ごぞんじ天下の「PUMA」である――。普通ならここで欧州のサッカーや陸上競技の歴史を振り返って「やっぱりスポーツシューズといえばPUMAだね☆」という流れに持っていくのが定石なのだろう。が、あいにく編集長はスポーツ経験が皆無で、しかもテレビ観戦も一切しないときている。PUMAの印象といえば、子供のころ着ていたトレーナーにでっかいロゴが入っていたっけなぁ、程度でしかない。つまり、今回の安全スニーカー取材が、PUMAブランドとのファースト・コンタクトになるわけだ。まさに未知との遭遇! いったい取材先はどこになるのだろう……えっ、和歌山? 大阪から日帰りで行けるじゃないっすか? PUMAと和歌山。その意外な組み合わせにときめきを覚えつつ、編集部は和歌山県の有田市へ向かった。
PUMA
疲れを軽減するハイテクソール
ドローコード採用の「エキサイト2.0」
●鍵となる「ローカライズ」
関西空港へ向かう快速電車は、連絡橋の手前の駅で前後に切り離され、後ろ4両だけが和歌山へ向かう。学生の集団とともに和歌山駅で紀伊半島を海沿いに走る「きのくに線」に乗り換え、30分ほどで箕島(みのしま)駅に着いた。駅前は有田川の下流域で、川沿いの畑ではカンキツ類の木がたわわに実っている。さすが「有田みかん」で有名な土地である。
そんなのどかな風景を楽しみつつ歩いていくと、いきなり「PUMA」の赤い看板が現れた。全国に安全靴を出荷する物流センターで、すぐそばに今回の取材先、株式会社ユニワールドがある。安全靴の会社とは思えない現代的でカッコいい事業所である。
「うちは22年前から軍手や軍足、手袋、靴下を作っている会社です。今でも主力製品は作業用の手袋。安全スニーカーはPUMAのワーキング部門『PUMA SAFETY』の日本総代理店として、欧州向け商品を日本向けにローカライズした上で、国内のワーカー向けプロショップやホームセンターなどで展開しています」
と説明してくれたのは同社・商品企画部の中井健志さん。穏やかでシャイな雰囲気だが、商品について語るときは内側から自信をみなぎらせる。ワークウェアや保安具メーカーだけでなく、大手スポーツメーカーの参入もあって競争が激しくなる安全スニーカーの世界については次のように語った。
「売れる、売れないの差はあっても『足を守る』という保安機能はどれも同じなんです。あとは重さだったり、デザイン、カラーなどの好みの問題だったりする。その点、PUMAはドイツ発祥のブランドという背景もあって、質実剛健なイメージが強みかな、と感じています。いわば欧州のごついワークブーツの雰囲気が安全スニーカーにも少し入り込んでいる。そういったテイストやブランドの知名度を活かしつつ、どう日本のお客さん向けにアピールしていくかがカギになるでしょう」
●トレンドを読み解く
デザインやカラー展開においては、ユーザーの好みの変化やファッションの流行を読むことも重要だという。
「トレンドの変化はハッキリありますね。やはり安全靴に限らず、保安用品が全体的にカジュアル化している。こういう流れもワークウェアからきていると思うんです。ダボっとした昔ながらの作業服が減って、ストレッチ素材を使った細身のウェアが増えると、靴もその影響を受ける。つまり、今はカジュアル化したワークウェアに合う安全スニーカーが求められているわけです。ただしカジュアルといってもワークウェアはヤンチャな雰囲気のものが人気だったりするから、それに合うようにデザインも工夫しないといけません」
スニーカーらしいスポーティーな雰囲気を追いつつ、保安具としてのワイルドな魅力も損なわず――。そんな商品展開の考え方は新作モデルにも表れている。クッション性や屈曲性など、動きやすさを追求したシリーズ「モーションプロテクト2.0」だ。
2018年モデルとしては以下の3商品をリリースしている。
1:エキサイト2.0……ドローコード仕様のローカット。アッパー部にニット素材を使用。
2:ヴェロシティ2.0……靴ひもタイプのミドルカット。アッパー部は人工皮革。
3:ヒューズモーション2.0……ドローコード仕様のローカット。シームレス構造。
このシリーズ最大のウリは「インパルスフォーム」と呼ばれるミッドソール。足が接地したときの衝撃をそのまま反発力に変え、足を上げる力にする新技術だ。クッション性が高くて履き心地もよく、疲労軽減にも効果があるという。
「このシリーズは、クッションが効いて疲れにくいだけじゃなく、動きやすさにも配慮してます。ソールの土踏まず部分には『トーションコントロールエレメント』という弾力性と硬質性を併せ持った素材を使っているので、しゃがんだときでも靴がグニャっと曲がる。グリップ力を高めた靴底、クッションパッドを付けたインソールなども合わせて、履き心地の良さを追求しました」
と、中井さんは説明しながらソールをグニャグニャと曲げて見せてくれた。一見、柔らかそうだけれど実際に触ってみると意外とハードというか、強い弾力性がある。これならファッション性だけでなく保護具としての信頼感も十分だ。
●日本人のためのPUMA
この「モーションプロテクト2.0」シリーズは、海外モデルに日本向けカラーを追加したものだが、一方で日本だけのモデルも展開している。幅広・甲高と言われる日本人の足に合うよう設計したシリーズ「エレメンタルプロテクト」だ。
「こちらはPUMAが誇る世界基準の技術に、日本独自開発の要素を付け加えています。甲高でも似合うアッパー部分のデザイン、幅広の足に合う先芯、それに台形構造で足を力強くサポートするソールなど、日本人の足にとっての動きやすさ、履き心地の良さを実現させたモデルです」
先ほどの海外モデルと比べるとデザインはかなりライトでカジュアル。ゴツゴツした雰囲気は抑えられている。これも日本人の好みに合わせた結果のようだ。
「日本人がPUMAに求めるのはやはりスポーティーな雰囲気かな、と。ワークシューズらしいワイルドな感じより、スニーカーらしい軽やかさを出せるよう意識しています。履き心地や動きやすさをアピールするためには、日本だとスニーカーっぽいほうがいい。安全スニーカーというのは、欧州ではワークブーツが変化したものという捉えられ方ですが、日本だとスニーカーに先芯を入れたものという感覚。このあたりの違いもデザインに反映されているわけです」
欧州を想起させるハードなルックスの「海外モデルPUMA」に、スポーツカジュアル感がウリの「日本モデルPUMA」。この二段構えの商品展開こそ、PUMA安全靴の“隠し持った実力”といえそうだ。
関西空港へ向かう快速電車は、連絡橋の手前の駅で前後に切り離され、後ろ4両だけが和歌山へ向かう。学生の集団とともに和歌山駅で紀伊半島を海沿いに走る「きのくに線」に乗り換え、30分ほどで箕島(みのしま)駅に着いた。駅前は有田川の下流域で、川沿いの畑ではカンキツ類の木がたわわに実っている。さすが「有田みかん」で有名な土地である。
そんなのどかな風景を楽しみつつ歩いていくと、いきなり「PUMA」の赤い看板が現れた。全国に安全靴を出荷する物流センターで、すぐそばに今回の取材先、株式会社ユニワールドがある。安全靴の会社とは思えない現代的でカッコいい事業所である。
「うちは22年前から軍手や軍足、手袋、靴下を作っている会社です。今でも主力製品は作業用の手袋。安全スニーカーはPUMAのワーキング部門『PUMA SAFETY』の日本総代理店として、欧州向け商品を日本向けにローカライズした上で、国内のワーカー向けプロショップやホームセンターなどで展開しています」
と説明してくれたのは同社・商品企画部の中井健志さん。穏やかでシャイな雰囲気だが、商品について語るときは内側から自信をみなぎらせる。ワークウェアや保安具メーカーだけでなく、大手スポーツメーカーの参入もあって競争が激しくなる安全スニーカーの世界については次のように語った。
「売れる、売れないの差はあっても『足を守る』という保安機能はどれも同じなんです。あとは重さだったり、デザイン、カラーなどの好みの問題だったりする。その点、PUMAはドイツ発祥のブランドという背景もあって、質実剛健なイメージが強みかな、と感じています。いわば欧州のごついワークブーツの雰囲気が安全スニーカーにも少し入り込んでいる。そういったテイストやブランドの知名度を活かしつつ、どう日本のお客さん向けにアピールしていくかがカギになるでしょう」
●トレンドを読み解く
デザインやカラー展開においては、ユーザーの好みの変化やファッションの流行を読むことも重要だという。
「トレンドの変化はハッキリありますね。やはり安全靴に限らず、保安用品が全体的にカジュアル化している。こういう流れもワークウェアからきていると思うんです。ダボっとした昔ながらの作業服が減って、ストレッチ素材を使った細身のウェアが増えると、靴もその影響を受ける。つまり、今はカジュアル化したワークウェアに合う安全スニーカーが求められているわけです。ただしカジュアルといってもワークウェアはヤンチャな雰囲気のものが人気だったりするから、それに合うようにデザインも工夫しないといけません」
スニーカーらしいスポーティーな雰囲気を追いつつ、保安具としてのワイルドな魅力も損なわず――。そんな商品展開の考え方は新作モデルにも表れている。クッション性や屈曲性など、動きやすさを追求したシリーズ「モーションプロテクト2.0」だ。
2018年モデルとしては以下の3商品をリリースしている。
1:エキサイト2.0……ドローコード仕様のローカット。アッパー部にニット素材を使用。
2:ヴェロシティ2.0……靴ひもタイプのミドルカット。アッパー部は人工皮革。
3:ヒューズモーション2.0……ドローコード仕様のローカット。シームレス構造。
このシリーズ最大のウリは「インパルスフォーム」と呼ばれるミッドソール。足が接地したときの衝撃をそのまま反発力に変え、足を上げる力にする新技術だ。クッション性が高くて履き心地もよく、疲労軽減にも効果があるという。
「このシリーズは、クッションが効いて疲れにくいだけじゃなく、動きやすさにも配慮してます。ソールの土踏まず部分には『トーションコントロールエレメント』という弾力性と硬質性を併せ持った素材を使っているので、しゃがんだときでも靴がグニャっと曲がる。グリップ力を高めた靴底、クッションパッドを付けたインソールなども合わせて、履き心地の良さを追求しました」
と、中井さんは説明しながらソールをグニャグニャと曲げて見せてくれた。一見、柔らかそうだけれど実際に触ってみると意外とハードというか、強い弾力性がある。これならファッション性だけでなく保護具としての信頼感も十分だ。
●日本人のためのPUMA
この「モーションプロテクト2.0」シリーズは、海外モデルに日本向けカラーを追加したものだが、一方で日本だけのモデルも展開している。幅広・甲高と言われる日本人の足に合うよう設計したシリーズ「エレメンタルプロテクト」だ。
「こちらはPUMAが誇る世界基準の技術に、日本独自開発の要素を付け加えています。甲高でも似合うアッパー部分のデザイン、幅広の足に合う先芯、それに台形構造で足を力強くサポートするソールなど、日本人の足にとっての動きやすさ、履き心地の良さを実現させたモデルです」
先ほどの海外モデルと比べるとデザインはかなりライトでカジュアル。ゴツゴツした雰囲気は抑えられている。これも日本人の好みに合わせた結果のようだ。
「日本人がPUMAに求めるのはやはりスポーティーな雰囲気かな、と。ワークシューズらしいワイルドな感じより、スニーカーらしい軽やかさを出せるよう意識しています。履き心地や動きやすさをアピールするためには、日本だとスニーカーっぽいほうがいい。安全スニーカーというのは、欧州ではワークブーツが変化したものという捉えられ方ですが、日本だとスニーカーに先芯を入れたものという感覚。このあたりの違いもデザインに反映されているわけです」
欧州を想起させるハードなルックスの「海外モデルPUMA」に、スポーツカジュアル感がウリの「日本モデルPUMA」。この二段構えの商品展開こそ、PUMA安全靴の“隠し持った実力”といえそうだ。
土踏まず部の素材が屈曲姿勢をサポート
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ハードな見た目の「ヴェロシティ2.0」
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ハイスペックな中敷きで極上の履き心地を。疲労軽減などで「ワンランク上」を望む人のためのインソール スニーカーの着用感の決め手になるのは実はインソールであり、靴のパフォーマンスをフルに発揮するためにもインソール選びが大事――。そう考える知性派のためのワンランク上の中敷き。高い通気性を実現させた「プロ」と、クッション&衝撃吸収で疲労を軽減させる「プラス」があり、使い分けるのも手だ。 |
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