「カーシーさんに行くんですか? いいですねぇー、うらやましい」。あるメーカーで取材の予定を話したらこんなことを言われた。ん? 銀座のど真ん中ですよ。そんな広くて豪華なオフィスなわけないでしょう……と怪訝な顔をしていると「まあ、行ってみればわかりますよ」とのこと。あまり期待しすぎないようにしながら東銀座駅で下車し、すぐそばにあるカーシー東京支店のビルに入る。エレベーターで6階のボタンを押してしばらく待って――な、なんだこれは! ドアが開くとそこには、なんとも形容しがたい空間が広がっていた。ショールームのような、カフェのような、アトリエのような……。観葉植物が置かれたテーブルにはパソコンで作業をしている従業員の姿があって、かろうじてここがオフィスであることがわかる。広告やITなんかのクリエィティブ系で"イケてるオフィス"の類はたくさん見てきたが、この工房っぽいアレンジには正直ヤラれた。事務服って地味なジャンルだと思っていたけど、こういう魅せ方もあるのか……、と感心しているとカーシー東京支店のみなさんが迎えてくれた。
カーシーカシマ
銀座のオフィスはアトリエ風
高度な立体造形を語る増田さん
●ユニフォームで課題解決!
じつはカーシーカシマは今回が本誌「月刊まいど屋」への初登場。そこで、まずは会社のプロフィールから紹介しておこう。
本社は栃木県の佐野市。鹿島アントラーズの鹿嶋市(茨城県)とよく勘違いされるそうだが、社名は佐野市にある「鹿島神宮」から来ているという。1951年に創業し、長年、縫製工場を営んできた。1981年には事務服のブランド「enjoy」をスタートさせている。
「昔から女性の制服をメインに手がけてきたメーカーです。レディースウェアへのこだわりはどこよりも強いですよ」
と社長室・室長の増田有美子さんは語る。はっきり言葉には出さないものの「商品展開の一環として女性モノもやるメーカーとは違う」という自負を感じる。
さっそく話はオフィスウェア論へ発展していった。
「オフィスウェアは、『着用者』と『経営者』の2つの視点から考えなくてはなりません。働く人にとっては着心地をはじめ、働き方や事業所の環境に合っているかといったことが重要ですが、一方で企業にもメリットがないといけない。制服にお金を払うのは会社の方ですからね。着る側のメリットだけの話ではダメなんです」
その点で同社がモットーに掲げるのが「ユニフォームで課題解決」である。
「制服によって、いま会社が直面している課題をクリアできる――。そういう提案ができるように心がけています。たとえば『事務作業の効率がアップする制服』とか『オフィスの省エネ化ができるユニフォーム』といったものです」
優美なオフィスウェアを着たトルソーを示しながら、増田さんが語るのは会社のコストや生産性といった「経営」ド真ん中の話。そのギャップに思わず引き込まれてしまう。
「代表的なものに人間工学に基づいたデザインがあります。昔から『デスクで仕事をしているとお腹が苦しくて』という女性の声は多いのですが、当社で分析してみた結果、新たな事実がわかった。座っているときはお腹だけじゃなく、胸のサイズも大きくなっていたんです。じゃあウェストに加えて胸も締め付けないような立体的造形のウェアを作って着用テストしてみようとか、当社ではそういう商品開発をしてきました。ストレスのない事務服ができれば、ユーザーは着心地がよくてうれしいし、経営者も能率がアップしてうれしい」
経営者の課題を強く意識する一方で、増田さんは着用者のことも忘れない。
「コスト面だけでなく環境負荷の面でも節電を進める企業が増えています。たとえば夏のオフィスで軽装にすればクーラーの設定温度を上げられる。ただし、スタッフの中には暑くてイライラする人がいるかもしれません。コストカットの結果、能率が下がってしまったら意味がない。こんな場合、調温機能がある制服を採用すれば、スタッフは気持ちよく働いて、かつ空調費もカットできる。経営者と着用者の双方にとってメリットがあるわけです」
女性専用ということもあって、事務服は「オシャレ」の文脈で語られるものだと思っていたが、それは一面でしかないようだ。じつはハッキリした「成果」を求められるシビアな世界なのだ。
●職種別に「気の利く提案」を
現在、カーシーカシマの主力は「enjoy」「enjoy Noir」の2ブランド。同社のルーツといえる一般向けオフィスウェアの「enjoy」に対して、2014年スタートにスタートした「enjoy Noir」は、より接客向けのデザインとなっている。
このようなジャンル分けはある一方で、同時に強く意識しているのは「働き方の多様化」だという。
「近年、事務の業務範囲も広がっていて、従来のような『女性事務員』は少なくなっています。いわゆる内勤のデスクワークだけじゃなく、荷物をさばいたりクルマの運転をしたりするケースも多い。だからユニフォームもいろんな働き方に適応できるものが必要だと感じています。要は女性のライフスタイルが大きく変化してきているわけで、当社はその変化に寄り添って、女性をサポートしていかねばならないんです」
働き方の多様化というと制服が活躍する場が減りそうに思えるけれど、カーシーの見方はそうではない。変化を前向きにとらえ、職種別のオフィスウェアを提案していく。
「主なユーザーとしては、まず中小企業をはじめ金融、製造業などの一般事務。それに医療事務、自動車ディーラーなども大きなターゲットです。職種別のウェアの機能としては、たとえば医療事務なら屈んだりすることが多いので、ポケットはスマートフォンが横向けに入るように設計して、落ちないようにする。ホテル従業員や宝飾品などの販売員は、接客用のフォーマルな雰囲気が求められる一方、意外と膝をついたりすることも多いので、動きやすさに加えて通気性の良い素材を使う。こんなふうに働く現場を考えて開発しています」
そんな「enjoy」「enjoy Noir」のカタログでモデルを務めるのはNikiさん。リアリティ番組「テラスハウス」への出演など、等身大で親しみやすい雰囲気がブランドイメージと重なったという。
「いまオフィスウェアで人気があるのは、カジュアルで親しみが持てるもの。自動車ディーラーのユニフォームでも、いかにも接客用な高級感のあるデザインよりファミリー向けの柔らかい雰囲気のものがウケています」
動きやすくて着心地もいい服というカジュアル志向に応えつつ、職種別のかゆい所に手が届く機能をアピール。さらに企業が求める制服の"きちんと感"も維持。と、現代のオフィスウェアには非常に難しい注文が突き付けられているのだ。
●カーシーと言えば「ポロ」!
話を商品に移そう。「enjoy」の春夏モデルのテーマは「新しい自分、始めよう」。涼感や通気性、速乾性などをウリにした約30点の新商品がラインナップしている。
「去年の夏もとんでもない暑さでしたが、温度だけじゃなく湿度も、日本の気候全体が変わってきていますからね」(増田さん)
もはやかつての夏用ウェアでは通用しないというのは、誰もが感じているだろう。カーシーの新作に対して、編集部の第一印象は「めちゃくちゃ涼しそう」のひとこと。シルエットがラフなものはデザインできっちり感を出したりして、快適さとフォーマルさの絶妙なバランスを取っている。
中でもこれからの季節、人気を集めるのが独自の「オフィスポロ」シリーズだ。マーケティング部の金子幸代さんはその魅力を次のように語る。
「オフィスポロは、東日本大震災の影響でオフィスのエアコン設定温度が28度になったとき、『とにかく涼しいオフィスウェアを』と当社が開発したものです。普通のポロシャツだと下着が透けてしまうしペンも携帯できない。それに見た目もカジュアルすぎる。というわけで、涼しくて動きやすく、体のラインも出にくい女性用ユニフォームとしてポロは非常に人気があります。2012年にスタートしてからラインナップは順調に増え続け、いまは18種類となりました」
形はたしかにポロシャツなのだが、意外ときちんとした雰囲気。襟元のホールにスカーフを通せば華やかさも出せる。なにかとコストパフォーマンスの高いユニフォームだ。
「価格面もリーズナブルで、オーバーブラウス(1枚で着られる夏用オフィスウェア)2枚のコストでオフィスポロなら3枚買って支給できる。ノーアイロンだから自宅でガンガン洗濯できて、すぐ乾く。こういうメンテナンス性の面でも、ユーザーの支持を集めています。当初は一般事務用の商品だったのですが、介護など様々な現場でも人気が出てきています」(同)
涼しいのはポロだけではない。オーソドックスな事務服スタイルでも涼感モデルを提案している。
「特に医療事務などでは、昔ながらのスタイルの方が患者さんに安心感を与えるという事情もあって、ブラウス&ベストが好まれます。シルエットが映える『美スラッと』シリーズのベストは12~14枚の生地を組み合わせた立体的なウェア。見た目は従来と同じでも、より涼しく、動きやすく改良されています」
ウール混のベストは、ちょっと広げてみただけでも緻密な縫製技術が使われていることがわかり、背中の部分に手を当てるだけで通気性の高さを感じる。これほど繊細な造形をしているのにホームクリーニング可能というからびっくりだ。
「ずっと女性のユニフォームを作ってきた会社ですから」
増田さんが冒頭のセリフを繰り返す。
アトリエ・工房風のオフィスからもビシビシ感じる「女性服の作り手」としてのアイデンティティ。一見、女性らしいオシャレで都会的な雰囲気の会社だが、一皮めくれば制服づくりにかける想いがどんどんあふれてくる。カーシーカシマはそんな「職人気質」なメーカーだった。
じつはカーシーカシマは今回が本誌「月刊まいど屋」への初登場。そこで、まずは会社のプロフィールから紹介しておこう。
本社は栃木県の佐野市。鹿島アントラーズの鹿嶋市(茨城県)とよく勘違いされるそうだが、社名は佐野市にある「鹿島神宮」から来ているという。1951年に創業し、長年、縫製工場を営んできた。1981年には事務服のブランド「enjoy」をスタートさせている。
「昔から女性の制服をメインに手がけてきたメーカーです。レディースウェアへのこだわりはどこよりも強いですよ」
と社長室・室長の増田有美子さんは語る。はっきり言葉には出さないものの「商品展開の一環として女性モノもやるメーカーとは違う」という自負を感じる。
さっそく話はオフィスウェア論へ発展していった。
「オフィスウェアは、『着用者』と『経営者』の2つの視点から考えなくてはなりません。働く人にとっては着心地をはじめ、働き方や事業所の環境に合っているかといったことが重要ですが、一方で企業にもメリットがないといけない。制服にお金を払うのは会社の方ですからね。着る側のメリットだけの話ではダメなんです」
その点で同社がモットーに掲げるのが「ユニフォームで課題解決」である。
「制服によって、いま会社が直面している課題をクリアできる――。そういう提案ができるように心がけています。たとえば『事務作業の効率がアップする制服』とか『オフィスの省エネ化ができるユニフォーム』といったものです」
優美なオフィスウェアを着たトルソーを示しながら、増田さんが語るのは会社のコストや生産性といった「経営」ド真ん中の話。そのギャップに思わず引き込まれてしまう。
「代表的なものに人間工学に基づいたデザインがあります。昔から『デスクで仕事をしているとお腹が苦しくて』という女性の声は多いのですが、当社で分析してみた結果、新たな事実がわかった。座っているときはお腹だけじゃなく、胸のサイズも大きくなっていたんです。じゃあウェストに加えて胸も締め付けないような立体的造形のウェアを作って着用テストしてみようとか、当社ではそういう商品開発をしてきました。ストレスのない事務服ができれば、ユーザーは着心地がよくてうれしいし、経営者も能率がアップしてうれしい」
経営者の課題を強く意識する一方で、増田さんは着用者のことも忘れない。
「コスト面だけでなく環境負荷の面でも節電を進める企業が増えています。たとえば夏のオフィスで軽装にすればクーラーの設定温度を上げられる。ただし、スタッフの中には暑くてイライラする人がいるかもしれません。コストカットの結果、能率が下がってしまったら意味がない。こんな場合、調温機能がある制服を採用すれば、スタッフは気持ちよく働いて、かつ空調費もカットできる。経営者と着用者の双方にとってメリットがあるわけです」
女性専用ということもあって、事務服は「オシャレ」の文脈で語られるものだと思っていたが、それは一面でしかないようだ。じつはハッキリした「成果」を求められるシビアな世界なのだ。
●職種別に「気の利く提案」を
現在、カーシーカシマの主力は「enjoy」「enjoy Noir」の2ブランド。同社のルーツといえる一般向けオフィスウェアの「enjoy」に対して、2014年スタートにスタートした「enjoy Noir」は、より接客向けのデザインとなっている。
このようなジャンル分けはある一方で、同時に強く意識しているのは「働き方の多様化」だという。
「近年、事務の業務範囲も広がっていて、従来のような『女性事務員』は少なくなっています。いわゆる内勤のデスクワークだけじゃなく、荷物をさばいたりクルマの運転をしたりするケースも多い。だからユニフォームもいろんな働き方に適応できるものが必要だと感じています。要は女性のライフスタイルが大きく変化してきているわけで、当社はその変化に寄り添って、女性をサポートしていかねばならないんです」
働き方の多様化というと制服が活躍する場が減りそうに思えるけれど、カーシーの見方はそうではない。変化を前向きにとらえ、職種別のオフィスウェアを提案していく。
「主なユーザーとしては、まず中小企業をはじめ金融、製造業などの一般事務。それに医療事務、自動車ディーラーなども大きなターゲットです。職種別のウェアの機能としては、たとえば医療事務なら屈んだりすることが多いので、ポケットはスマートフォンが横向けに入るように設計して、落ちないようにする。ホテル従業員や宝飾品などの販売員は、接客用のフォーマルな雰囲気が求められる一方、意外と膝をついたりすることも多いので、動きやすさに加えて通気性の良い素材を使う。こんなふうに働く現場を考えて開発しています」
そんな「enjoy」「enjoy Noir」のカタログでモデルを務めるのはNikiさん。リアリティ番組「テラスハウス」への出演など、等身大で親しみやすい雰囲気がブランドイメージと重なったという。
「いまオフィスウェアで人気があるのは、カジュアルで親しみが持てるもの。自動車ディーラーのユニフォームでも、いかにも接客用な高級感のあるデザインよりファミリー向けの柔らかい雰囲気のものがウケています」
動きやすくて着心地もいい服というカジュアル志向に応えつつ、職種別のかゆい所に手が届く機能をアピール。さらに企業が求める制服の"きちんと感"も維持。と、現代のオフィスウェアには非常に難しい注文が突き付けられているのだ。
●カーシーと言えば「ポロ」!
話を商品に移そう。「enjoy」の春夏モデルのテーマは「新しい自分、始めよう」。涼感や通気性、速乾性などをウリにした約30点の新商品がラインナップしている。
「去年の夏もとんでもない暑さでしたが、温度だけじゃなく湿度も、日本の気候全体が変わってきていますからね」(増田さん)
もはやかつての夏用ウェアでは通用しないというのは、誰もが感じているだろう。カーシーの新作に対して、編集部の第一印象は「めちゃくちゃ涼しそう」のひとこと。シルエットがラフなものはデザインできっちり感を出したりして、快適さとフォーマルさの絶妙なバランスを取っている。
中でもこれからの季節、人気を集めるのが独自の「オフィスポロ」シリーズだ。マーケティング部の金子幸代さんはその魅力を次のように語る。
「オフィスポロは、東日本大震災の影響でオフィスのエアコン設定温度が28度になったとき、『とにかく涼しいオフィスウェアを』と当社が開発したものです。普通のポロシャツだと下着が透けてしまうしペンも携帯できない。それに見た目もカジュアルすぎる。というわけで、涼しくて動きやすく、体のラインも出にくい女性用ユニフォームとしてポロは非常に人気があります。2012年にスタートしてからラインナップは順調に増え続け、いまは18種類となりました」
形はたしかにポロシャツなのだが、意外ときちんとした雰囲気。襟元のホールにスカーフを通せば華やかさも出せる。なにかとコストパフォーマンスの高いユニフォームだ。
「価格面もリーズナブルで、オーバーブラウス(1枚で着られる夏用オフィスウェア)2枚のコストでオフィスポロなら3枚買って支給できる。ノーアイロンだから自宅でガンガン洗濯できて、すぐ乾く。こういうメンテナンス性の面でも、ユーザーの支持を集めています。当初は一般事務用の商品だったのですが、介護など様々な現場でも人気が出てきています」(同)
涼しいのはポロだけではない。オーソドックスな事務服スタイルでも涼感モデルを提案している。
「特に医療事務などでは、昔ながらのスタイルの方が患者さんに安心感を与えるという事情もあって、ブラウス&ベストが好まれます。シルエットが映える『美スラッと』シリーズのベストは12~14枚の生地を組み合わせた立体的なウェア。見た目は従来と同じでも、より涼しく、動きやすく改良されています」
ウール混のベストは、ちょっと広げてみただけでも緻密な縫製技術が使われていることがわかり、背中の部分に手を当てるだけで通気性の高さを感じる。これほど繊細な造形をしているのにホームクリーニング可能というからびっくりだ。
「ずっと女性のユニフォームを作ってきた会社ですから」
増田さんが冒頭のセリフを繰り返す。
アトリエ・工房風のオフィスからもビシビシ感じる「女性服の作り手」としてのアイデンティティ。一見、女性らしいオシャレで都会的な雰囲気の会社だが、一皮めくれば制服づくりにかける想いがどんどんあふれてくる。カーシーカシマはそんな「職人気質」なメーカーだった。
充実のオフィスポロシリーズ
|
カーシー東京支店のみなさん
|
安くて、涼しくて、メンテナンスも簡単♪ 夏スタイルの定番「オフィスポロ」シリーズ カーシー自慢の「オフィスポロ」が今シーズンは全18種に。カジュアルできちんと感があり、しかもお手入れ簡単。自宅でガンガン洗ってノーアイロンですぐ着られるほか、通常のポロシャツよりややゆったりしており、体のラインも出にくい点もグッド。オーバーブラウスより低コストで着まわしの面でも女性をサポート。 |
|
カーシーの技術力だから実現できた3D造形! "着やせ効果"バツグンの「美スラット」シリーズ 10枚以上の生地を組み合わせた立体造形で、美しいシルエットを実現させたハイテク系オフィスウェア。着やせ効果があるので、年齢を問わずエレガントな雰囲気を演出できる。名札を付ける位置が選べる「Wネームループつき胸ポケット」、スマホの入る大容量ポケットなど、見た目だけでなく実用性にも妥協なし。 |
|