まいど通信


        

まいど! 編集長の奥野です。今月は「春らしい企画を」ということで、九州・広島・東京をめぐる「ワークウェア・ジャーニー」をお届けしました。年度末で忙しい時期ですが、少しでも旅行気分を味わっていただければ幸いです。

●禁断の筋トレ

今回の取材を行ったのは2月の中旬です。かなりギリギリのタイミングになってしまった理由は、ひとつに企画が難航したこと、そしてもうひとつは筋肉痛でした。はい、ジムで運動した結果の筋肉痛です。ただし、過去に経験した筋肉痛とは比較にならないレベル。世間でいう筋肉痛の50倍くらいのヤツに襲われ、3日ほどまったく歩けなくなったのです。

座っていても激痛を感じるから寝ているしかないのですが、のどが渇いても水道まで行くことができない(トイレだけは這って行く)。寝たきりの辛さが始めてわかりました。

では、どうしたらそんな強烈な筋肉痛になるのか、秘密を教えましょう。私もまったく知らなかった筋トレの罠――。それは「ふくらはぎを限界まで追い込む」というものです。

筋肉痛になる前日のこと、ジムで30分ほど走ってひと休みしていると、トレーナーが声をかけてきました。

「ウェイトやらへんの?」

来たな、筋トレ信者め……。

編集長は筋トレが好きではありません。理由はシンプルで「ぐぬぁーッ!」っとなるまで追い込むのがしんどくて嫌だから。かといってラクにこなせる負荷だと意味がないし、どうせやるなら有酸素運動の方が爽快感もあって好きなのです。ところが、そのトレーナーはこんなことを言う。

「足も強くできるで」

足の強化……! 山を登るサイクリストにとって蠱惑的な響きを持つこの言葉を聞いて、これまでの筋トレへの反感はすべて吹き飛びました。そうか、ジムで自転車のトレーニングができるのか。

「ぜひ、お願いします」

まずはこれを、と勧められたのは「カーフレイズ」という足首を上下に動かす運動。階段でもできるような簡単なものです。これをウェイトなしの自重でやっていると、

「ウン、さすが日ごろから足よく使っとる」

と褒められる。

「じゃあ次はこっちや、重さはこれくらいでいっとこか」

トレーナーは、本来は負荷をかけてスクワット運動するマシンを足首だけでやるという、妙にマニアックなメニューを提案してきました。しかもウェイトはかなりの重さで、さっきとは比較にならないキツさ。ああ、これだから筋トレはイヤなんだ……、と後悔したものの、時すでに遅しです。

「しんどいやろ、それがええねん。ワシはこうやってトレーニングで利用者をいじめるのが趣味なんや、ホンマにいじめたら捕まるさかいな」

自重だけならおそらく1、2日のあいだ足が痛いといった程度で済んでいたでしょう。決定打はこの「マシンでの高負荷ふくらはぎ追い込み」。トレーナーのオヤジの恐るべき洗礼です。

それにしても、筋トレでこんなことになるなんて……。自分だけなのだろうか、と思って寝転びながらスマホで検索してみると以下のような文章がヒットしました。

「カーフレイズ(ふくらはぎの筋トレ)は、やり方を間違えると次の日から歩けないような状態になります。本当に大怪我をしたみたいになるので、くれぐれも気を付けてください」

どうやら、ふくらはぎはよく使う部分だから「無理が効く」というか、限界が自覚できないためオーバーワークになりやすい、という理屈のようです。

もし、身近にこれから筋トレを始めたいという人がいたら、この「ふくらはぎ筋トレ」の危険性について忠告してあげてください。嫌いな人だったら、「負荷をかけてカーフレイズするのがいいよ」とアドバイスして経過を観察してみると面白いかもしれません。

●九州はカモフラ王国!

今回、炭鉱の取材で訪れた田川伊田駅では、ちょうど新駅舎の建設をしているところでした。いつも通り現場の横を通りつつ作業員のウェアをチェックする……と、黒系カモフラ柄のヤッケを着ている。中高年なのにけっこうオシャレです。

「ああ、そういえば九州はアメカジっぽいのが売れるんだったっけ」

と、どこかのメーカーで聞いた話を思い出したものの、そのときは特に気にも留めませんでした。そして用件を終わらせたあと、さっきと同じ現場を通って駅に戻り、またなんとなく作業服を見る。

「また迷彩か。あの人も迷彩で……、あっちも迷彩!」

なんと、6割くらいの人が迷彩だったのです。

九州のワークウェアは迷彩だらけなのか? いや、ひょっとしてこの工事を請け負っている業者では、迷彩柄の上着を支給しているか、あるいは”カモフラ伝道師”のような人が仲間に勧めているだけなのかもしれない……。

そう考えて、九州を出るまで、通りがかった現場をすべて食い入るようにチェックしてみました。結論はこうです。

九州人はカモフラ大好き!

九州を出て山口や広島に行くと、カモフラ柄の作業員はほとんど見なくなり、東京では皆無となりました。もっとも訪れた福岡県だけで、きちんとした調査とは言えないものの、九州にはかなり独特のワークウェア文化があることは間違いなさそうです。

考えてみれば、福岡の人ってけっこうカラフルな格好しているような気がする。一方で、東京や大阪はグレーやベージュなど、目立たない色を好む傾向があるように感じます。ワークウェアでいえば東京がダントツに地味で、昔ながらのダボっとした作業服が今でも主流です。

もしかすると、新たなワークウェアのトレンドは九州から生まれるかもしれませんね。ぜひまた取材してみたいと思っています。

●「GR2」導入しました

広島県での取材では突然、デジカメの故障に見舞われました。使っていたのは2014年モデルの安物なのでいつ壊れてもおかしくなかったのですが、よりによって出張中とは。スマホのカメラは予備にはなるものの、いろいろ不足です。

ちなみに編集長は一眼レフを持っていません。絵作りを考えて「上手い写真」を撮ろうとすると、時間も手間もかかってキリがないので(1時間程度ではまず無理)、取材ではとにかく「シャッターチャンス重視」で撮ります。会話しながらコンパクトデジカメでシャッターを切りまくり、結果として、ひとつの現場で4、5枚は臨場感のある写真が撮れているかなぁ、という感じです。要するに、かなり割り切った使い方をしているわけですね。

じゃあ、次のカメラはもっとシンプルなものにしよう、と大阪に戻ると、すぐ「ヨドバシカメラ」へ向かいました。お目当ては、前々から評判がいいリコーの高級コンデジ「GR2」。一眼レフ並みの画像センサーを持つ単焦点カメラ(ズームなし)です。

GRシリーズはフィルムの時代から、スナップカメラの名機として支持を集めています。とはいえ現行の「GR2」は2015年モデルなので(今年の春に後継の「GR3」が発売予定)、周りの新製品と比べるとさすがに見劣りする。それに数ある絶賛レビューの中には、信者による贔屓が過ぎるのではないか、と思うものも多い。

そこで、ちょうどよくリコーのスタッフがいたので、少々意地の悪い質問をしてみました。

「コレ(売り場の横にあった他社製品)も同じサイズのセンサーですか?」

「まあ、そうですね」

「うーん、迷ってるんですよ。前から目を付けていたGRにするか、それともライバルのコレにしようかなって」

こう口にした瞬間、スタッフは「ぷっ」と吹き出しながらこう言ったのです。

「ライバルだなんて! あっ失礼、でもあっちはまだ出たばっかりなのにどんどん価格下がっちゃってますよ。ま、正直いってGRの敵じゃないって感じですよね~」

ちょ待て、なんだその自信は? いくら人気のあるGRシリーズとはいえ、もう4年も前のモデルなんやぞ!

しかし、このとっさに出た彼の言葉には真に迫るものがありました。単に「営業マンとして自社製品をオススメする」というレベルを超えた、GRブランドへの狂信と呼べるほどのものが……。スペックの差は小さくなり、機能も飽和した感のあるこのデジカメ市場で、ここまで人の心をつかむなんて、GR……恐ろしい子!

「よっしゃ、GRください!」

というわけで、出張からの勢いも手伝ってあっさりと”GR教”に入信してしまったのでした。読者の皆様は、ぜひとも今後の写真クオリティにご注目を。そして、いい写真があったら「GRすごい!」「GR最高!」と言って下さい。

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今月も最後までありがとうございました。次回は、「安全靴」の特集でお会いしましょう!