まいど通信


        

まいど! 編集長の奥野です。いやー、2月は短いですね。長期旅行から帰るやいなや作成に入った「小笠原特集」をお届けしました。東京から1000kmも離れた南洋の雰囲気から、少し早い夏の空気を感じていただければ幸いです。逆に、海水浴ができる気候から本州に戻ってきた私はなかなかこの寒さに慣れることができません。うわー寒い、寒い、と着こんでいると「いや、今年はあったかいでしょ!」といろんな人に言われる始末。ハイスペックな防寒ワークウェアが今ごろ気になってきています。

●登山靴でよかった!

今回の旅は約4週間。ひとり旅としては過去最長というわけで、旅費節約のためにパスタやレトルト食品、調味料などを内地から持っていきました。ただそのぶん着替えや雑貨はカバンに入らなくなる。「なくてもいいものは置いていく、必要なものだけを持っていく」という方針のもと、荷物選びにはかなり頭を使いました。

もっとも迷ったのは靴選びです。アウトドア活動に備えて簡単なトレッキングシューズをカバンに入れて行こうと思っていたものの、出発当日、荷造りしてみると靴なんか絶対に入らない!

結局「大げさすぎるか?」と思いつつも、普段めったに使わないハイカットのゴアテックス登山靴を履いていくことにしました。カジュアルなトレッキングシューズより頑丈だから、ソールが剥がれたりといったアクシデントを予防できる、との判断です。なんせ滞在は長くなるし、向こうにモンベルや好日山荘はありませんからね。ウェアも靴も堅牢なものを、というわけです。リラックス用に、使い潰し寸前のすり減ったサンダルも持っていきます。

結果はどうだったのか? まず、登山靴は大正解でした。父島も母島も登山道は整っているので、スニーカーでもなんとなるし(おすすめはしない)、ミッドやローカットのトレッキングシューズなら何の問題もありません。ただ私の場合、泳げないので島をウロウロしているとどうしてもトレッキングの連続になるわけですね。登って下りて、岩を乗り越えながらビーチを散策したり、足元の悪い防空壕に入ったり……となると、だんだん足にダメージがたまってくる。しかし、ハイカットで足首を固めておいたおかげで、故障はまったくなし。もし、ミッド・ローカットだったら、足の疲れを持ちこしたり、石を踏んで足首をガクッとひねったりしていたかもしれません。ハイカットは重いし窮屈ですが、こと安全性と疲労軽減においては最強です。これ、安全靴などのワーキング分野にも同じことが言えるかもしれません。

あと、ゴアテックスにも助けられました。ビーチを散策していてうっかり海にハマったりしても浸水しなかったし、固有種の保護のため、靴の泥を落とさなきゃいけない場面でも安心してホースの水を噴射することができた。雨の日の長靴代わりにもなったし、やはり備えあれば患いなしです。

というわけで「持って行って良かったものランキング」優勝は、ハイカットの登山靴です。

ちなみにサンダルは、宿からすぐの気楽なハイキングコースを歩いているうちに、ストラップが根元からブッコ抜けてご臨終。旅の終盤だったのでそのままゴミ箱に突っ込み、また荷物を減らすことができたのでした。

●ライフスタイルの見直し

意外な収穫は、10年以上ぶりの一人暮らしで生活を再設計できたことです。もともと自分の食事は自分で作っているし、暮らしぶりもシンプルな方ですけど、今回の旅ではさらにソリッドな生活様式を身につけることができました。

まずは食生活。島生活では冷蔵庫にはキャベツとネギ、卵しかなかったりするわけですが、それでも手早くできて栄養バランスもしっかり取れているメニューを作るよう頭を使いました。たとえば、ある日の朝食は下記の通り。

・カルボナーラ風塩昆布パスタ
・湯通しキャベツ
・ネギたっぷりのインスタントみそ汁

最初にヤカンいっぱいのお湯を沸かします。沸騰したお湯は鍋に移してパスタを茹で始め、その間に2、3枚剥いだキャベツをちぎってザルに入れ、熱湯にくぐらせる。残りのお湯はみそ汁やお茶、洗い物に使います。一方、パスタは箸で皿に上げたら、熱いうちに生卵に絡め、そこにマヨネーズと塩昆布を加えて軽く混ぜて完成。市販の「あえるだけのソース」にも負けないクリーミーな和風パスタの出来上がりです。湯通ししたキャベツは甘みがあるので、サラダではなく浅漬けなどのおかずに近い感じ。塩や醤油で軽く味を付けて食べます。

洗濯は基本的に手洗いです。インナーは毎日、洗面器のお湯で洗って、無料の脱水機にかけて部屋干し(スコールが多いので)。さらに山で汗だくになった後は、臭いを防ぐために帰宅後すぐ洗濯してました。アウターは汗や泥で汚れてきたタイミングで手洗い。Tシャツとパンツだけなら、ちゃっちゃとできてラクなんですけど、長袖シャツやズボンは面倒でしたね。

風呂はユニットバスでしたが、最後までシャワーだけで通しました。台所あったハンドソープをフル活用。お湯を浴びる→全身をハンドソープで擦る→お湯で流す、という「軍隊式シャワー」です。これ、温暖な小笠原じゃないとできません。

もし今から一人で新生活を始めるなら、今よりはるかにモノが少なくて機能的なライフスタイルができるのになぁ……。そう思いつつも、旅も終盤になると、寝ていると顔にランドセルが倒れてきたりするわが家が懐かしくなったりしたのでした。

旅というのはきっと、終わりがあるから楽しいのでしょう。

   ☆

そんなこんなで、今月も最後までお付き合いいただきありがとうございました。月刊まいど屋、漂流シリーズ(?)は今回でひとまず終了。次回4月号からは、久々にワーキングウェア&用品のメーカーレポートをお届けします。乞うご期待です!