安全靴特集の3本目。本来ならこのポジションはスポーツメーカーではない“第三勢力”が登場するところである。たとえば、軍手や地下足袋の老舗メーカーとか海外スポーツブランドとライセンス契約して安全靴を作っているあの会社、ホームセンターで売れる格安路線の某ブランドといった具合に。ところが、今回はなんと自重堂がブッキングされているではないか。正直、編集長は「自重堂の安全靴」と聞いてもまったくイメージできない。そりゃあ、総合メーカーだから何でもあるのは知っている。あの分厚いカタログ『制服百科』の最後の方にはきっと載ってるんだろうけど……。はたして、スポーツブランドと対抗できるのだろうか? そんな不安を抱えながら会議室に入ると、おなじみのK氏が待ち構えていた。
自重堂
ロゴ使いに見える並々ならぬこだわり
極厚ソールがインパクト大の「S2201」
●コンセプトは?
「今回は安全靴特集ですって? はいはい、待ってましたよ! ユニフォームの総合メーカー自重堂は作業着だけじゃなく靴もいい。安全スニーカーも超カッコいい……。ほらほら、見てください、このカラーリング! このデザイン! このソール!」
いきなりすごいテンションだ。はっきり言って新作ウェアを紹介するときより力が入っているではないか。ノリノリのK氏に少したじろぎつつも、今回の取材のアウトラインを説明しようとする。
「いや、あの……まずは全体像をうかがいたいと思っているんです。自重堂の安全靴って言われても、ぜんぜんイメージできないお客さんもいると思うんですよね。たとえばスポーツメーカーの某社だったら『ハイスペックで疲れにくい』とか、作業靴メーカーのあそこだったら『手頃な値段で軽い』とか、いろいろ特色があるじゃないですか? ほかにも独特のデザインとか独自技術とか。個別の商品の話に入る前に、そんな感じで『自重堂の安全靴と言えばコレだ!』というのを教えてほしいんです。」
「えっ、なに? そんなのないですよ」
取材開始からたった3分でガッツリ暗雲が垂れこめてきた。いきなり遠くの空が真っ黒になって、ひんやりした風が吹き始めたような感覚だ。
●ループする会話
「うーん……、安全靴のブランド名はカジュアル作業服でおなじみの『Z-DRAGON』なんですよね?」
「そう、『JAWIN』はなくて、全部『Z-DRAGON』。ほら、この靴のここに『Z』がドーンって! めっちゃカッコいいでしょう? それだけじゃなくカカトにもロゴの箔押しがあったり、バックの反射材のパターンも……」
話が冒頭にループしそうなので、軌道修正を試みる。
「うんうん、わかります。自重堂の『Z-DRAGON安全靴』っていいですよね。その“よさ”や“ウリ”を、パッとお客さんに伝えられたらステキだと思うんです。ほら、独自開発のソールとか、独特のアッパー形状とか。こういうのは他社にはないウチだけの機能ですよ、みたいな。なにもスポーツメーカーみたいなスゴいテクノロジーとかじゃなくてもいいんですよ。なんでもいいんです。たとえば、安価だから職場のユニフォームにも採用しやすいとか、そういうのでもあったらわかりやすいですよね?」
「えっ、ああ、そうね。うーん……、Z-DRAGONの安全靴は……カッコいい、かな? とにかくカッコいい! 特色はひと目でわかるこのカッコよさです!」
ここまで、ブランドイメージや商品コンセプトについて語ろうと30分ほど時間を割いてきた。しかし、どれほど説得を重ねても、不思議なことに会話は冒頭に回帰してしまうのだった。
●デザイン性で勝負!
「わ、わかりました。Z-DRAGONの安全靴はとにかくカッコいい。ひたすらデザインに全力投球だ、と」
「そうそう、はっきりいって機能面は、先芯で足を保護さえできればいいんですよ。Z-DRAGONはJSAAの規格を取っているものもあれば、ないものもある。もちろん『JSAAの認定の安全スニーカー着用』と決められている現場は、認定モデルを履いて行かなきゃダメですけど、そうでない職場もいっぱいありますから。で、万が一に備えて先芯が入った靴がいいな、カッコいい作業用シューズはないかな、とくればZ-DRAGONの出番ですよ」
たしかに一理ある。建設業や製造業などの現場では、JSAA認定モデルでないと入れないところがあるけれど、軽作業や物流といった職種では、安全靴の着用義務がなく、個々のワーカーの判断に任せているパターンも多いのだ。そんな現場では、ベテランのスタッフは高機能なスポーツメーカーの安全靴を履いているかと思えば、新人や短期バイトは普通のスニーカーで働いていたりする。しかし、やはりそれなりの重量物を扱うわけだから、働き続けるうちに足を保護できる作業靴が欲しくなってくるのだ。
「わかりました? みんながハイスペックな安全靴を必要としているわけじゃないんです。ほら、Z-DRAGONの公式インスタグラムを見てください。ユーザーさんの写真がいっぱいシェアされてるでしょ? 若い人に女性も多いです。職人さん向けのゴリゴリのワーキングシューズだけじゃなくて、パートやバイトで働く人が気軽に買えて、しかもデザイン性の高い作業靴というのは、意外とニーズがあるんですよ」
●思想の違い
ずいぶん紆余曲折を経たものの、ついに光明が見えてきた。Z-DRAGONは作業靴であると同時にファッションアイテムだ。安価でデザイン性の高い安全スニーカーを探している人には、スポーツメーカーの高機能なものより、こちらのほうが“刺さる”のである。
「ね、わかったでしょ? じゃあ改めて、Z-DRAGON安全靴のラインナップを見てもらいましょうか」
目の前には、カモフラ柄の入ったド派手な赤のモデル「S5213」をはじめ、特撮映画かアニメのコスチュームのような近未来デザインの「S7213」、数年前に長距離走の記録をバンバン塗り替えた厚底ランニングシューズを思い出させる「S2201」など、ひじょうに個性的なデザインの安全スニーカーが並んでいる。靴メーカーを取材しているとクッション性能や耐久性、履き心地、フィッティングなど機能面や使用感にばかり目が行くようになってしまうのだが、『価格の割に高いデザイン性』『所有欲を刺激するアイテム的な魅力』も大切だと思い知らされた。スポーツメーカーとは初めから“思想”が違うのである。
「このアッパーの凝ったカラーリングに、このロゴの入れ方、耐滑性とデザイン性を両立したアウトソールの形状とか、ヤバいでしょ? こんなアイテムを同じ価格で作れるメーカーはちょっといないですよ。普通はこんなミッドソールの側面にこんな複雑なパターンやカラーリングを入れたり、近づかないとわからないうっすらした柄を入れたりとかしないですよ。これもひたすらにカッコいい作業靴を追求した結果ですね」
うーん、カッコいい。自重堂がこんなイケてるアイテムを作っているなんて……。最後に声を大にして言っておこう。Z-DRAGONの安全靴は「カッコいいだけ」である。一体それのどこが悪い?
「今回は安全靴特集ですって? はいはい、待ってましたよ! ユニフォームの総合メーカー自重堂は作業着だけじゃなく靴もいい。安全スニーカーも超カッコいい……。ほらほら、見てください、このカラーリング! このデザイン! このソール!」
いきなりすごいテンションだ。はっきり言って新作ウェアを紹介するときより力が入っているではないか。ノリノリのK氏に少したじろぎつつも、今回の取材のアウトラインを説明しようとする。
「いや、あの……まずは全体像をうかがいたいと思っているんです。自重堂の安全靴って言われても、ぜんぜんイメージできないお客さんもいると思うんですよね。たとえばスポーツメーカーの某社だったら『ハイスペックで疲れにくい』とか、作業靴メーカーのあそこだったら『手頃な値段で軽い』とか、いろいろ特色があるじゃないですか? ほかにも独特のデザインとか独自技術とか。個別の商品の話に入る前に、そんな感じで『自重堂の安全靴と言えばコレだ!』というのを教えてほしいんです。」
「えっ、なに? そんなのないですよ」
取材開始からたった3分でガッツリ暗雲が垂れこめてきた。いきなり遠くの空が真っ黒になって、ひんやりした風が吹き始めたような感覚だ。
●ループする会話
「うーん……、安全靴のブランド名はカジュアル作業服でおなじみの『Z-DRAGON』なんですよね?」
「そう、『JAWIN』はなくて、全部『Z-DRAGON』。ほら、この靴のここに『Z』がドーンって! めっちゃカッコいいでしょう? それだけじゃなくカカトにもロゴの箔押しがあったり、バックの反射材のパターンも……」
話が冒頭にループしそうなので、軌道修正を試みる。
「うんうん、わかります。自重堂の『Z-DRAGON安全靴』っていいですよね。その“よさ”や“ウリ”を、パッとお客さんに伝えられたらステキだと思うんです。ほら、独自開発のソールとか、独特のアッパー形状とか。こういうのは他社にはないウチだけの機能ですよ、みたいな。なにもスポーツメーカーみたいなスゴいテクノロジーとかじゃなくてもいいんですよ。なんでもいいんです。たとえば、安価だから職場のユニフォームにも採用しやすいとか、そういうのでもあったらわかりやすいですよね?」
「えっ、ああ、そうね。うーん……、Z-DRAGONの安全靴は……カッコいい、かな? とにかくカッコいい! 特色はひと目でわかるこのカッコよさです!」
ここまで、ブランドイメージや商品コンセプトについて語ろうと30分ほど時間を割いてきた。しかし、どれほど説得を重ねても、不思議なことに会話は冒頭に回帰してしまうのだった。
●デザイン性で勝負!
「わ、わかりました。Z-DRAGONの安全靴はとにかくカッコいい。ひたすらデザインに全力投球だ、と」
「そうそう、はっきりいって機能面は、先芯で足を保護さえできればいいんですよ。Z-DRAGONはJSAAの規格を取っているものもあれば、ないものもある。もちろん『JSAAの認定の安全スニーカー着用』と決められている現場は、認定モデルを履いて行かなきゃダメですけど、そうでない職場もいっぱいありますから。で、万が一に備えて先芯が入った靴がいいな、カッコいい作業用シューズはないかな、とくればZ-DRAGONの出番ですよ」
たしかに一理ある。建設業や製造業などの現場では、JSAA認定モデルでないと入れないところがあるけれど、軽作業や物流といった職種では、安全靴の着用義務がなく、個々のワーカーの判断に任せているパターンも多いのだ。そんな現場では、ベテランのスタッフは高機能なスポーツメーカーの安全靴を履いているかと思えば、新人や短期バイトは普通のスニーカーで働いていたりする。しかし、やはりそれなりの重量物を扱うわけだから、働き続けるうちに足を保護できる作業靴が欲しくなってくるのだ。
「わかりました? みんながハイスペックな安全靴を必要としているわけじゃないんです。ほら、Z-DRAGONの公式インスタグラムを見てください。ユーザーさんの写真がいっぱいシェアされてるでしょ? 若い人に女性も多いです。職人さん向けのゴリゴリのワーキングシューズだけじゃなくて、パートやバイトで働く人が気軽に買えて、しかもデザイン性の高い作業靴というのは、意外とニーズがあるんですよ」
●思想の違い
ずいぶん紆余曲折を経たものの、ついに光明が見えてきた。Z-DRAGONは作業靴であると同時にファッションアイテムだ。安価でデザイン性の高い安全スニーカーを探している人には、スポーツメーカーの高機能なものより、こちらのほうが“刺さる”のである。
「ね、わかったでしょ? じゃあ改めて、Z-DRAGON安全靴のラインナップを見てもらいましょうか」
目の前には、カモフラ柄の入ったド派手な赤のモデル「S5213」をはじめ、特撮映画かアニメのコスチュームのような近未来デザインの「S7213」、数年前に長距離走の記録をバンバン塗り替えた厚底ランニングシューズを思い出させる「S2201」など、ひじょうに個性的なデザインの安全スニーカーが並んでいる。靴メーカーを取材しているとクッション性能や耐久性、履き心地、フィッティングなど機能面や使用感にばかり目が行くようになってしまうのだが、『価格の割に高いデザイン性』『所有欲を刺激するアイテム的な魅力』も大切だと思い知らされた。スポーツメーカーとは初めから“思想”が違うのである。
「このアッパーの凝ったカラーリングに、このロゴの入れ方、耐滑性とデザイン性を両立したアウトソールの形状とか、ヤバいでしょ? こんなアイテムを同じ価格で作れるメーカーはちょっといないですよ。普通はこんなミッドソールの側面にこんな複雑なパターンやカラーリングを入れたり、近づかないとわからないうっすらした柄を入れたりとかしないですよ。これもひたすらにカッコいい作業靴を追求した結果ですね」
うーん、カッコいい。自重堂がこんなイケてるアイテムを作っているなんて……。最後に声を大にして言っておこう。Z-DRAGONの安全靴は「カッコいいだけ」である。一体それのどこが悪い?
独特の配色が魅力的な「S7213」
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低価格だがアウトソールにも妥協なし
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現場の視線をひとり占め! カモフラ&ロゴが注目度バツグンの「S5213」 立体感のある迷彩柄に単色系のカラーリングが特徴の「Z-DRAGON」安全スニーカー。グリップ力の高い合成ゴムのアウトソールに、ミッドソールはクッション性の高いEVA素材を使用。さらにベロ部分にブランドロゴを大きくあしらうことでデザイン性を高めた。万が一のケースでもスチール製の先芯がしっかり保護。 |
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ハード&ソリッドに攻めろ! フューチャー系配色で気分もアガる「S7213」 独特のカラーリングと近未来的なデザインが目を引く「Z-DRAGON」ミドルカットシューズ。アッパーはポリエステルと耐久性の高い人工皮革。ミッドソールはEVA素材でクッション性を高めた。重厚なルックスのわりに軽い点もうれしい。先芯は安心感のあるスチール製。 |
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