【寅壱】新作から読み取る寅壱的テーゼの本質image_maidoya3
季節が変わるたびに楽しみにしていることがある。大好きなアーティストの新作アルバム。故郷の友人からの近況報告。そして寅壱がリリースする新作コレクション。新鮮な驚きを期待しながら、心の隅では変わらずにいてほしいと願っている。新しい試みに共感し、それでもどこかに昔と同じ姿を見つけて安心する。本質さえ見失っていなければ、進化した姿はやがて違和感なく従来からのイメージに馴染んでいく。場当たり的にトレンドを追いかけることとはちょっと違う、自らの強い意志を感じる変化。本気のチャレンジには既視感が伴う。初めの驚きは信頼に、それから愛着に、そして安堵に。ああ、ヤツはやっぱりヤツのまんまだ。よかった。
  今シーズンもまいど屋に寅壱のニューアイテムが届いた。テイストはやはり昨年とまた少し違う。いつもの無骨なイメージを敢えて封印した軽妙なデザイン性。都会的なセンスを纏った疾走感。時代に迎合し、軟弱になったわけでは決してない。そこには確かに寅壱らしい骨太な伝統が息づいている。変わらないためには、変わり続けなければならない。そんな言葉を思い出させてくれる、筋の通った新作たち。このインタビューでその魅力に迫ってみようと思う。
 

寅壱
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スタンダードを追求した新商品『2221』シリーズ
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ワーク史上初のスリムカーゴ『9200』シリーズ
「今日は新しい寅壱をたっぷりとお見せしたい」。腕まくりしながらそう切り出したのは、昨年秋に鳶服について語ってくれた営業部の長間武仁(ながまたけひと)主任。前回は見るべき新作がほとんどなく、「寅壱さん、どーしちゃったの?」と、半ば抗議に訪れたのだが、今シーズンは気骨のあるニューコレクションが出ていて、かなり期待が持てる。「ほら、カタログに赤文字で『NEW』とあるでしょ。こっちがスリムカーゴ『9200』で、こっちがワークウェアの『2221』シリーズ。どちらも明確なコンセプトがあって、それをうまく表現できた。それぞれ方向性はまったく違いますが、底辺に流れている考え方は同じなので、おもちゃ箱をひっくり返したような、まとまりのない印象はないはずです。これまで寅壱を敬遠していたひとには、ああこんな寅壱もあるんだと新鮮に映るだろうし、従来のファンの皆さんにもきっと寅壱らしさを感じてもらえる。そんな出来栄えだと思っています」。
  底辺にある考え方?そう問い返すと、長間さんは少し考えてから言葉を選ぶようにゆっくりと答える。「表面に見えている装飾を一枚ずつ引き剥がして行くと、最後に残る核心部分と言ってもいいかもしれません。一つは仕事着として一級品であること。ウチのウェアを着るひとは、ハードな現場仕事をこなしていることが多いですから。耐久性や動きやすさ。彼らの要求する水準以上のものでなければ、寅壱であるとは言えないんです。二つ目は粋であること。ユーザーの皆さんには、寅壱を着ているという高揚感を味わってもらいたい。プライドが高いひとたちの自尊心が満たされるような、洗練された存在感がなければならない。この二つさえクリアになっていれば、どんな切り口のコンセプトでも、寅壱らしい雰囲気は自然と出てくる」。
  自信に満ちた語り口に思わず引き込まれ、インタビューは熱を帯びてくる。この辺で、そろそろ新作の具体的な話を伺おう。まずは「寅壱がワークのスタンダードを極めると、こうなる!」という『2221』シリーズから。「ご覧のように、浮ついた印象が全くない正統派のスタイリングですが、どこかに華がある印象を受けるでしょう?それは何気なく見えるポケットの配置であったり、素材感であったり、カラーリングであったり。とがったデザインを使わずにシャレた雰囲気を出すのは、実は一番難しいんです。その点、このシリーズは非常にうまいこといったと思います。そして当たり前ですが、着心地もいい。一応、年間モノとして出していますが、綿100%の天然素材なので夏でも気持ちよく着られますよ」。
  改めて商品を手にすると、デザインもカラーも本当にシンプル。だが、長間さんが言うように、確かに垢ぬけたイメージを受ける。これほどオーソドックスなスタイルで粋を感じさせるのは、やはり寅壱ならではの技量なのだろう。「長袖ブルゾンはゆったりしていて、丈は長すぎず、短すぎず。裾をシャーリングで軽く絞っているので程よく身体にフィットします。同様に長袖シャツもゆったりめで、羽織ればジャケット代わりとしても使える。カーゴパンツはツータックとノータックの2タイプ。しゃがんだりすると突っ張って動きにくいので、ゆったりと仕上げました」。
  ブルゾン、シャツともに両胸に大きなポケット、袖にはペン差し。もちろんブルゾンにはサイドポケット付き。それら全てがさり気なくそこにある。また、補強のために施すステッチは、いたずらにデザインに走ることなく、あるべき場所にキッチリ施されている。ほどよい色落ち感のあるナチュラルな風貌もいい。洗濯のたびに味のあるクタ感が出て、長く愛着をもって付き合えそうだ。「当社の綿製品はすべて国内製品洗い。丁寧に洗って、自然な色と風合いを出しているんです。カラーはベージュ、コン、グレー、スミグレーの4色ですが、今のところ、コンとベージュがよく出ています」。実直な造りといい、控えめなカラーといい、地に足のついた佇まいが凛として清々しく映る。実力のある仕事人が着れば、この上なくサマになりそうな雰囲気だ。「おかげさまで好評をいただき、会社単位などのまとまった注文が多いようです」と、反響も上々だという。
  続いては、「ワークの世界に一石を投じる意欲作」という『9200』スリムカーゴシリーズ。その名の通りのスリムなカーゴパンツで、太めのシルエットを良しとしてきたワークウェアの常識を覆す可能性を秘めている。「カジュアルでもスーツでもパンツのトレンドはスリム系。ならば現場でも、細身の装いを粋だと感じるひと達が増えてくるはず。そう考えたのが開発のきっかけでした」。
  ただ、ワークウェアには見た目よりも、作業性、端的にいえば動きやすさという重要なテーマがある。そこをどう解決するか。「スレンダーに見せながら動きやすくするために、綿にポリウレタンを2%入れたんです。これで十分なストレッチ性を確保し、激しく動いてもストレスを感じないようにしています。股上の短いローライズですが、動きにムリなくフィットするのでヒップの突っ張り感も抑えられ、足さばきも軽やかです」。
  カラーは渋めのナチュラル系5色。デニムのブルゾンやインナーとの相性も良く、カタログでは「まんまカジュアルじゃん!」というスタイルでモデルたちがコーディネートをキメている。さすがに先駆的な商品とあって、まだ大幅な動きはないそうだが、ブレイクのポテンシャルはかなり高い。
  ワークの分野にまたひとつ、ふたつと新境地を拓いてくれた寅壱のニューアイテムたち。従来の人気定番商品ととともに、改めて以下に紹介しておくのでチェックいただきたい。そして、それぞれが異なる表情を浮かべるコレクションの数々から、必ず同じように寅壱らしさが立ち昇ってくるワケを、読者の皆さんももう一度考えてみてくれたらと思う。
 
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スリムカーゴのバックポケットには気概あるワーカーの証がキラリ
 

    

突き抜けた個性でもスマートに着地する力ワザに脱帽!疾走感のある寅壱イズムに酔いしれる2221シリーズ

ワークウェアのスタンダードを突き詰め、シンプルな中に高い完成度をもったスタイルを提案するNEWシリーズ。パンツはゆったりめのツータックパワーとノータックカーゴの2タイプ。肌触りのいい綿100%の製品洗い。カラー4色。


品格のある表面感とシャープなデザインが好印象!どんなワークシーンもパワフルにこなす実力派、1291シリーズ

人気商品1290の春夏バージョン。洗練されたシンプルデザインに、衿中と袖にパイピングのアクセントがキラリ!パンツはツータック+脇シャーリングで動きやすさもマル。素材はポリエステル65%、綿35%、タフでしなやかなソフトバーバリー。