【特集3】【インタビュー】田中社長、信頼回復を誓うimage_maidoya3
「連絡が何も来ない」「対応が最悪だった」――。まいど屋のクチコミ欄には、今もユーザーの怒りのコメントが並んでいる。10連休は誰もが未体験だったとはいえ、注文した商品が2週間から1カ月も届かないというのは、ネットショップとして致命的な事態である。連休中の受注状況を把握していなかったこと、非常時に備えた出荷スペースに余裕を設けておかなかったこと、常態化しつつある人員不足など、危機を招いた要因はたくさんあるものの、やはり初動のもたつきが機能不全をここまで長引かせたことは間違いないだろう。つまりトップの責任である。「今回の失態をしっかりと書き残してほしい」。編集部に今回の特集記事を持ちかけたとき、社長の田中政道氏はこう語った。批判を真摯に受け止め信頼回復に務める、というのは、企業の不祥事における常套句だが、「まず内部事情を検証し、それを公開する」という方針には、中小企業らしからぬモラルの高さも感じる。本稿では、田中氏のインタビューを通じて、まいど屋の「反省の弁」をお届けする。

特集3
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●「気持ちを裏切った」
 
  ――まず、今ユーザーに伝えたいことは?
 
  今回、お客様には本当にご迷惑をおかけして、申し訳ありませんでした。これに尽きます。電話でもサイトのコメント欄でも、たくさんのご批判、お叱りを受けました。ネット通販としてあり得ないことをしたわけですから、もっともなご意見だと受け止めています。
 
  ――特にどんな声が印象に残っていますか?
 
  「商品は非常に気に入ったのに、ショップのせいで喜びが半減した」というご感想には胸が締め付けられました。本当におっしゃる通りだな、と。仕事用のワークウェアといっても、ショッピングというのは本来、ワクワクする楽しい行為のはずなんですね。なのにショップがそんな気持ちを台無しにしてしまった。本当に悪いことをしたなぁ、と。
 
  ――問い合わせ対応すらまともにできなかったわけですよね。
 
  連休明けから、ミーティングする時間もないくらい会社全体がおおわらわで……。弊社の対応に関しては「不愉快だった」という声もいただいています。はじめてまいど屋で買った人は、なんてヒドイ店だと思ったでしょう。「二度とこの店では買わない」と思われたとしても仕方ありません……。お客さんがどんな気持ちで注文した商品を待っているか、出荷態勢の立て直しに精いっぱいで、そういった面にまで思い至らなかったのも反省点です。
 
  ――取引先からは何か反応はありましたか?
 
  うちの異常事態を感じ取って「まいど屋さん、どうしちゃったの?」と心配してくれるメーカーさんもいました。物流現場が混乱しているせいで、すでに送ってもらった商品の再送をお願いしたりもしたし、申し訳なかったです。メーカーさんはいつもまいど屋を応援してくれているのに、今回の出来事で期待を裏切っちゃったなぁ、と。
 
  ●痛恨の初動ミス
 
  ――結局のところ、何が問題で今回のような事態が起きたのでしょう?
 
  原因は「10連休を甘く見ていたこと」です。ゴールデンウィークや盆休み、年末年始なんかに注文がたまることは過去にもあったんですが、連休明けにみんなで頑張って処理していました。今回も同じように「なんとかなるだろう」と高をくくっていたわけです。ところが、連休明けに確認した数はそんなレベルではなかった。要するに店が休んでる間、毎日、通常営業日の60~70%程度の注文が入り続けていたという……。
 
  ――思い出してみれば今年の春は暑かったですよね。それも影響していますか?
 
  今(7月上旬)は上着がいるくらいひんやりしているのとは対照的に、連休前後はぐっと気温が上がっていました。その結果、夏物需要が前倒しになったんだと思います。連休中の注文を必死でさばいても、裏腹に注文残が増えていった背景にはそういう気候条件もあったかと。
 
  ――続いて「危機への対応」ですが、いま振り返っていかがでしょう。
 
  完全に初期対応をミスっていました。中途半端に出荷場のスタッフを増やしてみたり、空き地にブルーシートを敷いて臨時の荷さばき場にしてみたりと、場当たり的な対応をしているうちに、どんどん事態が悪化し、収束のメドが立たなくなってしまった……。結局、突貫工事で新たな物流スペースを作り、スタッフ総動員による出荷作業でやっと荷物が減り始めたわけで、出口が見えたのは連休明けから1カ月以上も経ってのことです。火事と一緒で、見つけたとき徹底的に消火活動をしておかないと、とんでもないことになる。一度、大きく燃え上がってしまったら鎮火は非常に難しい。そういうことが身に染みてわかりました。
 
  ――早い時期に「こうしておけばよかった」というのは……。
 
  ヤバいと思った瞬間、全戦力で潰す! これができればよかったなぁ、と。実際には出荷場はスペース不足で、たくさん応援スタッフを送り込むことは難しかったのですが。それでも、せめて連休の真ん中あたりで注文状況をチェックするとか、打っておくべき手はいろいろあったと思います。
 
  ●ネット通販で大切なこと
 
  ――もし、また今回のような事態が起きれば正しく初期対応できますか?
 
  はい、この度のドタバタを通じて結果的に物流スペースの拡張ができたので、もし今回のようなことがあれば、最初から大増員のフルパワーで収束させるつもりです。こんな失態は二度としません。
 
  ――危機の前と後を比較して、まいど屋の具体的な変化は?
 
  新たな物流施設の完成によって、荷物をさばくスペースが約4倍になりました。現在、荷物の量は通常に戻っていますが、空間的に余裕があることでピッキングなどの作業効率も上がっています。この新スペースにはこれから事務用機器やエアコンなどを設置し、隣にある以前の出荷場と上手く連携できるように動線を整えて……、という具合に更なる機能アップを計っていきます。そして、今の数倍の物量をこなせるようにしたいと考えています。おかげさまで、まいど屋の注文数は毎年、順調に伸びていますから。
 
  ――最後に改めて、今回の総括をお願いします。
 
  ネット通販って、ややもするとバーチャルで冷たいものに見えるんですが、じつはものすごくお客さんとの関わりが深いんですよ。たとえばリアル店舗で、どれだけの時間、お客さんとやり取りしているかと考えたら意外と短い。反対にネット店舗の場合は、サイトを閲覧したり注文したりする時間をはじめ、納期の連絡や決済の手続き、商品の受け取り、そして届いた品物やショップのレビュー投稿まで含めれば、かなりの時間、密接にお客さんと関わりを持つことになるんです。特にまいど屋はオペレーションから物流まで、アウトソースせずに自社でやってますから。
 
  そして、関係性が深いからこそ、今回のようなことはあってはならないわけです。たった一度でも期待を裏切ってしまったら、その傷は非常に深いものになる。
 
  このたび、まいど屋はお客さんに大変なご迷惑をかけました、改めて、お客さんの気持ちに思いをはせ、これまで以上に確実に店を運営することで信頼回復に努めて参ります。