【フォーク】「ラク」の中に美を追究!image_maidoya3
フォークというと「ああ、スクラブの会社ね」という反応が返ってくるかもしれない。代表作「ジップスクラブ」は、医療用ユニフォームとして名の通った存在で、看護師や医者のファンも多い。しかし、同社は白衣より事務服メーカーとしてはるかに長い歴史を持っているのだ。半世紀以上も続いてきたフォークの事務服の現ブランド名は「nuovo(ヌーヴォ)」。知名度では大手に劣るものの、服飾系大学との協同による研究開発や、メディカル系ユニフォームで培った技術を使った商品など、ユニークな企画で事務ユニフォームの世界に波紋を起こしている。いくらスクラブが好評を博しても、アイデンティティの中心には事務服があるのだ。編集部が訪ねたときも、フォーク本社のショーウインドウにはスクラブと並んでnuovoの事務服が並んでいた。そこまでプッシュするなら、ぜひ見せてもらおうじゃないか「事務服のフォーク」の実力を!

フォーク
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安西さん(左)と川口さん
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新作の「エスウールニット」ジャケット
●「定番」に込めた想い
 
  「nuovoの特徴はベーシックな商品が多いこと。いろいろなジャンルに手を広げるのではなく、ベスト・スカート・ジャケットといった定番のイメージを大事にしています。他社さんのようなかわいさやエレガントさに特化した商品はウチのやることじゃないかな、と。もともと地方の企業がメインのお客さんなので、オーソドックスなものが求められているという事情もあります。日本のOLの平均年齢は今や45歳くらいと言われているし、新しい人もなかなか入ってこない。そんな中で確実に売れる定番モノを強化していくのが大事ですね。とは言いつつ、ホテルのフロントや土産物屋さん、カーディーラーといった接客ユニフォームの分野も開拓していこうとしているんですけど」
 
  こう語るのは営業の川口知大さん。慎重に言葉を選びながらnuovoの持ち味を説明する。地方や中小企業では、いまでも事務服と言えば定番のベストやスカートで、制服のニーズは確固としてある。しかし、日本企業を全体的に見ると、制服コストの削減やカジュアルワークの推進など、事務服メーカーにとっては厳しい環境が続いている。このような状況で、大手が「制服らしくない制服」やフェミニン・カワイイ路線といった新分野に力を入れるなら、nuovoは逆にベーシック路線を行こう、というわけだ。
 
  「デザイナーに対して『どんどん新しいアイテムを作ってよ』と言いたい気持ちはありますよ。もっとかわいく、もっとカジュアルにと、リクエストすればいくらでも作ってくれるでしょう。しかし、そういうやり方は制服としてはどうかな、と。アパレル寄りのデザインやラクな着心地ばかりに流れると、ユニフォームの本質から離れてしまう。マーケットは意識しつつも、やはり長く着てもらうためには『見た目はシンプルだけど違いがある』という商品が求められていると思うんです。開発する側は大変だと思いますが……」
 
  というわけで、次は企画室室長の下北裕樹さんに語ってもらおう。
 
  ●スクラブを事務服に?
 
  「スクラブがヒットしたおかげで白衣が伸びてますけど、事務服も同じくらいのウェイトで売っていきたいんですよ、ホントは。そのカギになるのが、メディカルとオフィスの"相互乗り入れ"じゃないかと考えています。他社が事務服のすそ野を広げていくなら、ウチは医療系ユニフォームのデザインや技術を事務服に持ってきて、新しい提案をしていこう、と。すでに当社のお客さんで、病院の事務所のユニフォームとしてスクラブを採用したケースがありますが、医療に限らず普通のオフィスでもイケるんじゃないか、どういうデザインなら医療以外でも違和感がないか、とかいろいろ案を練っています。ゆくゆくは『事務服といえばベストやオーバーブラウス』といった既成概念を打ち破ってみたいですね」
 
  スクラブはいまや病院に限らず介護や整体といった分野でもおなじみ。機能的かつ着心地もラクで、イメージも非常にいい。また、コロナ後の世の中では衛生面もさらに評価されるようになるだろう。スクラブの着用シーンがどんどん広がって、ついにオフィスまでやってくるという未来は、想像するとワクワクする。
 
  一方、若手デザイナーの安西亮さんは、ニーズの高い「ラクな事務服」を新しい解釈で実現しようとしている。
 
  「制服において『ラク』は大事な要素ですが、nuovoでは『究極のコンフォート』という言葉で表現しています。市場ではニット素材やストレッチ仕様の事務服が売れていますが、当社の『究コン』シリーズのベストは、パターン(裁断用の型紙)を改良することで、美しさと快適な着心地を実現しました。アームホールも工夫して、腕を大きく動かしても胸の部分が浮いたり潰れたりしないように作っています」
 
  「究極コンフォート」シリーズの開発は、"トリプルコラボ"で行っている。文化学園大学、篠崎彰大氏(前ワコール人間科学研究所 所長)の協力を得て、現代女性に合うシルエットと快適な着心地を研究。文化学園大学で30年間蓄積された採寸データに現代女性の体形データを加えて分析し、パターンの原型から見直すことで動きやすく美しいシルエットを実現した。
 
  ●「ラク」だけでいいのか
 
  そんな「究コン」シリーズのベストはややタイトな印象。凛とした美しさがある一方、「ラクですよ~」という雰囲気はほとんど感じない。
 
  「ゆったりしてないから、あまりラクそうに見えないんだと思いますよ。しかし、文化学園大学の学生さんや先生、当社の社員にモニターしてもらった結果、他社製品より快適で動きやすいというデータが出ています。じつは、日本人女性の体形というのは現代になってかなり変わってきていて、大まかに言うと立体的になってきているんです。ただサイズが大きくなっただけじゃなく、体全体のバランスが大きく変わっている。そこで『究コン』シリーズでは、ミリ単位でパターンを見直し、現代女性の体にピッタリ合って、しかも動きやすい形をイチから考えたわけです」(安西さん)
 
  ニット素材やストレッチ生地、ゆったりとしたシルエットなど、『ラクな制服』を作る方法はいくらでもある。しかし、nuovoは、いちばん手間がかかって困難なアプローチを選んだというわけだ。
 
  「服と体の間に空間を取れば着心地はすごくラクなんですが、そうすると制服らしく見えない。動きやすさや快適さを求めつつも、あえてシルエットの美しさにこだわった理由には、『ラクばかりに流れるのはちょっと……』という気持ちもありましたね」
 
  と、ベストのウェストラインに手を当てる安西さん。うっすら浮かべた笑みの中に、職人気質が垣間見えた。
 
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自信作の「究コン」ベスト
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シンプルさの中に工夫を込める

    

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