【アルペン】ダイヤル「TGF」を廻せ!image_maidoya3
Boy meets girl! ロマーンスの~♪ と歌ってしまうとJASRACが飛んでくるのでやめておこう。90年代にCMで一世を風靡した、ウインタースポーツのアルペン。いや、同社は今やスキーやスノボに限らずアウトドアウェア、ゴルフ用品など、何でもそろう総合スポーツ企業になっているというから驚いた。総合メーカーだから当然、ランニングやフィットネス用のスニーカーも自社開発で展開している。そして、もちろんこの「月刊まいど屋」で取り上げるということは……販売しているのだ、安全靴も。そう「アルペンの安全靴」――。うわ、なんだこのパワーワードは! 建設現場に広瀬香美が流れて恋が始まりそうではないか! この圧倒的求心力の前では、いかなる理性も消し飛んでしまう。ぜひ、教えてください、アルペンの安全靴を! 編集部は吸い寄せられるようにアルペン本社のある名古屋市へ向かっていった。

アルペン
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堂々たる「アルペン丸の内タワー」
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ジャパーナの桜井忠信さん
●2秒で履いて、1秒で脱げる
 
   アルペン丸の内タワーは、名古屋城のお膝元「丸の内」にそびえ立っている。ひときわ目立つ地上25階建ての姿は「名古屋にアルペンあり」をアピールしているようだ。取材の旨を告げると、アルペングループの商品企画と開発を行っている子会社、ジャパーナの桜井忠信さんが迎えてくれた。アルペンの安全スニーカー事業の”仕掛け人”のひとりである。
 
   まずはアルペングループが展開するスポーツ用品ブランド「IGNIO(イグニオ)」の話から。続いて、その安全スニーカーの特色について……と考えていたら、桜井さんは席に着くやいなや、見本の靴を机の上に並べる。そして堰を切ったように語りだすのだった。
 
  「IGNIO安全スニーカー特徴はコレですよコレ。このダイアル『TGF』。これに尽きます」
 
   あ、登山靴でたまに見かける靴ひも代わりのワイヤーをダイヤルで巻き取るヤツだ……。そう思って「へー、このダイヤル式の商品がよく売れているんですね」と言おうとしたら、桜井さんは意外なことを口にした。
 
  「うちは全部これなんです」
 
  「え、靴ひもモデルとかないんですか?」
 
  「ありません。ラインナップすべてダイアル式です」
 
  「えええ!」
 
   なんと、IGNIOの安全スニーカーは、すべてワイヤーで締める「ダイヤル式」。ウインタースポーツなどで、手袋をしたままでも扱えるように自社開発したシステム、「TGF」を全モデルの安全スニーカーに搭載しているのだ。まずはベーシックな靴ひもモデルがあって、ユーザーの好みによってベルクロやスリッポンも選べて……という安全スニーカーの既成概念が、早くも180度吹き飛ばされてしまった。
 
  「わかりやすいでしょ? 合言葉は『2秒で履いて、1秒で脱げる』。2014年の安全スニーカー市場参入からうちはずっとこれです。ダイヤル式でこの価格は他社にはできませんよ」
 
   スポーツ用品大手のイメージとは裏腹に、非常に”攻めた”安全スニーカーを展開しているのがアルペンなのだ。
 
  ●「次世代の締め具」として
 
   では、なぜアルペンはこれほど”ダイヤル式推し”なのだろう? 他者のようにベルクロやスリッポンという選択肢もあれば、まだまだ靴ひも式を好むユーザーも多いと思うのだが。
 
  「それはこのダイヤル方式こそ、靴ひも、ファスナー、ベルクロに続く”次世代の締め具”だと考えているからですよ。すでに当社のゴルフシューズでは8割程度がダイヤル方式になっていますし、ジュニア用スニーカー、ウォーキングシューズでもじわじわと普及しつつあります。簡単に脱ぎ履きができることに加えて、自在に緩めたり締め上げたりできる点が人気を集めています」
 
   同社のTGFは、ダイヤルをカリカリと回せばワイヤーが締まり、ダイヤルをつまんでポコンと引き上げれば完全に緩む仕組み。練習や慣れはまったく要らない。上手く靴ひもが締められない子供に限らず、大人でもこの利便性には心惹かれるものがある。
 
   靴を脱ぐ機会の多い日本人にとって、「着脱がラク」というのはあらゆるシューズで歓迎される機能だろう。ただ、桜井さんによれば、全モデルの安全スニーカーにダイヤル式を採用する理由は、それだけではないという。
 
  「靴ひもは巻き込んだり、踏んづけて転んだりといったリスクがあります。また脱ぎ履きも面倒だから、かかとを踏みつぶしたり、ひもをゆるゆるにして履いているユーザーも多い。これは危険です。では、ベルクロはというと知らないうちにめくれていたりするし、フィット感の微調整もやりにくい。と、こんな事情もあって、ある自動車関係の工場では、靴ひもやベルクロに代って等社のダイヤル式が正式採用されました。ダイヤル式なら何かに引っ掛かることもないから作業の安全性も上がるし、きっちり締めて履くことで疲れにくくもなる。脱ぎ履きはもちろん調節も簡単ですから」
 
   面白いのはダイヤル式の場合、「カットの高さ」による脱ぎ履きの手間がなくなってしまうことだ。足首までカバーするミドルカットでも、くるぶしまでのローカットでも、脱ぐときはダイヤルを引き上げるだけ。これでワイヤーのテンションはゼロになる。靴ひもの場合、「脱ぎ履きが大変だから」とミドルカットやハイカットが敬遠されるケースがあるけれど、ダイヤル式は、純粋に靴の性能だけを考えてカットを選べる。
 
  「くるぶしまでカバーされている方が安全なことは言うまでもありません。そして、ダイヤル式はミドルカットなのにラクというより、むしろ”ミドルカットだからこそ生きる”。土木やガス工事など、土が中に入らないミドルカットが好まれる現場だけでなく、内装工事や引っ越しなど、脱ぎ履きの多い仕事でも気軽に安全性の高いミドルカットを履くことができるんです」
 
  ●コンプライアンスも追い風に
 
   IGNIOの安全スニーカーは、ショップでの小売りのほか、事業所に納入されるケースも多い。このユニフォーム採用でも、近年は追い風を感じているという。
 
  「だんだん現場が安全管理に敏感になってきていますね。特に大手はコンプライアンスの面でも、保安用品にコストをかける傾向があります。たとえば、物流現場や倉庫などでこれまでは普通の靴で働いていたパートさんに安全スニーカーを履かせるようになったり、会社によっては、事務員がちょっと工場に入るときでも『安全スニーカー着用』がルールになったり。こんな事情もあって、近ごろは女性用サイズも売れるようになってきました。IGNIOの安全スニーカーの先芯は6サイズもあるので、小さいサイズでもつま先がボコッとすることがないんです」
 
   JSAA規格の安全スニーカーは、従来のJIS規格の靴より幅広い分野で使われており、そのすそ野はさらに広がってきている。ユーザーも女性や高齢者などと多様化していくため、デザインや機能だけでなく、カラー・サイズ展開などの面でも、さらなる工夫が求められるという。
 
  「一番売れているのは相変わらず黒ですが、最近はイエローグリーン、ネイビーといったカラーも人気が出てきました。ブルーやレッドがコーポレートカラーと合わせて採用されるケースもあります。さらに軽作業をする女性が履くケースも増えてきたので、当社はサイズ展開も22.5cmからにしているし、JSAA『A種』認定品だけでなく『B種』の選択肢も用意しています。安全スニーカーが社会的に認知されてきたおかげで、ニーズも多様化しているんです」
 
   最後に、ユーザーに伝えたいことを聞いた。
 
  「とにかく安全スニーカーは正しく着用してほしいですね。きっちり締めて履けば、より安全で疲れにくい。そのためには靴ひもじゃなくてダイヤル式でしょう!」
 
   最初から最後まで、「TGFダイヤル式」に賭けるアルペンの自信をビンビン感じるインタビューだった。
 
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ミドルカットでも脱ぎ履きしやすい
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ワイヤー解放はダイヤルを引くだけ

    

ウチの現場ならB種でもいいね! 女性にも合うサイズ展開が魅力のローカットモデル

物流・倉庫などの軽作業にちょうどいいJSAA「B種」認定の安全スニーカー。TGFダイヤルシステムで着脱や調整もラクチン。アッパー部は通気性メッシュを採用しており、長時間着用の疲れに加えて蒸れの不快感もなし。女性ユーザーに合わせてサイズ展開は22.5cmから。


ダイヤル方式はミドルカットでこそ活きる! 脱ぎ履き簡単なのに足首も守れる安心モデル

着脱やフィット感の調整がラクにできるTGFダイヤル方式の安全スニーカー。足首までしっかり保護するミドルカットタイプだが、ダイヤル方式で脱ぎ履きはラクチン。内装工事や引っ越しなどにもオススメだ。JSAA「A種」認定製品。女性ユーザーに合わせてサイズ展開は22.5cmから。