まいど通信


        

●おわび申し上げます

編集長の奥野です。今回は改元にともなう10連休明けに起きた「まいど屋の物流危機」について、総力特集でお届けしました。「危機」というと、なんだかまいど屋が被害者みたいですが、もっとも迷惑をこうむったのは、当サイトで買い物をしたお客様でしょう。商品の到着は平常時と比べて2週間から1カ月近くも遅れ、問い合わせても「わからない」。このようなネット通販としてありえない事態を招いたのは、まいど屋自身です。不愉快な目に遭われたお客様には、この場を借りておわび申し上げます。

●本当は怖い「物流」

今回の特集の目的は、第一に「おわび」、そして危機の「検証」です。まずまいど屋に何が起きたかを克明に書き表し、スタッフの生々しい証言とともに振り返る。そして、まいど屋がどう変わったかを書くことにしました。大企業の謝罪会見のように、くどくどと謝罪の言葉を並べるより、失態をそのまま明らかにする方がお店としての反省の気持ちを示せるのではないか、との考えです。

この試みが上手くいったかは読者の判断をあおぐとして、取材を通じて編集長が個人的に感じたのは、「物流って怖い」の一言です。運送業者でもなければ、ふだんそんなことは思う人はいないでしょう。段ボール箱が何個か積まれていても、邪魔だなと思うくらいです。ところが、それが何十、何百というオーダーになってくれば話はまったく違ってくる。モノのボリュームが人手を妨げることによって、荷物が雪だるま式に増え始めるのです。まるで荷物自身が自己増殖するかのように。

こうなるともはや「災害」に近いものがあります。台風が来たとき、近所の川が氾濫しそうになったりして「いつもはあんなに穏やかな川なのに!」と驚くことがありますが、あんな感じですね。量の変化も一定レベルを超えれば、質的な変化となるわけです。入りと出がうまくバランスしているから「物流」であって、いったんオーバーフローしてしまったら、復旧に莫大なコストがかかる"物禍"なんだな……、と改めて考えさせられました。

●三国志展がすごい

今回、埼玉県川口市のまいど屋を訪ねるついでに、上野の国立博物館に行ってきました。お目当ては「特別展 三国志」。三国志は特にファンというわけでもないのですが、『史記』『項羽と劉邦』といった中国の古代史ものは大好きなので、話のネタに行ってみることに。あと、曹操の墓「曹操高陵」が会場に再現され、出土品が日本で初めて展示されるというのにも惹かれました。古墳ファンでもあるので。

当日は雨でしたが、これは逆にチャンスです。なんせ老若男女、幅広い層の愛好者を持つ「三国志」ですから、混雑するに決まっている。主婦やご老人方が「雨か、明日にしよう」と言ってくれればゆっくり鑑賞できるぞ……、と意気揚々と上野に向かいます。

ところが、というべきか、やはり展示会はすごい客入りです。これでも「空いている」というべきなんだろうな、と思いつつ人の隙間から展示を観ていきます。

この特別展のテーマは「三国時代の遺物」ではなく「三国志」。そんなわけで、15~16世紀に作られた関羽像(特別展のポスターになってるヤツ)、1980年代にNHKで放送された「人形劇 三国志」で使われた人形、後の世に書かれた小説『三国志演義』に関係する明代の歴史資料なんかが、三国時代の遺物と並列に並んでいる。人も多いので、「後世のものはべつにいいや」と、ほぼスルーです。さすがに横山光輝『三国志』の生原稿は食い入るように見ましたけど。

あれ? と思ったのは、中国人観光客がたくさん来ていたことです。大人だけじゃなくわざわざ子供まで連れて。日本と違って中国では三国志はそれほど人気はない(関羽だけは信仰の対象になっている)、という話もあるので意外に思いました。いや、それ以前に、三国志だったら自分の国で見れるんちゃうの? と。

その謎はすぐ解けました。なんと、中国人のお目当ては私と同じで「曹操高陵」だったのです。

じつは、魏王・曹操の墓が「発見」されたのは2009年と、まだ最近のこと。発掘調査のきっかけは、警察が後漢末の墳墓を盗掘している不届者たちを捕まえたことでした。

さっそく考古学の専門家が呼び出され、押収した出土品を調べ始めます。

「これって副葬品から見て後漢じゃなくて三国時代の墓じゃない? ん、なんか書いてあるぞ、……魏……武、王!」

このセリフは僕の創作ですが、きっと調査担当者はチョロっと尿漏れしたに違いありません。文献には書かれているものの、どこにあるか不明だった魏の武王(曹操)の墓が、ついに特定されたのです。約1800年もの時を超えて!

世紀の大発見に、歴史ファンだけでなく地元も大いに盛り上がりました。さっそく地域観光の目玉にしようと歴史博物館の計画が立ち上がり、今も調査と施設の整備が続いています。そんなわけで、曹操の墓は、現地に行っても見学すらできません。だから中国人は「これはチャンス!」とばかりに、上野の博物館に来ていたのです。

展示は三国志のストーリーに沿って進みます。日本人は、後世に描かれた「桃園の誓い」の絵や、張飛が使ったとされる武器「蛇矛」の再現とか、じっくり物語を追っていく。対して、中国人は曹操の墓に加えて、孫権の墓の出土品や遺構など、考古資料に夢中。そういうところにも日中の“三国志観”の違いが見えて、興味深いものを感じました。

●筋トレはじめました

まいど屋が危機に陥っているなか、編集長は新たな趣味に目覚めていました。筋トレです。「筋トレはキツイから嫌い」と数カ月前、ここに書いたばかりですが、じつはあれからもちょくちょくジムに行っていました。どうやら、あの独特の疲労感が癖になってしまったようです。

いろいろメニューやトレーニング機器を試しているうち、「ジム通いは必要ない」との結論に至りました。今日ジムは開いてるかと気にしたり、着替えたりシャワーが空くのを待ったりするのは意外と面倒なんですよね。初心者はダンベルや機器を使わない「自重トレーニング」で充分です。

Youtubeに「初心者用10分筋トレ」というスクワットや上体起こし(腹筋)などを組み合わせたちょうどいい動画があるので、スマホで再生しながら同じ動きをします。こうするとラジオ体操みたいにただマネするだけ。運動自体はそれなりにしんどいのですが「いま何回やったっけ?」「えーと、次は何やろうかな」とか考えなくていいのは精神的にものすごくラクなのです。

基本的に1日1回。調子のいい日は、2、3回とくり返し、足がフラつくまでやる。とくに筋肉増強を望むわけでも理想のカラダを目指すわけでもない(体重ダウンは少し期待してますが)、「レクリエーションとしての筋トレ」です。

この習慣を始めて3カ月近く。早くも変化が表れてきました。

ひとつは腕立て伏せができるようになったことです。筋トレを始めたことは腕立てが1回もできないので膝を床につけてやっていたのが、いまや10回程度なら普通のフォームでできるように。これまでずっと「できない」と信じていた腕立てが、中年になってからできるようになるとは、自分でも驚きです。

あと、急に走れるようになりました。毎朝歩いている6㎞のコースがあるのですが、たまたまある日、「ちょっと負荷を上げてみたいな」と思って、軽く走り出してみたんです。と、そのまま走り続けて40分でゴールしてしまった。わずか数カ月で、筋トレ、ランニングと、これまでの人生で「大嫌い」だったものが「まあイケる」に変化してしまったのです。

誰かのように「筋トレは人生を変える!」とまでは言いません。ただ、1日10分やそこらの短時間でこれほど変化を生む行為もないような気がする……と控えめに主張しておくことにしましょう。

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というわけで、今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。次回、9月号は「飲食店ウェア」特集です。お楽しみに!