まずGROW(グロウ)を展開するサーヴォの話からさせてもらおう。2019年に社名変更した同社の旧名は「サンペックスイスト」で、2014年にサンペックスとイストが合併してできた会社。サンペックスはフード系白衣のメーカーで、イストは婦人服専門店・鈴屋にルーツを持つ事務服メーカーであり、GROWはこのイスト時代から続いている歴史あるブランドなのだ。飲食店やフード工場ユニフォームのブランド「サーヴォ」としては去年の月刊まいど屋でレポートをお伝えしているが、事務服特集に登場してもらうのは3年ぶりになる。7月に秋冬コレクションを発表したばかりとあって馬喰町のオフィスはどこか慌ただしい雰囲気。さっそく対応してくれた営業の塚本夕海さんとデザイナーの山口祥枝さんに挨拶する。「去年の取材では東京五輪の話で盛り上がってましたけど、まさかこんな世の中になるなんて……」。マスク姿で大きくうなずく2人。しかし、パンデミックだろうが何だろうが凹んではいられない。この国に事務服で働く女性がいる限り!
グロウ
スカートのウエストはゴム仕様
ポケットはフタが入り込まない形状
●GROWの模索と変化
「ここ数年のグロウはちょうど変化の時期だったんですよ。4、5年前までは、医療や金融業界をターゲットにしていたので黒無地が多かったのですが、3年くらい前からは"おもてなし系"というか、ホテルやデパートといった接客の現場で使えるエレガントな商品に力を入れてきました。背景にはオフィスでの制服需要の先細りと、東京五輪で訪日客が増えるだろうといった展望がありました。従来の事務服にはなかった目新しい色味や着こなし、プリントなどにトライし、ユニフォームとしての広がりを模索していたんです」
と、直近のグロウの展開を語るのは山口さん。一般アパレル出身なのでレディースウェアの全体像を見る広い視野を持っている。模索の数年間を抜けつつあるタイミングで予期せぬコロナ時代に突入してしまった今、どんなことを感じているのだろう?
「ここ数年の潮流として、ユニフォーム選びが『着用者目線』に変わるのを感じていました。制服を導入する企業が『従業員にこういうのを着てほしい』『スタッフをこう見せたい』という話じゃなくて、着る側、つまり働く女性が本気で着たいユニフォームを選ぶ。そんな時代になってきたということです。着たいものを着るとなると当然、デザイン的にも一般の婦人服に近づいてくる。働く女性の年齢層が上がってきているのもあって、コンシャスなものより着心地のいいゆったりしたシルエットが好まれるし、機能面でも、防シワ、ノーアイロンといった着る人にとってのメリットがハッキリしないと受け入れてもらえません」
そして、今後はこのような傾向にさらに拍車がかかるというのが山口さんの見立てだ。
「コロナ後には、ますます機能志向が強まるんじゃないでしょうか。極端な言い方をすれば、着用者にとって必要な服だけが残っていくようなイメージです。作り手である私たちも、もっと着る人が困っていることに目を向けてユニフォームを作っていかないと通用しないのでは、と危機感を持っています。オフィスウェアは着飾るものというより、機能を提供するものになっていくのではないか、と。」
華やかに見える事務服の世界だが、「デザインが気に入ったから」「見た目がかわいいから」といった理由で売れる時代は、終わりに向かっていくのかもしれない。
●制服+自由な着こなし
このように模索を重ねる一方、GROWがユーザーに提案し続けていることにコーディネートの楽しみがある。ややもすると「みんな同じ」「毎日同じ」というユニフォームの概念とはかけ離れる感もあるが、一体どういう意図があるのだろう?
「かつてはシャツの上にベストやジャケットを合わせるのが定番だったんですが、最近はインナーにカットソーを着たりするのも普通になってきました。スカーフも首元にデザインが施されたブラウスで代用するようになったりと、制服にも一般服のような自由な着こなしが広がってきています。この流れに合わせて、ユニフォームもコーディネートのできる余地を増やしていこう、というわけです。以前は『価格を抑えて見栄えのするものを』と考えた結果、上下セットになるケースが多かったのですが、最近は『クロスコーディネート』と言って、上下で違うシリーズを組み合わせるような提案をしています。たとえば、2タイプの上下にパンツをそろえてもらって、その日の気分でカラーリングを決めたりパンツスタイルにしたり、自由に楽しんでもらおう、と」
普通の服のように制服をコーディネートする――。楽しそうな気もするけれど、毎朝なにを着るか考えるのが面倒なんじゃ……。そんな顔をしていると、すぐ塚本さんのツッコミが入った。
「女性は服を選ぶのが好きなんですよ! 着まわしがきくユニフォームのほうがお決まりの上下より考え甲斐があるし、自分に合うコーディネートを見つけたときの喜びも大きい。つまり、働く楽しみが増えるんです。グロウは他メーカーより偏りがないというか、さまざまな年齢や体形に合うデザインになっているので着まわしがききます。もちろん、ただ気分で組み合わせを変えるだけじゃなく『みんなと同じは嫌だから』というのもアリですよ。私としては、制服を自由に着こなして『なりたい自分になる』という女性を応援したいですね」
グロウの最新カタログには、白のスニーカーを履いた事務服スタイルまで登場している。「制服は何を着るか考えなくていいからラク」「昔ながらの定番スタイルがいい」といった硬直した考え方に対して、オフィスの女性たちは一歩も二歩も先を行っているのだ。
●「機能を忘れてはいけない」
「たとえばコレなんか、今どきのニーズを意識した商品ですね」と、山口さんが取り出したのは、新作「エッセンシャル・バーズアイ」の上下。現代的なスタイリッシュさと華やかさがありつつも、同時に品のある落ち着いたムードも放っている。かわいさと大人っぽさを兼ね備えたちょっと不思議な感覚の事務服だ。
「まず大前提として、若い人にしか似合わないものはダメなんです。働く女性の年齢層はさまざまですから、新入社員から中高年まで違和感なく着ることができて、年相応の美しさが出せるものでなくてはならない。このエッセンシャル・バーズアイは、ふんわりしたウールタッチの素材を立体縫製して、柔らかで上品な雰囲気を出しました。女性らしいシルエットは守りつつも、体のラインはあまり出ないようにしています。着用者の年齢を問わないゆったりフィットで適度にストレッチするため、体になじんで長い時間着ていても疲れにくい。見た目は一般服のようで着まわしもきいて、耐久性はユニフォーム品質。新作の中でもイチ押しです」
生地は、消臭・制菌加工「デオファクター」が施されているので、汗が付いたままロッカーに入れても、また気持ちよく着られる。スカートはウエストが3cm伸びるストレッチ仕様で、パンツは脚が美しく見える後ろゴム。デザイン面だけでなく、お手入れや着心地のラクを実現する機能の面でもスキはなし。見た目は一般服のようでいて、じつはユニフォームの王道と言える一品なのだ。
「これから、スペックは高くて当たり前の時代になってくるでしょう。ファッション性に目が行きがちですが、やはりユニフォームは仕事をするためのものですから機能を忘れてはいけない。コロナ後の社会でも、人と会わないとできない仕事があるし、デジタル技術で置き換えられない作業は残っていくでしょう。GROWは、新時代になっても現場で働く女性たちを支えていきます」(山口さん)
会社だけでなく産業構造そのものにも大変革が迫られるなか、これから女性はどんなスタイルで働いていけばいいのか? GROWの次なる提案にも注目だ。
「ここ数年のグロウはちょうど変化の時期だったんですよ。4、5年前までは、医療や金融業界をターゲットにしていたので黒無地が多かったのですが、3年くらい前からは"おもてなし系"というか、ホテルやデパートといった接客の現場で使えるエレガントな商品に力を入れてきました。背景にはオフィスでの制服需要の先細りと、東京五輪で訪日客が増えるだろうといった展望がありました。従来の事務服にはなかった目新しい色味や着こなし、プリントなどにトライし、ユニフォームとしての広がりを模索していたんです」
と、直近のグロウの展開を語るのは山口さん。一般アパレル出身なのでレディースウェアの全体像を見る広い視野を持っている。模索の数年間を抜けつつあるタイミングで予期せぬコロナ時代に突入してしまった今、どんなことを感じているのだろう?
「ここ数年の潮流として、ユニフォーム選びが『着用者目線』に変わるのを感じていました。制服を導入する企業が『従業員にこういうのを着てほしい』『スタッフをこう見せたい』という話じゃなくて、着る側、つまり働く女性が本気で着たいユニフォームを選ぶ。そんな時代になってきたということです。着たいものを着るとなると当然、デザイン的にも一般の婦人服に近づいてくる。働く女性の年齢層が上がってきているのもあって、コンシャスなものより着心地のいいゆったりしたシルエットが好まれるし、機能面でも、防シワ、ノーアイロンといった着る人にとってのメリットがハッキリしないと受け入れてもらえません」
そして、今後はこのような傾向にさらに拍車がかかるというのが山口さんの見立てだ。
「コロナ後には、ますます機能志向が強まるんじゃないでしょうか。極端な言い方をすれば、着用者にとって必要な服だけが残っていくようなイメージです。作り手である私たちも、もっと着る人が困っていることに目を向けてユニフォームを作っていかないと通用しないのでは、と危機感を持っています。オフィスウェアは着飾るものというより、機能を提供するものになっていくのではないか、と。」
華やかに見える事務服の世界だが、「デザインが気に入ったから」「見た目がかわいいから」といった理由で売れる時代は、終わりに向かっていくのかもしれない。
●制服+自由な着こなし
このように模索を重ねる一方、GROWがユーザーに提案し続けていることにコーディネートの楽しみがある。ややもすると「みんな同じ」「毎日同じ」というユニフォームの概念とはかけ離れる感もあるが、一体どういう意図があるのだろう?
「かつてはシャツの上にベストやジャケットを合わせるのが定番だったんですが、最近はインナーにカットソーを着たりするのも普通になってきました。スカーフも首元にデザインが施されたブラウスで代用するようになったりと、制服にも一般服のような自由な着こなしが広がってきています。この流れに合わせて、ユニフォームもコーディネートのできる余地を増やしていこう、というわけです。以前は『価格を抑えて見栄えのするものを』と考えた結果、上下セットになるケースが多かったのですが、最近は『クロスコーディネート』と言って、上下で違うシリーズを組み合わせるような提案をしています。たとえば、2タイプの上下にパンツをそろえてもらって、その日の気分でカラーリングを決めたりパンツスタイルにしたり、自由に楽しんでもらおう、と」
普通の服のように制服をコーディネートする――。楽しそうな気もするけれど、毎朝なにを着るか考えるのが面倒なんじゃ……。そんな顔をしていると、すぐ塚本さんのツッコミが入った。
「女性は服を選ぶのが好きなんですよ! 着まわしがきくユニフォームのほうがお決まりの上下より考え甲斐があるし、自分に合うコーディネートを見つけたときの喜びも大きい。つまり、働く楽しみが増えるんです。グロウは他メーカーより偏りがないというか、さまざまな年齢や体形に合うデザインになっているので着まわしがききます。もちろん、ただ気分で組み合わせを変えるだけじゃなく『みんなと同じは嫌だから』というのもアリですよ。私としては、制服を自由に着こなして『なりたい自分になる』という女性を応援したいですね」
グロウの最新カタログには、白のスニーカーを履いた事務服スタイルまで登場している。「制服は何を着るか考えなくていいからラク」「昔ながらの定番スタイルがいい」といった硬直した考え方に対して、オフィスの女性たちは一歩も二歩も先を行っているのだ。
●「機能を忘れてはいけない」
「たとえばコレなんか、今どきのニーズを意識した商品ですね」と、山口さんが取り出したのは、新作「エッセンシャル・バーズアイ」の上下。現代的なスタイリッシュさと華やかさがありつつも、同時に品のある落ち着いたムードも放っている。かわいさと大人っぽさを兼ね備えたちょっと不思議な感覚の事務服だ。
「まず大前提として、若い人にしか似合わないものはダメなんです。働く女性の年齢層はさまざまですから、新入社員から中高年まで違和感なく着ることができて、年相応の美しさが出せるものでなくてはならない。このエッセンシャル・バーズアイは、ふんわりしたウールタッチの素材を立体縫製して、柔らかで上品な雰囲気を出しました。女性らしいシルエットは守りつつも、体のラインはあまり出ないようにしています。着用者の年齢を問わないゆったりフィットで適度にストレッチするため、体になじんで長い時間着ていても疲れにくい。見た目は一般服のようで着まわしもきいて、耐久性はユニフォーム品質。新作の中でもイチ押しです」
生地は、消臭・制菌加工「デオファクター」が施されているので、汗が付いたままロッカーに入れても、また気持ちよく着られる。スカートはウエストが3cm伸びるストレッチ仕様で、パンツは脚が美しく見える後ろゴム。デザイン面だけでなく、お手入れや着心地のラクを実現する機能の面でもスキはなし。見た目は一般服のようでいて、じつはユニフォームの王道と言える一品なのだ。
「これから、スペックは高くて当たり前の時代になってくるでしょう。ファッション性に目が行きがちですが、やはりユニフォームは仕事をするためのものですから機能を忘れてはいけない。コロナ後の社会でも、人と会わないとできない仕事があるし、デジタル技術で置き換えられない作業は残っていくでしょう。GROWは、新時代になっても現場で働く女性たちを支えていきます」(山口さん)
会社だけでなく産業構造そのものにも大変革が迫られるなか、これから女性はどんなスタイルで働いていけばいいのか? GROWの次なる提案にも注目だ。
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エレガントの中に優しさと親しみを 上質ウールタッチの「エッセンシャル・バーズアイ」 大人っぽい上品さともに優しくて穏やかな印象を与える女性用オフィス服。ウールのような風合いの素材「エッセンシャル・バーズアイ」は柔らかくて着心地もふんわり。消臭・制菌加工「デオファクター」に加えて、適度なストレッチ性で体になじむ。スカートはウエストが3cm伸びるストレッチ仕様。パンツは後ろゴムで美脚効果アリ。 |
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