【ACEグローブ】業界裏事情のウラを読むimage_maidoya3
あれから4年も経った。業界を取り巻く風景はすっかり変わったようでもあり、本質的には以前のままのようでもある。前回このメーカーを取材したときは、ちょうど業界革手危機のさなか。日本中の革手袋が軒並み値上がりしたうえ、商品の調達そのものが難しかった時期。現場経験の長い読者の皆さんなら、きっと当時の狂乱ぶりを覚えているだろう。いつもの手袋を買いに行ったら、値段が1.5倍になっていた。それどころか、商品そのものが店頭から消えていた。あのとき、まいど屋を、そしてまいど屋を信じて注文してくれた多くの人たちを救ってくれたのがACEグローブ。良質で安価な商品を、それまでと変わらず、ギリギリの値段で供給し続けてくれた。
  取材が4年ぶりになってしまったのにはワケがある。この間、注目すべき新商品だってたくさんあった。取材をためらってしまったのは、逆説的になるが、同社があまりにも献身的にまいど屋をサポートし続けてくれたから。身内のような感情があるメーカーは難しい。記事の公正さが保てないかもしれない。持前の批判精神だって鈍ってしまうかもしれない。
  今回、ACEグローブがまたまた野心的な新商品を多数発表すると聞いた。それも作業服店で扱うにはとんでもなく高額なアイテムもあるという。いいだろう。まいど屋としても挑戦しがいがあるってもんだ。いつまでも好き避けをしている場合じゃない。もうそろそろ、自分を律して、客観的に取材ができるまいど屋になっていい。それに、4年前に取材に応じてくれた小野専務は、今では社長に就任している。当時と現在。いったい何が変わって何が変わらなかったのか。きっと面白い話が聞けるに違いない。久しぶりにお会いする小野社長にたっぷり伺ってみようと思う。
 

ACEグローブ
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本格仕様のウインターバイク
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透湿防水フィルムを内蔵し、多少の雨雪もOK
前回の取材は、リーマンショックの直後。業界全体が原材料の値上がりと品不足に苦しむ中、一人気を吐いていたACEグローブの活躍ぶりを詳報した。その後、いったん落ち着いたかにみえた革手の販売価格だったが、ここにきてまた上昇する気配を見せ始めていると、小野社長は危機感をあらわにする。「中国の人件費がますます上がってきています。特に革手の縫製はアパレルの中でも作業環境が厳しくて、あまり人気がない。じゃ、給料をもっと出せばいいかというと、今もう、これ以上上げたらお客さまに買ってもらえなくなるという限界まできているんです」。募集しても人が来ない。だから生産量が上がらない。なかなか値上げもできず、先行きが見えない。工場経営者の中には、「赤字が続くなら、いっそやめちゃおうかな」という開き直りに近い考えを持つひとが増えているという。
  「じゃ、中国以外の国に出ていけばいいかというと、革手ならではの難しさもあって」。他の東南アジアの国で作るとなると、まず材料の調達が非常に困難。革手の材料となる豚革は、あくまでも食肉の副産物だ。だから、豚肉を消費する国で革手を生産するのが、一番効率がいい。しかし、中国ほど豚肉を消費するところは他にない。そもそも宗教上の理由から豚を食べない国だってある。「中国で革をなめして輸出し、縫製はどこか別の国で、なんてことをしたらコストが合わない。競争力のある価格で原料を安定供給できる場所が中国しかない以上、人件費の上昇を吸収できるような仕組みを作ることが急務なんです。これまでとは発想を変えてね」。そこで小野社長が新たに始めようとしているのが、付加価値の高い商品の開発と生産だ。今まで通り、安価な商品を大量生産することに加えて、高付加価値の商品も並行して作っていく。「中国の経営者になんとか踏みとどまってもらうためには、薄利多売品とは違った、ハイエンドな商品の比率をもっともっと高める必要がある」。
  そこで、ちょうどウチの新製品の話につながるんですけどね、と言って小野社長が取り出したのが、ウインターバイクのシリーズ(型番:AG8000他)だ。従来、ホームセンターに置いてあるようなバイク用手袋は、500円とか600円の安いものが中心。当然、革製ではない。しかし、特に関東圏などでバイク通勤をしている人の中には、もっとグレード感のあるバイク用手袋を探している人が大勢いるという。「じゃあ、バイク専門店ではどうかっていうと、こっちは1万円ちょっとして、愛好家でないとなかなか手が出ない。ウインターバイクシリーズは、一般の人が抵抗感のない価格で、デザインや品質を専門店の商品に限りなく近づけたアイテムなんですよ」。
  価格は5,000円前後を予定しているが、小野社長が言うように機能は専門店のものに引けを取らない。例えば、転んだときの怪我を防いだり、バイクの振動を和らげるために、手のひら部分はしっかりとした補強付き。また、手袋内に搭載した透湿性の防水フィルムは、雨水などの浸入は防ぎながら、グローブ内のムレを逃してくれる。フルスペックのバイク手袋が半額以下で買えるなら、試してみようと思う潜在ユーザーがたくさんいるだろう。
  また、商品企画の発想を変えるという流れの中では、人工皮革手袋の開発も重要だと小野社長は言う。「中国国内でも、人工皮革の技術が進んで、価格も豚革と変わらないくらいまで安く供給できるようになってきました。火に弱いことを除けば、革を凌駕するくらいの耐久性もあって、しかも品質は革のようなブレがない。水洗いでき、手入れがしやすいうえに、使い心地もいい。今後は革手から人工皮革に乗り換えていくユーザーがますます増えていくハズです。例えば、最近リリースしたデュラフォース(型番:AG6490)などは、長年、革手を使っていたお客さまが試しに使ってみて、そのままリピートしてくれるケースが非常に多いと聞きます」。
  安くて良質な従来の革手袋のラインナップに加え、高付加価値アイテムと人工皮革という新たなジャンルにも活路を見出しつつあるACEグローブ。最後に同社が今後、目指していく方向を伺うと、“この品質でこの価格帯はなかったな”と思ってもらえる商品を作り続けていきたいとの答えが返ってきた。「誰も気づかずに見過ごされてきたマーケットをこれからどんどん狙っていきたいと思っているんです。手ごろな価格であれば、皆さんが使ってみたいと思う商品はまだまだたくさんあるハズです。ウチのノウハウを使って、皆さんに喜ばれる商品をもっと出していければいい」。
  業界に再び逆風が吹き荒れようとしている今もますます意気盛ん。今後の同社の動向からはまたしばらく目が離せそうにない。
 
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4色展開の新シリーズ「カワテ」他と小野社長
 

    

水で洗える!手入れがラク!だけど、使い心地と耐久性はカワテ並み!化学繊維と天然革手のイイトコどりをした人工皮革シリーズ

手のひら部分は人工皮革、手の甲部分はポリエステル。だから、しなやかで使いやすい!ソフトな質感で、天然皮革並みの作業性を実現した、いま最も注目されるシリーズ。新製品のデュラフォースは、グリップ力アップで滑りにくい!


ハードワークもへっちゃらのアテ付き床革手

消耗の激しい親指の付け根にアテを付けたタイプ。耐久性バツグンの牛床革手だから、危険物からワーカーの手をしっかり守る!タフな現場でガンガン使い倒すべし!