【中国産業】「二刀流」で枠を超えるimage_maidoya3
中国産業はちょっと扱いに困るメーカーだ。個人的にグッとくる商品が多いものの、その良さを人に伝えるとなるとなかなか難しい。某社のように「カッコいい」「ワイルド」といったキーワードで括れればいいんだけど、なにか違う気がする。例えば、会社のユニフォームを最先端のワークウェアに変えたい社長がいるとして、「定番の×社にするか? それとも人気の△社かなぁ?」と呟いたなら、間髪入れず「CHUSANもチェックしましょうよ!」と言いたい。そんなメーカーなのだ。ひと目で「おおっ」となるような印象には欠けるかもしれないが、細部までじっくり見ていくと高度なデザイン性や機能性がわかる。つまり、大人気のあのメーカーがカツカレーや天丼なら、CHUSANは刺身定食といったところだろうか。脳にガツンとくるのは前者だが、しょっちゅう食べるなら後者の方がいいかもしれない。ウェア選びにも同じことが言える。「ああいう"いかにも"なヤツより、こっちのほうが面白いかもよ?」と。

中国産業
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福山駅すぐの西日本クリエイティブセンター
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新作ウェアを紹介してくれた鈴木さん
●倉敷から福山へ!
 
  編集部がやってきたのは、中国産業の西日本クリエイティブセンター。山陽新幹線の福山駅から歩いて10分ほどの事業所だ。セレクトショップを思わせるカッコいい施設で、外部からでもウェアを着たマネキンが並んでいるのが見える。
 
  ここで賢明な読者は、うん? 福山? と思ったに違いない。そう、CHUSANといえばデニム作業服が有名で、デニムといえば児島。本社は岡山県倉敷市なのだ。いわばワークウェアの聖地である倉敷・児島から、ワークウェアの総本山の福山・府中に進出してきたわけで、なんだかスゴイ話ではないか。さっそく小橋徳久社長にその意図を語ってもらおう。
 
  「ここはオープンしてもうすぐ1年。大阪より西のお客さんが訪問しやすいところは、と考えて交通の便が良く作業服の会社も多い福山を選びました。メインは常設の展示スペースで、シーズンごとの新商品や人気商品をカッコよく並べています。簡単なオフィス機能と商談スペースもあるので、この場で商品を買ってもらうだけじゃなくて、オーダーメイド製作なんかの打ち合わせもできる。もう既製品だけ売ってればいい時代じゃないですからね」
 
  とガラス張りの明るい席で話している間に、常勤スタッフがコーヒーを持ってきてくれた。まるで高級車のディーラーでオプションの相談をしているようで、気分がアガる!
 
  「いいでしょ、私もクルマでこっちに来て仕事したりしていますが、いい気分転換になりますよ。クリエイティブセンターと名付けたのもそういう意味があって、新しい拠点からなにか違った発想を得よう、と。たとえば、ここで商品説明のウェブサイトを作るとか勉強会をするとか。またCHUSANの商品を扱ってくれるショップ向けに売り場の作り方を提案したり、そこで流す販促動画を撮影したりと、お店の後方支援をする拠点にもしていきたいですね」
 
  中国産業といえば、売り場がオシャレな作業服店「ワークハウス」の運営会社としても有名。新事業所にも、店舗で培ったアイデアが注ぎ込まれているのだ。
 
  ●WIND ZONEは普段使いへ
 
  続いて、いよいよCHUSANのファン付きウェア「WIND ZONE」を紹介してもらうことに。クリエイティブセンターでは、マネキンにスイッチを入れた状態のウェアを着せている。カタログを見ていくよりずっと話が早い。ウェアがどの程度膨らむかといったことも一目瞭然だ。
 
  まず目に飛び込んできたのは、新作の「テクニカル・フードジャケット(型番8800)」。今風のカジュアル感がありながらもキッチリした雰囲気もある、CHUSANらしいテイストが特徴的な一着だ。
 
  「これは"都会派のスポーツ&カジュアル"というか。あえてワークウェアから遠ざかる色やシルエットを採用しました。ゴルフやウォーキングなどのスポーツから釣りやキャンプといったレジャーまで、普段使いにできるファン付きウェアです。ワークウェアのお店にも置いてもらいますが、ホームセンターやDIY用品のショップなんかにも積極展開していきたい。かなり野心的な商品です」
 
  仕掛けの面でも凝っている。「リムーバブルジャケット(型番8801)」は袖の脱着が可能なので「仕事中は長袖、レジャーのときは半袖」といったスタイルチェンジが可能。外した袖は背面の大容量ポケットに収納しておけば失くすことはない。なお、このポケットはファンの落下防止も兼ねている。洗練された無駄のないデザインだ。
 
  ●「穴」を制するアイデア
 
  ああ、こういう細かいギミックがCHUSANの持ち味なんだよな……、と感心していると、もっと攻めたコンセプトのウェアが出てきた。同じく今シーズンに登場した「ハイクオリティ・ケーブルレスフードベスト(型番9014)」と「ハイクオリティ・ケーブルレスカーゴパンツ(型番9015)」の上下だ。この商品ほど「実際に手に取ってご覧ください!」と言いたいものもないけれど、なんとか文字で魅力をお伝えしよう。
 
  まずスゴイのはワイヤレスであることだ。通常の空調服はバッテリーとファンをつなぐケーブルがあって、この配線処理や抜き差しががけっこう煩わしかったりするのだが、このウェアはバッテリ一体型の「ケーブルレスファン(型番9937)」を左右に入れるだけ。手軽で断線などのトラブルの心配もない。これを見ると今までウェアの内側にちまちまケーブルを通したりしていたのはなんだったんだよ、と言いたくなる。
 
  さらに衝撃を受けたのはファンの取付口である。おなじみの「丸い穴」を囲むようにジッパーが一周していて「取り外せる袖」の要領で「穴」をウェアから切り離すことができる。一体なんのために? そこに「穴」なしのパーツを入れるためだ。そんなことしてなんになる? ファン付きウェアが「普通の服」になるのだ!
 
  この発想はなかった。ファン付きウェアの「穴」を塞ぐことができれば、少し肌寒くなってきた時季にウィンドブレーカーやヤッケとして着ることができる。夏が終わったあと、ずっとクローゼットにつるされっぱなしの穴あきウェアを見て、苦々しいものを感じていたあなたも、これなら満足だろう。
 
  このようなファン取付用の「穴」を着脱できる構造は、対応のパンツ(型番9015)にも採用されている。つまり太もものサイドにジッパーで「穴」を取り付けてケーブルレスファンを取り付ければ……、そう、パンツを"空調化"できるのだ。こちらも上着と同様に「穴なしパーツ」を取り付ければ普通のカーゴパンツとなる。ちなみにオススメはファンを片方だけ付ける着こなしで、「反対側の足にもちゃんと風が通るから、これでもじゅうぶん涼しい」とのこと。
 
  パンツに電動ファンを付ける時代は、すでに始まっていた!
 
  ●空調&電熱の二刀流?
 
  袖を切り離せるようにしたり、ファン取付用の穴を塞げるようにしたりといったギミックについて、小橋さんは次のように語る。
 
  「そもそもファン付きウェアの上下って、生地から風が漏れないように作ってますから、防寒用ウェアとしても活用できるんです。ウチでは穴を閉じることができる仕組みを"二刀流"と呼んでいるのですが、たとえば安全に夜間作業ができるように視認性を高めた『ハイビス安全』のシリーズのパンツ(型番9005)は、夏はファンを取り付けて涼感仕様に、冬は穴を塞いで防寒仕様に、と一年を通じて着用できます」
 
  なるほど、じゃあ上着の方も二刀流で、防寒にチェンジですか? と言うと小橋さんはうっすら笑みを浮かべて言った。
 
  「いや、ジャケットの方は秋に電熱モデルを出そうと思っています。バッテリーにつないで発熱する最強の防寒ウェアを。この電熱ウェアと同時に発売するバッテリーはWIND ZONEでも使える共通バッテリーにする予定で、夏はファンを回し、冬はウェアを温め、という具合に、年中使えるようにする。たとえば道路公団の方なんかがよく言う『夏は極端に暑く、冬は極端に寒い』といったニーズに応えるようなシリーズにしたいですね」
 
  ウェアの穴をふさぐ「二刀流」に加えて、ひとつのバッテリーを防暑と防寒に使う"電化ウェア"構想――。できたらいいな、とは思いながらも誰も足を踏み入れてこなかった領域に、CHUSANは果敢に踏み込んでいこうとしている。
 
  「ファン付きウェアの世界じゃウチは後発だからね。他者と同じようにやるんじゃなくて、なんか面白いことしていかなくちゃ」
 
  大きなチャレンジを前に、アイデアマンの社長は飄々と語るのだった。
 
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高視認ウェアはパンツもファン付き
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「WIND ZONEをよろしく」と小橋社長

    

これこそ都会派のワーカースタイル! WIND ZONEテクニカルシリーズ

カジュアルさに大人っぽさを兼ね備えたWIND ZONE専用ジャケット。テクニカルジャケット(型番8800)はヘルメットの上からかぶれる大型フード付き。リムーバブルジャケット(型番8801)は袖を取り外しての「半袖チェンジ」が可能。大容量ポケットを兼ねたファン落下防止メッシュなど、小技の利かせ方も絶妙な逸品。


デニムならCHUSANに任せろ! WIND ZONEヴィンテージデニムシリーズ

CHUSANがジーンズの街・倉敷市から贈る「WIND ZONE」専用デニムウェア。バイオウォッシュとブラスト加工を施した生地は、ハードかつ都会的な印象。ファン付きウェアらしからぬナチュラルな雰囲気に、綿100%の馴染みよい肌触りもうれしい。フルハーネス対応モデル。