【藤和】コピー続出のザ・オリジナルimage_maidoya3
この業界にいると、デジャヴ的体験をすることがある。それもレアケースとしてではなく、わりと頻繁に、それこそ確信犯的な意図をもって繰り返される日常の風景として。それはある種の業界的儀式の追体験だ。どこかで見たことがある気がするデザイン。なぜか馴染みのあるインスピレーション。オリジナルは瞬く間に再生産され、業界全体で弄るようにして食い荒らす。誰も見向きもしなくなるまで消費し尽され、無人となった平原に何かの残骸が放置される頃には、原点がどこにあったのかなど、もう覚えている者はいない。斃れて横たわっているそれはどこから来たのか。どんな希望を託され、どのように育まれた生命だったのか。そんな些細な問題に構っているヒマがあったら、いつものように誰かが始めたあのお約束の儀式の果実に、周囲の人間は無節操に貪欲に食らいついておくのが当たり前なのだ。かくして業界には恥じらいもなくデジャヴが氾濫する。もちろんまいど屋も、臆面もなくコピーされてしまう独創性に特別なシンパシーを寄せることもせず、全てを平等に、いやむしろ圧倒的なプロモーションで送り出されてくる後発組の片棒を素知らぬ顔で担いできたという意味において、そうした共犯者のひとりであることは認めなければいけないのだが。
  今回のレポートを企画した出発点には、そんなまいど屋の贖罪意識があった。具体的な例を挙げることはここでは差し控えるが、市場には安易な二番煎じが溢れている。表面をなぞっただけの、思想性が欠落した根無し草が繁殖している。ならば、今更ながらではあるが、良質なワークウェアをお探しの読者の皆さんに、オリジナルの本当の凄味をお伝えしよう。そう、今日のワークウェア業界において、最も犠牲になることが多い原作の故郷は、これからお話しする藤和である。
 

藤和
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新商品のニッカーズカーゴパンツ『5134』
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高耐久ストレッチ「TSハイブリッドコットン」の『3516』
久しぶりに訪れた藤和のショールームは、コンセプトとメッセージ性がいちだんと研ぎ澄まされ、ファッションブランドのアンテナショップのようだった。そんなショールームの中央、最も目を引く場所に新作のメンズニッカーズカーゴパンツ『5134』がディスプレイされている。ふっくらした太モモまわりに対して、膝下はスラリと細く、裾をシューズインしたスタイリングは小気味よい軽快感とハード感が相まって、相当に渋カッコいい。
  解説をしてくれるのは、TS DESIGNの仕掛け人である熱きプロデューサー、藤原専務だ。「鳶のニッカの着用人口は減少傾向にありますが、伝統あるスタイルなので作業服として無くしたくない。そんな想いから新しいニッカのスタイルをストレッチデニム素材で作ったんですよ」。
  近寄って見ると、ふくらはぎの下に部分的にリブ編みが。これでフィット感をよくして、膝下のシルエットをスリムに見せているらしい。膝には刺し子の補強を長めに配し、機能性と共にデザイン性を高めている。
  トップスに何を持ってくるのかは、前回のレポートで詳報した通り、相変わらず自由に決めていいところも藤和流で、一義的にはユーザーの完成に委ねられているという。「何を合わせてもいいのですが、如いて言えば、カラーラボの定番ジャケット『5116』や長袖シャツ『5115』、肩に刺し子を入れた長袖ポロ『5105』なんかがコンセプトが近く、面白いコーディネートができるんじゃないかな。それらのトップスとは素材が違うので、業界一般の言い方ではシリーズ商品とは呼ばないのかもしれませんが」。
  ともあれ、ストレッチデニムのニッカや乗馬ズボンは各メーカーから出ているが、今度のTS DESIGNのニッカは、スタイリングやコーディネートの楽しさの点で頭ひとつ飛び抜けているようだ。美しさと独創性に人一倍思い入れの強い藤原専務らしい、イマジネーション溢れる仕上がりだといっていいだろう。
  さて、ショールームを見渡し、次に目に留まった「無重力」コーナーへ。ここには、TS DESIGN独自の新素材、高耐久ストレッチ「TSハイブリッドコットン」で作った『3516』が解説付きで展示されている。先駆的なウェアを展開する藤和は、このモデルで素材までもオリジナルにこだわったのだ。「軽量ストレッチの『無重力』シリーズには、これまでポリエステル100%のラインナップしかなかったので、新たに無重力コットンを出しました。一般的な綿ストレッチにはポリウレタンが混紡されていますが、劣化しやすいので時間が経つとストレッチ性が低下したり、膝が抜けたりすることがある。そこで半永久的にストレッチ性が続く素材をと、生地メーカーと共同で開発を進め、2年かけてやっと完成したんです」。
  伸縮性のあるポリエステル糸を芯にして外側を綿糸で覆った糸で織り上げられているため、ストレッチ性がありながら肌当たりは綿100%そのものだと言っていい。そうした着心地のよさに加え、デザイン的にも藤和ならではの、あの夢見るような感受性、説得力のある思想性がますます強まり、ファンにはほとんど完璧とも思えるほどの出来栄えなのだ。ジャケット『3516』はハード感あるフロントファスナーや胸ポケットファスナーを効かせたシンプルでスタイリッシュなフロントフェイス。カーゴはメンズ『3514』もレディース『35141』も立ち姿のシルエットにこだわり抜いた美脚ライン。カラーが5色揃ってオールシーズン着用できるのもうれしい。
  続いては色から入ってアイテムを選ぶ「COLOR LAB」のコーナーへ。8色のカラーそれぞれに素材やデザインの異なるアイテムが揃っていて、素材に関しては、ポリエステル65%、綿35%の「BASIC」、綿100%とストレッチデニムの「TOUGH」、導電繊維を混紡した制電仕様の「ACTIVE」と、3つのカテゴリーから選ぶことができる。「この色が気に入ったけど、素材はこっちのほうがいいよね!という場合の選択肢が広がるシリーズです。7~8年かけて毎年アイテムを増やし、今ではブルゾン、シャツ、パンツ、ニット、防寒や1枚もののジャンパーまで。それでも、未だポロシャツタイプの制電がなかったので、今シーズンから新たに加えました」。
  それが、ESワークニットポロシャツ『81305』(長袖)と『81355』(半袖)だ。「従来のシャツに代わるものとして着ていただけるよう、トリコットという、ニットと布帛の間のような素材を使いました。布帛のシャツのようにキチンと見えて、毛玉ができにくいのが特徴です」。
  今シーズンは制電仕様の長袖シャツ『8105』もデビューしたが、これと見比べてもそんなに印象は違わないので、同じ職場で、素材違いで着てもいい。
  そして最後は、冬の汗冷え対策に超オススメという、メッシュアンダー、TSドライ『8050』(ノースリーブ)、『8055』(ショートスリーブ)のコーナーへ。「メッシュというと夏のイメージがありますが、冬こそ着ていただきたい。着れば、その凄さがわかります!」
  実際に『8050』の裏側(肌側)に水をかけ、その後で触らせてもらって初めて藤原専務の言っている意味が理解できた。驚いたことに、ウェアは何事もなかったかのようにサラサラなのだ。「でしょ?疎水性のあるポリプロピレンが汗を裏から表に吸い上げて、トップスやニットに吸収させるので、汗戻りせず、肌側が常にドライなんです。これを着れば、汗冷えして体調を崩すなんてこともありません」。
 
  これまでの既成概念にとらわれず、数々の「非常識」を提案してきた藤和イズムは、今日、業界の新たなスタンダードになりつつある。デザイン、着こなしの自由な発想。突飛に見えたささやかな試みは、今、奔流となって古い考え方を飲みこみ始めている。「私たちの商品には従来にはない考え方が含まれていることが多いので、分かりにくいと思われることもありますが」と、9年前の2008年、自身が中心になってオリジナルブランド『TS DESIGN』を立ち上げた藤原専務は言う。「でも、どうか難しく考えずに、着るひと本人が思った通りに、楽しんで着用してもらえれば。自分が心地よい着こなしができれば、それがそのひとにとっての正しいTS DESIGNになるんです」。そしてこう言ってインタビューを締めくくってくれた。「もっといいものを作ろうと、去年よりは今年、今年よりは来年と思ってやってきた。そうした積み重ねが評価されてきているのかなと思います。これからも立ち止まらず、まずは10周年に向けて次の挑戦を始めますので、どうかお楽しみに」。
 
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制電ポロシャツ『81305』と制電長袖シャツ『8105』
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冬場の汗冷えを防ぐTSドライ『8050』

    

進撃の美形アスリートが現場仕事を一新する!ソフトなナチュラル素材にかつてない運動性能をプラスしたハイブリッドコットンシリーズ

あの『無重力』シリーズから、綿100%の風合いを持つ高耐久ストレッチ素材がデビュー。伸縮性に優れたポリエステル糸と綿糸の二層構造糸で織り上げた生地は、半永久的にストレッチ性が続いて、膝抜けなどのリスクを軽減。シンプルかつスタイリッシュなデザインのジャケットは、両胸大容量ポケット付き。SS、Sサイズはレディースシルエット。カーゴはウエストストレッチ。カラー5色。いずれもオールシーズン着用可。


デザインセンスに自信あり!動きやすさに妥協なし!ハードワークに美意識を持ち込む粋な仕事人にオススメしたいACTIVEシリーズ

多彩なカラーによるコーディネートの楽しさ、選びやすさに、JIS T-8118適合の制電性能をプラス。ジャケット、パンツはストレッチ性、形態安定性に優れた裏綿ツイル。長袖シャツは、裏綿のストレッチエアーリップ。ポロシャツは、キチンと感があって毛玉のできにくいニット素材のトリコット。カラー6色。パンツのみ4色。男女ユニセックス仕様。