【テクノ・オグリ水道】ア・パーフェクト・スコーピオンimage_maidoya3
ヤドクガエル、サンゴヘビ、大スズメバチにベニテングタケ・・・。陸の生物にしろ、海の生物にしろ、毒をもつ生き物は見た目が派手な色をしている場合が多い。俺を襲うと痛い目を見るぞ!触らぬ神に祟りなしだぞ!と言わんばかりに強烈な色彩でアピールしてくる。ただ、そんな有毒生物に擬態して、ちゃっかり自分の身を守っている輩もいるのだが。
  こういった危険生物さながらに、赤のジャンパーに赤いヘルメット、足元はオレンジ色の安全靴と、ド派手な出で立ちで快活に笑う女性が今回の主役、静岡県浜松市の上下水道指定工事業者『テクノ・オグリ水道』の職人、釜田文子(かまだふみこ)さんである。この方、自他ともに認める現場の危険人物らしいが、とにかく明るくてハキハキ、サバサバしていて感じがいい。なので、ここからは「ふみちゃん」と呼ばせていただくことにする。
  ふみちゃんは職人になって5年。それ以前に20年以上にわたってガテン系のキャリアを積んでいて、名刺には二級管工事施工管理技士、給水装置工事主任技術者、下水道排水設備責任技術者の肩書がずらずらと並ぶ。しかも、自宅のコンセントを増やしたいからと、電気工事士の資格まで取ったという。
  そんなふみちゃんはなぜ水道職人になったんだろう?以前はどんな仕事をしていたんだろう?その辺りを含め、仕事のこと、そして、愛用の作業着や用具のことをいろいろ聞いてみちゃいました。
 

テクノ・オグリ水道
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現場で作業するふみちゃん
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資材や工具がいっぱい乗ったトラック
《漏水調査から建物内の配管、書類作成まで幅広くこなす》
  「漏水調査と修理。新築・リフォームでの配管、器具付け。別会社の応援として水道関係の公共工事の書類作成や現場の補佐もします。私、水道本管工事の監督をやっていたことがあるので、そっちは得意なんです。あと、上下水道の申請業務も」。
  水道工事職人・ふみちゃんの守備範囲は幅広い。屋外作業もあれば、屋内作業やデスクワークもある。たとえば、漏水調査では・・・「地面の中の音を聞く音聴棒(おんちょうぼう)っていうのがあって、蛇口類に当てて流れている音を聴くんです。それでも分からない時は外を回って地面を調べる。親方は理論に基づいてこの辺!と見当をつけますが、私はカンに基づいてココ!って。地面にズボッと差して引き抜き、濡れていれば漏水箇所と分かるんです」。
  なかなか楽しそうな仕事である。
 
  《好きなことを追いかけて、やっと辿り着いた職人の道》
  子どもの頃、大工さんになるのが夢だったというふみちゃん。きっかけとなったのは、自宅の新築工事で大工仕事を間近に見たことだ。
  「小学校1年の時です。面白いなぁ!こんなん作れるんだ!大工さんって、すっごいなぁ!って。でも、昔だったから女のひとは大工になれないと言われ、じゃあ、設計士に!って思ったけど、私、勉強が苦手で・・・(笑)」。
  設計士をあきらめ、専門学校のCADドラフト科へ。そこで先生から「オマエ、家なんてちっこいこと言うな。土木は地球が相手。地球をいじくれるんだぜ!」とそそのかされ、すっかりその気になってしまった。
  「測量関係の会社に就職して10年間ずっと現場に出ていました。その後、水道の本管を扱う会社に転職し、現場監督や設計に携わって10年。それでも、やっぱり職人になりたくて、5年前に今の親方に出会い、入れてもらいました」。
 
  《職人になって楽しいこと、つらいこと、女性で良かったこと》
  「屋外にいることが多いので常に発散でき、イライラは少ないですね。あと、大工さんなど職人さんたちが良くしてくれて、甘やかされているってのもあります。たまにお菓子が出ると、これ持ってけや!ってなるし、重い物があると、危ないでな!って大工さんが代わりに運んでくれる(笑)」。
  水道工事の女性職人は、たまに見かける程度。そして、そのほとんどが夫婦で請負っているケースで、ふみちゃんのように従業員として働いている女性はまずいないという。「力仕事は男性のようにできないので、その分、施主さんへの説明などで補っています。男のひとって難しい言葉で説明するじゃないですか。そこを噛み砕いて、わかりやすく、ね。そういうことが元請さんにも喜んでもらえるんです」。
  また、ふみちゃんはこうも話す。「こういう業界はね、女のひとの目線が必要だと思う。鏡の位置(高さ)とか、リモコンに手が届く距離とか、女性だからこそ分かることがあるので、できれば各現場に一人ぐらい女性がいたほうがいい。施主さんへの当たりの良さも含めて」。
  ふみちゃんは自身を危険人物と言っているが、気さくで親しみやすく、寡黙な職人さんたちの愛されキャラとして楽しく仕事をしているように見える。とはいえ、男社会の厳しい現場。つらいことはないのだろうか?
  「強いて言えば寒さ、暑さかな。でも、それも仕事のうちなので」。
 
  《ウェアは基本メンズ。サイズがない!派手な色がない!が悩みのタネ》
  作業着はほとんど男性物を愛用し、メーカーは全く気にしないというふみちゃん。「背が低いから、ここに危険人物いますよ!ってアピールしなきゃならない」とのポリシーのもと、できるだけ派手な色を身に着けるようにしているが、「店に並んでいるのは暗い色ばかり」とこぼす。ふみちゃんのいつもの作業スタイルは、こんな感じだ。
 
  ●ヘルメット
  メーカーはトーヨーセフティー。外で穴掘っている時は被んなきゃならないし、新築現場では汚しちゃうので被らないというように、現場によりけり。個人的な好みで、オレンジ、赤、緑色といった目立つ色を被っています。
 
  ●ウェア
  今着ている赤いジャンパーは、雨が降ってもなかなか水が浸みてこないし、保温性がいいので冬場はよく使っています。ムチウチの後遺症で冷えると頭が痛くなるので、中に薄くて保温性のあるユニクロのウルトラライトダウンを着たりもする。紺のズボンはホームセンターのワゴンセールで買ったもの(笑)。
 
  ●安全靴
  1年ほど前に安全靴を忘れて、現場で骨折して以来、ぜったい履く!ってなりました。でも、店頭にはオシャレな安全靴がなく、あっても24.5cm以上なので買うのに苦労します。このオレンジと、もう1足の黄色はお気に入りですが、通っているお店にサイズがなくて取り寄せました。
 
  ●手袋
  手がかじかんでしまうと作業ができないので、手袋は必需品。工具が滑らないように、指と掌に滑り止めの付いたものを使っています。
 
  《周りに活かされ、現場をやって良かったと思う今日この頃》
  最後に、ふみちゃんにこの仕事に就いて良かったと思うことを尋ねてみた。
  「職人さんの知り合いが増え、ネットワークができたことかな。それも、水道本管をやっていた頃のコネクションがムダなく活かされているんです。ここまで、自分の力で来たわけじゃない。常に周りのみんなに活かされているって、つくづく思います」。
  結局、インタビューではふみちゃんの危険人物的要素は何ひとつ感じ取れなかったのだが、あえて言わせてもらえば、相手が気づかないうちにスッと懐に入り込み、彼女の思うように操られてしまう点なのだろう。親方しかり、現場に居合わせた大工さんしかり。素晴らしいのは、それを嫌味なく自然にできてしまうところ。女性だからと言ってしまえばそれで終わりだが、誰でもできることではない。
  そういえば、こんなことも言っていたっけ・・・
  「あと、現場に出ていいことは、施主さんやご近所さんから野菜とかいっぱいもらえること。去年の秋、野菜の値段が高騰した時も、いただきもので乗り切りました(笑)」。
 
  テクノ・オグリ水道
  〒431-3112静岡県浜松市東区大島町913-1
  TEL:053-545-7737
 
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ふみちゃんの足を守ってくれる安全靴
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目立つヘルメットで存在をアピール

    

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