安全スニーカーの話を求めて、次に向かったのはさいたま市のミズノ営業所。埼玉新都市交通(ニューシャトル)加茂宮駅から歩いて10分ほどにある。
30代の筆者にとってミズノといえば「野球」のイメージである。最近は、よく登山やアウトドア用のレインウェアを売っているのを見るので、「へぇー、スポーツだけじゃなくレジャーにも参入してるんだ」くらいに思っていた。しかし、先芯の入った作業用の安全スニーカーまで作っているとは……、いや驚いた。
だが、それも当然かもしれない。ミズノは産業用シューズに参入して今年でまだ3年目なのである。
"ザ・スポーツ企業"な同社にとって、作業靴というのは一体どんな位置づけなのか、公式ホームページをチェックしてみると、ちゃんと「ワーキング」のカテゴリがある。その中には作業靴だけでなく、なんとワークウェアやユニフォームまであるではないか! ドンケルで聞いた「スポーツ系メーカーの参入」は、作業靴だけの話ではないのである。
大手スポーツ企業が安全スニーカーをつくることに対しては正直、「そこまでしなくても」という気もする。しかし、野球やゴルフから、ランニング、登山までカバーしてきた同社が、その技術力を注いだ産業用シューズというのは、なかなか興味を掻き立てられる。しかもユーザーからの評判もいいというからなおさらだ。
と、いろいろ考えているうちに営業所に着いた。
さあ、突如として安全スニーカー界に現れた新勢力「ミズノ」の実力を見せてもらおう!
30代の筆者にとってミズノといえば「野球」のイメージである。最近は、よく登山やアウトドア用のレインウェアを売っているのを見るので、「へぇー、スポーツだけじゃなくレジャーにも参入してるんだ」くらいに思っていた。しかし、先芯の入った作業用の安全スニーカーまで作っているとは……、いや驚いた。
だが、それも当然かもしれない。ミズノは産業用シューズに参入して今年でまだ3年目なのである。
"ザ・スポーツ企業"な同社にとって、作業靴というのは一体どんな位置づけなのか、公式ホームページをチェックしてみると、ちゃんと「ワーキング」のカテゴリがある。その中には作業靴だけでなく、なんとワークウェアやユニフォームまであるではないか! ドンケルで聞いた「スポーツ系メーカーの参入」は、作業靴だけの話ではないのである。
大手スポーツ企業が安全スニーカーをつくることに対しては正直、「そこまでしなくても」という気もする。しかし、野球やゴルフから、ランニング、登山までカバーしてきた同社が、その技術力を注いだ産業用シューズというのは、なかなか興味を掻き立てられる。しかもユーザーからの評判もいいというからなおさらだ。
と、いろいろ考えているうちに営業所に着いた。
さあ、突如として安全スニーカー界に現れた新勢力「ミズノ」の実力を見せてもらおう!
ミズノ
営業開発課の林稔さん
新製品のミッドカットタイプ「C1GA1802」(手前)と旧モデル
●「フィット感ならミズノ」の声
新商品の話を聞かせてくれたのは、ミズノ営業本部 関越支社・営業開発課の林稔さん。「大きく顔出しするのはちょっと……」ということだったので、新商品ディスプレイと一緒に写真を1枚撮らせてもらった。この1月発売の新商品が「かなり売れてます」というだけあって、自然と顔もニコニコである。
とりあえず新製品の前にミズノが展開する安全スニーカーの特徴を教えてもらった。
まず押さえておくべきポイントは、全商品がJSAA規格の「A種」であることだ。スポーティーな見た目によらず安全性は高いといえる。
そんな高規格なプロテクションに加えて、ミズノが重視しているのは、①履き心地②耐久性③安全性の3点。さらに、この中でもっとも林さんの話に熱がこもるのが「履き心地」だ。
安全スニーカーは、つま先が潰されないようにするためにカップ状の「先芯」を入れなければならない。これはいわば「ギブス」のようなもので、普通に考えれば「快適」とはほど遠いものである。それでも、ミズノはスポーツシューズの技術で、スニーカーに劣らない履き心地を実現させようとしている。
シューズは全体的に肉厚で、足を包み込むような感じ。足の甲に当たるベロ部分は一部凹んでミゾになっていて、蒸れを逃がすようになっている。履き心地を損なう最も大きい要因である先芯には、内部で布を当てているので、しゃがんでも足に先芯の角が当たらない。ソールなどの曲がりやすさもスニーカーと同程度という。
履き心地の良さは「疲れにくさ」にもつながっている、と林さんは説明する。
「うちの靴の全体的な特徴は、足を包み込むフィット感です。靴はゆるめの方がラクだと思っている人も多いのですが、実はしっかりフィット感があるほうが、体を動かすときも安定するからラクなんですよ。それに靴も軽く感じます。もちろん好みもあるので、販売店では、見た目やクッション性など、お客さんが重視するポイントを聞いて『フィット感を求めるならミズノ』とアピールしてくれているようです」
そんな安全スニーカーのブランド名は「オールマイティー」。「ミズノ」の看板と洗練されたデザインもあって、見た目の説得力は充分だ。
●新製品ミッドカットが早くもヒット
ただ、安全スニーカーの世界では、2016年参入のミズノは新興勢力である。同じスポーツ系でもアシックスは1999年からで、市場での差は大きい。安全スニーカーは普通の靴と違ってリピート購入が多いため、ユーザーにとってかなり大きなメリットがないと「乗り換え」させることはできない。
そこで新製品、2018年春夏モデルの出番となるわけだ。
林さんのイチオシは「オールマイティ LS ミッドカットタイプ」。最大の特徴はその軽さで、片足あたり390g(26cmの場合)と、旧モデル(C1GA1602)から20g軽くなった。くるぶしまでカバーするミッドカットは重いイメージがあったが、実際に手に持ってみると想像していたよりはるかに軽い。
カラーはグレー系・青系・赤系の3タイプ。すべて迷彩のような透かしの柄が入っており、どことなく品のいい印象で、マジックテープなのに安っぽさがない。グレー系のみ22.5cmからのサイズ展開となっており、女性のニーズに応えている。
発売から今まで、手ごたえの方はどうなのだろうか。
「1月に発売したばかりですけれど、かなり売れて……いや、もうヒットしてると言っていいですね。旧モデルも評判はよかったのですが、こっち(新モデル)の方がずっとウケてます」(林さん)
ユーザーの「次も同じ靴がほしい」といった声を考えると旧モデルも売り続けたいところだが、新モデルの評価が高い場合は、やや悩ましい。林さんは「ひとつのモデルにつき4、5年は売り続けたいんですが……。旧モデルをリニューアルする可能性もありますね」とこぼす。このあたり、ワークシューズ特有の事情が見えて面白い。
主力のミッドカットモデルに続いて見せてもらったのは、幅広タイプの「オールマイティ FF」、防水タイプの「オールマイティ WF」、帯電防止タイプの「オールマイティ AS」の3つである。
足幅が広い人向けという「オールマイティ FF」の横幅サイズ規格は「EEEE」。ミズノでは運動靴はEE、安全スニーカーはEEEをベースにしており、同モデルは最も幅広である。ただ「ゆったりしててラク」というのではなく「幅広でもフィット感を失わないようにした」というのが同社らしい。ミッドソールの内部、かかとが乗る部分には「セル構造」のクッション素材を入れており、長時間履いても疲れにくいという。デザイン面では立体的な柄が入っているのが特徴となっている。
続いて、防水タイプの「オールマイティ WF」は、同社のゴルフ用シューズなどの技術を使った全天候モデル。深さ4cmの水たまりに2時間入ってもシューズの内部に水の侵入がないという防水性能をウリにしている。こちらも幅広タイプと同じ「セル構造」のミッドソールを採用した。
そして3つ目の「オールマイティ AS」は工場などで使われることを想定した帯電防止タイプ。静電気を地面に逃がす設計のため、プラントや電気設備などを動かす現場に適しているほか、近年は電気自動車の開発現場などでも重宝されているという。パッと見て帯電防止モデル靴だとわかるよう、特徴的なデザインとなっている。
今期は前述のミッドカットに加えて、これら幅広・防水・帯電防止が特徴の3モデル、さらに黒を指定される現場用として、従来のローカットの「オールマイティ LS」にブラック系のニューカラーを追加した。
職種別にワーキングシューズに求められるものをくみ取り、スポーツシューズで培った技術とデザイン力でカタチにする――。非常に"ソツのない布陣"という印象だ。
●価格を抑えつつライバルの座を狙う
ミッドカットがウケている理由はスポーツシューズのような軽さとデザイン――と聞けば、当然、気になってくるのが先行するアシックス製品との競合である。そのあたりの感覚はどうなのだろうか。
「売れている理由としては価格も大きいでしょう。たとえば、新発売のミッドカットモデルの参考小売り価格は8300円と、かなり『お求めやすい』。アシックスさんのミッドカットモデルだと1万円近くしたりしますからね。『価格は抑えて品質保持』というのがうちの基本方針なんです」(林さん)
同社が問屋を通さず直販しているのも「価格を安定させて、ほぼどこでも同じ値段で買えるようにしたい」(同)とのことだった(ちなみに3月現在、まいど屋で扱っているアシックスのミッドカットモデルの中には割引価格で8300円以下のものもある)。
この話からも分かるように、同社の価格へのこだわりは強い。というのも、やはりユーザーにとって作業靴は消耗品であり、買い替えていくものだからだ。
「耐久性について、現場ではよく『3000円の靴なら3カ月持つ、6000円なら6カ月』と言ったりするそうです。しかし、ミズノならその計算よりずっと長持ちするよ、と。ただ、それでも最終的には『買い替え』が必要になってくるわけで、やはりそのときの出費をなるべく抑えたい、というのがお客さんの声だと思っています」(同)
安全スニーカーをもっと高機能にするなら、アスリート用シューズに使われている独自のソール技術「MIZUNO WAVE」を採り入れる、といった方向性も考えられるだろう。ただそれでは、間違いなく高級品になってしまう。今回の新商品にはクッション性を高める「セル構造」が内蔵されているが、これも「コストパフォーマンスの面で有利」という判断があるようだ。
オールマイティーシリーズは、一見すると「スポーツメーカーが作ったカッコよくて運動性の高い安全スニーカー」だ。しかし、話を聞くと、商品展開においてミズノがスペックと価格の「ちょうどいい塩梅」を目指していることがよくわかる。
「品質的にはイイのがほしいけれど、あまり高すぎるのはちょっと……」というユーザーの声があるのは事実。ミズノは、そんな"痒い所"に手が届く商品で、先行メーカーの座をうかがっている。
新商品の話を聞かせてくれたのは、ミズノ営業本部 関越支社・営業開発課の林稔さん。「大きく顔出しするのはちょっと……」ということだったので、新商品ディスプレイと一緒に写真を1枚撮らせてもらった。この1月発売の新商品が「かなり売れてます」というだけあって、自然と顔もニコニコである。
とりあえず新製品の前にミズノが展開する安全スニーカーの特徴を教えてもらった。
まず押さえておくべきポイントは、全商品がJSAA規格の「A種」であることだ。スポーティーな見た目によらず安全性は高いといえる。
そんな高規格なプロテクションに加えて、ミズノが重視しているのは、①履き心地②耐久性③安全性の3点。さらに、この中でもっとも林さんの話に熱がこもるのが「履き心地」だ。
安全スニーカーは、つま先が潰されないようにするためにカップ状の「先芯」を入れなければならない。これはいわば「ギブス」のようなもので、普通に考えれば「快適」とはほど遠いものである。それでも、ミズノはスポーツシューズの技術で、スニーカーに劣らない履き心地を実現させようとしている。
シューズは全体的に肉厚で、足を包み込むような感じ。足の甲に当たるベロ部分は一部凹んでミゾになっていて、蒸れを逃がすようになっている。履き心地を損なう最も大きい要因である先芯には、内部で布を当てているので、しゃがんでも足に先芯の角が当たらない。ソールなどの曲がりやすさもスニーカーと同程度という。
履き心地の良さは「疲れにくさ」にもつながっている、と林さんは説明する。
「うちの靴の全体的な特徴は、足を包み込むフィット感です。靴はゆるめの方がラクだと思っている人も多いのですが、実はしっかりフィット感があるほうが、体を動かすときも安定するからラクなんですよ。それに靴も軽く感じます。もちろん好みもあるので、販売店では、見た目やクッション性など、お客さんが重視するポイントを聞いて『フィット感を求めるならミズノ』とアピールしてくれているようです」
そんな安全スニーカーのブランド名は「オールマイティー」。「ミズノ」の看板と洗練されたデザインもあって、見た目の説得力は充分だ。
●新製品ミッドカットが早くもヒット
ただ、安全スニーカーの世界では、2016年参入のミズノは新興勢力である。同じスポーツ系でもアシックスは1999年からで、市場での差は大きい。安全スニーカーは普通の靴と違ってリピート購入が多いため、ユーザーにとってかなり大きなメリットがないと「乗り換え」させることはできない。
そこで新製品、2018年春夏モデルの出番となるわけだ。
林さんのイチオシは「オールマイティ LS ミッドカットタイプ」。最大の特徴はその軽さで、片足あたり390g(26cmの場合)と、旧モデル(C1GA1602)から20g軽くなった。くるぶしまでカバーするミッドカットは重いイメージがあったが、実際に手に持ってみると想像していたよりはるかに軽い。
カラーはグレー系・青系・赤系の3タイプ。すべて迷彩のような透かしの柄が入っており、どことなく品のいい印象で、マジックテープなのに安っぽさがない。グレー系のみ22.5cmからのサイズ展開となっており、女性のニーズに応えている。
発売から今まで、手ごたえの方はどうなのだろうか。
「1月に発売したばかりですけれど、かなり売れて……いや、もうヒットしてると言っていいですね。旧モデルも評判はよかったのですが、こっち(新モデル)の方がずっとウケてます」(林さん)
ユーザーの「次も同じ靴がほしい」といった声を考えると旧モデルも売り続けたいところだが、新モデルの評価が高い場合は、やや悩ましい。林さんは「ひとつのモデルにつき4、5年は売り続けたいんですが……。旧モデルをリニューアルする可能性もありますね」とこぼす。このあたり、ワークシューズ特有の事情が見えて面白い。
主力のミッドカットモデルに続いて見せてもらったのは、幅広タイプの「オールマイティ FF」、防水タイプの「オールマイティ WF」、帯電防止タイプの「オールマイティ AS」の3つである。
足幅が広い人向けという「オールマイティ FF」の横幅サイズ規格は「EEEE」。ミズノでは運動靴はEE、安全スニーカーはEEEをベースにしており、同モデルは最も幅広である。ただ「ゆったりしててラク」というのではなく「幅広でもフィット感を失わないようにした」というのが同社らしい。ミッドソールの内部、かかとが乗る部分には「セル構造」のクッション素材を入れており、長時間履いても疲れにくいという。デザイン面では立体的な柄が入っているのが特徴となっている。
続いて、防水タイプの「オールマイティ WF」は、同社のゴルフ用シューズなどの技術を使った全天候モデル。深さ4cmの水たまりに2時間入ってもシューズの内部に水の侵入がないという防水性能をウリにしている。こちらも幅広タイプと同じ「セル構造」のミッドソールを採用した。
そして3つ目の「オールマイティ AS」は工場などで使われることを想定した帯電防止タイプ。静電気を地面に逃がす設計のため、プラントや電気設備などを動かす現場に適しているほか、近年は電気自動車の開発現場などでも重宝されているという。パッと見て帯電防止モデル靴だとわかるよう、特徴的なデザインとなっている。
今期は前述のミッドカットに加えて、これら幅広・防水・帯電防止が特徴の3モデル、さらに黒を指定される現場用として、従来のローカットの「オールマイティ LS」にブラック系のニューカラーを追加した。
職種別にワーキングシューズに求められるものをくみ取り、スポーツシューズで培った技術とデザイン力でカタチにする――。非常に"ソツのない布陣"という印象だ。
●価格を抑えつつライバルの座を狙う
ミッドカットがウケている理由はスポーツシューズのような軽さとデザイン――と聞けば、当然、気になってくるのが先行するアシックス製品との競合である。そのあたりの感覚はどうなのだろうか。
「売れている理由としては価格も大きいでしょう。たとえば、新発売のミッドカットモデルの参考小売り価格は8300円と、かなり『お求めやすい』。アシックスさんのミッドカットモデルだと1万円近くしたりしますからね。『価格は抑えて品質保持』というのがうちの基本方針なんです」(林さん)
同社が問屋を通さず直販しているのも「価格を安定させて、ほぼどこでも同じ値段で買えるようにしたい」(同)とのことだった(ちなみに3月現在、まいど屋で扱っているアシックスのミッドカットモデルの中には割引価格で8300円以下のものもある)。
この話からも分かるように、同社の価格へのこだわりは強い。というのも、やはりユーザーにとって作業靴は消耗品であり、買い替えていくものだからだ。
「耐久性について、現場ではよく『3000円の靴なら3カ月持つ、6000円なら6カ月』と言ったりするそうです。しかし、ミズノならその計算よりずっと長持ちするよ、と。ただ、それでも最終的には『買い替え』が必要になってくるわけで、やはりそのときの出費をなるべく抑えたい、というのがお客さんの声だと思っています」(同)
安全スニーカーをもっと高機能にするなら、アスリート用シューズに使われている独自のソール技術「MIZUNO WAVE」を採り入れる、といった方向性も考えられるだろう。ただそれでは、間違いなく高級品になってしまう。今回の新商品にはクッション性を高める「セル構造」が内蔵されているが、これも「コストパフォーマンスの面で有利」という判断があるようだ。
オールマイティーシリーズは、一見すると「スポーツメーカーが作ったカッコよくて運動性の高い安全スニーカー」だ。しかし、話を聞くと、商品展開においてミズノがスペックと価格の「ちょうどいい塩梅」を目指していることがよくわかる。
「品質的にはイイのがほしいけれど、あまり高すぎるのはちょっと……」というユーザーの声があるのは事実。ミズノは、そんな"痒い所"に手が届く商品で、先行メーカーの座をうかがっている。
幅広タイプ「C1GA1801」
|
防水モデル「C1GA1800」
|
さらばパチパチ! さらばツルツル!電子系製造業は「耐滑+帯電防止」のコレに決まり 体にたまった静電気を床から逃がす「帯電防止タイプ」の安全スニーカー。片足で360g(26cmの場合)の軽さが作業の疲れを軽減する。独特の風合いを持つ合皮のデザインは白黒2タイプで展開。女性や小柄な人でもOKな22.5cmからのサイズ展開もうれしい。JSAA「A種」認定合格品。 |
|