【アタックベース】風神の挑戦image_maidoya3
アタックベースは広島県福山市のワークウェアメーカー。中四国を中心に作業着と作業用品の店「アタック」も展開している。ショップで吸い上げたお客さんの声をすぐ企画や開発に反映できるフットワークの軽さがウリだ。そんな同社のファン付きウェアは、「空調風神服」。機械メーカー、サンエスからデバイス提供を受け、風神服専用のウェアを展開している。風神服は販売実績も豊富でこのジャンルでは老舗と言っていいだろう。プロショップに限らずホームセンターでも売られているメジャーなブランドだから、提携するワークウェアメーカーも多く、それだけ競合も激しい。たくさんの風神服用のウェアの中でもキラリと光る商品でなければいけないのである。2021年夏、アタックベースは一体どんなアイテムで“攻勢”をかけるのか。編集部は福山市の本社を訪ねた。

アタックベース
image_maidoya4
カバーを外してメンテナンス可能
image_maidoya5
遮熱加工のキラキラがド派手
●SDGsの切り札に
 
  「じつは当社は2021年で40周年なんですよ。本当だったら記念行事を兼ねた展示会を大々的に開きたいんですが、この感染状況では……。次の秋冬物の展示会は、これからコロナが落ち着いている地方都市でやる予定ですけど、ちょっと残念ですね」
 
  こう話すのはアタックベース営業部の田頭正明さん。取材が行われた6月上旬は、まだ10都道府県に新型コロナの緊急事態宣言が発令されていた。展示会ができないというのはあちこちで聞くが、会社の記念行事まで「自粛」せざるを得ないとは、つくづく昨年から続くコロナ禍にはウンザリさせられる。
 
  しかし、肝心の商品の動きはどうかといえば、昨年から今年にかけて絶好調とのこと。
 
  「当社では2019年の秋冬からバッテリーで発熱するヒーターベストを出しているんですけど、2020年の冬、これが大ブレイクしました。ウチのは他社製品と比べてちょっと値が張るものの、それ以上に性能が評価された。前後にヒーターが付いているし、故障や不良品などのトラブルもほぼゼロ。ショップ経由で全国のお客さんから『買ってよかった』『すごく暖かかった』との声が届いています。2021年の冬モデルも期待してください!」
 
  と、なぜか防寒の話になってしまったが、もちろんこの夏の目玉は「空調風神服」だ。ヒーターベストと同じくバッテリーで稼働する「ギア系作業服」として、同社の主力を占める。
 
  「SDGs(持続可能な開発目標)が共有されつつあるのもあって、環境負荷の削減は差し迫った経営課題になっています。バッテリーを使った電熱ウェアやファン付きウェアを普及させることで、冷暖房による電力の大量消費を抑えることができる。ワークウェアを通じて、社会活動におけるエネルギー問題を乗り越えていくことができるんじゃないでしょうか」
 
  空調服はもともと、冷房エネルギーを節約することで地球温暖化を防ぐために開発された商品だ。そのスピリットは「風神服」にもしっかりと受け継がれている。
 
  ●スペックより利便性
 
  では、サンエス製の「空調風神服」デバイス、2021年の新型ファン&バッテリーについて聞いていこう。
 
  「ひとことで言えば、マイナーチェンジですね。風神服のデバイスは2020年モデルで大幅リニューアルしました。ファンは従来のななめ・フラットタイプに加えて薄型タイプが登場し、カバーを取り外して直接プロペラを掃除できるようになった。今回の2021年モデルは、この方向性を踏襲したまま、よりスペックを強化したかたちです」
 
  2020年モデルと比較した数値を見ると、新型のフラットハイパワーファン(型番:RD9120H)は、100gから95gとわずかに軽量化された以外は変化なし。新型リチウムイオンバッテリー(型番:RD9190J)は、12ボルトのパワーはそのままで稼働時間が強で30分、弱で2時間ほど延びた。ただし風力だけは7リットル増の毎秒68リットルとかなりパワーアップしている。
 
  「ただのバージョンアップかと思うかもしれませんが、利便性は大きく向上していますよ。まず、新型バッテリーはBluetooth通信でスマホとペアリングできます。空調風神服の公式アプリを入れることで、風量の切り替えやON・OFFの操作がスマホ上で可能。それにUSBポート搭載なので、スマホなどのモバイルバッテリーとしても使える。極め付きは急速充電で、なんと4時間で満タンです!」
 
  急速充電は、しょっちゅう充電を忘れる編集長のような人にはうれしい機能だ。4時間なら、たとえ夜に充電を忘れたとしても、夜中や早朝にコンセントに繋げばなんとかなる。またBluetooth接続によるスマホ接続は「そんなに風量を切り替えない」という人でも、バッテリーの残量確認に役立つだろう。もうウェアの中を覗き込んでバッテリー表示をチェックしなくていいのだ。
 
  8時間充電だと、まるで一昔前の電動工具のようだけれど「4時間充電&スマホ連携」となれば、一気に電気シェーバーや電動歯ブラシのような「家電」に近づいてくる。バッテリーまわりの利便性は、ワーキングより一般向けアイテムとしての評価につながりそうだ。
 
  ●白衣の風神!
 
  続いて、2021年の新作ウェアを見ていこう。まず目を引くのは2タイプのチタンフードベスト(型番:030/3540)だ。レジャーやアウトドアにも使えそうなカジュアル感がありつつも、ガテン系のテイストもしっかり感じさせるユニークなアイテムだ。
 
  「この2タイプのベストは、両方とも裏側にチタンコーティングを施した遮熱モデルです。『030ベスト』の肩から背中にかけてのキラキラはただの飾りじゃなくて、遮熱のためのプリント。直射日光を跳ね返すので、炎天下の作業でも体温の上昇を抑えられます。一方『3540ベスト』の方は表面遮熱はありませんが、襟やフードが涼感をアップさせる特別仕様。顔から頭にかけて、すごく涼しいですよ」
 
  キラキラの「030ベスト」はとにかく目立つ。とくに3色の中でも「ワイン」カラーのベストは、スパンコールのステージ衣装かと思うほど派手。ヤンチャさや自己主張といったワークウェアならではのかっこよさがある。
 
  対して「3540」ベストは、非常に個性的なフォルムだ。口元まで隠れる高い立ち襟に、巨大フードの組み合わせはマンガに出てくる「強敵」を思わせる。ミステリアスなかっこよさ、というべきか。
 
  「いいでしょ? でもウチはカジュアルだけじゃない。新作にはこういうのもあるんです」
 
  と、田頭さんが取り出したのは、なんと調理用の白衣だ。まさかこれにデバイスをつけるとは、おお、なんてことを、ジーザス……!
 
  「じつは白衣の空調服は3年目になります。『食品加工の工場で使える風神服を作ってほしい』という声をうけて開発しました。これまでに学校給食や水産加工などの現場でユニフォーム採用されています。今回の新作ブルゾン(型番:005)は、初めての半袖タイプ。こちらもユーザーのリクエストに応じた商品です」
 
  調理のような作業の場合、袖が膨らむと動かしにくいから半袖がほしいのはわかる。しかし、ただ袖をカットすればいいといった話ではないという。
 
  「半袖にすると体毛が落ちたりするのが怖いんですよ。いくら涼しくても食品工場の衛生規格に合わないと使えません。そこで、裾と袖口に体毛落下ネットを取り付けて、どれだけファンで風を送っても異物混入などの事故が起きないようにしました。風神服は夏しか売れないけれど、こちらなら通年売れる。まだまだファン付き白衣のニーズは伸びていくと見込んでいます」
 
  カジュアルデザインでレジャーなどの用途を狙う一方、建設土木に限らない「仕事着」としても「風神服」を水平展開--。アタックベースの挑戦は止まらない。
 
image_maidoya6
レジャーにぴったりな「ボタニカル柄」
image_maidoya7
白衣の風神服は3年目

    

このキラキラが涼しさの秘密! 直射日光下での温度上昇を防ぐ「チタンフードベスト」

生地裏にチタンコーティング、肩から背中にかけてマテリアルプリントを施すことで遮熱機能を高めた空調風神服ベスト。生地が直射日光を跳ね返し、ウェア内部に温度が伝わるのを防ぐ。フード付きのカジュアルデザインなので、炎天下の作業のほかレジャーやアウトドア、スポーツ観戦などにもオススメ。


汗かきならコレで決まり!? 顔と頭に風を集中させる「チタンフードベスト」

高い立ち襟とデカいフードがインパクト大な空調風神服ベスト。生地裏はチタンコーティングの遮熱仕様で、直射日光を受けてもウェア内部の温度が上がりにくい。襟を抜けた風は顔に集中。フードで集められた風はヘルメットの中を通り抜ける。顔や頭の汗が気になる人は要チェック。