【桑和】野外系でいこう!image_maidoya3
国産ジーンズの街、児島。倉敷市の南端というより、瀬戸大橋の岡山側といった方がわかりやすいだろうか。そんな立地なので岡山駅からは広島方面に向かう山陽本線ではなく、高松行きの瀬戸大橋線で向かう。特急マリンライナーは、普通車両に乗れば特急券は不要。せっかくなら瀬戸大橋を渡ってしまいたいところだが、クロスシートの車両で海に向かって進むだけでも気が晴れるもので、ややリゾート感がある。30分ほどで児島駅に到着。久しぶりだから記念に「JEANS STATION」の言葉が入った名物の駅名標でも撮っておくか……、とホームの端まで歩いていくと、桑和の看板に出くわした。そこに書かれた「仕事に誇り」の文字に頷いていると、なんと隣には「児島はジーンズだけじゃない! 作業服もある」の文字が。うわ、なんだこのストレートな自己主張は! と思ったらこちらも桑和の看板だった。なるほど、メーカーも自己PRが大事なのだ。誰かが良さに気づいてくれるまで待つなんて姿勢じゃダメなんだ! と活を入れられた気がした編集部は、背筋を伸ばして桑和の本社に向かった。

桑和
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「防水防寒ブルゾン」は北海道仕様
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箱もカッコいい「ヒートベスト」
●繊維品質管理士とは
 
  以前「ジーンズソムリエ」の資格を持つ若手企画マンとして登場してもらった後藤さん。久しぶりの取材となるが、相変わらず爽やかだ。コロナ禍にもかかわらず、非常に充実した雰囲気、いやそれどころかめちゃくちゃ楽しそうである。その理由は、2年がかりの努力が実ったから。この9月にファッション業界の資格、TES(繊維製品品質管理士)に合格したばかりなのだ。
 
  「この世界って、仕事しながら覚えていくのが普通じゃないですか。自分の成長だけならそれでいいけれど、企画担当者として下の子に教えたり、取引先と上手く連携したりしていくためには、経験に加えてもっと体系立った知識を学ぶことが必要なんじゃないか、という話になったんです。繊維業界には国家資格はないけれど、日本衣料協会認定の歴史ある資格・TESがある。そこで『みんなでTESをとりましょう!』という話になって、去年から勉強を始めました」
 
  TES(Textiles Evaluation Specialist)資格は、1981年の通商産業省の告示に基づいて生まれたもの。繊維製品の品質・性能の向上を図るほか、消費者からクレームが出ないような製造・販売体制を作るスペシャリストの養成を目指している。繊維の基本から染色・縫製・加工といった製造過程、素材や付属品の知識、さらには流通や消費者問題まで一貫してマスターしなければならない難関資格なのだ。
 
  「資格取得には論述を含めた5つのテストをクリアしないといけなくて、1回の受験で取得できる人は20%くらい。桑和では2019年に2人合格、2020年に4人が合格しました。私は、去年4つクリアしたいたので今年プラス1で、なんとか合格です。事故事例をもとにした論述問題とか、すっごく苦労しました。でも、ワークウェア業界の人だけじゃなく、カジュアル衣料や生地業界の人、それに染色や品質試験の会社の人なんかにも知り合えたし、いい経験でしたよ」
 
  TESの受験日は7月初旬。コロナの緊急事態宣言をはじめ、外出自粛やオフィスの感染対策やらでバタバタの時期だったと思うのだが……。
 
  「毎日、平日は仕事が終わってから1時間、土日は3時間、時間を決めて勉強していました。僕は野球観戦が好きでしょっちゅうスタジアムに行ってたんですけど、コロナのせいで行けないから、家でひたすら勉強です……。まあ、机に向かうにはいい時期だったかもしれません」
 
  ●もはや冬山仕様!?
 
  というわけで、晴れて繊維品質管理士となった後藤さんにイチオシの防寒アイテムを聞いていこう。まず、今シーズンの新作で売れているのは……と、言いながらテーブルに広げたのは「防風防寒ブルゾン(型番7174-00)」。ワークに限らずアウトドアからタウンユースまでOKなそのデザインは、言ってしまえば流行りのマウンテンパーカーだ。ワークウェアのカジュアル化はどんなメーカーにも共通する傾向だが、これはもはやワーキング感ゼロ。作業着のショップで扱うってどうなんだろう……という気がしないでもないが、普通に欲しい。安いし。
 
  「イチオシです! アウトドア風だけどストリート感もある。この商品に限ってはワークウェアの雰囲気は意図的になくしました。タスラン加工という柔らかくてふわっとした糸を使うことで、ポリエステルなのに綿のような風合いを出しています。中綿も少なくてすごく軽いのに防風仕様でしっかり暖かい。秋から冬まで、仕事からレジャーまで、非常に活用度の高いアウターですね。自分が作ったからめちゃくちゃ思い入れがあります」
 
  10月の時点でほぼ完売というから、その人気は本物だ。「作業着メーカーだから」と中途半端にワーキング感を残すのではなく、商品趣旨によっては潔く捨てる。そんな企画屋としての判断力には唸らされる。
 
  続いて「これ見てください」と、後藤さんが取り出したのは重防寒アウターの「防水防寒ブルゾン(型番7114-00)」。またしてもアウトドア風ではあるが、カラーリングがふるっている。とくに「リアルツリーカモ」はワーキングはもちろん一般アパレルでも見たことがない独特のガラ。一体なぜこんなトンガった防寒ウェアを?
 
  「じつはこれ、北海道ユーザーの声で作った"北海道仕様"のアウターなんです。ほら、ここ見てください」
 
  と指さした背中のブランドタグには、おなじみ「SOWA」ロゴではなく、北海道のカタチと共に「アルポプケ」の文字が並んでいる。謎は深まるばかりだ。
 
  「アルポプケは、アイヌ語で『とても暖かい』という意味。この商品のために開発した高機能な中綿の名前です。抗菌・防臭・消臭といった衛生仕様に加えて、発熱・蓄熱の機能まである。さらにレインウェア並みの防水透湿性能を持たせているから、雨や雪の心配もなくムレも気になりません。いい生地にいい中綿を使って、デザインはハイエンドなアウトドアギア風。パンツはテーパードの美しいシルエット。狙い通り、北海道や東北で売れています」
 
  ひと昔前なら数万円はしたアウトドア用の高機能アウターが、作業着として1万円前後で買える。SOWAユーザーは幸せ者だ。
 
  ●電熱ベストは柔軟に
 
  アウトドア系のアウターの紹介が終わると「あと、ぜひこれを」と後藤さんは、取っ手の付いた箱を取り出す。今シーズンの新作、「電熱ヒートベストコンプリートセット(型番8979-06)」だ。まず目を引くのは、中身より派手な化粧箱の方である。
 
  「いいところに気づきましたね。じつはこれも僕のこだわりで、"ワクワク感"を演出したかったんですよ。いろんなデジタルガジェットとか、カッコいい箱に入っていて開けるときドキドキするじゃないですか。ああいう感じにしたかった。子供のころ、ゲーム機を買うとこういう取っ手付きの箱に入っていて、興奮したのを思い出したりして、絶対に箱がいい! と」
 
  電熱ウェアを買う人は、ほぼ100%が初体験だろう。どれくらい暖かいのだろう? どんなふうに活用しようか? ひょっとして冬の生活を一変させるアイテムかも? といった期待と不安を抱えながら購入するはずだ。この箱は、そんな買物の楽しみを増幅させる工夫と言える。
 
  中身もインパクトがある。ヒートユニットは2枚付きで、ベストの内側にはユニット挿入用のポケットが2カ所。ユニットを肩・腰とタテに並べて取り付け、バッテリーと接続する。このシステムにより、洗い替えのためにベストだけを買い足したり、ユニットを片方だけ取り付けたりといった、柔軟な運用ができる。もちろんユニットを外せば普通のウェア同じように丸洗いできる。
 
  「インナーベストなので、仕事に限らずいろんな場面で活用できます。動くときは低温かOFFにして、寒いときは高温(最大45℃)にしたり、と調節も簡単。釣りなどのレジャーにもいいですね。おかげさまでスタートは好調なので、ファン付きウェアのように毎年、進化させていきたいと思っています」
 
  山仕様の防風ブルゾンに、北海道仕様の防水透湿アウター、さらに電熱ベストまで。桑和のウェアがあれば、寒波でも冬将軍でもドンと来い、だ。
 
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バッテリーに繋いで発熱
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脇ストレッチ仕様のダウンベスト

    

他を圧倒するハイスペック! ソフトな着心地もうれしい「防風防寒ブルゾン」

現場に加えてアウトドアやレジャーでも活躍しそうな機能満載のアウター。生地はポリエステルのタスラン加工糸を使用し、ナチュラルな風合いと軽さを両立。撥水・防風仕様なので多少の雨や寒さも大丈夫。両脇ファスナーポケットの内側はフリース仕様で手元まで暖か。


斜めラインがワーカーの誇り! ストレッチで着心地グッドな「防寒ブルゾン」

アウトドアやスポーツのテイストを取り入れた防風仕様のアウター。生地はストレッチ素材なので、体をひねったり腕を曲げたりする作業もラクチン。冷気もきっちりシャットアウトする。両袖には反射テープ付きだから夜間や暗い倉庫などの視認性もバッチリ。