「あっ! まいど屋さん、ちょうどいいときに来ましたね〜♪」。6月某日、東京・芝浦の自重堂ビルで、担当のK氏はニカッと歯を見せて笑った。正直、空調服の取材をするのに6月は遅い。例年なら「今頃ですか、もう売り切れ商品も出ちゃってますよ!」と一蹴されるところが、一体どういう風の吹き回しなのか。今時どのメーカーを訪れても「去年から直接営業も展示会もできなくて……」という話から始まるにもかかわらず、K氏はコロナ禍を忘れさせるハイテンション。その明るさは同社の公式モデル・新庄選手を思わせる。なんだなんだ、空調服に何か起きたのか? この時季、熱中症対策で売れるのは毎年のことだし「ウェアの見た目がカジュアルに」っていうのもだいたいやり尽くした。それに「ちょうどいい」って、つまりどういうことだってばよ!? 当惑する編集部を前に、K氏は一枚のパンフレットを広げた。「先日、発売されたばかりの新型ファンです!」
自重堂
新作はすべて「フード付きベスト」
「映え」を意識したデザイン
●満を持しての「新型ファン」
「ちょ、ちょっと待ってください。もう6月ですよ、6月になって新型の空調服を発売するって!」
思わず声が裏返ってしまったけれど、しょうがない。ワークウェア業界では、年明けには春夏物の新商品を発表し、2月ごろから全国を回って展示会や商談会を行うのが普通。つまり、春夏物である空調服は、2月には「実物」が必要なのだ。会社のユニフォームにするなら春前には手配しなければならないわけで、それが6月にもなってはじめて市中に出回るというのは……。
「すみません、現物はこっちにもまだ届いていなくて。ショップには入り始めてるみたいなんですけど(笑)」
ビギナーのために説明しておこう。自重堂では、株式会社空調服からデバイスの提供を受け、自社の夏用ワークウェア「空調服」として販売している。つまりブルゾンやベストといった「服」の部分は自重堂が作っており、ファンやバッテリーといった「機械」の部分は(株)空調服が製造しているのだ。ここが他社のファン付きウェアとの大きな違いである。
もちろん今回、新型ファンを開発したのも自重堂ではなく(株)空調服。同社は機械メーカーだからワークウェア業界の日程に合わせる必要はない。他社の動向をチェックしながら、夏が来る直前までじっくりと時間をかけて開発する。そして満を持して夏直前に投入したのが、今回の新型デバイスというわけだ。ちなみにこの原稿を書いている6月22日現在、(株)空調服公式サイトの「商品一覧」にも、この新型デバイスは掲載されていない。おそらく情報を出す余裕もないほどギリギリのスケジュールで夏前に間に合わせたのだろう。
そんなわけで、ここからはK氏から聞いた話と、取材後に触れた新型デバイスの感想を踏まえて、2021年モデルの空調服についてレポートしよう。
●14.4ボルトの衝撃!
「まあとにかく、この新型バッテリーのスペックを見てくださいよ。これでもう他社とのパワー比べはおしまい。空調服の圧勝ですよ」
と、K氏が指さした数値は「最大14.4ボルト」。去年発売の「ハイパワーファン対応バッテリー」が7.2ボルトだったから、なんと倍増である。この新型バッテリーで動かす新型ファンの最大風量は、1秒あたり76リットル(左右合計)。編集部が知る限り、これを上回るスペックのファン付きウェアはない。
「ひぇっ」と思わず声が漏れる。パワーアップは予想してはいたが、まさかここまでとは。なんというか、ジム通いを始めた知人に1年ぶりに会ったら、ボディビルダーのように黒光りするバキバキボディになっていた、みたいな感じだ。編集部はそもそも(株)空調服はパワー競争に乗り気ではないと思っていたが、とんだ勘違いだったらしい。
ただし、この14.4ボルトの最強パワーは、5分間限定となっている。バッテリーのターボボタンを長押しすると、毎秒76リットルの猛烈な風が流れるが、5分後に自動的に毎秒62リットルの11ボルト可動に切り替わる。空調服ではこのターボモードを「瞬間冷却」と位置付けている。パンフレットには「人体への影響を考慮して、酷暑やハードワークによる大量発汗時だけ使用してください」という生々しい注意書きがある。
つまり、14.4ボルトは、強力すぎるが故に使用者のボディに影響を与えかねない「禁断のパワー」なのだ……。まるでバトル漫画における究極奥義のようで、心をわしづかみにされてしまう。まさか空調服にときめく日が来るとは想像していなかったぞ。
「すごいでしょ。ただ注意してほしいのは互換性ですね。新型ファンとバッテリー、ケーブルは、これまでの空調服デバイスとの互換性がまったくありません。導入するならウェア以外ぜんぶ取り替えないとダメなんです。完全リニューアルなんで、そこだけはご容赦いただければ」
これまでのつながりをすべて葬り去り、空調服は究極のパワーを手に入れた--。おい、最高な展開じゃないか!
●「SNS映え」間違いなし!
新デバイスの魅力はパワーだけではない。もっとも注目に値するのはファンの大きさで、なんと厚みは従来型のファンから1cm以上も薄い41mmとなった。これにより、ファンが腰にゴリゴリ当たるのが大幅に改善されている。重量も従来モデルよりずいぶん軽くなった。ひとつ80gと左右に付けても最近のスマホ程度の重さなので、バッテリーさえベルトに取り付ければ、完全に普通のアウター感覚だ。
「ファンのデザインも、従来の扇風機みたいな感じと比べてずっとスタイリッシュになったので、ファッションアイテムとしても楽しめますよ。ユニフォーム採用として、数が出るのは黒やグレーなんですが、カジュアルに着たい人は赤がオススメです。この有機的デザインの赤ファンをウチの2021年ラインナップに合わせるともう最高! めっちゃSNS映えしますよ〜」
自重堂の2021年の新作ラインナップはすべてベスト型。しかも、ショップでの個人販売を狙ったカジュアルデザインとなっている。K氏のイチオシは「54110 空調服ベスト」。これまでのJawinのイメージを覆すアウトドア系デザインだ。
「綿100%だから火を扱う現場もOKだし、キャンプなんかでも活用できます。ショップ販売向きのカジュアルテイストなんですけど、意外と軽作業用のユニフォームとしても人気が出てますね。運送会社の営業所や倉庫とか。男女兼用デザインだし、4色展開のうちブラックやネービーなら制服としてもぜんぜん違和感ありません」
「こういうJawinの新作に対してZ-dragonはというと……」とさらにK氏が取り出したのは「74240 空調服ベスト」。インパクトのあるカモフラ柄に、内側に黄色のテープを施したド派手なデザインだ。
「こちらの素材はオーソドックスなポリ100%。軽い着心地なのでバリバリ体を動かすワーカーにいいですね。フードの内側や首元に黄色のテープがのぞく粋な感じとか、若い職人さんに気に入ってもらえるんじゃないでしょうか。デザインだけじゃなく、現場でも音が聞こえやすいようにフードがパンチングされていたり、機能面もしっかりワーキング仕様だから安心ですよ」
すべてのファン付きウェアを過去のものにする最強デバイスに、最高にカジュアルになった自重堂の新作ウェア。この「究極タッグ」が、真夏の現場に革命を起こす!?
「ちょ、ちょっと待ってください。もう6月ですよ、6月になって新型の空調服を発売するって!」
思わず声が裏返ってしまったけれど、しょうがない。ワークウェア業界では、年明けには春夏物の新商品を発表し、2月ごろから全国を回って展示会や商談会を行うのが普通。つまり、春夏物である空調服は、2月には「実物」が必要なのだ。会社のユニフォームにするなら春前には手配しなければならないわけで、それが6月にもなってはじめて市中に出回るというのは……。
「すみません、現物はこっちにもまだ届いていなくて。ショップには入り始めてるみたいなんですけど(笑)」
ビギナーのために説明しておこう。自重堂では、株式会社空調服からデバイスの提供を受け、自社の夏用ワークウェア「空調服」として販売している。つまりブルゾンやベストといった「服」の部分は自重堂が作っており、ファンやバッテリーといった「機械」の部分は(株)空調服が製造しているのだ。ここが他社のファン付きウェアとの大きな違いである。
もちろん今回、新型ファンを開発したのも自重堂ではなく(株)空調服。同社は機械メーカーだからワークウェア業界の日程に合わせる必要はない。他社の動向をチェックしながら、夏が来る直前までじっくりと時間をかけて開発する。そして満を持して夏直前に投入したのが、今回の新型デバイスというわけだ。ちなみにこの原稿を書いている6月22日現在、(株)空調服公式サイトの「商品一覧」にも、この新型デバイスは掲載されていない。おそらく情報を出す余裕もないほどギリギリのスケジュールで夏前に間に合わせたのだろう。
そんなわけで、ここからはK氏から聞いた話と、取材後に触れた新型デバイスの感想を踏まえて、2021年モデルの空調服についてレポートしよう。
●14.4ボルトの衝撃!
「まあとにかく、この新型バッテリーのスペックを見てくださいよ。これでもう他社とのパワー比べはおしまい。空調服の圧勝ですよ」
と、K氏が指さした数値は「最大14.4ボルト」。去年発売の「ハイパワーファン対応バッテリー」が7.2ボルトだったから、なんと倍増である。この新型バッテリーで動かす新型ファンの最大風量は、1秒あたり76リットル(左右合計)。編集部が知る限り、これを上回るスペックのファン付きウェアはない。
「ひぇっ」と思わず声が漏れる。パワーアップは予想してはいたが、まさかここまでとは。なんというか、ジム通いを始めた知人に1年ぶりに会ったら、ボディビルダーのように黒光りするバキバキボディになっていた、みたいな感じだ。編集部はそもそも(株)空調服はパワー競争に乗り気ではないと思っていたが、とんだ勘違いだったらしい。
ただし、この14.4ボルトの最強パワーは、5分間限定となっている。バッテリーのターボボタンを長押しすると、毎秒76リットルの猛烈な風が流れるが、5分後に自動的に毎秒62リットルの11ボルト可動に切り替わる。空調服ではこのターボモードを「瞬間冷却」と位置付けている。パンフレットには「人体への影響を考慮して、酷暑やハードワークによる大量発汗時だけ使用してください」という生々しい注意書きがある。
つまり、14.4ボルトは、強力すぎるが故に使用者のボディに影響を与えかねない「禁断のパワー」なのだ……。まるでバトル漫画における究極奥義のようで、心をわしづかみにされてしまう。まさか空調服にときめく日が来るとは想像していなかったぞ。
「すごいでしょ。ただ注意してほしいのは互換性ですね。新型ファンとバッテリー、ケーブルは、これまでの空調服デバイスとの互換性がまったくありません。導入するならウェア以外ぜんぶ取り替えないとダメなんです。完全リニューアルなんで、そこだけはご容赦いただければ」
これまでのつながりをすべて葬り去り、空調服は究極のパワーを手に入れた--。おい、最高な展開じゃないか!
●「SNS映え」間違いなし!
新デバイスの魅力はパワーだけではない。もっとも注目に値するのはファンの大きさで、なんと厚みは従来型のファンから1cm以上も薄い41mmとなった。これにより、ファンが腰にゴリゴリ当たるのが大幅に改善されている。重量も従来モデルよりずいぶん軽くなった。ひとつ80gと左右に付けても最近のスマホ程度の重さなので、バッテリーさえベルトに取り付ければ、完全に普通のアウター感覚だ。
「ファンのデザインも、従来の扇風機みたいな感じと比べてずっとスタイリッシュになったので、ファッションアイテムとしても楽しめますよ。ユニフォーム採用として、数が出るのは黒やグレーなんですが、カジュアルに着たい人は赤がオススメです。この有機的デザインの赤ファンをウチの2021年ラインナップに合わせるともう最高! めっちゃSNS映えしますよ〜」
自重堂の2021年の新作ラインナップはすべてベスト型。しかも、ショップでの個人販売を狙ったカジュアルデザインとなっている。K氏のイチオシは「54110 空調服ベスト」。これまでのJawinのイメージを覆すアウトドア系デザインだ。
「綿100%だから火を扱う現場もOKだし、キャンプなんかでも活用できます。ショップ販売向きのカジュアルテイストなんですけど、意外と軽作業用のユニフォームとしても人気が出てますね。運送会社の営業所や倉庫とか。男女兼用デザインだし、4色展開のうちブラックやネービーなら制服としてもぜんぜん違和感ありません」
「こういうJawinの新作に対してZ-dragonはというと……」とさらにK氏が取り出したのは「74240 空調服ベスト」。インパクトのあるカモフラ柄に、内側に黄色のテープを施したド派手なデザインだ。
「こちらの素材はオーソドックスなポリ100%。軽い着心地なのでバリバリ体を動かすワーカーにいいですね。フードの内側や首元に黄色のテープがのぞく粋な感じとか、若い職人さんに気に入ってもらえるんじゃないでしょうか。デザインだけじゃなく、現場でも音が聞こえやすいようにフードがパンチングされていたり、機能面もしっかりワーキング仕様だから安心ですよ」
すべてのファン付きウェアを過去のものにする最強デバイスに、最高にカジュアルになった自重堂の新作ウェア。この「究極タッグ」が、真夏の現場に革命を起こす!?
縦に入るロゴは反射プリント
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赤や黄色のテープがインパクト大
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火を使う現場にアウトドアも! ソフトな着心地の綿100%「空調服ベスト」 建設・土木のほか、製造業や軽作業にもオススメなフード付き空調服ベスト。生地は綿100%なので、溶接などの火を使う現場のほかキャンプでも活躍する。背中には保冷剤を入れるメッシュポケット付き。フードは視界を確保し、周囲の音を聞こえやすくするパンチング仕様。 |
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「みんなと同じ」はもう卒業! 赤テープで個性が際立つ「空調服ベスト」 デジタル調のカモフラ柄と内側の赤テープがインパクト大な空調服ベスト。カジュアルデザインなのでレジャーやスポーツ観戦にもオススメ。背中には保冷剤を入れるメッシュポケット付き。フードは視界を確保し、周囲の音を聞こえやすくするパンチング仕様。 |
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