月刊まいど屋 --特集-- 2009年8月号[タジマ]1ページ

創業から今年でちょうど100周年となるタジマ。戦時中は測定器を作り、その後、建築工具に移行した。巻き尺を中心に、50メートル以上の長巻き尺からラインナップを広げていったようだ。当時はスチール製でなく、銀に傷を付け、腐食させてメモリを付けていたという。16ミリ幅主体のスケールから中折れしにくい19ミリ幅のハイ-19を発表し、タジマは業界のトップに昇りつめた。
人気の秘密は商品展開力。製品ラインを限界まで広げていくのがタジマ流だ。例えば、一口にコンベといっても、奥が深い。長さや幅、ロックの有無、尺目付き、さび止め用のコーティング付き、などなど。タジマの商品ラインナップは、そのすべてをカバーしているから、どんな条件でも、使用目的にぴったりの商品が見つかるワケだ。「今年の春先には27ミリという一番幅広のコンベックスを発表しました。通常は床で這わせて測る距離でも、27ミリあれば、立って手に持ったままで測れます。常に現場での作業の効率化を念頭に置いて開発を進めています」（開発本部、串間重樹さん）。
　現場の要求に応える品質・性能の良さに加え、パッケージや商品デザインも秀逸だ。例えばGロックシリーズ。衝撃防止用ゴムカバーがついたこのコンベックスは、ラジアルタイヤを思わせる斬新なデザインで、発売以来、圧倒的な人気を誇る。「お客さんに対してモノを売るんじゃなくて、自分を売りながら情報をゲットするという営業的な感覚で、どうやったら商品を手に取ってもらえるかという事を常に考えています」。6人のプロダクト・マネージャーが、それぞれ現場を徹底して歩き、営業感覚を磨くという努力が、タジマの商品展開を支えている。
また、タジマの開発部は、商品開発のために現場の親方に弟子入りまでする事もあるそうだ。現場を知るには実際に一緒に働くことが一番というワケだ。「それで分かることは商品開発にとどまりません。職人さん達の生活や、どれくらい道具にお金を使えるかとか、休み時間に何をしているかとか、そういったところまで分からないと、本物のモノ作りは出来ないんじゃないかと思うんです」。
　さらに現場を知ると、商品開発のアイデアは自然に広がっていく。「職人さんはいろんな道具を使います。彼らの腰回りの重量は10キロくらい。それを支えてると腰にベルトがめり込み、青痣ができるほど。だから皆さん腰痛持ちなんです。少しでも軽減できないかと考えたのが胴当てベルト。腰にパッドを入れて幅も広くした。頑丈なものですが，それでも1年くらい使うとへたってしまう。何と言ってもハードワークですから」。現場での職人さん達の苦労が分かって初めて出てくる発想だ。
　「この業界のメーカーってスケールならスケール、あるいはカッターナイフなど、専業メーカーが多いんです。そこであえて建築の総合メーカーになろうということを現社長が提案し，地道に商品ラインナップを展開した事で今の業界でのポジションを獲得しています。数多くのジャンルの商品を総合的に取り扱うのは大変ですが、やりがいもありますね。チャレンジし続けるには、知らない事は調べよう、分からない事は分からないままにしておかない、ということが大事。現場で分からないことがあったら、知るようにしようと思っていれば、自然と商品開発のヒントが浮かんできますよ」。