ふだんディアドラの話をすることはない。ただ、知人が例のロゴがついたバッグやブルゾンを身につけているときは一応、指摘することにしている。「あっ、ディアドラじゃん!」と。返答はさまざまだ。「え、なに?」というのは着用者がブランドを認識していないパターン。認識している場合は「テニスで有名だよね」「おれサッカー好きだし」といったリアクションが返ってくる。こういう人はちょっとこだわりがあるタイプで、あえて「アディダスやナイキではないスポーツブランド」を選んでいるのだ。その背景にあるのは、おそらく「ベタ」を避けたい気持ちではないかと編集長は思う。ことさら異端を気取りたいわけでもないけれどド真中に陣取るのは居心地が悪い。べつに個性を主張したいわけではないが、みんなと一緒にされるのはゴメンだ。まるでわざわざ劇場の一番端に座って舞台を観る常連みたいな心理である。そして、そんなメインストリームに抵抗を覚える人に寄り添ってくれるブランドこそ、ディアドラなのだ。
ディアドラ
新開発の高反発ソール
つま先補強の性能もアップ
●新ソール「ハイパルス」
取材に応じてくれたのはドンケルの天野さんと鈴木さん。ライセンス契約でディアドラの安全スニーカーを製造している老舗の作業靴メーカーである。同社がディアドラ商品を手掛けるようになって20年以上、その強みを次のように語る。
「ディアドラ安全スニーカーのウリはソールの豊富さです。作業靴に求められる耐滑性の高いソールやクッション性のあるソールはもちろん、立ち仕事の安定性を高めるソール、バネのように歩行をサポートしてくれるソールなど、6種類の機能別ソールがあり、カタログに乗っている商品の種類はカラー展開を含めないで20モデル。「SWALLOW」「FINCH」とか、ぜんぶ鳥の名前になっているのですが、そろそろ使い尽くしそうで困っているくらいです(笑)」
たしかにディアドラの商品展開はカタログをぱっと見ただけではまず把握できない。というわけで、まずはたくさんあるソールの中からイチオシを語ってもらおう。
「ぜひともチェックしてほしいのは新開発の『ハイパルスソール』です。これはマラソンや駅伝でよく使われるようになった厚底シューズの技術を使った反発力のあるソール。PUやEVAよりも衝撃の吸収に優れ、反発力も高い素材を使っているので、着地のショックが少なくそのあとの蹴り出しもすごくラク。バネのような反動で推進力を得られるから、足の負担が少なく疲労軽減の効果もあります。立ち仕事より歩き回って作業する人におすすめですね」
この高反発ミッドソールを搭載しているのは「TANAGER(タネージャー)」と「MALLARD(マラード)」。2021年3月発売のマラードでは、全方位から足を保護する「360ソール」との融合により、より安全で疲れにくいソールに進化している。ソール以外でも屈曲性があってしゃがみやすいアッパー、フィット感の高いシューレース構造など、総合力の高いモデルとなっている。
●一線を画す新デザイン
新開発の高機能なソールがあれば、ディアドラの代名詞と言える定番ソールもある。軽量で滑りにくいASL(Anti Slip Light)ソールだ。現在このソールを搭載した商品は4モデル。特別なスペックをうたう商品ではないものの、作業靴としての基本性能の高さを評価され、よく数が出ているという。
「他社の安全スニーカーでも耐滑性をアピールしたものは多いですが、ASLソールは濡れた場所で滑らないのが特徴です。耐油ゴム素材を使った靴底は液体を排出する溝付きの構造になっている。乾いた地面では同じように感じるかもしれませんけど、雨で濡れた鉄板の上とか、オイルが飛び散った自動車整備工場とか、液体で滑りがちな現場ではソールの差を実感できると思います。足場に乗って作業する職人さんや鳶の職人さんにもおすすめです」
このASLソール搭載モデルの売れ筋は、21年1月発売の「BUZZARD(バザード)」。従来のスポーツ系のテイストとは一線を画すストリートなデザイン。しかもディアドラでは珍しいミッドカットモデルである。要するにものすごく「異色」であるにもかかわらず、この商品は大人気。そのきっかけはなんとSNSだという。
「ミッドカットがほしいという声は前からありました。でも『売れないからやめとこう』というのが社内の意見。そこで、作業に限らず街でも使えるスタイリッシュなデザインでやってみよう、と。その結果、今までのディアドラにはなかったような洗練された見た目の商品ができました。当時はコロナで営業ができないから公式インスタグラムを開設したばかり。『こんなカッコいいミドルカットができました』と紹介してみたところ、『イマドキのワークウェアに合う!』と言って、影響力のあるユーザーがどんどんフォロワーに拡散して、買った人が写真を上げてくれるようになった。普通は白と黒がよく売れて、色物はそんなになんですが、こちらはインスタ発のヒットということもあって、白黒赤どれも同じくらい売れています」
●機能性にも高評価
もちろんSNS発信でヒット商品が生まれたのは初めてのこと。「インスタで人気」というと見た目だけの評価かと思われがちだが、実際に手にとってみると、売れるべくして売れたことがよくわかる。そんな「BUZZARD(バザード)」の核心と言えるのが、アッパーの内側に取り付けられたファスナーだ。
「カッコいいからと買ってくれた人も機能性を評価してくれています。ファスナーはみんないちいち靴ひもを結ばないだろうと思って付けたもので、ミドルカットなのに脱ぎ履きがラク。ファスナーには手袋をしていても扱いやすいエルゴノミクスデザインのタブを付けて、しかもアッパーに収納できるから引っかかったりしなくて安心です。ディアドラのマークも控えめなミニマルデザインですが、かかとにはリフレクターも付いているし、ベロは袋状になっているから雨の浸入も防いでくれる。そして天然皮革を使っているので柔らかくて履き込むほどに味が出てくるのも魅力です。インスタでもこういうこだわりを汲んでくれる人がいて嬉しかったですね」
スポーツ系メーカーにも引けを取らない新ソールに加えて、アッパーのデザインや構造の面でも一皮むけたディアドラ。今後は安全スニーカー選びがもっと楽しくなりそうだ。
取材に応じてくれたのはドンケルの天野さんと鈴木さん。ライセンス契約でディアドラの安全スニーカーを製造している老舗の作業靴メーカーである。同社がディアドラ商品を手掛けるようになって20年以上、その強みを次のように語る。
「ディアドラ安全スニーカーのウリはソールの豊富さです。作業靴に求められる耐滑性の高いソールやクッション性のあるソールはもちろん、立ち仕事の安定性を高めるソール、バネのように歩行をサポートしてくれるソールなど、6種類の機能別ソールがあり、カタログに乗っている商品の種類はカラー展開を含めないで20モデル。「SWALLOW」「FINCH」とか、ぜんぶ鳥の名前になっているのですが、そろそろ使い尽くしそうで困っているくらいです(笑)」
たしかにディアドラの商品展開はカタログをぱっと見ただけではまず把握できない。というわけで、まずはたくさんあるソールの中からイチオシを語ってもらおう。
「ぜひともチェックしてほしいのは新開発の『ハイパルスソール』です。これはマラソンや駅伝でよく使われるようになった厚底シューズの技術を使った反発力のあるソール。PUやEVAよりも衝撃の吸収に優れ、反発力も高い素材を使っているので、着地のショックが少なくそのあとの蹴り出しもすごくラク。バネのような反動で推進力を得られるから、足の負担が少なく疲労軽減の効果もあります。立ち仕事より歩き回って作業する人におすすめですね」
この高反発ミッドソールを搭載しているのは「TANAGER(タネージャー)」と「MALLARD(マラード)」。2021年3月発売のマラードでは、全方位から足を保護する「360ソール」との融合により、より安全で疲れにくいソールに進化している。ソール以外でも屈曲性があってしゃがみやすいアッパー、フィット感の高いシューレース構造など、総合力の高いモデルとなっている。
●一線を画す新デザイン
新開発の高機能なソールがあれば、ディアドラの代名詞と言える定番ソールもある。軽量で滑りにくいASL(Anti Slip Light)ソールだ。現在このソールを搭載した商品は4モデル。特別なスペックをうたう商品ではないものの、作業靴としての基本性能の高さを評価され、よく数が出ているという。
「他社の安全スニーカーでも耐滑性をアピールしたものは多いですが、ASLソールは濡れた場所で滑らないのが特徴です。耐油ゴム素材を使った靴底は液体を排出する溝付きの構造になっている。乾いた地面では同じように感じるかもしれませんけど、雨で濡れた鉄板の上とか、オイルが飛び散った自動車整備工場とか、液体で滑りがちな現場ではソールの差を実感できると思います。足場に乗って作業する職人さんや鳶の職人さんにもおすすめです」
このASLソール搭載モデルの売れ筋は、21年1月発売の「BUZZARD(バザード)」。従来のスポーツ系のテイストとは一線を画すストリートなデザイン。しかもディアドラでは珍しいミッドカットモデルである。要するにものすごく「異色」であるにもかかわらず、この商品は大人気。そのきっかけはなんとSNSだという。
「ミッドカットがほしいという声は前からありました。でも『売れないからやめとこう』というのが社内の意見。そこで、作業に限らず街でも使えるスタイリッシュなデザインでやってみよう、と。その結果、今までのディアドラにはなかったような洗練された見た目の商品ができました。当時はコロナで営業ができないから公式インスタグラムを開設したばかり。『こんなカッコいいミドルカットができました』と紹介してみたところ、『イマドキのワークウェアに合う!』と言って、影響力のあるユーザーがどんどんフォロワーに拡散して、買った人が写真を上げてくれるようになった。普通は白と黒がよく売れて、色物はそんなになんですが、こちらはインスタ発のヒットということもあって、白黒赤どれも同じくらい売れています」
●機能性にも高評価
もちろんSNS発信でヒット商品が生まれたのは初めてのこと。「インスタで人気」というと見た目だけの評価かと思われがちだが、実際に手にとってみると、売れるべくして売れたことがよくわかる。そんな「BUZZARD(バザード)」の核心と言えるのが、アッパーの内側に取り付けられたファスナーだ。
「カッコいいからと買ってくれた人も機能性を評価してくれています。ファスナーはみんないちいち靴ひもを結ばないだろうと思って付けたもので、ミドルカットなのに脱ぎ履きがラク。ファスナーには手袋をしていても扱いやすいエルゴノミクスデザインのタブを付けて、しかもアッパーに収納できるから引っかかったりしなくて安心です。ディアドラのマークも控えめなミニマルデザインですが、かかとにはリフレクターも付いているし、ベロは袋状になっているから雨の浸入も防いでくれる。そして天然皮革を使っているので柔らかくて履き込むほどに味が出てくるのも魅力です。インスタでもこういうこだわりを汲んでくれる人がいて嬉しかったですね」
スポーツ系メーカーにも引けを取らない新ソールに加えて、アッパーのデザインや構造の面でも一皮むけたディアドラ。今後は安全スニーカー選びがもっと楽しくなりそうだ。
新作「マラード」はロゴ控えめ
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大好評の「バザード」を語る
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