いつの日だっただろう、建設や道路工事の現場をカモフラ柄やミリタリー風のカジュアルなファン付きウェアが席巻するようになったのは。何年前だろうか、街で見かける空調ウェアのファン部分に「B」マークばかりを見かけるようになったのは--。そう、今やファン付きウェアといえばバートルである。夏に作業服のショップに行って「バートルを」といえば、デバイスのセットといかにも今時なデザインの対応ウェアを持ってきてくれる。「みんなこれ買うよ~」との言葉と共に。しかし、今年はちょっとした異変がある。例年なら新型デバイスの風量やバッテリーの電圧といったことばかりが語られているはずなのに、いまエアークラフトをめぐって、ユーザーのあいだで「互換性」という聞き慣れない言葉が飛び交っているのだ。いったい2022年版エアークラフトに何が起こっているのか。編集部は広島県府中市のバートル本社を訪ねた。
バートル
新型エアークラフトを語る
プラグ差込口をパッキンで閉じれば水洗いできる
●飽くなきパワー追求!
取材に答えてくれたのは営業部の森近さんと青木さん。さっそくファン付きウェア「エアークラフト」2022年モデルの特徴から聞いていこう。
「今回の新モデルについてひとことで言うと『飽くなきパワーアップ』です。2021年モデルのバッテリーは13ボルトだったのに対して、2022年はなんと17ボルト。最大風量も毎秒70リットルから80リットルに増大しました。以前からエアクラは風の強さが売りだったわけですが、それに満足せず、さらなるパワーを追い求めました」
編集長は覚えている。数年前、初めてエアークラフトの新作を試着させてもらったとき、風量が強すぎて寒いくらいだったことを。当時でも正直いって、こんなに強くしてどうするのか、一体この先どうなるんだろう? と思ったのだった。あれからもずっと「エアクラ」は、愚直にパワーアップを重ねてきたのである。まるで求道者のように。
こちらが感嘆の息をこぼすと、森近さんは再びゆっくりと語り始める。
「その代わりといってはなんですが、デバイスの互換性はすべてなくなりました。2022年モデルはファン・バッテリー・ケーブル・充電器のすべてが刷新されたので、過去のモデルと組み合わせて使うことはできません。もちろんウェアは以前からのものをお使いいただけますけど、電気関係は全部ダメです。つまり、エアークラフトの新デバイスを導入するなら、新たに一式そろえてもらう必要があります」
これは衝撃的な発表である。エアクラの2021年モデルを使っているユーザーは、バッテリーや充電器を22年モデルに使い回すことができない。そのまま21年モデルを使い続けるか、デバイス一式をすべて新型に切り替えるしかないのである。バッテリーが劣化した場合には、新デバイスに切り替えるのに迷いはないだろう。しかし、ファンだけが壊れたり、ケーブルが断線したりといったケースでは判断に困るかもしれない。
これがパワーアップの代償ということだ。
●充電時間もメンテ性も
「互換性については申し訳ないんですけど、正直もう限界でした。2017年に9ボルトのデバイスを発表してからずっと旧モデルのバッテリーなどを使えるようにしていたんですが、それだと14ボルトくらいで頭打ちになってしまうんです。ハッキリとパワーアップを謳うためには、互換性を犠牲にする必要があった。しかし安心してください。また何年かは新作を出してもこの2022年型デバイスとの互換性をキープしていきますので」
そう、この移り変わりの速い時代において、去年まで2017年のバッテリーが使えたこと自体、ありえないことだったのだ。
いい機会なので、これまでのエアクラのバッテリーを振り返ってみよう。2017・18年の9ボルトから、2019年は10ボルト、2020年は12ボルト、2021年は13ボルトと小刻みにパワーアップを重ねて、今回の2022年モデルは堂々の17ボルト。6年でパワーはほぼ倍増したことになる。
この進化の歩みについて、青木さんは次のように語る。
「パワーはもちろんですが、機能面やルックス面でもどんどん満足いただける商品になってきたかな、と。たとえば今回の新デバイスの充電時間は3.5時間と、旧モデルの約半分になりました。これなら昼休みを使って1時間『継ぎ足し充電』ができれば、余裕で一日持ちます。あとは、4段階中の3番目の9ボルトで15時間稼働できるのも地味にすごい。ほかにもケーブルが抜けにくくなったりファンが洗えるようになったり、と細かい面も着実に進化しています」
なんと、今回のファンは水洗いが可能。他社のようにカバーは開かないものの、水が入ってはいけない部分にフタをして、水道でじゃぶじゃぶ流せる。ホコリでファンの色がくすんできても、輝きを取り戻せるのだ。夏を乗り切るパートナーに「ヤレ」が出ると仕事に向かうテンションも落ちてしまう、といった美意識の高い職人にはありがたい仕様といえる。
●「映える」デバイス
機能性の充実が細やかな一方、ルックス面の進化はわかりやすい。特にこれまでなかったオレンジのファンやブルーのバッテリーは「新生エアクラ」の代名詞と言えるアイコニックな商品だ。
「以前からスパイダーレッドなど攻めたカラーリングのファンを出していましたが、今回の目玉はオレンジ。プロフェッショナルのためのギアというニュアンスを込めて『レスキューオレンジ』と名付けました。人命救助のスペシャリスト、レスキュー隊のイメージです。黒のファンならどんな服にでも合うんですけど、あえてオレンジやブルーのファンを買って、ウェアとの組み合わせを楽しむユーザーさんが増えているらしくて、メーカーとしてはすごくうれしいですね」
ファンは空調ウェアの心臓であって、しかももっとも人目につくパーツだ。それを華やかなカラーで彩ろうというのは、いかにも“伊達”で職人らしい。若手ワーカーの心をつかむバートルならではの発想だろう。
「また、新色オーシャンブルーのバッテリーも非常に好評です。バッテリーなんてウェアの中に入って見えないじゃん、と思うかも知れませんが、毎日さわるものがお気に入りかそうじゃないのかっていうのはけっこう大きい。やはりバッテリーといえども、ウェアに配線するときや充電器につなぐときにグッとくるデザインであるべきだと思うんです。デザイン性の高いデバイスをかっこいい箱に入れて販売することで、所有欲を満たせるアイテムになったと思います。また別売りのバッテリー収納ケースも趣向を凝らしてアタッシュ風のものを用意しました」
公式カタログにはウェア内部にデバイスを取り付けるときの説明写真が載っているのだが、ここに黒ではなくカラーリングされたモノが登場する意義は大きい。取扱説明書みたいになりがちな絵に、オシャレの楽しみや遊び心を感じられるようになる。要するにブルーのバッテリーは「映える」のだ。
●ユニフォームもエアクラで
さて、デバイスの話はここまでにして、エアークラフトの対応ウェアを紹介してもらおう。
基軸になるのは、カジュアル系の新作「1171シリーズ」、ミリタリー系の「1151シリーズ」の2タイプ。綿100%のウェア「1181シリーズ」も登場しているが、溶接などの火を扱う現場でなければ、この二つが主な選択肢となる。
「1171シリーズは汎用性の高いポリエステル製のウェアです。UVカット仕様で、撥水性や耐久性も兼ね備えているので、新型デバイスの性能がじゅうぶん味わえるでしょう。フルハーネス対応なのに見た目はカジュアルで、ヘルメット対応のフードは視界を遮らないようカーブさせています。使わないときは襟元に収納できるのもポイントです」
いっぽうの「1151シリーズ」は、好評のベストと半袖に新作のブルゾンを加えたもの。機能性は1171と同じように高いが、その志向はやや異なる。
「1151シリーズは、UVカットに加えて遮熱性が高いのが特長です。裏アルミ仕様によって直射日光によるウェア内部の温度上昇を抑えられます。フルハーネスにも対応しているので、カンカン照りの屋根の上での作業なんかにはこちらがおすすめです。価格帯も1171シリーズと同じなので、デザインやカラーの好み、それに現場環境に応じて選んでほしいですね」
それにしてもエアクラのウェア展開はわかりやすい。1171・1151の両シリーズとも「ベスト・半袖・長袖」の3タイプが用意されているので「これの半袖タイプがあったらいいのに」「同じ見た目で長袖と半袖を使い分けたいんだけど」といった悩みとは無縁だ。
「それはやはりユニフォーム採用を考えての展開です。ベストは制服っぽくないし、長袖でもカモフラやインディゴをユニフォームにする会社はほとんどない。でも1171シリーズの袖付きモデルで、色をシルバーやネイビーにすればじゅうぶん制服になりますよね。フードを収納可能にしたのも同じ理由です。カジュアルな見た目が好きな人はベストや柄ものを選んで、ユニフォームらしさを求める人は、長袖や半袖の中から“きちんと感”やコーポレートカラーを意識して選ぶ。選択する商品によって、同じシリーズでもまったく違うニーズを満たすことができるんです」
初代から6年目となるエアークラフト。「互換性」という枠組みを卒業した六年生は、これからどんな成長を見せてくれるのだろうか。
取材に答えてくれたのは営業部の森近さんと青木さん。さっそくファン付きウェア「エアークラフト」2022年モデルの特徴から聞いていこう。
「今回の新モデルについてひとことで言うと『飽くなきパワーアップ』です。2021年モデルのバッテリーは13ボルトだったのに対して、2022年はなんと17ボルト。最大風量も毎秒70リットルから80リットルに増大しました。以前からエアクラは風の強さが売りだったわけですが、それに満足せず、さらなるパワーを追い求めました」
編集長は覚えている。数年前、初めてエアークラフトの新作を試着させてもらったとき、風量が強すぎて寒いくらいだったことを。当時でも正直いって、こんなに強くしてどうするのか、一体この先どうなるんだろう? と思ったのだった。あれからもずっと「エアクラ」は、愚直にパワーアップを重ねてきたのである。まるで求道者のように。
こちらが感嘆の息をこぼすと、森近さんは再びゆっくりと語り始める。
「その代わりといってはなんですが、デバイスの互換性はすべてなくなりました。2022年モデルはファン・バッテリー・ケーブル・充電器のすべてが刷新されたので、過去のモデルと組み合わせて使うことはできません。もちろんウェアは以前からのものをお使いいただけますけど、電気関係は全部ダメです。つまり、エアークラフトの新デバイスを導入するなら、新たに一式そろえてもらう必要があります」
これは衝撃的な発表である。エアクラの2021年モデルを使っているユーザーは、バッテリーや充電器を22年モデルに使い回すことができない。そのまま21年モデルを使い続けるか、デバイス一式をすべて新型に切り替えるしかないのである。バッテリーが劣化した場合には、新デバイスに切り替えるのに迷いはないだろう。しかし、ファンだけが壊れたり、ケーブルが断線したりといったケースでは判断に困るかもしれない。
これがパワーアップの代償ということだ。
●充電時間もメンテ性も
「互換性については申し訳ないんですけど、正直もう限界でした。2017年に9ボルトのデバイスを発表してからずっと旧モデルのバッテリーなどを使えるようにしていたんですが、それだと14ボルトくらいで頭打ちになってしまうんです。ハッキリとパワーアップを謳うためには、互換性を犠牲にする必要があった。しかし安心してください。また何年かは新作を出してもこの2022年型デバイスとの互換性をキープしていきますので」
そう、この移り変わりの速い時代において、去年まで2017年のバッテリーが使えたこと自体、ありえないことだったのだ。
いい機会なので、これまでのエアクラのバッテリーを振り返ってみよう。2017・18年の9ボルトから、2019年は10ボルト、2020年は12ボルト、2021年は13ボルトと小刻みにパワーアップを重ねて、今回の2022年モデルは堂々の17ボルト。6年でパワーはほぼ倍増したことになる。
この進化の歩みについて、青木さんは次のように語る。
「パワーはもちろんですが、機能面やルックス面でもどんどん満足いただける商品になってきたかな、と。たとえば今回の新デバイスの充電時間は3.5時間と、旧モデルの約半分になりました。これなら昼休みを使って1時間『継ぎ足し充電』ができれば、余裕で一日持ちます。あとは、4段階中の3番目の9ボルトで15時間稼働できるのも地味にすごい。ほかにもケーブルが抜けにくくなったりファンが洗えるようになったり、と細かい面も着実に進化しています」
なんと、今回のファンは水洗いが可能。他社のようにカバーは開かないものの、水が入ってはいけない部分にフタをして、水道でじゃぶじゃぶ流せる。ホコリでファンの色がくすんできても、輝きを取り戻せるのだ。夏を乗り切るパートナーに「ヤレ」が出ると仕事に向かうテンションも落ちてしまう、といった美意識の高い職人にはありがたい仕様といえる。
●「映える」デバイス
機能性の充実が細やかな一方、ルックス面の進化はわかりやすい。特にこれまでなかったオレンジのファンやブルーのバッテリーは「新生エアクラ」の代名詞と言えるアイコニックな商品だ。
「以前からスパイダーレッドなど攻めたカラーリングのファンを出していましたが、今回の目玉はオレンジ。プロフェッショナルのためのギアというニュアンスを込めて『レスキューオレンジ』と名付けました。人命救助のスペシャリスト、レスキュー隊のイメージです。黒のファンならどんな服にでも合うんですけど、あえてオレンジやブルーのファンを買って、ウェアとの組み合わせを楽しむユーザーさんが増えているらしくて、メーカーとしてはすごくうれしいですね」
ファンは空調ウェアの心臓であって、しかももっとも人目につくパーツだ。それを華やかなカラーで彩ろうというのは、いかにも“伊達”で職人らしい。若手ワーカーの心をつかむバートルならではの発想だろう。
「また、新色オーシャンブルーのバッテリーも非常に好評です。バッテリーなんてウェアの中に入って見えないじゃん、と思うかも知れませんが、毎日さわるものがお気に入りかそうじゃないのかっていうのはけっこう大きい。やはりバッテリーといえども、ウェアに配線するときや充電器につなぐときにグッとくるデザインであるべきだと思うんです。デザイン性の高いデバイスをかっこいい箱に入れて販売することで、所有欲を満たせるアイテムになったと思います。また別売りのバッテリー収納ケースも趣向を凝らしてアタッシュ風のものを用意しました」
公式カタログにはウェア内部にデバイスを取り付けるときの説明写真が載っているのだが、ここに黒ではなくカラーリングされたモノが登場する意義は大きい。取扱説明書みたいになりがちな絵に、オシャレの楽しみや遊び心を感じられるようになる。要するにブルーのバッテリーは「映える」のだ。
●ユニフォームもエアクラで
さて、デバイスの話はここまでにして、エアークラフトの対応ウェアを紹介してもらおう。
基軸になるのは、カジュアル系の新作「1171シリーズ」、ミリタリー系の「1151シリーズ」の2タイプ。綿100%のウェア「1181シリーズ」も登場しているが、溶接などの火を扱う現場でなければ、この二つが主な選択肢となる。
「1171シリーズは汎用性の高いポリエステル製のウェアです。UVカット仕様で、撥水性や耐久性も兼ね備えているので、新型デバイスの性能がじゅうぶん味わえるでしょう。フルハーネス対応なのに見た目はカジュアルで、ヘルメット対応のフードは視界を遮らないようカーブさせています。使わないときは襟元に収納できるのもポイントです」
いっぽうの「1151シリーズ」は、好評のベストと半袖に新作のブルゾンを加えたもの。機能性は1171と同じように高いが、その志向はやや異なる。
「1151シリーズは、UVカットに加えて遮熱性が高いのが特長です。裏アルミ仕様によって直射日光によるウェア内部の温度上昇を抑えられます。フルハーネスにも対応しているので、カンカン照りの屋根の上での作業なんかにはこちらがおすすめです。価格帯も1171シリーズと同じなので、デザインやカラーの好み、それに現場環境に応じて選んでほしいですね」
それにしてもエアクラのウェア展開はわかりやすい。1171・1151の両シリーズとも「ベスト・半袖・長袖」の3タイプが用意されているので「これの半袖タイプがあったらいいのに」「同じ見た目で長袖と半袖を使い分けたいんだけど」といった悩みとは無縁だ。
「それはやはりユニフォーム採用を考えての展開です。ベストは制服っぽくないし、長袖でもカモフラやインディゴをユニフォームにする会社はほとんどない。でも1171シリーズの袖付きモデルで、色をシルバーやネイビーにすればじゅうぶん制服になりますよね。フードを収納可能にしたのも同じ理由です。カジュアルな見た目が好きな人はベストや柄ものを選んで、ユニフォームらしさを求める人は、長袖や半袖の中から“きちんと感”やコーポレートカラーを意識して選ぶ。選択する商品によって、同じシリーズでもまったく違うニーズを満たすことができるんです」
初代から6年目となるエアークラフト。「互換性」という枠組みを卒業した六年生は、これからどんな成長を見せてくれるのだろうか。
背中側には保冷剤ポケット付き
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森近さん(右)と青木さん
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「なんでも来い」の万能選手! UVカット&撥水&高耐久の「AC1171シリーズ」 カジュアルな見た目に、デバイスの性能を発揮できる機能性を兼ね備えた「エアークラフト」対応ウェア。素材は軽量のポリエステルで、UVカット・撥水・高耐久の万能タイプ。ヘルメットの上からかぶれる大型フードは視界を狭めないサイドカーブ仕様で収納可能。袖付きのネイビーやシルバーは企業ユニフォームにもおすすめ。 |
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高耐久のナチュラルコットン製! 綿100%のファン付きウェア「AC1181シリーズ」 日本製の高密度な綿リップクロスを使用した「エアークラフト」対応ウェア。ブルゾン・ベスト・半袖ともにフルハーネス対応で襟部分へのフード収納も可能。ミリタリー系のハードなテイストと綿のナチュラルな風合いを同時に楽しめる。背ヨークの通気エアダクトポケットに保冷剤を入れればさらに涼感アップ。 |
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