【アトム】 転ばぬ先のスーパー手袋image_maidoya3
旋盤を使ってる町工場。鉄板やガラスなど、鋭利なものを扱う作業現場。ブッチャーナイフで食肉を解体する肉屋さん。キケンと隣り合わせの仕事をしているひとって、結構多い。ちょっと気を抜いたら、刃物にやられる。一歩間違ったら、指がなくなっちゃうことだってある。実はまいど屋がある川口市にもそんなキケンな作業をしている人たちがいっぱいいる。まいど屋の向かいの工場のおじさんは、つい何年か前、手に大けがをした。機械に手袋ごと持って行かれ、事故の後、指が皮一枚でぶら下がってた。幸い救急車がすぐ来て病院に運ばれ、ぎりぎりセーフで間に合ったけど、今でもきっと不自由に違いない。
  経験を重ねたプロだって、こういうことがある。ちょっとの油断。気の緩み。何年、何十年も現場に出ていれば、誰だってそんなミスを必ずする。後になって後悔したって、もう遅い。救急車がその時すぐに来てくれるかだってわからない。病院の先生が、たまたま用事でいないとも限らない。あと30分で帰ってくるんですけど。その30分が待てないから、サイレン鳴らして来たんじゃないか!
  その日、その時の救急車の空き状況や先生のスケジュールまで管理できない工場長さんは、このレポートを読むことを強くオススメする。工場長さんが頼りにならないなら、現場作業者のひとも、とりあえずチェックしてみるべきだ。自分の身は自分で守るしかない。そのためのアイテムがここにある。
 

アトム
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スタンダードタイプの耐切創手袋、ケブラー100。
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黄色と緑のコントラストが鮮やかなHGニューウェーブ。
「確かにこの手袋なら、刃物による怪我は防げます。でも残念ながら、さすがに機械に巻き込まれそうになるのまでは止められませんねえ」。真剣な表情で答えてくれたのは、アトムの生産部 生産部長 北嵐さん。ちなみに、アトムは広島県竹原市にある、作業用手袋などを手がけるメーカー。元々はゴム会社で、現在でも世に出回っている日本製ゴム手袋の、実に半分のシェアがあるという、業界では名の通った老舗である。
  「いわゆる普通の軍手では、防げる怪我といってもあくまでもかすり傷程度ですよね。例えば、勢いで持ち上げたゴミ袋の中にガラスが無造作に入っていた場合、運が悪ければ軍手ごしでも手を切ってしまいます。その点、『耐切創(たいせっそう)』と名のつく手袋なら、普通の軍手より数倍も丈夫な糸で作られているので、大きな怪我をする可能性が低くなります。作業中に怪我をする危険性を少しでも減らしたい。そんな現場の声を受けて作られたのが、耐切創手袋なんです」。
  耐切創手袋。何とも頼もしく響く名称だが、具体的にはどんな手袋をそう呼ぶのだろうか?「うちで取り扱っている代表的な耐切創手袋は、『ケブラー』と呼ばれる高機能繊維を使って製造された手袋です。ケブラーは、1960年代にアメリカのデュポン社によって開発された、世界初のスーパー繊維。これがどれほど強靭かは、タイヤや電柱の補強に使われるほどだと言えばおわかりになるでしょうか」。
  北嵐さんがそう言って取り出したのは、一見何の変哲もない普通の軍手。優れた強度を持つスーパー繊維といっても、生地の触り心地もなめらかで、特に厚手というわけでもない。「こちらがケブラー繊維が100%使われているHG-05のケブラー100シリーズ、そしてこちらはケブラー繊維に金属糸を編み込んで作られたHG-41のケブラーESシリーズです。ケブラー繊維の手袋は、普通の軍手より3倍から10倍も耐切創性が高い。丈夫なだけでなく熱にも強いので、鉄工所や板金工場といった現場に最適です」。
  だが、そんな強力な繊維であるケブラーにも弱点がある。それはズバリ、水。水に濡れると、極端に性能が低下するという。逆に、熱には弱いが水に強い繊維も存在する。それが『スペクトラガード』だ。「HG-70シリーズに使われているHGスペクトラ10Gは、ガラス繊維、金属糸、ポリエステルを束ねて作っています。毛利の三本の矢じゃないですが、この三つ合わせると、本当に強靭な素材が出来上がる。水にも強いですから、食品加工や木材、建築関係作業にはこちらの方がおすすめですよ」。
  また、東洋紡で開発された『ダイニーマ』と呼ばれる繊維も頼もしい。「ダイニーマは、耐光性、耐薬品性が特色です。軽量でホコリが出にくいので、精密機器を取り扱う職種に適しています」。なるほど、HG-80で編まれたHGダイニーマ下履き手袋は、薄手で手にぴったりとフィットするので細かい作業がしやすい。厚手の手袋の下に、インナーとして使うにもうってつけだ。
  ケブラー、スペクトラガード、そしてダイニーマ。一口に耐切創手袋といっても、今回登場したシリーズだけでも大まかに分けて3種類。また、同じ繊維でもさらに、糸の加工方法によって異なる機能が生まれる。短い繊維を集めて糸にした『紡績糸』よりも、切らずに長いままの繊維をそのまま使って糸にする『長繊維』の方が、ケバ立ちをおさえる効果が高いので、より細かい作業に向いているという。
  例えば、最初に登場したHG-05ケブラー100シリーズには紡績糸が使われているが、HG-100、101シリーズには、同じケブラーといっても長繊維が使用されており、区別のためにケブラーSDシリーズと呼ばれている。ケブラーSDは細かい手の動きが求められる作業や、静電気の発生を極力抑えたい溶接工場などに向いている。
  高機能繊維が使われた耐切創手袋は、このように繊維の種類、また糸の加工方法の組み合わせによって、ざっと300種類もある。アトムでは様々な現場のニーズに的確に応えるために、耐切創手袋のラインナップを拡大させているから、一つ一つのアイテムを詳しく見ていけば、用途に合わせて、よりきめ細かい使い分けができるだろう。
  インタビューの最後に、今後の製品づくりについてコメントを求めると、北嵐さんはこう答えた。「耐切創手袋は通常の軍手と違い、一般流通に至っていません。その最大の理由は、何といってもコストです。通常タイプの8〜10倍の価格設定なので、一般のお客さまにはなかなか受け入れてもらえない。さらに技術を進歩させて製造コストを下げていけば、ホームセンターなどでも売れるようになると思います。そして、もちろん、専門職の方々にもさらに受け入れられる商品づくりも進めていきたいです。いま最大の課題は、切創の中でも特に『突き刺し』に対応できる手袋を作ること。優れた強度を持つ繊維でも、深い傷になりがちな突き刺しには、今の技術ではまだまだ弱いんです」。
  切り傷、火傷、突き刺し…作業場では、痛い目に遭う危険性が本当に高い。耐切創手袋がどのように身を守ってくれるのか、以下のラインナップにじっくりと目を通して、あなたの現場に最適な商品を探してみてほしい。
 
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様々な耐切創手袋をつけてポーズを取るアトムの皆さん。
 

    

ケブラー繊維に金属糸を編み込んだ、強度抜群の耐切創手袋、HG−41シリーズ

0.05ミリと細い紡績糸を使用しているから、鋼鉄線を編み込みながらも柔らかい手触り。EU規格カットレベルは最高のレベル5。


ケブラー繊維にスベリ止めの天然ゴムシートを貼り付けたHG−11

指先全体を覆う天然ゴム張りで、すべり止め効果アップ。鋭いガラス破片も何のその。がれき処理にも活躍。