「ウチがすずかけさんで選ばれた理由ですか？まずは、代理店さんがうちのブランドを気に入ってくれて、押してくれているから。代理店さんがウチを気に入ってくれているのは、まぁ…営業がいいからでしょうか」。笑いながらそう話すのは、東京営業部第二課長の原さん。確かに、なかなかいい雰囲気の優男だが、本当にそれが理由なのだろうか？「さっきのは冗談ですが、代理店さんが住商モンブランを気に入ってくれているのは本当です。ウチのユニフォームを提案して各病院で評判が良ければ、代理店さんとしても株が上がるし、またリピートしてもらえる。だからウチが気に入っちゃうんです。しかしなぜ病院で評判がいいのか？品質を重視して、つくりが丁寧だからでしょう。それと、在庫が豊富で欠品が少ないところも、喜ばれていますね。それで、代理店さんの中にはうちのカタログひとつで営業に行くところも多いと聞いています」。
  なるほど。品質が良く、デリバリーにも不安が少ない。でも、それだけ？「あとは、対応力でしょうか。すずかけセントラル病院の場合も、SSサイズの方がいるけれど、そのサイズは対応していないパンツを選ばれました。でも、全員が同じパンツを履きたいという希望がありましたので、SSサイズを特注で作りましたしね。ほかの病院でも、例えばアトピーの方がいる場合、できるだけ肌にやさしい素材を提案してオーダーメイドで作ることもあります。お客さまからリクエストがあれば、できるだけご要望に応えてモノづくりができる態勢ができているんです」。
  そうか、対応力かぁ。それって確かに大事かもしれない。特に人数の多い大病院のユニフォームでは。でも、まいど屋でほしいものをすぐに買いたい一般的なユーザーにとって、住商モンブランの魅力は他にももっとある気がする。画面に表示される数あるブランドの中から、思わず住商を選んでしまうような特別な何かが。「まいど屋さんでウチが選ばれる理由ですか？それはこっちが訊きたいんだけど」と笑いながら、原さんはすぐに真顔に戻って話を続ける。「医療用の白衣って、基本スタイルがある程度決まっているため、なかなか個性を出すことが難しいんです。深くこだわらずに作っていたら、どれも同じようなものができてしまう。でも選ぶ側からすれば、それじゃつまらないですよね。基本に忠実なスタイルでも、どうにか少しでも自分の感性とか、イメージにあったものを着たいはずなんです。そんなユーザーさんの気持ちをよくわかっているから、ウチはデザインにも相当こだわります。基本を外れない範囲で、しっかり個性を出していく。新商品を企画する場合は、頭の中で架空のユーザーさんをこしらえます。そしてその人の仕事内容と着用するシーンを具体的にイメージして、この人はこんなデザインが好きだろうなと想像しながら細かいところまで徹底的にデザインを練っていく」。
  そうして出来上がった商品の一つが、すずかけセントラル病院で現在着ているナースジャケット（型番：73-1622）だ。「何年か前に出した商品で、形はいわゆるスタンダードですが、前の裾の部分をダイヤモンドカットにして、キリッとした雰囲気を出しています。イメージした看護婦さんがきびきびと仕事をこなしていくひとだったんですね。それでいて女性らしい華やかさももっている。そんな彼女に似合うようにと袖やポケットのラインにはシャンパンゴールドとラベンダーの2本線を入れました。当時は、なかなか画期的で人気が出ましたね。今ではすっかりうちの定番商品になっています」。確かにネックラインを意識的にあけたダイヤモンドカットの襟元はすっきり感があって凛とした雰囲気を醸し出す。そして明るい2本ラインがそこに優しさと華やぎを添えている。しかも、スポーティな素材を使っているので身体にフィットし、さらに脇を絞っているので、すずかけセントラル病院のナースさん達の間でもスリムに見えると好評だった。
  では4月から新たに採用されたユニフォーム（型番：73-1828）にはどんな特徴があるのだろうか。「すずかけさんの場合、パッと一目見て看護師だと分かるというところを判断の材料にしていました。最終的に選ばれたこの商品は、白にネイビーのストライプで清潔感とキチンと感を表現しています。どうです？いかにも看護師さんに見えるタイプでしょ？アシメトリーな襟元は丸くしているので優しい雰囲気もあって、高齢の患者さんが多いすずかけさんにピッタリですよね」。
  マテリアルには耐久性を考え、ポリエステル85%、綿15%の裏綿ハーフトリコットを採用。伸縮性があり、シワにもなりにくく、肌あたりソフトで着心地もいい。多少肉厚なので、看護師さんが白を着るときに特に気にする透けもない。服が体にまとわりつくのを避けるため、帯電防止機能もついている。これだけでもう十分すずかけセントラル病院側の希望は満たしていたのだが、最後にダメ押しになったのは、胸元のPHS専用ポケットだそう。「看護師さんは常にPHSを持ち歩くことが多い。で、首からかけてポケットに入れておくのですが、ただ入れておくだけでは屈んだときに飛び出してしまう。そこで、軽くPHSをホールドするようなポケットにすることで、逆さまにしてもPHSが落ちないようになっています」。実際にPHSを入れて服をひっくり返してみたが、確かに落ちない。これは、すずかけセントラル病院の看護師さん達にとって非常に便利であろう。
  さて、同病院で最終候補に挙がりながらも、残念ながら採用されなかったCHM301シリーズを最後に取り上げてみたい。ナースさんたちが決定の直前まで迷いに迷ったのもむべなるかなと頷ける、レベルの高いメディカルウェアだ。「見た目は看護服というより、スポーティなTシャツという感じのスクラブです。ジャージ素材で、動きやすさは満点。その点から、看護師さんよりも、介護職やリハビリ、作業療法士の方が着ることの方が多いかもしれません。スクラブは何年か前からテレビの影響もあって、人気が上がってきているスタイルなんです。特に、ネイビーとダークブルーが採用されることが多いですね」。
  脇下部分の通気口でムレにくく、夏場でも快適な着心地。そして当然、帯電防止、防汚加工、透け防止、さらに吸汗速乾機能まで備わっているハイスペック仕様。左胸にはPHS専用ポケットがあり、背中の上の部分にPHSの紐を通すループをつけている。「通常、襟があればPHSの紐がその部分に来るのですが、襟なしの場合、首に当たって擦れたりするので、このループに紐を通すことでそれを避けています」。至れり尽くせりの設計で、機能的に院内業務をこなすには最適なのだが、その分、お値段も少し高め。そこで住商では、機能的にはほぼ同じでリーズナブルな商品も他に用意している。興味がある読者の皆さんのために、このレポートの後で紹介しておこう。
  一通り取材も終わり、ユーザーだけではなく、メーカー側の意識も確認できてホッとしていたところ、別れ際に原さんから読者の皆さん宛てのこんなメッセージを預かった。ユーザーとメーカーの橋渡しをするまいど屋の義務として、ここにしっかりと記しておく。「ウチがいつも大切に思っていることを直接ユーザーの皆さんにお伝えできる機会をいただいてとても感謝しています。金太郎アメになりがちなスタンダードなスタイルに少しでも工夫を加え、皆さんに喜んでいただけるような商品をこれからも作り続けていこうと思っています。そしてもちろん、デリバリーにもこれまで通りのきめ細やかな目配りをしていきたい。白衣はユニフォームだから、継続して着られる病院さんが多いですよね。つまり、ウチは供給側として、継続的に、そして安定的に、同じ商品を作っていく責任がある。なかなか大変ですが、皆さんの期待に応えていこうと思っています」。