愛とスマイル、愛とスマイル♪ ……この文字列を見て頭の中に音楽が流れたら、貴方は立派は作業服マニア、いやワークウェア・ホリックと呼ぶべきかもしれない。どっちでもいいだろ、なんて冷たいことは言わず、まあ聞いて下さい。この『愛とスマイル愛とスマイル』を歌うのは、ごぞんじ柴咲コウ。アイトス提供のテレビ番組『AI(アイ)と TOZ(トス)の LOVE 働く体操』のテーマソングとして数年前までお茶の間に流れていた"伝説的ワークウェアソング"だ。椎名林檎がプロデュースした柴咲コウ29枚目のシングル『野生の同盟』にも収録されているから、そこらへんのPRソングとはわけが違う。しかも「仕事キリアゲ」「気持ちキリカエ」など、ユニフォームや作業服を想起させるフレーズが随所に埋め込まれている。すげぇ、すげぇよアイトス! ただ、このように派手なPR展開をしつつも、同社の雰囲気は相変わらず控えめ。会社が注目されることより陰で働く人を支えることを目指す、古き良きユニフォームメーカーなのだ。
アイトス
アイトスの防寒ラインナップ
リニューアルした「ムービンカット」
●コロナでも絶好調
東京・浅草橋のアイトス本社。展示フロアのミーティングスペースは感染対策のアクリル板で仕切られ、やや張り詰めたムードだった。だが、そこに現れた菊池さんと柴山さんは、かなり上機嫌。新型コロナ対策に苦労しつつも、7月には秋冬物の展示会を開催したほか、ロングセラー商品のリニューアルにも成功するなど、今シーズンの営業も好調のようだ。
「納入業者さん向けの展示会は秋葉原で行いました。人との接触を避けるために、ブースごとに動画を流して、フロアの様子をインターネットでライブ配信したりして。展示会を中止したメーカーも多かったなか、開催できたのは良かったんですけど、地方の人には申し訳なかったですね。ずっと制服らしい制服を作ってきた"優等生"のアイトスですが(笑)、ここ2、3年でデザインはだいぶカジュアルになってきました。それでも、たとえばこのブルゾン(型番AZ-2501)のように、ポリウレタンを使わずストレッチ性のあるスポーティーな作業服を作ったりと、ユニフォーム屋として大事なことは守っていますよ」(菊池さん)
一般的なストレッチ作業服はポリウレタン素材を配合しているが、アイトスの高耐久モデルは、東レ開発のバネ状の加工糸を使った生地「ライトフィックス」を使用。伸び縮みを繰り返してもほとんど劣化しないストレッチ作業服を実現させた。このように、非常に実直なものづくりをしているのだ。
「今年は人気商品の『ムービンカット』をはじめてリニューアルし、新モデル(型番AZ-6801)を発売しました。20年も売れ続けているロングセラー商品ですが、ストレッチ素材と立体裁断でさらに動きやすくなっています。シルエットもやや細くなりましたけれど、細身というほどではない。好評を受けて、来年には夏バージョンも発表する予定です。それから、旧モデル(型番AZ-6321)も、廃番にせず作り続けていくので、ユーザーさんはご安心ください。旧モデルは企業のほか工業高校などでも使われていて、根強い需要があるんです。どんなヒット商品でも10年もすれば下降していくのに、これは20年経った今でも売れつづけている。ホントにすごい商品ですよ」
同じ服が何十年も売れ続ける――。こんな作業着の世界でしか聞けないサクセスストーリーも飛び出したことだし、そろそろ今シーズンの防寒の話に移ろう。
●気候変動ニーズに対応
「暖冬が続いたでしょ? その結果、重防寒は売れないから軽防寒だ、ってことで中綿をどんどん減らしていった。これがここ数年の流れなんだけど、それじゃあメーカーとして面白くない。ただ暖かいだけじゃなくて、ウェアごとに何か特化した機能を持たせて、それを売りにしていこう! というわけで今年は三つの柱を立てた。防水防寒・制電防寒・光電子綿です」(柴山さん)
まず防水防寒から見ていこう。代表モデルは防水防寒ジャケット(型番AZ-8876)。仕事に限らず、街やアウトドアでも使えそうなスポーティーな見た目だ。しかし、ただカジュアルなだけではない。脇部分のリフレクターが、ほどよい"ワーク感"を醸し出している。「普通の服」にならないよう気を配っているのが実にアイトスらしい。
「うちは防水防寒モデルが少なかったのですが、気候変動にからむニーズも意識してデビューさせました。デザインはカジュアルなのに機能はレインウェア並み。耐水性・透湿性のスペックも高いから、浸水せず、蒸れず、快適に動ける。それでいて薄手だから意識せず着られるのもポイント。新潟や北陸など、雨や雪の多い地域にオススメです。あと、リフレクターを多用することで視認性をかなり強くしてあるので、冬の朝や夕方の活動なんかにもいい。作業着の基本は安心安全ですから」
「上下揃いカラー」ではなくカジュアルに着てもらうため、パンツは黒のみ。フードを外せば企業ユニフォームとしても違和感がない。これ一着あれば、急に雨や雪が降ってきても、暗くなっても心配無用! というわけだ。
続いて2つ目の柱は「制電防寒」。新作の制電防寒ブルゾン(型番AZ-9366)が代表モデルだ。先ほどの、防水防寒がかなりカジュアルだったのに対し、こちらはいかにもワーキングウェアな雰囲気。たしかに冬場は静電気がパチパチして困ったりする。ただ「制電」は防寒ラインナップの柱にするほどのニーズのある機能ではない気もするのだが……。
「帯電防止の安全規格「JIS T8118」に適合モデル。普通の職場では要らないけれど、現場によっては要る機能です。こういう商品は、爆発的に売れるわけではないが、必要とする人は必ずいる。じつは、うちには10年くらい前に発売した制電防寒アウターがあるんです。ただ、さすがに少し古臭く感じてきたので、リニューアルのついでに制電防寒の主力にしよう、と。上下ものとして企業制服に採用してもらうため、見た目はカジュアルにせず、ユニフォームらしく。このねらいが上手くいって、電機メーカーにも納入されました」
売れる・売れないではなく、必要な人に必要なウェアを届ける――。これが仕事着メーカーの使命なのだ。
●光電子で免疫UP!
さて、三つの柱の最後は「光電子」である。「なんじゃそりゃ?」という声が聞こえてきそうなので、簡単に説明しておこう。光電子とは、繊維の中に細かいセラミック粒子を練りこむ技術のこと。これをウェアの中綿などに使うと、セラミック粒子が体から放出される体温を吸収し、遠赤外線を体に輻射する。つまり、体の熱をロスせずに済むわけだ。
暖かさは普通綿の2倍。光電子なら薄手でも大丈夫というわけだ。そんな光電子繊維はアウトドアウェアで人気の技術だが、ワーキングで展開するのはアイトスだけ。今シーズンは、光電子中綿を使って2タイプの防寒ジャケット(型番AZ-6174、AZ-6169)を発売した。柴山さんは、「ただ暖かいだけと思われちゃ困る」とばかりに前のめりで語り始めた。
「他社では体から出てくる水蒸気で暖かくなる『吸湿発熱』の中綿とかあるけど、こっちは輻射熱。発熱までいくと暑くなっちゃうんだよね。輻射熱というのは要するに『保温』であって、自分の熱を使っているから体に優しい。光電子を着ると、肌から放射される遠赤外線を繊維が反射して戻してくれる。その結果、体温をキープできる。遠赤外線は水分の発散を助けるからムレも解消できて、着心地もいいというわけ」
言われてみれば「発熱」をうたうウェアは動いているうちに汗ばんだりした記憶がある。冬に駅前で立ち続ける政治家でもなければ「保温」の方がいいのだろう。しかも、柴山さんによれば、光電子にはさらに"ご利益"があるという。
「遠赤外線は、表面だけじゃなく中まで届くから、体の芯から温めて保温できる。その結果、冷えを解消し、血行を促進できるから代謝も上がる。だから、光電子は寝具なんかでも使われています。保温によるリラクゼーション効果だね。体温を少しアップさせれば免疫力がアップするって最近よく聞くでしょ? 光電子で熱を逃さないようにすることで、風邪の予防にもなる。……そう、まさに新型コロナの感染対策、ウィズ・コロナ時代にうってつけの防寒アイテムなんですよ」
自慢の光電子は単なる防寒ウェアではない。なんと、パンデミックを生き抜くためのアイテムだった! 暖かいのは当たり前、ワークウェアには機能がなくちゃ――。そんな心意気をビンビン感じるアイトスであった。
東京・浅草橋のアイトス本社。展示フロアのミーティングスペースは感染対策のアクリル板で仕切られ、やや張り詰めたムードだった。だが、そこに現れた菊池さんと柴山さんは、かなり上機嫌。新型コロナ対策に苦労しつつも、7月には秋冬物の展示会を開催したほか、ロングセラー商品のリニューアルにも成功するなど、今シーズンの営業も好調のようだ。
「納入業者さん向けの展示会は秋葉原で行いました。人との接触を避けるために、ブースごとに動画を流して、フロアの様子をインターネットでライブ配信したりして。展示会を中止したメーカーも多かったなか、開催できたのは良かったんですけど、地方の人には申し訳なかったですね。ずっと制服らしい制服を作ってきた"優等生"のアイトスですが(笑)、ここ2、3年でデザインはだいぶカジュアルになってきました。それでも、たとえばこのブルゾン(型番AZ-2501)のように、ポリウレタンを使わずストレッチ性のあるスポーティーな作業服を作ったりと、ユニフォーム屋として大事なことは守っていますよ」(菊池さん)
一般的なストレッチ作業服はポリウレタン素材を配合しているが、アイトスの高耐久モデルは、東レ開発のバネ状の加工糸を使った生地「ライトフィックス」を使用。伸び縮みを繰り返してもほとんど劣化しないストレッチ作業服を実現させた。このように、非常に実直なものづくりをしているのだ。
「今年は人気商品の『ムービンカット』をはじめてリニューアルし、新モデル(型番AZ-6801)を発売しました。20年も売れ続けているロングセラー商品ですが、ストレッチ素材と立体裁断でさらに動きやすくなっています。シルエットもやや細くなりましたけれど、細身というほどではない。好評を受けて、来年には夏バージョンも発表する予定です。それから、旧モデル(型番AZ-6321)も、廃番にせず作り続けていくので、ユーザーさんはご安心ください。旧モデルは企業のほか工業高校などでも使われていて、根強い需要があるんです。どんなヒット商品でも10年もすれば下降していくのに、これは20年経った今でも売れつづけている。ホントにすごい商品ですよ」
同じ服が何十年も売れ続ける――。こんな作業着の世界でしか聞けないサクセスストーリーも飛び出したことだし、そろそろ今シーズンの防寒の話に移ろう。
●気候変動ニーズに対応
「暖冬が続いたでしょ? その結果、重防寒は売れないから軽防寒だ、ってことで中綿をどんどん減らしていった。これがここ数年の流れなんだけど、それじゃあメーカーとして面白くない。ただ暖かいだけじゃなくて、ウェアごとに何か特化した機能を持たせて、それを売りにしていこう! というわけで今年は三つの柱を立てた。防水防寒・制電防寒・光電子綿です」(柴山さん)
まず防水防寒から見ていこう。代表モデルは防水防寒ジャケット(型番AZ-8876)。仕事に限らず、街やアウトドアでも使えそうなスポーティーな見た目だ。しかし、ただカジュアルなだけではない。脇部分のリフレクターが、ほどよい"ワーク感"を醸し出している。「普通の服」にならないよう気を配っているのが実にアイトスらしい。
「うちは防水防寒モデルが少なかったのですが、気候変動にからむニーズも意識してデビューさせました。デザインはカジュアルなのに機能はレインウェア並み。耐水性・透湿性のスペックも高いから、浸水せず、蒸れず、快適に動ける。それでいて薄手だから意識せず着られるのもポイント。新潟や北陸など、雨や雪の多い地域にオススメです。あと、リフレクターを多用することで視認性をかなり強くしてあるので、冬の朝や夕方の活動なんかにもいい。作業着の基本は安心安全ですから」
「上下揃いカラー」ではなくカジュアルに着てもらうため、パンツは黒のみ。フードを外せば企業ユニフォームとしても違和感がない。これ一着あれば、急に雨や雪が降ってきても、暗くなっても心配無用! というわけだ。
続いて2つ目の柱は「制電防寒」。新作の制電防寒ブルゾン(型番AZ-9366)が代表モデルだ。先ほどの、防水防寒がかなりカジュアルだったのに対し、こちらはいかにもワーキングウェアな雰囲気。たしかに冬場は静電気がパチパチして困ったりする。ただ「制電」は防寒ラインナップの柱にするほどのニーズのある機能ではない気もするのだが……。
「帯電防止の安全規格「JIS T8118」に適合モデル。普通の職場では要らないけれど、現場によっては要る機能です。こういう商品は、爆発的に売れるわけではないが、必要とする人は必ずいる。じつは、うちには10年くらい前に発売した制電防寒アウターがあるんです。ただ、さすがに少し古臭く感じてきたので、リニューアルのついでに制電防寒の主力にしよう、と。上下ものとして企業制服に採用してもらうため、見た目はカジュアルにせず、ユニフォームらしく。このねらいが上手くいって、電機メーカーにも納入されました」
売れる・売れないではなく、必要な人に必要なウェアを届ける――。これが仕事着メーカーの使命なのだ。
●光電子で免疫UP!
さて、三つの柱の最後は「光電子」である。「なんじゃそりゃ?」という声が聞こえてきそうなので、簡単に説明しておこう。光電子とは、繊維の中に細かいセラミック粒子を練りこむ技術のこと。これをウェアの中綿などに使うと、セラミック粒子が体から放出される体温を吸収し、遠赤外線を体に輻射する。つまり、体の熱をロスせずに済むわけだ。
暖かさは普通綿の2倍。光電子なら薄手でも大丈夫というわけだ。そんな光電子繊維はアウトドアウェアで人気の技術だが、ワーキングで展開するのはアイトスだけ。今シーズンは、光電子中綿を使って2タイプの防寒ジャケット(型番AZ-6174、AZ-6169)を発売した。柴山さんは、「ただ暖かいだけと思われちゃ困る」とばかりに前のめりで語り始めた。
「他社では体から出てくる水蒸気で暖かくなる『吸湿発熱』の中綿とかあるけど、こっちは輻射熱。発熱までいくと暑くなっちゃうんだよね。輻射熱というのは要するに『保温』であって、自分の熱を使っているから体に優しい。光電子を着ると、肌から放射される遠赤外線を繊維が反射して戻してくれる。その結果、体温をキープできる。遠赤外線は水分の発散を助けるからムレも解消できて、着心地もいいというわけ」
言われてみれば「発熱」をうたうウェアは動いているうちに汗ばんだりした記憶がある。冬に駅前で立ち続ける政治家でもなければ「保温」の方がいいのだろう。しかも、柴山さんによれば、光電子にはさらに"ご利益"があるという。
「遠赤外線は、表面だけじゃなく中まで届くから、体の芯から温めて保温できる。その結果、冷えを解消し、血行を促進できるから代謝も上がる。だから、光電子は寝具なんかでも使われています。保温によるリラクゼーション効果だね。体温を少しアップさせれば免疫力がアップするって最近よく聞くでしょ? 光電子で熱を逃さないようにすることで、風邪の予防にもなる。……そう、まさに新型コロナの感染対策、ウィズ・コロナ時代にうってつけの防寒アイテムなんですよ」
自慢の光電子は単なる防寒ウェアではない。なんと、パンデミックを生き抜くためのアイテムだった! 暖かいのは当たり前、ワークウェアには機能がなくちゃ――。そんな心意気をビンビン感じるアイトスであった。
光電子中綿の「AZ-6174」
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菊池さん(左)と柴山さん
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防寒アウターのフラッグシップ! 着心地も極上のストレッチ「光電子ジャケット」 ハイテク素材「光電子繊維」の中綿を使ったストレッチ仕様の防寒アウター。繊維に練りこまれたセラミック粒子が体から放射される遠赤外線を反射し、体の芯から温める。光電子素材には、快適な温度をキープする保温効果に加え、水分の発散させる効果もあるので、長時間着用によるムレの心配もなし。男女兼用。 |
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屋外作業からスポーツまで! カラーも豊富な「光電子ジャケット」 ハイテク素材「光電子繊維」の中綿を使った軽防寒アウター。繊維に練りこまれたセラミック粒子が体から放射される遠赤外線を反射し、快適な温度をキープする。フードは収納可能。肩と背中に反射材を使っており、視認性もよし。全7色なので部門別カラーでユニフォームにするのもオススメ。男女兼用。 |
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