第一印象は「謎の大企業」である。東証一部上場だから経済誌なんかで名前は目にするし、白衣メーカーだってことも知っている。メディカル分野で圧倒的なシェアをもつ巨人であることも、いろんな場所で聞く。けれども、実際のところどんな会社なのか。まるで御簾の向こうにいる貴人を仰ぎ見るような気分――。と言っても大げさではなかった。ところがこのほど、まいど屋では同社商品の取り扱いがスタート。それにともなって、本誌「月刊まいど屋」でも、ナガイレーベンへの初取材が実現することになったのだ! 本社の所在地は東京・千代田区。JR神田駅から徒歩0分というエクストリームな立地に震え慄きつつ、ナガイレーベンの本社ビルに入ると、すぐに受付の女性がにこやかに対応してくれた。その傍らにナース姿のミッフィーが並んでいるのを見て、思わず顔がほころぶ……って、これはまるで病院で緊張を解きほぐされる患者のようではないか!?
ナガイレーベン
ナース服のミッフィーがお出迎え
「PRO-FUNCTION」について語る高野さん
●白衣の殿堂「ナースルーム」
取材に応じてくれたのは、営業の大山祥子さんとデザイナーの高野智恵さん。さっそく「ナースルーム」呼ばれる展示フロアに案内され、話を聞かせてもらうことに。月刊まいど屋には初登場というわけで、まずは会社のプロフィールから紹介してもらおう。
「ごぞんじの通り創業100年以上になる白衣メーカーです。ナース服をはじめ介護用ウェア、小さなクリニック用のユニフォームなど、メディカル系のウェアを総合的に展開しています。ナースやドクターの白衣を長年手がけてきたということもあって、ちょっと保守的なイメージがあるかもしれませんが、流行を取り入れたデザインものや明るい雰囲気のスクラブなど、実はいろいろ挑戦しているんですよ」(高野さん)
言われてみれば、ナースルームに並ぶウェアは意外にもカラフル。ズラリ並んだ白衣の隙間から、ベージュや紺、花柄、ポップカラーのウェアなんかも顔を出している。話によるとナースや医師の白衣のほか、多種多様なスクラブ、検査のときに着る検査着、医療事務用のウェアなど、なんでもそろっている、とのこと。まるでメディカル系ウェアの博物館のようだ。
「カタログも毎年つくっていますが、やはり実物を見て試着していただくのが一番。というわけで、現行の商品がそろったこのスペースを作りました。とくに白い服は、写真だけではなかなかわかりませんからね。リラックスした気分で白衣を手に取れる看護師や医療スタッフのための部屋、という意味を込めて『ナースルーム』と名付けました」
ここナースルームに加えて、本社ビルには、ナースのための空間「いとなギャラリー」も併設。ナイチンゲールから始まる看護の歴史について、さまざまな展示資料から学べるほか、看護学生の研修や現役ナースの交流イベントなども行われている。
ナガイレーベンは、一から十まで「ナースのための会社」なのだ。
●業界一のテスト基準
と、基本情報を聞いたところで、次は同社の特徴について教えてもらおう。
名前が挙がるときは、いつも「圧倒的な」という枕詞が付くナガイレーベン。「おかげさまで、医療市場における当社のシェアは60%で、450万人の医療・介護従事者に年間600万着以上の商品を提供させてもらっています」と、サラリと語る高野さんだが、ハッキリ言って恐ろしい数字である。いったい同社は他の白衣メーカーとどこが違うのだろう?
「ひとことで言うなら、100年間の知識とノウハウでしょうか。当社の歴史はそのまま白衣の歴史といっていいくらいで、経験が違うんです。それでいて、ただ伝統を誇るだけじゃなく、最先端のハイテク素材を使ったデザイン性の高い白衣やスポーツテイストの高機能メディカルウェアといった革新的な商品にも力を入れています。そして、それらを生産する体制として国内に自社工場と協力工場が合わせて16カ所。生地は素材メーカーと共同開発してるので、生産体制や品質管理も万全なんです」
……なんというか、スポーツのトップ選手にインタビューしたら「いちばん練習しているから、いちばん強いんです」と言われたような感覚である。しかも、このチャンピオンはさらに"大技"をいくつも持っているのだ。
「最大の自慢は、この本社ビル内にある『ラボルーム』です。商品開発にあたってはここで、徹底的に素材と縫製のテストをやるわけですが、実はこのテストが業界で一番厳しい基準になっています。もし白衣を販売したあと問題が出て、回収といったことになったら、1病院あたり何千枚とか、シェアが高いだけに大変なことになってしまう。そんなわけで、ものすごく高い基準を設定しているわけですね。……あ、やはり見たいですか、残念ながら企業秘密です!」(高野さん)
品質に加えて、さらに大山さんが販売面での強みを付け加える。
「秋田県の工場にある物流センターは、貯蔵数で業界ナンバーワンです。おかげで、病院に白衣を提案しに行くときも『ナガイさんは在庫を切らさないから安心して採用できる』とよく言ってもらえますね」
このように、文字だけ見ると高笑いが聞こえてきそうだけれど、圧倒的な強さを誇る内容とは裏腹に、ふたりは不思議なくらいひかえめで冷静。なんだか看護師と話しているみたいだ……、と思ってしまった。
●機能もデザインも最先端!
さて、ここからは同社のイチ押しを紹介してもらおう。
「なにはさておきこのモデル」とばかりに、ふたりはナースルームの真ん中で中腰姿勢になっているマネキンを示す。涼しさと動きやすさをとことん追求した白衣「PRO-FUNCTION」シリーズである。メッシュを多用したサラリとした風合いの生地、明るいカラーリングは見た目にも爽やかだ。
「このマネキンの前傾姿勢は、患者さんを抱え上げるときの動作で、理学療法士がベッドの前で患者さんのリハビリを手伝っているシーンをイメージしています。ふつうの白衣なら肩回りがツッパったり、背中あたりに抵抗を感じたりするような姿勢ですが、PRO-FUNCTIONなら、こういう動きをしてもストレスがありません。開発に当たっては、医療スタッフに特有の動作を解析しました。袖は腕をグッと上げても引っかからず、めくれ上がりにくい。さらに、動作によってウェアの中の空気が排出されるため、激しく動いていても涼しいのが特徴です」(高野さん)
ああ、こういうの他社でも見たことあります、と漏らすと、すかさず「高機能メディカルウェアは当社が最初に始めました」と大山さんがキッパリ。いつでもどこでも"白衣の第一人者"としての自負を忘れないのはさすがである。
と、感心しているうちに、大山さんは続いて最上級ドクターコート「4D+」シリーズのテーラードジャケット(FD-4080)を取り出した。
「このジャケットの特徴は英国調のカッチリ正統派な雰囲気。しっかりとした高級感はありながらも、親しみも感じるという、基本に忠実なドクターコートです。『かっこいいドクターコートは着たいけど、上司よりイイのはちょっと……』という若手ドクターには、同テイストのエントリーモデル(SD-3080)もありますよ」
この会社は、病院内のドクターの序列にまで気を配って白衣を作っているのだ……。もう「おみそれいたしました」という言葉しか出てこない。
●ナンバーワンとしての責任
「4D+」シリーズをはじめ、英ブランド・リバティーとのコラボモデルなど、いくつもの高級路線の白衣を並べながら、高野さんはその効能を次のように語った。
「高級な白衣を選ぶことは、気に入ったものを着ている、という充実感に加えて『この病院で働いている』というプライドを養ってくれます。またナースの場合、かわいい白衣を制服にすることで、スタッフが集まりやすくなるといった"リクルート効果"もあなどれませんね」
さて、そろそろ取材の締めくくりとして、これからの抱負を聞いてみよう。
「これだけ大きなシェアをいただいているわけですから、当社は今後もたくさんの医療機関とお付き合いしていくことになります。その上で、現場からのさまざまな声に答えて行くことが重要です。制服を変えたいといった相談をはじめ、『スクラブも欲しい』『ワンピースタイプもいいかも』という具合に、どんどんニーズが出てくる。そういった多種多様な要望を、たくさんのブランド、豊富なシリーズでカバーしていくわけです。これからも『ナガイさんなら安心だね』と選んでいただけるように、品質はもちろん、品ぞろえでも応えていきたいですね」(大山さん)
たしかに同社の商品展開は、「こんなに要る?」と言いたくなるほど幅広い。デザイン性のあるシリーズから機能性重視のモデル、キャラクターや各種ブランドのとのコラボものなどもあれば、価格帯も高低からその中間、さらにそのまた中間くらい……という具合に細分化されている。最初はつかみどころがない印象の商品展開だったが、話を聞いているうちにわかった。「なんでもある」は、業界ナンバーワンとしての責任なのだ。
たとえるなら、ナガイレーベンとは、組んで良し、離れて良し、勝ってあたりまえ――。そんな大横綱なのである。
取材に応じてくれたのは、営業の大山祥子さんとデザイナーの高野智恵さん。さっそく「ナースルーム」呼ばれる展示フロアに案内され、話を聞かせてもらうことに。月刊まいど屋には初登場というわけで、まずは会社のプロフィールから紹介してもらおう。
「ごぞんじの通り創業100年以上になる白衣メーカーです。ナース服をはじめ介護用ウェア、小さなクリニック用のユニフォームなど、メディカル系のウェアを総合的に展開しています。ナースやドクターの白衣を長年手がけてきたということもあって、ちょっと保守的なイメージがあるかもしれませんが、流行を取り入れたデザインものや明るい雰囲気のスクラブなど、実はいろいろ挑戦しているんですよ」(高野さん)
言われてみれば、ナースルームに並ぶウェアは意外にもカラフル。ズラリ並んだ白衣の隙間から、ベージュや紺、花柄、ポップカラーのウェアなんかも顔を出している。話によるとナースや医師の白衣のほか、多種多様なスクラブ、検査のときに着る検査着、医療事務用のウェアなど、なんでもそろっている、とのこと。まるでメディカル系ウェアの博物館のようだ。
「カタログも毎年つくっていますが、やはり実物を見て試着していただくのが一番。というわけで、現行の商品がそろったこのスペースを作りました。とくに白い服は、写真だけではなかなかわかりませんからね。リラックスした気分で白衣を手に取れる看護師や医療スタッフのための部屋、という意味を込めて『ナースルーム』と名付けました」
ここナースルームに加えて、本社ビルには、ナースのための空間「いとなギャラリー」も併設。ナイチンゲールから始まる看護の歴史について、さまざまな展示資料から学べるほか、看護学生の研修や現役ナースの交流イベントなども行われている。
ナガイレーベンは、一から十まで「ナースのための会社」なのだ。
●業界一のテスト基準
と、基本情報を聞いたところで、次は同社の特徴について教えてもらおう。
名前が挙がるときは、いつも「圧倒的な」という枕詞が付くナガイレーベン。「おかげさまで、医療市場における当社のシェアは60%で、450万人の医療・介護従事者に年間600万着以上の商品を提供させてもらっています」と、サラリと語る高野さんだが、ハッキリ言って恐ろしい数字である。いったい同社は他の白衣メーカーとどこが違うのだろう?
「ひとことで言うなら、100年間の知識とノウハウでしょうか。当社の歴史はそのまま白衣の歴史といっていいくらいで、経験が違うんです。それでいて、ただ伝統を誇るだけじゃなく、最先端のハイテク素材を使ったデザイン性の高い白衣やスポーツテイストの高機能メディカルウェアといった革新的な商品にも力を入れています。そして、それらを生産する体制として国内に自社工場と協力工場が合わせて16カ所。生地は素材メーカーと共同開発してるので、生産体制や品質管理も万全なんです」
……なんというか、スポーツのトップ選手にインタビューしたら「いちばん練習しているから、いちばん強いんです」と言われたような感覚である。しかも、このチャンピオンはさらに"大技"をいくつも持っているのだ。
「最大の自慢は、この本社ビル内にある『ラボルーム』です。商品開発にあたってはここで、徹底的に素材と縫製のテストをやるわけですが、実はこのテストが業界で一番厳しい基準になっています。もし白衣を販売したあと問題が出て、回収といったことになったら、1病院あたり何千枚とか、シェアが高いだけに大変なことになってしまう。そんなわけで、ものすごく高い基準を設定しているわけですね。……あ、やはり見たいですか、残念ながら企業秘密です!」(高野さん)
品質に加えて、さらに大山さんが販売面での強みを付け加える。
「秋田県の工場にある物流センターは、貯蔵数で業界ナンバーワンです。おかげで、病院に白衣を提案しに行くときも『ナガイさんは在庫を切らさないから安心して採用できる』とよく言ってもらえますね」
このように、文字だけ見ると高笑いが聞こえてきそうだけれど、圧倒的な強さを誇る内容とは裏腹に、ふたりは不思議なくらいひかえめで冷静。なんだか看護師と話しているみたいだ……、と思ってしまった。
●機能もデザインも最先端!
さて、ここからは同社のイチ押しを紹介してもらおう。
「なにはさておきこのモデル」とばかりに、ふたりはナースルームの真ん中で中腰姿勢になっているマネキンを示す。涼しさと動きやすさをとことん追求した白衣「PRO-FUNCTION」シリーズである。メッシュを多用したサラリとした風合いの生地、明るいカラーリングは見た目にも爽やかだ。
「このマネキンの前傾姿勢は、患者さんを抱え上げるときの動作で、理学療法士がベッドの前で患者さんのリハビリを手伝っているシーンをイメージしています。ふつうの白衣なら肩回りがツッパったり、背中あたりに抵抗を感じたりするような姿勢ですが、PRO-FUNCTIONなら、こういう動きをしてもストレスがありません。開発に当たっては、医療スタッフに特有の動作を解析しました。袖は腕をグッと上げても引っかからず、めくれ上がりにくい。さらに、動作によってウェアの中の空気が排出されるため、激しく動いていても涼しいのが特徴です」(高野さん)
ああ、こういうの他社でも見たことあります、と漏らすと、すかさず「高機能メディカルウェアは当社が最初に始めました」と大山さんがキッパリ。いつでもどこでも"白衣の第一人者"としての自負を忘れないのはさすがである。
と、感心しているうちに、大山さんは続いて最上級ドクターコート「4D+」シリーズのテーラードジャケット(FD-4080)を取り出した。
「このジャケットの特徴は英国調のカッチリ正統派な雰囲気。しっかりとした高級感はありながらも、親しみも感じるという、基本に忠実なドクターコートです。『かっこいいドクターコートは着たいけど、上司よりイイのはちょっと……』という若手ドクターには、同テイストのエントリーモデル(SD-3080)もありますよ」
この会社は、病院内のドクターの序列にまで気を配って白衣を作っているのだ……。もう「おみそれいたしました」という言葉しか出てこない。
●ナンバーワンとしての責任
「4D+」シリーズをはじめ、英ブランド・リバティーとのコラボモデルなど、いくつもの高級路線の白衣を並べながら、高野さんはその効能を次のように語った。
「高級な白衣を選ぶことは、気に入ったものを着ている、という充実感に加えて『この病院で働いている』というプライドを養ってくれます。またナースの場合、かわいい白衣を制服にすることで、スタッフが集まりやすくなるといった"リクルート効果"もあなどれませんね」
さて、そろそろ取材の締めくくりとして、これからの抱負を聞いてみよう。
「これだけ大きなシェアをいただいているわけですから、当社は今後もたくさんの医療機関とお付き合いしていくことになります。その上で、現場からのさまざまな声に答えて行くことが重要です。制服を変えたいといった相談をはじめ、『スクラブも欲しい』『ワンピースタイプもいいかも』という具合に、どんどんニーズが出てくる。そういった多種多様な要望を、たくさんのブランド、豊富なシリーズでカバーしていくわけです。これからも『ナガイさんなら安心だね』と選んでいただけるように、品質はもちろん、品ぞろえでも応えていきたいですね」(大山さん)
たしかに同社の商品展開は、「こんなに要る?」と言いたくなるほど幅広い。デザイン性のあるシリーズから機能性重視のモデル、キャラクターや各種ブランドのとのコラボものなどもあれば、価格帯も高低からその中間、さらにそのまた中間くらい……という具合に細分化されている。最初はつかみどころがない印象の商品展開だったが、話を聞いているうちにわかった。「なんでもある」は、業界ナンバーワンとしての責任なのだ。
たとえるなら、ナガイレーベンとは、組んで良し、離れて良し、勝ってあたりまえ――。そんな大横綱なのである。
「カラー展開も豊富」と大山さん
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「いとなギャラリー」では看護の歴史も学べる
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ドクターがまとう「尊厳と親しみ」。"最上級の医療"を届ける診察衣シリーズ ナガイレーベンの最高品質シリーズ「4D+」の白衣。正統派なデザインとシルエットが、ドクターの信頼感を高める。高級綿を使うことでしなやかなタッチと光沢感を楽しめるほか、形状安定性に優れた素材と特殊な加工によって、シワや型くずれも防止。見た目も着心地も至高の逸品。 |
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看護師だから美しい――。医療現場の女性がさらに輝く「資生堂コラボ」シリーズ 看護師向けメーク講座なども行っているナガイレーベンが、資生堂と共に開発したエレガントなメディカルウェア。日本人女性の肌をきれいに見せるカラーと上品なデザインが魅力。女性らしいやわらかさの中に、医療従事者としての凛とした佇まいものぞかせる。デザインだけでなくユニフォームとしての機能面も妥協なし。 |
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