まいど通信


        

まいど! 編集長の奥野です。今月は「鳶特集」をお届けしました。

いかがだったでしょうか? 新製品の魅力を伝える一方、各メーカーが市場の縮小をどう捉えているか、といった方面も描写したいと思いつつ記事を作りました。各社の考えが少しでも伝われば幸いです。

●鳶装束の魅力とは?

それにしても(と毎回書いている気がしますが)、鳶服という世界を理解するのは苦労しました。こればかりは着て作業してみる、というわけにはいきませんからね。高所恐怖症だし。

そんななかで、いちばん腑に落ちたのは「装束」という言葉です。

言い換えれば「コスチューム」。広辞苑によると「特定の民族・階級・時代・地方の服装」です。ここからさらに「鳶服」を個人的に解釈するなら、次のようになります。

Q:なぜ鳶はあんな恰好をしているのか
A:そういうもんだから

な、なんというステキな回答でしょうか。あらゆるものに説明や意味、効能が求められる現代において、鳶装束は最後のロマンであり、ファイナル・ファンタジーなのです。

ただ、そんな鳶装束も着る人はだんだん少なくなってきています。時代の流れだから仕方ないし、機能面でもっと高所作業に適したウェアがあるのかもしれません。

しかし、取材を終えたいま思うのは「特殊な人は特殊な格好でいてほしい」ということです。

普通の建設作業はできそうだけれど、鳶だけは絶対にできない――こう思うからこそ、パッと見て「あ、鳶だ。すごい!」と言えるような恰好でいてほしい、と。小学生みたいですけど……。

●台風21号の爪痕

今回の取材は、関西に台風21号が直撃しているさなか、岡山と広島で行いました。結果的に関西から「避難」するかたちになったわけです。

ニュースでは大阪の被害を聞いていたし、知り合いから「停電した」といったメッセージも来ていました。それでも本当に被害を実感したのは、大阪に帰った日の翌朝、近所を散歩したときです。

瓦が飛ばされた家に、剥がれた外壁、曲がった信号機、そして根元からたおれた公園の木……。過去に台風で大阪でこんな大きな被害が出たのは見たことがありません。

数日後、自転車で瓦が飛ばされた家の前を通ると、梯子がかけてあります。屋根の修理か? なにげなく上に視線を移しました。

「あ、七分はいてる」

なぜかうれしい気分に。こういうのも鳶装束の功徳かもしれませんね。

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今月も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。次回もお楽しみに!