まいど通信


        

まいど! 編集長の奥野です。今回は毎年恒例の秋冬コレクション特集をお届けしました。そろそろ冷え込みも強まり、上着が手放せない季節になってきました。しかも、今年は例年とはガラリと違って、新型コロナの流行拡大が懸念される「試練の冬」です。よく手入れした作業服をきちんと着こなし、身も心も引き締めていきましょう!

●バスで行く「しまなみ海道」

コロナの影響で、今年はアウトドアがブームとなっています。キャンプ用品は飛ぶように売れ、スポーツ自転車は注文殺到で納期が大幅に遅れているとか。作業着メーカーの秋冬物でも、マウンテンパーカーや防風ジャケットなど、ハイキングやレジャーに使えそうなアイテムが目立ちました。混雑を避けながら遊びたい、「3密」を避けて通勤・通学したい、といったニーズが高まっているせいでしょう。野外で体を動かせば体力も付くし免疫力も上がる。いいことづくめです。

そんなブームに乗って(?)、編集長も久々の長距離サイクリングに行ってきました。福山市で今月号の取材を終えて、向かったのは瀬戸内海。以前から温めていたプラン「バスでしまなみ海道にアプローチ」を実現するときが来たのです!

知らない人のために説明しておきましょう。「しまなみ海道」とは尾道(広島県)と今治(愛媛県)をつなぐ約70kmのルート。飛び石のように連なる瀬戸内の島々を7つの橋で渡っていきます。橋の上はクルマと分離されているのでリラックスして瀬戸内の景観を楽しむことができ、まるで空を飛んでいるような気分になる。そんなわけで国内ナンバーワンのとの呼び声も高い極上サイクリングロードなのです。

景観の良さに加えて、ルートはわかりやすい、舗装はきれい、クルマがほぼいない、きつい坂もない、距離もちょうどいい、途中でやめても自転車を船に載せて街に戻れる……と、いい所を挙げていけばキリがありません。編集長はこれまでに2回走っていますが、他のサイクリングロードとは別格という印象。とにかく、これ以上ないほど快適なのです。

ただし、問題は旅のプランニングです。「尾道→今治」だとその日のうちに大阪に帰れない。「今治→尾道」だと前日に四国入りしなければならない。日帰りプランを作るのはかなり難しいのです。

そこで考えついたのが、福山と今治をつなぐ高速バス「しまなみライナー」を使って今治からスタートする方法。終点の今治まで行ってしまうと、海に出るまでけっこう面倒なので、ひとつ手前の馬島で降ります。来島海峡の真ん中にある人口30人ほどの島です。

7時50分に福山駅前を発車したバスは尾道を経由し、四国方面に向かって次々と橋を通過。9時過ぎ、馬島の停留所に到着しました。

●登りのコツとは?

レンタサイクルの拠点「サンライズ糸山」は来島海峡大橋の南端にあるので、馬島からは徒歩で向かいます。わずか1.5kmほどですが、歩いて見る景色もやはりすばらしい。10人ほど尾道に向かう自転車とすれ違いました。コロナ禍の平日でもたくさんの人が走っているのは、さすがサイクリングの聖地です。

サイクリングステーションでクロスバイクを借ります。もちろん尾道で乗り捨てOK。しまなみ海道はママチャリでも完走できるラクなコースですが、今回は絶対にスポーツ車を借りなければなりません。山に登ると決めているからです。

また補足説明を。しまなみ海道の最短ルート(70km)にきつい坂はない、というのはさきほど書きました。そこで「少し物足りない」というサイクリストは、途中の島でわざわざ山頂の展望台に登ったり、あえていくつも峠を越える遠回りルートを選んだりするのです。

走り出してすぐ、来島海峡大橋を通って大島に到着。ここで早くも今回のメインディッシュ、亀老山展望台に向かうヒルクライムが始まりました。

言うまでもありませんが、坂を登るのはキツいです。登り始めて5分ほどで顔から汗がボタボタと落ちてきて、10分もすれば上半身ずぶぬれ。息は上がり、太ももの筋肉も悲鳴を上げる。スピードは出ないから爽快感もない。クルマにもどんどん追い抜かれる。愉快なことはひとつもありません。にもかかわらず、なぜか自転車乗りは登りをやってしまうのですね。

ヒルクライムのコツは「頑張らないこと」でしょうか。いや、頑張らないと坂道は進めないわけですけど、なるべく悲壮な心持ちにならないようにする。いちばん低いギアで少しずつ進む、ゆっくりでいいから止まらない、がセオリーです。「急がなくていい、ペダルを回してさえいればいいんだよ」「どんな坂でも必ず終わりがくるんだから」と何度も自分に言い聞かせ、「まだ××kmもあるのかよ!」「しんどい! 助けて!」と叫びたくなる気持ちを抑え込む。そして、淡々と平常心で進み続けます。

ひたすらペダルを回し続けて30分。ついに標高300mの亀老山展望台に到着しました。絶景で有名な場所です。しかし、そんなことより「登り切ったぁー」という達成感がはるかに勝っている。ペットボトルの水で顔を洗ってチョロっと来島海峡を見下ろしたら、すぐに坂を下ってしまなみ海道に復帰。これで今回のミッションは完遂しました。

この時点で、尾道までまだ60km以上も残している。しかし、あとは景色を眺めながらの楽々サイクリングだから気が楽です。結局、レンタサイクルの返却リミット19時半まで、海辺で休憩したり夕焼けを見たりしながら、のんびりと瀬戸内海を満喫したのでした。

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というわけで、今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。次回の12月号は、年末年始を乗り越えるマストアイテム「防寒ウェア」の特集をお届けします。お楽しみに!