初めてそれについて聞いたとき、正直に言ってかなり失望した。何かの間違いじゃないかと思い、ワラにもすがる気持ちで電話をかけた。だが、電話の相手は、まいど屋の淡い期待をあざ笑うかのように、あっさりとそれを認める。まるでAKBの新曲で、いつものようにメインボーカルのセンターをチェンジしたとでもいうように。または春になれば必ず大陸から黄砂が飛んでくるでしょうとでもいうように。ああ、それ、間違いじゃないんです。今シーズンから、そうすることに決めました。あまりに淡々とした返事に、困惑は動揺へと変化し、やがて静かな怒りに変わっていった。
数々の革新的なアイデアで業界を驚かせてきたバートル。だが、今回のサプライズは昨日までのようにもろ手を挙げて歓迎できる性質のものではない。まいど屋のような販売店にとっては、否定的な感情に満ちた試みと言わざるを得ない。このレポートを読む前に画面でバートルの商品をチェックした読者の方はおそらくもう気付いたことだろう。ブルゾンやシャツなどの上着類はどれをとっても長袖と半袖が同じ価格になっている。カーゴパンツとスラックスもまったく同じ値段が付いている。業界ではありえない、常識破りのワンプライス政策。既存の半袖上着やスラックスパンツを愛用していたお客さまにとっては、今回の改定で価格が大きく引き上げられ、納得のいかない思いをすることだろう。半袖がどうして長袖と同じ値段なんだ。スラックスがカーゴと同じなのはなぜなんだ。袖とカーゴポケット代はどこに消えた?人気にあぐらをかいて、ユーザーを搾取しようなんて許せない。今まで大好きだったけど、もう信用できない。さよなら。画面の前で、そうつぶやく長年のファンが続出することは目に見えている。
どうしてこんなことになったんだ。裏切られた悲しみに、それでもなお一度は会って真意を聞いてみたい未練が絡み合う。今シーズンもまた、とびきりセンスのいい新作ができたなんて話は今回ばかりは聞きたくない。誰もが納得のいく、筋の通った物語を聞かせてほしい。複雑な想いを胸に、一人広島のバートル本社に乗り込んだ。
数々の革新的なアイデアで業界を驚かせてきたバートル。だが、今回のサプライズは昨日までのようにもろ手を挙げて歓迎できる性質のものではない。まいど屋のような販売店にとっては、否定的な感情に満ちた試みと言わざるを得ない。このレポートを読む前に画面でバートルの商品をチェックした読者の方はおそらくもう気付いたことだろう。ブルゾンやシャツなどの上着類はどれをとっても長袖と半袖が同じ価格になっている。カーゴパンツとスラックスもまったく同じ値段が付いている。業界ではありえない、常識破りのワンプライス政策。既存の半袖上着やスラックスパンツを愛用していたお客さまにとっては、今回の改定で価格が大きく引き上げられ、納得のいかない思いをすることだろう。半袖がどうして長袖と同じ値段なんだ。スラックスがカーゴと同じなのはなぜなんだ。袖とカーゴポケット代はどこに消えた?人気にあぐらをかいて、ユーザーを搾取しようなんて許せない。今まで大好きだったけど、もう信用できない。さよなら。画面の前で、そうつぶやく長年のファンが続出することは目に見えている。
どうしてこんなことになったんだ。裏切られた悲しみに、それでもなお一度は会って真意を聞いてみたい未練が絡み合う。今シーズンもまた、とびきりセンスのいい新作ができたなんて話は今回ばかりは聞きたくない。誰もが納得のいく、筋の通った物語を聞かせてほしい。複雑な想いを胸に、一人広島のバートル本社に乗り込んだ。
バートル
商品同様、センスの良さを感じさせる受付。
お馴染みのこのタグは、高品質・洗練デザインの証。
受け付けで来意を告げると、馴染みの大崎専務が迎えてくれた。企画から営業まで、実質的にバートルの全てを取り仕切るキーマン。冒頭に出てきた電話の相手である。これだけのチカラ技を仕掛けておきながら、だが、目には思ったほど挑戦的な光は宿っていない。それどころか、いつもよりも柔和な印象さえ受ける。「今回の値上げの仕方が腑に落ちないとおっしゃりたいんでしょ。でもですね、これでもかなり善処したんですよ。今からそのいきさつをお話ししますから、腑に落ちる、落ちないのご判断は、それからということで」。大崎専務は穏やかにそう言うと、場所を移して淡々と語り始めた。「値上げの背景には、当然ながら生産コストの上昇と為替の影響があります。バートルの海外生産はベトナム70%、中国とミャンマーで30%。ベトナムでは15年ほど前から品質を大切にしながら現地工場と二人三脚でやってきて、まだまだ成長途中ではありますが、“バートルみたいな品質でモノづくりがしたい”と高評価をいただくまでになりました。ただ、縫製は産業構造の先兵的な存在です。国がある程度発展すると、機械や自動車など高単価な工業製品の生産に移行していく。そうなると同業だけでなく違う産業ともワーカーを取り合うことになります。もちろん、縫製工場はいくらでもありますよ。しかし、値段さえ折り合えばと、工場をどんどん替えていく渡り鳥的な生産はしたくない。品質崩壊を招くのでね。結局、従来からの信頼できる工場で、できる限りコストを削減してやっていくしかない」。
で、どうした?ワンプライスの値上げとどうつながる?簡単にはダマされないぞと疑いの目を向けながら、言葉を待つ。「突破口を開いたのは生産数量です。販売ベースで見ると、長袖と半袖では7対3ぐらい。カーゴとスラックスも7対3ぐらい。そこで交渉したんです。“数量の少ない半袖・スラックスの加工賃をアップする代わりに、大量に作る長袖・カーゴも同じ値段で!”と。これで長袖・カーゴに関しては、通常の値上がり幅を約半分に抑えることができました。ワンプライスにしたのはそういった理由からで、スラックスや半袖だけをお求めのお客さまには申し訳ないですが、バートルを愛してくれる7割のユーザーさんにはいい。決してベストな方法とは言えませんが、ベターな方法であることは確かです」。
工場は効率よく稼働させてナンボの世界。つまり、数がすべて。縫う部分が少なく、ボタンなどの部品も少ない半袖やスラックスを少量作るより、多少手間がかかっても長袖やカーゴを大量に作った方が得策らしい。「バートルの商品は素材やデザイン、品質に非常にこだわっていますが、それと同じくらい、価格設定もアグレッシブです。高品質で恰好がいいモノをできる限り安く提供する。今回やむなく値上げをしましたが、それでも他社製品と比べて値ごろ感が保たれていると思います。いずれにしろ、値上げの是非は、販社さんやユーザーさんが答えを出してくれるでしょう」
よし、わかった。とにもかくにも、ちゃんとした理由のあるワンプライスであること。ユーザーの多い長袖やカーゴの値上げを最小限に抑えたこと。すべてはファンのためだってこと。色々ワケありの価格改定だったってことがよくわかった。なら、もう良しとするしかないじゃん。そんなふうに一人でナットクして一件落着をキメこむと、俄然気になってくるのが新商品。聞きたくない!なんて勢いで言っちゃったけど、やっぱ聞かずには帰れない。すみません、専務。みんな知りたがってるんです。少しばかりお話し願えませんか? まずは涼しいと評判の『7091』シリーズから・・・。
「『7091』シリーズはバートルのクールビズ。素材は校倉構造の日本製ドビークロスで、夏の作業服素材として一般的なT/Cソフトバーバリーと比較すると、通気性は約3倍、吸汗性は約2倍もあります。しかも点接触なのでベトつかず、特にズボンにはいいですよ。価格的にもT/Cソフトバーバリーのボリュームゾーンとさほど変わらず、ちょっとだけ上という程度。なので、どうせ買うなら、こっちの方が断然涼しくていい。まいど屋さんもそんな感じで勧めてくださいね」。ガッテン承知。抜かりありません。ついでに専務の説明に付け加えるなら、このシリーズはJIS T8118適合の制電ウェア。プロユースを想定した高度な仕様だ。そして全アイテムにレディース専用デザインがあるのも注目点。女性ファンが多いバートルならではの心配りだろう。また、上下別色をチョイスすれば、べンダー業、物流業、工場などでオリジナルユニフォームのような着方ができそうだ。
そしてもうひとつ、今シーズンの目玉は、ユニフォームとしてのニットウェアの可能性を広げる意欲作、『413』シリーズ。シャープなシルエットのポロスタイルはカッコよさもさることながら、吸汗速乾、ストレッチ、消臭テープ付きと機能面でも抜きん出た仕上がりだ。「建築土木系、内装など屋内外のハードワーカーはもちろん、運送会社の制服などにもオススメです。素材はスポーツ系の流れを汲んだマイクロ鹿の子ドライメッシュ。前ジップで、脇からウエストにかけてのXラインがシルエットをきれいに見せてくれます。肩のペン差しはスマホも入るマルチポケット仕様。モノが落ちにくく、デザイン的にも美しいです」。熱弁をふるう専務が見せてくれたジップシャツは、確かに世の中に溢れているありきたりのポロシャツとは雰囲気が全く違う。一言で言って、センスがいいのだ。手で触れると、マイクロメッシュのサラサラしたドライ感が心地よい。これを着て仕事をすれば、個人的にも仕事がかなりはかどりそうな気がする。サイズはSSから5Lまで揃っているので、個人はもちろん、イメージアップを考えている大人数の会社のユニフォームとしてうってつけだろう。
常識破りのワンプライスというバートルの悪行を糾弾するつもりだった今回のインタビュー。これまでと違ってぎこちなくスタートしたが、最後にはまたいつものようにバートルマジックに魅了されて終了した。やっぱり、このブランドには人を惹きつける何かがある。確かに値上げをしてしまったが、それでもまだ十分に魅力的な価格水準を保っている。まいど屋も今回だけは目をつぶることにしよう。だから読者の皆さんも、どうか彼らを許してやってほしい。バートルのコレクションが持つ価値は、今もまだ圧倒的に他を引き離しているのは間違いないのだから。
で、どうした?ワンプライスの値上げとどうつながる?簡単にはダマされないぞと疑いの目を向けながら、言葉を待つ。「突破口を開いたのは生産数量です。販売ベースで見ると、長袖と半袖では7対3ぐらい。カーゴとスラックスも7対3ぐらい。そこで交渉したんです。“数量の少ない半袖・スラックスの加工賃をアップする代わりに、大量に作る長袖・カーゴも同じ値段で!”と。これで長袖・カーゴに関しては、通常の値上がり幅を約半分に抑えることができました。ワンプライスにしたのはそういった理由からで、スラックスや半袖だけをお求めのお客さまには申し訳ないですが、バートルを愛してくれる7割のユーザーさんにはいい。決してベストな方法とは言えませんが、ベターな方法であることは確かです」。
工場は効率よく稼働させてナンボの世界。つまり、数がすべて。縫う部分が少なく、ボタンなどの部品も少ない半袖やスラックスを少量作るより、多少手間がかかっても長袖やカーゴを大量に作った方が得策らしい。「バートルの商品は素材やデザイン、品質に非常にこだわっていますが、それと同じくらい、価格設定もアグレッシブです。高品質で恰好がいいモノをできる限り安く提供する。今回やむなく値上げをしましたが、それでも他社製品と比べて値ごろ感が保たれていると思います。いずれにしろ、値上げの是非は、販社さんやユーザーさんが答えを出してくれるでしょう」
よし、わかった。とにもかくにも、ちゃんとした理由のあるワンプライスであること。ユーザーの多い長袖やカーゴの値上げを最小限に抑えたこと。すべてはファンのためだってこと。色々ワケありの価格改定だったってことがよくわかった。なら、もう良しとするしかないじゃん。そんなふうに一人でナットクして一件落着をキメこむと、俄然気になってくるのが新商品。聞きたくない!なんて勢いで言っちゃったけど、やっぱ聞かずには帰れない。すみません、専務。みんな知りたがってるんです。少しばかりお話し願えませんか? まずは涼しいと評判の『7091』シリーズから・・・。
「『7091』シリーズはバートルのクールビズ。素材は校倉構造の日本製ドビークロスで、夏の作業服素材として一般的なT/Cソフトバーバリーと比較すると、通気性は約3倍、吸汗性は約2倍もあります。しかも点接触なのでベトつかず、特にズボンにはいいですよ。価格的にもT/Cソフトバーバリーのボリュームゾーンとさほど変わらず、ちょっとだけ上という程度。なので、どうせ買うなら、こっちの方が断然涼しくていい。まいど屋さんもそんな感じで勧めてくださいね」。ガッテン承知。抜かりありません。ついでに専務の説明に付け加えるなら、このシリーズはJIS T8118適合の制電ウェア。プロユースを想定した高度な仕様だ。そして全アイテムにレディース専用デザインがあるのも注目点。女性ファンが多いバートルならではの心配りだろう。また、上下別色をチョイスすれば、べンダー業、物流業、工場などでオリジナルユニフォームのような着方ができそうだ。
そしてもうひとつ、今シーズンの目玉は、ユニフォームとしてのニットウェアの可能性を広げる意欲作、『413』シリーズ。シャープなシルエットのポロスタイルはカッコよさもさることながら、吸汗速乾、ストレッチ、消臭テープ付きと機能面でも抜きん出た仕上がりだ。「建築土木系、内装など屋内外のハードワーカーはもちろん、運送会社の制服などにもオススメです。素材はスポーツ系の流れを汲んだマイクロ鹿の子ドライメッシュ。前ジップで、脇からウエストにかけてのXラインがシルエットをきれいに見せてくれます。肩のペン差しはスマホも入るマルチポケット仕様。モノが落ちにくく、デザイン的にも美しいです」。熱弁をふるう専務が見せてくれたジップシャツは、確かに世の中に溢れているありきたりのポロシャツとは雰囲気が全く違う。一言で言って、センスがいいのだ。手で触れると、マイクロメッシュのサラサラしたドライ感が心地よい。これを着て仕事をすれば、個人的にも仕事がかなりはかどりそうな気がする。サイズはSSから5Lまで揃っているので、個人はもちろん、イメージアップを考えている大人数の会社のユニフォームとしてうってつけだろう。
常識破りのワンプライスというバートルの悪行を糾弾するつもりだった今回のインタビュー。これまでと違ってぎこちなくスタートしたが、最後にはまたいつものようにバートルマジックに魅了されて終了した。やっぱり、このブランドには人を惹きつける何かがある。確かに値上げをしてしまったが、それでもまだ十分に魅力的な価格水準を保っている。まいど屋も今回だけは目をつぶることにしよう。だから読者の皆さんも、どうか彼らを許してやってほしい。バートルのコレクションが持つ価値は、今もまだ圧倒的に他を引き離しているのは間違いないのだから。
国内でも2ヶ所に工場を構え、年間2万点を製造する。
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あるときはハードに、そしてほのかにセクシーに!本物を知るプロフェッショナルにこそ着てほしい7091シリーズ 吸汗速乾&点接触で超涼しい、校倉構造の国産ドビークロスを使用。腕の上げ下げがスムーズな脇ダイヤカット、背アームノーフォークメッシュ、野帳が入る大型マルチポケット付き。全アイテムで女性専用デザイン採用。ポリエステル85%、綿15%。制電JIS T8118適合。 |
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機能性を追求すると、ウェアはココまで美しくなる!妥協を知らない貪欲さで新たな粋の基準を表現して見せた6101シリーズ 人間工学に基づいた脇45°ダイヤカットと背ノーフォークで最強の動きやすさを実現。素材は洗濯耐久性に優れた日本製T/Cソフトバーバリー(ポリエステル65%、綿35%、帯電防止)。トップスはSS、Sサイズにレディース対応シルエット採用。ボトムではユニセックスパンツと女性専用カーゴも展開。 |
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