【TS DESIGN】“仕事着屋”の弁証法image_maidoya3
作業着ユーザーとTSについて語るとき、編集部は「思想が違う」という言葉をよく使う。「特色が違う」や「路線が違う」ではなく「思想」。この言葉でしか、TSのプロダクトに内在するものは言い表せないからだ。もちろんTSにも「△△現場の人向けに」「□□を好むユーザーに」といった意図はある。ところが生み出されたアイテムを目の当たりにすると、「うわ、こう来たか」「思いもしなかった」といった結果になってしまう。一体なぜ? 「思想が違う」から。その背景には、このブランドが上下作業着ではなく、コンプレッションウェアや下着、小物といった“枝葉”のジャンルから始まったことにあるのかもしれない。今回のレポートでは、そんな思想の正体に迫ってみたい。

TS DESIGN
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プルオーバーについて語る瀬尾さん
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ニッカーズの新作も登場
●「とにかく涼しい」でいいのか?
 
  「夏の作業服と言えばファン付きウェア、といった流れになっていますけど、うちはアパレルの会社。だから、バッテリーを使ってナントカ、というのはやらずに、どんな課題にも生地やデザインで解決しよう、と。これが基本姿勢ですね。たとえば、『暑くて困る』といった声に対して、『体を冷やします』というなら、ファンやペルチェとを使わざるを得ない。でも、ちょっと見方を変えれば、『このウェアなら蒸れや汗の不快感を忘れられる』とか、『着心地のよさやサラサラ感で作業中のストレスが減る』とか、そういう路線もアリだと思うんです。そんな提案をした結果、『暑いもんは暑いけど、疲れ方はちょっとマシだね』『去年より体がだいぶ動く気がする』と言ってもらえるようにする。これが今回の春夏コレクションにおけるテーマですね」
 
  こう述べるのは本誌でおなじみ、ブランド戦略部の瀬尾さん。電気で動く「ギア」ではなく、作業着の本流である「ウェア」で挑戦しよう--。静かな語り口の中に、そんな企画マンの矜持が滲んでいる。
 
  「ユニフォームの場合、さらに経営側のニーズが絡んでくるという事情もあります。従業員が暑いのを我慢しているのはもちろん困る。しかし、安全面を考慮するとやはり長袖を着てほしいし、見た目も『あそこのスタッフは感じいいね』と言われるようにしたい。このように労務管理や採用活動まで考えると、『とにかく涼しいものを!』といった単純な話でもないわけです。たとえば、当社のアイテムを採用している十数人くらいの工務店なんかだと、現場にいる関係者に『お、あそこの会社が来てるな』と気づいてもらったりするのも大事。ありきたりの制服じゃなくて、特徴的なTSのウェアを着ることで存在や技術をアピールできるわけです」
 
  単純に暑さ対策を進めれば、ファンはどんどんうるさくなり、着こなしはどんどんラフになっていく。しかし、「会社の看板を背負う制服」という視点を持てば、ある程度の慎みや規範もいるだろう。気候変動によってユニフォーム選びが難しくなってきているのと軌を一にして、TSの思想もより深化しているようだ。
 
  ●上下にプルオーバー?
 
  そんな瀬尾さんが今シーズンの目玉として挙げるのは、運輸業向けの「バイオライト」シリーズと建設業向けの「TecRecyc」シリーズ。ジャケットの「7706」「2206」の両者はともに定番感があり、上下ユニフォームらしい精悍なルックスだ。ただ、「用途」をきっちり分けている点に、TSらしさが見え隠れする。
 
  まず、「バイオライト」シリーズから狙いを聞かせてもらおう。
 
  「これはある会社からの『ポロシャツやTシャツじゃない選択肢って、何かないかな?』との声を受けて開発した商品です。マネジメントする側としては、安全面から長袖の作業服を着せたいけれど、夏はさすがに暑すぎる。じゃあ、襟付きのポロやワーキングTシャツは? と言ったらややルーズだし、同業者との差別化も難しい。そんなわけで、このシリーズは、上はジャケット・シャツ、下はカーゴパンツ・スラックスという定番の展開に加えて、スポーティーなプルオーバー(型番77051)を追加した5アイテム展開にしました。かっちりしたユニフォームがいい人は、ジャケットやシャツを選べばいいし、快適さ重視でプルオーバーにパンツを合わせても、ちゃんと制服らしく見えますよ」
 
  素材の「シャミランバイオライトフィックス」は、麻のような肌離れの良さと通気性、高いストレッチ性が特長。長時間の運転や倉庫内作業などでの快適性を重視している。
 
  「ドライバーの着こなしといえば、ポロシャツにカーゴパンツが夏の定番になっています。しかし、20人以下くらいの小規模な事業所とかだと、『もうちょっと違うものを着たいよね』というニーズがあるわけです。プルオーバーは襟無しでややカジュアルですが、ジャケットやパンツと同じ布帛(織物)なのでニットより安全で耐久性があります。しかも、背中に保冷剤ポケットも付けてあるので、運転だけでなく体を使う作業のときにも重宝します」
 
  接客になりそうなときでは襟付きの上を着て、荷物の上げ下ろしなどの場面では動きやすさバツグンのプルオーバーにチェンジするという手も。「上3タイプ・下2タイプ」の5アイテム展開による着こなしの広がりは、「ハンパねぇ」のひとことだ。
 
  ●建設には「ゴワゴワ」を
 
  続いて、建設業向けの「TecRecyc」シリーズ、そして、TS DESIGN初となる難燃作業着「FR」シリーズについても教えてもらおう。先ほどの「バイオライト」とは打って変わって、両者ともハードワークな雰囲気が漂う上下ユニフォームである。
 
  「TecRecycはまず、素材からウケを狙ってます。作業服の定番であるTC(化繊と綿の混合)生地は、独特のゴワゴワ感が好まれていて、あまりソフトすぎると建設業ユーザーの心には響かないんです。でも『重いのはイヤ』『暑いのをなんとかしてほしい』の声はある。そこで、薄くて軽いのに見た目はしっかりとした厚みを感じるヘリンボーン生地を採用しました。裁断くずや廃棄衣料を使ったリサイクル素材で出来ているので、環境配慮のユニフォームとしても採用していただけます」
 
  ユニフォームらしいデザインに、上下5色のカラー展開もうれしい。なかでもブルーはデニム作業着のカジュアル感を抑えた汎用バージョンとしても活用できそうだ。
 
  一方で、難燃加工を施した「FR」シリーズは、完全に業務用の防護ユニフォームである。
 
  「これは、造船や鉄鋼業界での溶接や溶断作業を想定したアイテムです。溶鉱炉といった高熱の現場ではなく、あくまで火花を防ぐといったライトな難燃ウェアですね。実際に2カ月、瀬戸内海の造船所で実際に使ってもらうことで、『ゴツい作業服は暑くてイヤだけど、火気からはしっかり守ってほしい』といった難しい要望をクリアできるものになりました。溶接用の腕カバーなしでも、ボロボロになるけれど穴は空かない、というレベルですね。デザイン面では、腰が露出しない着丈の長い上着をミリタリーのフィールドコート風にかっこよくまとめました。TSのプロダクトの指針である『こういった現場で、この機能が役立ちます』というメッセージを、さらに防護の方面に振った意欲作です」
 
  運輸に建設、そして火気の現場まで--。「機能の前に、まず用途を語れ」。TSイズムは、そんな言葉をわれわれに投げかけている気がする。
 
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造船所でテスト使用後の「FR」
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「TS DESIGNをよろしく!」

    

涼しさを武器に駆け抜けろ! 運輸業向け「バイオライト」シリーズ

トラック運転や倉庫内作業といった運輸の現場を想定した上下ユニフォーム。生地は高い通気性と耐久性を持つポリエステル100%素材。肌離れのよさと高いストレッチ性で、汗や蒸れのストレスを軽減し、疲れの蓄積を防ぐ。JIS「T8118」規格適合の静電気帯電防止モデル。


これこそが真夏の現場服! 建設業向け「TecRecyc」シリーズ

建設や土木業界のユニフォームとして企画した上下作業着。ポリエステル80%に綿20%を合わせたTCヘリンボーンの生地は、ゴワゴワ感のあるハードな風合いと、高い耐久性が魅力。環境配慮の制服としての導入もおすすめ。JIS「T8118」規格適合の静電気帯電防止モデル。