【アタックベース】全身電熱化!image_maidoya3
1981年創業のアタックベースは、ちょっと変わった会社である。作業服メーカーであると同時に全国に18の店舗を持つショップでもあるのがひとつ。ワークウェアだけでなくリサイクルショップや飲食店まで手掛けているのがふたつ。さらに編集部としては「ネーミングの特殊性」を推したい。いまどき横文字の社名なんて珍しくもないけれど、アタックベースほど作業着を想起させない会社はほかに思い浮かばない。同じアルファベット表記のJ社やB社と違って、字面や語感から“ワーキング臭”がまったく漂ってこないのだ。しかも意味は「攻撃拠点」。会社の前を通るたびに「一体なにと戦っているんです?」と言いたくなってくる。ところが、この会社は本当に攻めているのだ。ワークウェアの新しいジャンルに向かって挑戦を繰り返している。現在、猛攻をかけているのは防寒作業着。なかでも充電式バッテリーの力で体を温める電熱系のアイテムだ。

アタックベース
image_maidoya4
裏アルミで防寒力UP
image_maidoya5
中綿もしっかり入っている
●電熱ベストは4タイプ
 
  福山市郊外のアタックベース本社。秋冬ウェアに身を包んだマネキンがあちこちに佇む展示スペースに、営業部の田頭さんは現れた。その両手にはウェアとともに、手袋や靴下、さらにバッテリーやケーブルといった「デバイス類」がある。というわけで、さっそくアタックベースの電熱アイテムについて聞いていこう。
 
  「当社の電熱アイテムは今シーズンで3年目。もはや防寒といえば“ヒーターもの”という位置づけになっています。以前は重防寒のアウターにも力を入れていたんですが、今はオールシーズン使えるような軽防寒が中心。寒いときはさまざまな電熱アイテムで調節してもらおう、というわけです。シャツの上にヒートベストだけでもいいし、ジャケットや薄手のアウターの下にインナータイプのベストを着て調節するのもいい。春や秋にはバッテリーを外して普通のダウンベストとしても活用できる。こんなふうに電熱アイテムを上手く使えば、防寒の選択肢がひじょうに広がるんです」
 
  そう言って田頭さんがテーブルの上に広げはじめたのは、4タイプのヒートベスト。他社では「インナー用」と「アウター用」の2種類というのが相場だけれど、こちらは倍である。このアイテム数だけでもアタックベースの電熱ベストにかける熱意をビリビリ感じるではないか。では、紹介に入る前に型番とスペックを整理しておこう。
 
  【4タイプのヒートベスト】
  ①40000……カーボンファイバー内蔵のベーシックモデル(最高50℃)
  ②40050……カーボンファイバー内蔵の襟なし・インナー対応モデル(最高50℃)
  ③50000……カーボンファイバー内蔵の裏アルミモデル(最高50℃)
  ④60000……カーボンナノチューブ内蔵の裏アルミ・極寒対応モデル(最高60℃)
 
  「4タイプのうち①40000以外の3つは今シーズンからの新作です。まず4タイプに共通する特徴として、前後に取り付けた発熱体を体に密着させるための『側面ハイテンションニット』という構造があります。脇の下から裾まで、上下にかけて伸縮性のある素材を取り付けました。これによって姿勢を問わずベストの裏地が背中とお腹にフィットする。一体なぜそんな仕組みが必要かというと、電熱アイテムはじかに体に当たっていないと暖かくないからですね。たとえば前かがみになったとき、お腹の前に空間ができると前面の発熱体の温度は伝わらないんです。いくらしっかり発熱していたとしても。そんなことにならないよう、常に発熱体を体に押し当てるような設計を考えました」
 
  なるほど、編集長も経験がある。電熱ベストを着ているとき、背もたれのある椅子に座ったりリュックを背負ったりすると、急に暑くなったように感じるのである。ほかにも立っているときはお腹が暖かかったのに、座ると前面の「暖房効果」をほとんど感じなくなったりしたこともある。こういうのは発熱体が密着しているか否かによって生じる現象なのである。つまり、発熱体でじかに体を温める電熱ベストとデッドエア(衣服の中に閉じ込められた空気)によって体温を封じ込める中綿ベストとでは、見た目は同じでも防寒メカニズムがまるっきり違うのだ。
 
  要するに、トレーナーなどのゆったりした服の上から電熱ベストを着たり、大きめサイズの電熱ベストをアウターにしたりすると、ヒーターは性能を発揮できない。これが理解できたら次に行こう。
 
  ●最強ヒーター搭載!
 
  「最初にチェックしてほしいのは③50000ですね。これは①40000をリニューアルした電熱アウターで、コンセプトは『ヒーター付きに見えないベスト』。カジュアルなデザインに加えて、スイッチは内側に配置することで、普通のダウンベストに見えるようにしました。設定温度に応じて赤や青に光るスイッチは暗いところだとけっこう目立ちますから。さらに、ウェアの裏地にアルミ素材を使っており、保温力もアップしています。体温を反射する輻射熱の効果に加えて、ヒーターの熱を体にしっかり伝えることで、ワンランク上の暖かさを実現しました。中綿も入っているのでバッテリーにつながずに“普通のダウンベスト”として使うのもアリです」
 
  裏アルミはワーキングやアウトドアでおなじみの防寒アウターの定番。ユーザーのあいだではよく魔法瓶に例えられているほど保温効果は高い。それにヒーターが付いたのだから、まさに鬼に金棒である。正直、編集長が暮らしている大阪の冬だったら、バッテリーをつながずに済んでしまうかもしれないと思った。逆にいえば、ずっと屋外で過ごす人や北国のワーカーの場合、このウェアなら二重に安心だろう。仮にバッテリーを使い切ってしまっても、中綿と裏アルミの合わせ技で普通のダウンベスト程度には寒さを防いでくれるからだ。
 
  ここまでやれば充分……と言いかけたとき、田頭さんはまた別の電熱ベストを取り出した。
 
  「もっと暖かいのが欲しい、という人には④60000をおすすめします。さっきのがカーボンファイバー内蔵だったのに対して、こちらの発熱体は『カーボンナノチューブ』。薄くて柔軟性があり、温まりも早い高性能素材です。これを採用したことで、最大温度は他の3タイプより10℃アップの60℃になりました。スイッチを入れて5秒くらいで発熱体が均一に温まるのは感動しますよ。こちらも中綿入りで裏アルミ仕様なので、スイッチを入れていなくてもある程度の保温力はあります」
 
  日本の冬にそこまでの性能がいるのだろうか、というこちらの表情が伝わったのだろう。田頭さんは続ける。
 
  「はっきり言って、④60000は普通の人には不要です。もともと氷点下20−30℃の冷凍庫の中で働いている人の要望を受けて開発したもので、ターゲットは過酷な環境で活動する人。冷凍庫のほかにも、北海道や東北といった北国での屋外作業やアウトドア、釣りなどです。まあ、ハイスペックなぶん価格も高いので、本気で極寒状態に苦しんでいる人に使ってもらいたいですね」
 
  ●「現場の声」から新アイテム
 
  アタックベースの電熱ウェアはベストだけではない。というわけで、続いては“全身電熱化”を可能にするヒーター付きアイテムを紹介してもらおう。テーブルの上には数種類の手袋や靴下など、小物類が山と積まれている。先ほど同様に、まずは手足ものに絞って商品を整理しておく。
 
  【3タイプの電熱アイテム】
  ①421075ヒートインナーグローブ……インナー用の電熱手袋
  ②422075ヒートグローブ……オーソドックスな電熱手袋
  ③450080ヒートオーバーフット……電熱ソックスカバー
 
  「まずわかりやすいものから説明すると、②422075は防寒用の手袋をヒーター付きにしたものです。手首の外側左右に専用バッテリーを入れると手の甲側、指先まで埋め込まれたカーボンファイバーが発熱する。これはまあ、ヒーターグローブと聞いて誰もが想像するようなアイテムですよね」
 
  なにか含むものがある語り口だな……、と思って聞いていたら、残る2アイテムの説明で謎が解けた。
 
  「じつは②と比べて、①421075や③450080はかなり方向性が違うアイテムなんです。まず①は『インナーグローブ』とあるように、作業用グローブの下に着用する“下履き手袋”として設計してます。これも冷凍庫の中で働く人の要望から生まれた商品で、『指の内側が冷えて困っている』という声を受けて開発しました。冷凍庫のワーカーさんは防寒仕様の作業用手袋の下に軍手をつけて、“重ね着”しているのですけど、『それでも冷たいからなんとかならないか』と。じゃあ、発熱体を手のひら側につければいいと思うかもしれませんが、それだと何か持ったり握ったりするたびに圧力がかかってダメになってしまう。そこで、カーボンファイバーは指のサイドに配置しました。で、これで解決するのかというと、こんどは別の問題が出てくる。ランニングコストです」
 
  「作業用手袋は破れたら新品と交換すればいいけれど、値段の張る電熱手袋だとそうはいかない。しかし、作業を繰り返していれば、必ずグローブは摩耗する。どうすれば傷むのを気にせず電熱手袋を運用できるだろう……、と考えたとき、はじめて相談を受けたときの軍手の話を思い出したんです。そうか、下履きにすればいいんだ、と。下履きなら直接モノに触れるわけではないので、摩耗は抑えられます。この電熱インナーグローブの上にワンサイズ上の作業用手袋を着ければ、指先の冷えは解消できて、しかもヒーター手袋も傷みにくいはずです」
 
  なんと壮大な開発秘話だろう。では手の次は足だ。③450080オーバーフットの方は?
 
  「こちらも、電熱靴下ではなくソックスの上から履くためのアイテムです。直穿きがダメなわけではないけれど、低温やけどの心配がゼロではないので、2枚目としての着用を推奨しています。これは、警備員や交通整理など、屋外で立ちっぱなしの仕事をしている人の要望を受けて開発しました。いちばん冷えるつま先部分を温めることでかなり快適に仕事ができます。これも手袋と同じで摩耗が心配ですけど『なんとかしてほしい!』という声が大きかったので、とにかく商品化してみよう、と。手袋もそうですが、脱ぐときに強く引っ張ったりすると断線するかもしれません。しかし完璧な商品を生み出そうとしたら、発売までに何年もかかってしまう。とりあえずスタートさせて、年々バージョンアップしていくのがいいと思っています」
 
  現場の声に応えて、電熱アイテムを充実させたアタックベース。指先からつま先まで、全身ホカホカのフルヒーター装備で出撃したいワーカーは、この“攻撃拠点”に集うべし、と言っておこう。
 
image_maidoya6
苦心作のインナーグローブ
image_maidoya7
「電熱アイテムをよろしく!」

    

ヒーターで寒さを跳ね除けろ! 前も後ろもポカポカの電熱防寒シリーズ

背中と首元、お腹の部分にヒーターを搭載した電熱ウェア。バッテリーで熱を生じた発熱体で体はホカホカに。ウェアと体とのあいだに空間ができにくい「側面ハイテンションニット仕様」により、どんな体勢でも熱がしっかり体に伝わる。スイッチは前後別になっており、フロント・バック別のオン・オフや前後違いの温度調節も可能。


急な雨風でも快適すぎる! 全シーズン活躍の「ソフトシェル」シリーズ

アウトドアウェアにも匹敵する高い透湿性と防風仕様がうれしいソフトシェルの上着。生地表面のテフロン加工は水を丸めてはじくので、雨に降られた後のお手入れも簡単。動き回って汗ばんできたときは両脇ダクトファスナーを開けば一気にムレを解消できる。電熱ウェアと組み合わせるのもおすすめ。