【ミズノ】溢れ出す地力!image_maidoya3
あまり知られていないが、ミズノはコテコテの大阪企業である。本社ビルが立つのは大阪の南港エリア。人気のない埋立地に大阪府の咲洲庁舎や貨客船のターミナル、国際展示場といった公共的なハコモノがそびえるなか、ミズノだけが大手企業として気を吐いている。その目が見つめるのは10km先、大阪湾を挟んで対面に位置する神戸市のポートアイランド。地方博覧会「ポートピア’81」と同時に街開きされた当時としては最先端のウォーターフロントの都市だ。そして、この“ポーアイ”の中心にはアシックスの本社ビルがある。つまり、大阪湾の北端で大阪・神戸を代表するスポーツメーカーが対峙しているのだ。現状ではワーキングの分野でミズノはアシックスの後塵を拝している。“試合”は大幅にリードされているものの、大阪企業としてこのまま何もできずに神戸に負けるのはプライドが許さない。登場から7年目を迎え、ほぼ全モデルを新型ソールに刷新した安全靴「オールマイティ」に勝利を託す。

ミズノ
image_maidoya4
ライフスタイル営業本部の中村さん
image_maidoya5
通気性最高の「VH11L」
●主力は「SⅡソール」
 
  取材に応じてくれたのはミズノ営業本部の中村さん。歴代の「オールマイティ」が並ぶショールームで2022年現在の商品構成を語る。
 
  「一番のトピックはやはり『SⅡソール』の全面展開ですね。ランニングシューズにも使われている柔らかくて軽い素材を使ったセル構造の靴底で、運動性や耐滑性に優れています。2021年発売の『LSⅡ』用に新開発したワーキングシューズ専用のソールなんですが、これをどんどん横展開して、現時点でSⅡソールを採用しているのは8モデル。アッパー形状はローカットからミッドカットまで、締め具も靴ひも・ベルクロ・ダイヤル式の3タイプで、この新型ソールを味わっていただけます」
 
  オールマイティには、運動靴でおなじみの高機能ソール「ミズノウェーブ」を搭載したハイスペックモデルもある。ただ、市場の評価はやはりワーキング用のSⅡソールに集まっているようだ。
 
  「ミズノウェーブは運動性バツグンなんですけど、いくつものパーツを組み合わせたり複雑な形に張り合わせたりと、構造が複雑なぶん重くなっちゃうんですよ。それに値段も高くなってしまう。いっぽうSⅡソールは、かかと部分にブロック状のクッションができるようにミッドソールを成形してある。それに耐滑性のあるアウトソールを張り合わせるだけで、作りがシンプルです。オールマイティと他社製品を比べたときの違いは“軽さ”なので、これからもこの強みが活かせるSⅡソールを主力にしていこうと思っています」
 
  ●ユニフォームもOK!
 
  では、自慢のSⅡソールを採用したモデルから見ていこう。新登場の「LSⅡ21M(型番:F1GA2200)」は、くるぶしまでカバーするミッドカットモデル。大人っぽいツヤ消しの人工皮革アッパーに、白・黒・ネイビーといった服に合わせやすいカラーリングも魅力だ。
 
  「LSⅡ21Mは、先行するローカットモデル『LS21L』のミッドカットバージョンです。アッパーはメッシュと人工皮革の組み合わせで、つま先部分には補強のカバーを付けています。メッシュは通気性がよくて快適なんですけど、強度や耐久性の面では皮革に軍配が上がる。というわけで、何かとダメージが加わるつま先部分を人工皮革とカバーで固めました。ぶつけたり挟んだりしても擦り切れにくく長く使えるので、どのモデルにするか迷ったときはこれですね」
 
  安全スニーカーといえば、赤や黄色といった原色カラーのイメージがある。実際に兄弟モデルのローカット「LSⅡ22L(ベルクロタイプ、型番:F1GA2101)」や「LSⅡ11L(靴ひもタイプ、型番:F1GA2100)には蛍光イエローやブルー&オレンジなど、思い切ったカラーリングが目立つ。配色やデザインについて、なにか方針変更があったのだろうか?
 
  「派手なカラーは限定販売でやることにして、今回のカラーリングは白黒系統に落ち着きのある赤だけ。やはり数が出るのは白と黒なので、そこにネイビーを加えて大人っぽいカラーをそろえました。靴底は軽くて高性能なSⅡソールにアッパーは耐久性重視の人工皮革と、すごく安定感のある組み合わせです。ミッドカットの中では新定番と呼べるモデルであり、会社のユニフォームにするのもオススメですね」
 
  なるほど。ローカットに比べるとミッドカットはカジュアル感が抑えられ、ベルクロ仕様でも子供っぽい感じがしない。これにツヤ消しモノトーンのデザインが加わると、これ以上ないほどオーソドックスな印象となる。さらに、かかとを踏まずにきちんと履いてもらうことを考えれば、ミッドカットはユニフォーム採用の大本命と言えるかもしれない。
 
  ●防塵ハイカット
 
  と、感心していると、中村さんは「丈夫なタイプと言えば……」と新たなシューズを並べだした。こちらの新作「SSⅡ21H」もSⅡソール採用のミッドカット。だが、デザイン的にはかなりイカツい感じがする。制服にできそうな先ほどのモデルに対して、こちらは職人ウケしそうなカッコいい路線の安全靴だ。
 
  「この『SSⅡ21H(型番:F1GA2205)』はカタログ上ではハイカットモデルの商品で、カカトの部分がミッドカットより高くなっています。なんでそんな細かい違いをつけたかというと、こちらはハードな現場を想定した防塵対応モデルだからです。アッパーはつま先からサイド、カカトまですべて人工皮革で、ホコリや砂が入り込まない。いちばんゴミが入るくるぶしの部分も、ハイカットと上まであるベルクロテープでしっかりカバーしてあります。ちょっと硬そうに見えますけど、足首まわりは意外とソフトです」
 
  さわってみるとアッパー内側はフカフカ。足の甲に当たる「ベロ」の部分も……、と思ったらここにも特色があることに気づいた。
 
  「お気づきですか、ベロもゴミが入りにくい特別仕様なんです。スニーカーのベロというのは前の方だけアッパーとつながっていて、オールマイティの他のモデルでもそうなっているんですが、こちらは前からサイドにかけて“コの字”状にアッパーとつながっています。これによって、たとえベロとアッパーの隙間にホコリや砂が入り込んでも、靴の中までは届かない。シンプルな方法ですけど、効果は大きいですよ。あと通常モデルと比べて雨も多少は防げます」
 
  またしても唸らされる。ハイカットにオール人工皮革のアッパー、縫い付け式のベロ、と要するにゴミやホコリの侵入口を閉じているだけで、誰でも思いつきそうな構造である。しかし、このコンセプトを安全スニーカーに落とし込んだことは画期的ではないだろうか。砂や小石、葉っぱや木くずなど、靴の中に何か入ったときのストレスは相当なものがある。ハイカットは脱ぎ履きの面で敬遠されがちだが、このモデルで異物ストレスを完全解決! というのもアリな気がしてきた。
 
  ●大型ダイヤル登場!
 
  またオールマイティのミッドカットには、ワイヤー式フィッティング「BOA」搭載モデルも用意されている。カタログには「ワークシューズとして国内初のM4ダイヤル」とあるけれど、いったい何を意味するのだろう。
 
  「これはダイヤルの大きさです。当社のローカットや他社の安全靴には『L6』というダイヤルが付いているのに対して、ミッドカットのLSⅡ73M(型番:F1GA2203)のダイヤルはひと回り大き目の『M6ダイヤル』を採用しました。理由は簡単で、ミッドカットを足にフィットさせるにはワイヤーの長さがいるのに加えて、小さなダイヤルでは巻き上げ数が多くなるからです。そんな事情からの大型ダイヤル搭載だったのですが、軽い力で回せるし、手袋をしていても扱いやすいという声が寄せられています」
 
  個人的な感想を言わせてもらえば、通常のBOAダイヤルをカッコいいと感じる人なら、大型ダイヤルは必ず気に入ると思う。さらに言えば、BOAこそ最高のフィッティングだと考える愛用者にとっては、この“デカイBOA”は堪えられないファンアイテムとなるだろう。
 
  続いて、中村さんが特色のあるモデルとして紹介するのは、通気性に特化した新作「VH11L(型番:F1GA2204)」。こちらはSⅡソールではなく通気孔の付いた特殊なソールを採用している。
 
  「これは、さっきのハイカットとは正反対に、靴の中に風を取り込めるように設計したモデルです。ミッドソールの前方からサイドにかけて通気孔があって、同じく穴の空いたインソールを通って、靴の中に空気が入ってきます。足の蒸れや熱気を逃がせるので、快適に作業していただけます。ただ、空気が入るということは当然、他のものも入ってくるわけで、小石や水たまりには要注意です。それにメッシュは人工皮革よりも擦り切れやすいので、これらを理解した上で、通気性を重視する人に使ってもらいたいですね。倉庫や物流施設など、屋内メインの現場にいいんじゃないでしょうか」
 
  盤石のS2ソールに、防塵モデル・通気性ソール・大型BOA搭載と、老舗メーカーらしい地力を見せつけたミズノのオールマイティ。あとは“実戦”で結果を出すだけだ。
 
image_maidoya6
ミッドカットに搭載された大型ダイヤル
image_maidoya7
「オールマイティをよろしく!」

    

蒸れる作業靴よ、さようなら! ダントツに涼しい「オールマイティ」高通気モデル

大型の通気孔が特徴的な「オールマイティー」涼感タイプ。ソール横に設けた孔から取り込まれた外気は、靴の内部を通って上面と流れ、足の蒸れや熱気を逃がす。アッパーは網目の大きいエアメッシュ採用で、上から下への通気性もよし。そのぶん水も入りやすいので雨の日は要注意。JSAA規格「A種」認定品。


ホコリや砂もシャットアウト! 作業中のイライラを解消する高密閉タイプ

靴の中に細かいゴミがはいるのを防ぐ「オールマイティー」の粉塵対応モデル。ハイカットの人工皮革アッパー、3本ベルトはフィット感がよく靴と足のあいだに隙間もできにくい。足の甲に当たる「ベロ」のゴミが入りにくい構造に加えて、現代的なデザインやカラーにも注目。JSAA規格「A種」認定品。