズボンをはくので、これを進化・発展させて国内縫製を守りながらやっていきたい。大手メーカーさんには量とコストではかなわないから、少量でオンリーワンのものを、体型に合わせて作るとかね。まだ始めたばかりだが、今期は今まで以上に力を入れている。きれいごとに聞こえるかもしれんが、ウチが持っている得意先、お客さんの声を集めて作っていこうって思ってる」。
モノづくりの原点に立ち還り、新たなステージへと足を踏み入れた村上被服。以下に村上社長渾身の新作と同社の歩みを語るコレクションを紹介しておくので、ぜひチェックいただきたい。
村上被服が鳶服を手掛けるようになったきっかけは、それまで国内生産で頑張ってきた企業が、生産拠点を次々と海外に移し始めたこと。工場がなくなっていけば、作業着の需要も減る。製造業向けの作業服以外に、培ってきたノウハウを生かせるジャンルはないものか。思案し続けた村上社長が目を付けたのが鳶職人たちだった。個性的な職人たちが着用するウェアには、普通の作業服の枠に縛られない自由な発想が詰まっている。素材やフォルム。そしてカラーリング。自由な分だけ、通常の作業服以上にメーカーの実力とセンスがハッキリ表れる。ワークウェア一筋で技術を磨いてきた村上被服にとって、自社の潜在能力を試せるまたとない分野になるはずだ。そして、自社のアイデンティティーを再構築するための、最後のチャンスになるはずだ。やるからには徹底的に。そして他社が絶対マネできないやり方で。「鳶装束の後発組として、まずは他社との違いを強くアピールする必要があった。知名度がないウチが寅壱さんなどと同じ土俵に上がろうとしても、誰も相手にしてくれないからね。最初は価格で勝負するしかないですわ。実は、超超ロングなどの鳶服は形が特殊で手間もかかるので、それまで海外で縫うメーカーがなかったのですが、腹をくくって、海外生地・海外縫製でスタートしました」。
当時の職人服は、価格という点では無風状態。そこに着目した『鳳皇』2000シリーズはトップブランドと同じような形・デザインの商品が半値以下の価格でリリースされたため、たちまち業界の話題をさらった。発売当初は「こんなに安くて、モノは大丈夫?」と、職人さんたちも半信半疑。それでも、実際に着てみるとイケるということで、次第に売れるようになっていく。「それからですよ、この分野に低価格品が出てきたのは。ある意味、ウチが価格破壊をしたわけで、おかげで『鳳皇』は、リーズナブルブランドの代名詞みたいになってしまった。低価格化の背景には、時代が変わってきたこともある。安全性が強く問われ出して、安全対策にコストがかかるようになった。鳶職人さんたちも仕事着以外での出費が増え、服ばかりにお金をかけられなくなってきたからね」。
チャレンジャーとして新規参入し、ひとまずブランドを確立した村上被服。その後もその歩みは、試行錯誤の連続だったという。「この十数年というもの、ワークショップのお客さんや現場で働く人の声を聞いてやってきたが、失敗もずいぶんした。むしろ、失敗の方が多いくらい(笑)」。どんな失敗をしたのか、気になって仕方ないので、突っ込んで聞いてみると・・・「ジーンズで腰パンが流行っていたので、仕事用の腰パンをやってみた。早めに市場を取ろうとして大量に作ったが、ほとんど売れなかった(笑)。理由は、当時、下着を出す見せパンが流行っていて、ウチのつくった腰パンも、同じようにズリおろしてパンツを見せてはくもんだと誤解されたから。パンツを丸出しにしていたら、現場ではNGになる。他社さんも腰パンをリサーチしていたらしいが、結局、製品化しなかったので、見せパンと勘違いされる危険に気付いたのでしょう。完全にウチの勇み足。実際のところ、普通に腰ではくとぴったりフィットして動きやすいし、カッコいいんだけどね。ベルト部分が邪魔にならずに安全帯も巻きやすいし」。
また、こんな話もある。「シャドー織りの生地で、裏のほうが柄がキレイだからと表裏反対に作ってみたら、生地が引っ掛かりやすくて、ちょっと擦れただけで糸がピンピン出てくる。裏目に出るとは、まさにこのことですわ(笑)」。
こうしたチャレンジは、大胆であるがゆえに成功時の実りも大きく、『鳳皇』をここまでのブランドに押し上げてきた。そして、そのひたむきなチャレンジの歩みは、今、大きな転換期を迎えようとしている。「これまでリーズナブルなブランドとしてやってきたけど、これからは価格訴求以外の部分を強化していきたい。お客さんが必要としている素材感だったり、微妙な色合いだったり、商品の価値をもっと多面的に求めていかんと。最近は着ていただく人の気持ちに一歩踏み込んだモノづくりに力を入れ始めたところです」。
では、具体的にどんな方向に進もうとしているのだろうか。「植木職人さんとか、今60~70代の職人さんは七分ズボンとか乗馬ズボンをはくので、これを進化・発展させて国内縫製を守りながらやっていきたい。大手メーカーさんには量とコストではかなわないから、少量でオンリーワンのものを、体型に合わせて作るとかね。まだ始めたばかりだが、今期は今まで以上に力を入れている。きれいごとに聞こえるかもしれんが、ウチが持っている得意先、お客さんの声を集めて作っていこうって思ってる」。
モノづくりの原点に立ち還り、新たなステージへと足を踏み入れた村上被服。以下に村上社長渾身の新作と同社の歩みを語るコレクションを紹介しておくので、ぜひチェックいただきたい。
社内作業場には創業以来の型紙が大切に保管されている。
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◆しなやかさ、堅牢性、どれをとっても不足はない!とにかく使い勝手が違う鳶装束の基本スタイル、2000シリーズ 鳶装束『鳳皇』、衝撃のデビュー作は、種類も丈も豊富。昔からの職人さんのスタイルをポリエステル100%の海外生地・海外縫製でリーズナブルに。中でも新作の乗馬ズボン(型番:2700)は、熟練職人さん要注目! |
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◆仕事人だけが感じる風格がココにある!無骨なツラ構えでハードワークも軽々こなす7800シリーズ タフなツラ構えの『風格』シリーズは、『鳳皇』より価格を抑えて、よりリーズナブルに。素材はポリエステル100%。種類は少ないが、着心地、コスパの良さは文句ナシ。 |
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