【自重堂】夢の「空調服タッグ」誕生!image_maidoya3
自重堂の空調服――。
   こうキッパリ言い切れるって、ああ、なんて気持ちいいんだろう……。※印もカギカッコも要らない。なんせこれは本物の空調服。正真正銘のまごうことなき空調服なのだから。
   そう、2018年の新商品として自重堂は空調服を発売した。共同開発したのは(株)空調服。つまりファンやバッテリーといった(株)空調服の製品を組み込んだ「自重堂の空調服」というわけである。
   補足説明しておくと、巷では猛暑対策のファン付きウェアのことはすべて「空調服」と呼ばれているが、じつは「空調服」という名称は(株)空調服の商標である。だから(株)空調服ではないメーカーの製品を空調服と呼ぶのは間違いであって、ショップが「空調服」として売っているのは、ハァハァ……も、もうやめておこう。
   とにかく、自重堂は(株)空調服とタッグを組んだ。自重堂の空調服は(株)空調服。つまり、数々のファン付きウェア開発メーカーの中で、業界最大手が味方に付いたのだ。このことは(株)空調服にとってかなりの追い風と言えるだろう。
   今回、月刊まいど屋では、自重堂の空調服のセールスポインに加えて「なぜ(株)空調服と組んだのか」にも踏み込んで関係者に取材を試みた。
   残念ながら、レポートでは「謎の取材源」による証言となってしまったものの、“ファン付きウェア業界”の勢力争いについて、興味深い話を聞くことができた。
 

自重堂
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スタンダードタイプは「Jichodo」ブランドで展開
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清涼効果を高めるため、かなり膨らむ
●決め手は「ノークレーム」
 
  「さぁ、なんでも聞いてください」
   まいど屋のミーティングスペース。ゆっくりと腰を下ろすと、取材源の男はプレゼンテーションを思わせる爽やかな声で語りだした。
 
  ――じゃあ、いちばん大事なことからお聞きします。なんで自重堂は「空調服」を選んだのでしょう? ごぞんじの通りファン付きウェアの世界は、
  1:(株)空調服の「空調服」
  2:(株)サンエスの「空調風神服」
  3:その他メーカーが独自開発した空調ウェア
   といった“陣営”に分かれてシェア争いが繰り広げられています。その中で、ユニフォーム業界最大手の自重堂なら独自開発もできただろうし、他の会社と組む手もあったわけですよね? 一体なぜ「空調服」なんですか?
 
  「なるほど、疑問を持たれるのももっともです。しかし、これは非常にシンプルな話なんですよ。まず『空調服』は(株)空調服の親会社が特許を持っている。だから、いくら同じようなものができそうだからといって作って売るのは危険だ、訴訟問題になりかねない、と。自重堂にはこういう判断があったわけです。実際に提訴されている会社もありますから」
 
  ――ファン付きウェアの商売をやろうとしたら「どこかと組む」しかない、と?
 
  「そうです。実質的には問題の起きない会社と一緒にやるしかなかった。もちろん各メーカーのファンやバッテリーの性能を比較したりしましたけれど、最終的に空調服を選ぶ決め手になったのは、クレーム問題がなかったことです。ファン付きウェアの場合はとくに『ただ売れればいい』というものではないんです。メーカーとしては、エンドユーザーからクレームが来る事態だけは何としても避けたい。お客さんに迷惑をかけないためにも『空調服』がベストだろう、というわけです」
 
  ――空調服のファンやバッテリーに関して、性能面の強みはなんですか?
 
  「他のメーカーと比較してハッキリいいと言えるのはバッテリーですね。2018年の新モデルから空調服のバッテリーはJIS規格の完全防水になりました。雨を気にしなくていいというのは大きな利点だと思います。さらに今年はファンの取り外しもやりやすくなっています」
 
  ――ところで、自重堂は2017年にもマキタ製電動工具のバッテリーで動くファン付きウェア「エアコンジャケット」を発売していますね。なぜ今ごろになって? という感じもするのですが……。
 
  「決してエアコンジャケットがダメだから空調服にする、という話じゃないんです。あれはあれで電動工具のバッテリーをたくさん持っている人なんかにいい商品なので、今年も引き続き販売します。ただ一方で、さらに猛暑対策ウェアを展開するためには他の提案もほしい。そこで『空調服』ユニットを取り付けるウェアを自重堂がデザインし『Z-DRAGON』ブランドを筆頭として売り出したわけです」
 
   Z-DRAGONとは、新庄剛志さんでおなじみの「Jawin」に次ぐ自重堂のカジュアル路線ブランド。ハイスペックなJawinに対して、価格を抑え目にし、手を出しやすくしているのが特色だ。今回の空調服はこの「Z-DRAGON」と「Jichodo」の2ブランドで展開する。
   特徴的な見た目だったエアコンジャケットに対し、今回のモデルは背中に二つファンが付いた「よく見かけるタイプ」。これなら現場はもちろん、街中で身につけていてもそれほど違和感はないだろう。
 
  ●空調服のユニフォーム化?
 
   再びインタビューに戻ろう。
 
  ――今回の自重堂カタログには、(株)空調服の製品も載っていますね。ファンやバッテリーだけでなく、ウェアも(株)空調服がデザインしたモデル(型番に「KU」が付く)です。これらと「自重堂の空調服」は、どう住み分けられるのでしょうか?
 
  「まずZ-DRAGONは、空調服にスタイリッシュなデザインを持ってきたのがウリですね。すでに空調服のユニットを持っている人なら、このウェアだけ買って取り付ければカッコよく着こなしできます」
 
  ――バッテリー・ファン・ウェアの空調服セットに限らず「穴の開いたウェア」だけでも売るんですね。
 
  「そうです、そして――ここからが重要なんですけど、たとえばこのZ-DRAGONの綿100%空調服(型番74000)は、じつは「型番75200」の作業服とデザインも素材もまったく同じなんです。既存の作業服75200に穴を二つあけたのが74000、と。さらに言えば秋冬物の型番71200とも同型。同様にポリエステル65%・綿35%の空調服(型番74010)も、夏用の75000、通年用の71000と共通デザインです。じつはこれが今回のミソなんですよ」
 
  ――空調服と作業服の見た目を同じにできる?
 
  「その通り。現場のユニフォームとして採用する場合など、空調服も含めてウェアを統一できるわけです。屋外作業の多い人はファン付き、そうでない人はファンなし、と。対応するパンツもありますから、上下セットでそろえた作業服に必要な人だけファンとバッテリーを付ける、といったことができる。こういう仕掛けもあって、今年はウェア単体でもけっこう売れるんじゃないかと見ています」
 
   空調服は価格の問題もあって、なかなかすぐ「現場に一斉導入」というわけにはいかない。しかし、職場で決めたユニフォームのバリエーションとして「空調(ファンが取り付けられる)タイプもあり」といった形にできれば、空調服は夏用のウェアとしてさらに普及しやすくなるのではないだろうか。
 
  ●コモディティ化の懸念
 
  「自重堂の空調服」について、その開発意図はわかった。続いては販売戦略について聞いていくことにしよう。
 
  ――空調服の用途として、どんな現場をイメージしていますか?
 
  「今のところ、空調服を採用しているのは8割以上がゼネコンです。ほかには倉庫業、造園業などがちらほら。個人的には警備服なんかにいいんじゃないかと思いますね。企業が空調服を導入する理由としては、熱中症を防ぐと同時に疲れを軽減するのが第一の目的ですが、これからは会社のPRにも使えるのではないかと思います。『当社はこんなに人を大事にしています』という姿勢を示すというか、採用活動にもプラスになるはずです」
 
  ――これからの販売ターゲットとしては?
 
  「地域的な傾向として、空調服は西日本の方が売れています。西の方が日が長くて暑くなるから、らしいですけど、今年は東日本でもブームになるんじゃないかと見ています。空調服って、30度超えの気温が3日くらい続くと急にドカッと売れたりするんですよ。一気に注文が入るから、それを見通してたくさん作っておかないといけなくて……」
 
  ――他のメーカーでも、今年はファン付きウェアを大量出荷していると聞いていますが……。
 
  「そこは競争ですよね……。まあ、なぜこれほどいろんな作業服メーカーがファン付きウェアを売るのかといえば、要するに夏の商売が厳しくなったからなんですよ。5年くらい前から、夏季のビジネスファッションが、布帛(フハク/織物のこと)からポロシャツなどのニット(編物のこと)に変わってきた。メーカーにとって、この変化は苦しいんです。ニットの方がどうしたって単価は低くなりますから。それで、このダウンした分をカバーできるものは何かと考えたとき、みんなファン付きウェアに目を付けた、と。現在、ファン付きウェアの業界はかなりの活況ですが、このままメーカーの乱立が続くとこのジャンルも液晶テレビのようにコモディティ化し、価格も低下してしまうかもしれません」
 
   話はいつの間にかファン付きウェアの今後を占うような内容になってしまった。これも商品が持つ特殊性のなせる業なのか……。
   結論として、やはり自重堂は固かった。上場企業だからコンプライアンスも固いし、広告を出している雑誌も固い。そんな会社がオリジナルメーカーである(株)空調服と組んで、盤石な布陣でじっくり動き出した、というのが今回の印象だ。
   この“陣営参入”がファン付きウェアの勢力図にどんな影響を与えるのか? 熱戦の夏となりそうだ。
 
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ファンやバッテリーの構成は他社に比べてシンプル
 

    

現場への“馴染み度”はナンバーワン! 「Jichodo」のスタンダード空調服

「おなじみの作業服」を思わせるJichodoブランド空調服。ポリエステル100%のサラリとした風合い。バッテリー専用ポケットなど、空調服に必要な機能を盛り込みながらも全体的な見た目はシンプル。どんなワークシーンにも違和感なく着こなせそうだ。カラーはシルバー・ネービー・アースグリーンの3色。


着心地、見た目、どちらもライト! 安心感のある「Jichodo」ブランド空調服

軽い着心地に加え、速乾性もあるポリエステル100%素材の空調服。引き裂きに強いリップストップ生地を採用。機能的でありながらすっきりしたデザインは見た目にも涼し気。オーソドックスな雰囲気の「Jichodo」ブランドはどんな現場にもなじみそう。カラーはネービー・シルバー・ロイヤルブルーの3色。