【Asahicho】極寒に「GORE」を叫ぶimage_maidoya3
もし貴方がワークウェアを愛しているなら、たった一度でいい、JR福塩線の鵜飼駅で下車して、府中駅へと続く線路沿いの道を歩いてみてほしい。石見銀山街道と並行するこのルートは、まさに作業服界における巡礼の道--。××繊維、△△白衣、○○被服といった古めかしい看板が立ち並び、路地に入れば木造の縫製場でおばちゃんがミシンを動かしていたりする。そんな懐かしい雰囲気があるかと思えば、いかにも今時のカッコいい作業着ブランドのメーカーが自社ビルを構えていて、出荷作業に追われる様子が見えたりもする。そう、Asahichoもそんな福塩線沿いの老舗メーカーのひとつだ。ユニフォームに採用しやすいオーソドックスなアイテムを手掛ける一方で、夜間作業用の高視認性アイテム、異物混入を防ぐポケットレス作業着、水産業で必要になる防水防寒ウェアなど、特定分野にターゲットを絞った商品がヒットし続けている。この蝶は華麗に舞うだけではなく、働く人のニーズをピンポイントで刺す。

Asahicho
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営業・企画の森田さん
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ゴアテックスの防寒アウター
●何のための防寒?
 
  「おお、毎年恒例の防寒特集ですか。ちょうどいいですね、ウチは“防寒のAsahicho”って呼ばれてるくらいだから。まあ、近年は暖冬で重防寒は難しい面もあるけど、当社はしっかり展開してますよ。寒冷地のお客さんとか冷凍庫内で働いている方とか、やっぱり需要はありますから。ただ暖かいだけじゃなくて機能性でも評価されてますね」
 
  こう語るのは営業・企画の森田さん。関西や首都圏に住んでいると、つい「最近の冬は暖かいね」なんてことを言ってしまうのだが、北国や水産関係などでは、中綿たっぷりで風雨をシャットアウトする「重防寒」が求められている。同社は、そんな過酷な環境下のユーザーに特化した防寒アイテムを展開する“カテゴリーキラー”なのだ。
 
  そして、そんな防寒のAsahichoを代表するアイテムが「極寒」シリーズである。
 
  「『極寒』は寒冷地に対応した最強クラスのアウターで、水産業などでも使える『防水極寒』もあります。体の熱をキープするだけじゃなくて、雨や雪、水仕事のしぶきなんかも防げる。しかも透湿性も高いのでムレも感じず快適に作業できます。最近はワーキングでも透湿仕様のアウターが増えてきましたけど、ウチは10年以上前からゴアテックスの生地を仕入れて、ウェアを自社開発で製品化してきましたから。経験値が違いますね」
 
  ゴアテックスとは、米国のWLゴア&アソシエイツ社が製造販売する防水透湿性の素材のこと。簡単にいうとミクロの穴がたくさん空いたシートなのだが、この穴のサイズが水を通さないのに水蒸気を通すよう調節してある。1970年代以降、アウトドア用品やレインウェアに採用されている。ただハイスペックな一方、ひじょうに高コストなので作業服にはほとんど使われない。
 
  では、なぜAsahichoはゴアテックスを使うのか。
 
  「それはもう簡単な話で、安全だからですよ。ただ低体温症やしもやけの危険があるってだけじゃなくて、寒かったり雨で濡れたりすると動きが悪くなるし、イライラして注意力も落ちるでしょ? 私たちはそういうストレスが労働中の事故につながると考えているんです。つまり、温かく防水仕様で、しかも透湿性もあるハイスペックなアウターを着ていれば、余裕ができる。快適だったら周囲に気を配ったり、危険から身を守ったりしやすくなるでしょ? 機能性や見た目に目が行きがちですが、ワークウェアでいちばん大事なことって作業者を守る安全性ですから。当社が力を入れている高視認性のウェアや難燃素材の作業着はもちろんのこと、工場などでつかうポケットレスの作業着だって、ひとことで言えば『安全性を高めるウェア』なんです」
 
  ●ゴア&高視認!
 
  また、特定の分野に注力することは販売上の戦略でもある。
 
  「定番商品で満足する人もいれば、『もっとこういうウェアがあればいいのに』というお客さんもいるんですよね。数は少なくても。たとえば防水防寒の場合、さすがの大手メーカーにもここまで特化したアイテムはない、となると『Asahichoならあるかも?』みたいな話になる。高視認ウェアにしてもさまざまな会社が作っていますけど『うちの現場はもっと目立つ作業着が必要なんだ!』となれば、Asahichoに声がかかる。他社があまりやらない分野に力を入れることで、引き合いが増えるんです。これは普通のユニフォームを納入する上でもプラスになっています。つまり、大手ほどのアイテム数はなくても『防水防寒なら負けない』『高視認なら最強』というのが大事なんです。さらに、この方針で行くとあまりデザインやカラーといったトレンドを追わなくて済む。結果的にロングセラー商品が多くなるのも利点ですね」
 
  以上のような「思想」が理解できたら、商品紹介に移ろう。まずは“Asahichoの代名詞”といえる防水防寒ウェアの高視認バージョン、「51017」シリーズだ。
 
  「これはゴアテックス素材に蛍光色を使って反射材を取り付けたアイテムです。こういう機能性ウェアは正式には『高視認性安全服』といって、JIST8127規格、ISO20471規格でレギュレーションされています。蛍光素材の色相や色度、再帰性反射材の取り付け位置や幅、面積、輝度などの基準をクリアしたものだけが、高視認性安全服を名乗れるわけです。このシリーズは上着がクラス2、パンツがクラス1に相当しています。つまり、夕方や夜間の路上作業をはじめ、倉庫や駐車場での作業でも視認性が確保されているということです。作業者が周囲の状況に注意を払えなくても、運転手やオペレーターに気づいてもらえるので、安全性が高まります。さらにゴアテックスの防水防寒だから雨や雪でも大丈夫。暖かく快適で心の余裕もできるといった意味でも安全です」
 
  最近は「街でも着れる作業服」といった売り文句がよくあるけれど、こちらはまったく逆を行くスタイル。もちろんイマドキのカジュアルワーキングでもなければ流行りのデザインでもない。しかし、もし自分が真冬の路上で交通整理をすることになったら、自腹でも購入したいアイテムだ。
 
  ●もうひとつのゴア
 
  続いて森田さんが紹介するのは、ゴアテックスの防水防寒アウター「51023」シリーズの上下。先ほどとちがってこちらは通勤などでも違和感のないルックスだ。ただ上着が「3WAY」、パンツが「2WAY」とある通り、ワークウェアらしいギミックも搭載している。
 
  「ゴアテックスの防水防寒なので、悪天候の寒冷地でもへっちゃらです。防寒アウターとしても最強のスペックですが、ここまで着込んだら暑いかな、といった場合はインナーを外すことができます。上着の場合は、『インナーだけ』『アウターだけ』『両方』の3WAY。パンツは『アウターだけ』『両方』の2WAYですね。アウターだけをゴアテックスのカッパとして使うこともできるので、ひじょうに汎用性の高いアイテムです」
 
  ゴアテックスは洗濯耐久性も高いので、汚れを気にせずガシガシ使える。この上下があれば、寒さはもちろん雨や雪もまったく恐れるに足らないわけで、作業だけでなくバイク通勤や屋外レジャーなどでも大活躍しそうだ。
 
  ゴアテックスってやっぱりすごい、と感動していたら、森田さんはまた違ったウェアを取り出す。インナーかと思うほど薄手の上下「51033」シリーズだ。ゴア防水防寒&高視認、ゴア防水防寒ときて、こんどは普通の……と思ったら、こちらもゴア商品だという。このペラっとした生地がゴアテックスだって!?
 
  「いえ、こちらはゴアテックスではなく『ゴア・ウインドストッパー』という高機能素材をつかったウェアです。外部からの寒風や冷気は通さないのに、内部のムレはしっかり逃がす透湿機能がある。また防水ではないけれど、撥水仕様なので多少の雨なら大丈夫。要するに防風に特化した素材ですね。外気はシャットアウトするのにウェアの中は汗ばむことなくサラッとしている。これはすごく快適ですよ。薄手でも見た目よりずっと暖かいので、体を動かす現場に最適のアイテムです」
 
  中綿でモコモコのアウターは動きにくい、でも薄手だと寒い。じゃあ、風だけ防ぐフィット感のあるウェアにすればいいかというと、こんどはムレや汗冷えが心配--。建設や土木の現場では、このような声をよく聞く。交通整理や警備と違って力仕事があるからだ。しかし、このゴア・ウィンドストッパー素材なら、なんの不安もない。寒さも汗も気にせず、おもいきり体が動かせる。
 
  「ゴアは防水だけじゃないんです。ウィンドストッパーなら薄くてもけっこう暖かいし、動かないときはこの上に何か着てもいい。同じ素材を使ったブルゾン型の『ソフトシェル』をアウターにする手もあります。いいお値段はしますが、ゴアの快適性は安全性につながるんです」
 
  これだけは言える。ゴアならAsahichoで間違いない。
 
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ディテールにも高級感あり
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「冬はゴアで乗り切って」

    

ゴアテックスに“高視認”をプラス! 夜間作業でも安心の「51017」シリーズ

高い透湿防水性を持つゴアテックス素材に、夜間や路上で目立つカラーと反射材を組み合わせた“高視認ゴア”の上下。交通整理やロードサービスなど、クルマの危険がある現場でも安全に作業ができる。フードは襟に収納可能。上着の袖は二重タイプで冷気の浸入を防ぐ。反射テープは再帰性でよく光る。


最強の防寒コートがここにある! レインウェアとしてもOKな「51023」シリーズ

インナー&アウターがセットになった二層構造の防寒ウェア。上着は「インナーだけ」「アウターだけ」「両方」の3パターンの着用が可能。パンツはインナーを外してもOK。ゴアテックス素材を使っているのでレインウェアの代わりにもなる。寒冷地での作業のほか通勤用のアウターとしてもオススメ。