まいど通信
まいど! 編集長の奥野です。今月は久しぶりの事務服特集をお届けしました。いつもはガテン系の作業服の話ばかりですが、たまにはこういうのもいいですねー。「エレガント」とか「優美」とか、ふだんの『月刊まいど屋』ではまったく出てこない言葉を使うのは、なかなか新鮮です。みなさんも職場の飲み会やイベントができないこのご時世、オフィスウェアで気分転換してみてはいかがでしょう?
●空調服生活はじめました
今年の夏、編集長は空調服生活にチャレンジしています。
6月は涼しかったのでほとんど使っていませんでしたが、7月の梅雨明け以降は、屋外での作業だけでなくウォーキングから買い物、行楽まで、寝ているときとエアコンのある場所以外はすべて空調服。夢の(?)空調服ライフです。
購入したのは本誌7月号でも紹介した空調服社の新型ファン「FA01012」。発売が6月と遅かったので「まだこれを使っている人は少ないはず」「今ならアーリーアダプターになれる!」と勇んで買いました。ファン付きウェアは毎年モデルチェンジされるので「買い時」が難しい。要するに買った次の年に大幅リニューアルされた“最強デバイス”が出たりすると悔しいわけです。しかし、本機種は旧モデルとの互換性を捨てた完全モデルチェンジだったので「買ってよし!」と判断しました。まだほとんど誰も使っていないので思わぬ不具合があるかもしれないけれど「それもネタになるからいいや」と。
ウェアは寅壱のベスト型「1075-662」を選びました。ブランドやデザインには特にこだわりはなかったものの「遮熱素材のフード付きベスト」は絶対条件でした。取材でフード付きのウェアを着させてもらったとき、頭に風が当たって気持ちよかったからです。日傘の代わりにもなるし、額から汗がぼたぼた落ちるのも軽減されるだろう、と。ベストにしたのは手軽でシーンを選ばないから。あと遮熱加工なら直射日光の下でもフードが熱くならないでいいのではないかと考えました。紫外線対策も兼ねて。
まずはウォーキングで使ってみました。編集長は毎朝6km歩くことにしているのですが、夏は8時くらいからとんでもない暑さになります。そこで速乾素材のTシャツに空調服ベストで歩いてみることにしました。歩き出して5分ほど、汗でじっとりしてきたタイミングでスイッチON。気化熱効果で一気に涼しくなりました。ただそれは一瞬のことで、やはり暑いものは暑い。空調服はエアコンの代わりではなく熱中症対策なのでしかたありません。空調服を着ていても汗はびっしょり。それでも、汗の量は6割くらいに抑えられた印象です。空調服を着ていなかったときは汗がぼたぼたでコンビニに入りづらかったのが、普通に入れるようになりました。ファンを回しながら冷房の効いた店に入れば一気にクールダウンできます。
●「ゆらぎ」と「ターボ」
予想以上の効果を発揮したのはフードでした。ウォーキングコースの途中、芝生の広場を通り抜けるときフードをかぶるとかなり快適です。首の後ろがジリジリ焼かれる感じがしないし、直射日光をカットするから目も疲れない。これだけなら帽子でも良さそうですが、なかに風が通るぶん空調服フードの方が優れています。一方、問題は風量を強くするとフードが後ろにずれてしまうこと。ドローコードを絞めればズレは防げるものの、それだと「ひさし」の形が崩れてしまうので、悩ましいところです。またヘルメットの上からかぶれる大型フードは左右の視界を遮るので、交通事故に気をつける必要があります。
ところで、今回の新型デバイスでは新たな機能が2つ用意されています。ひとつ目は「ゆらぎモード」で、風量の「強」と「中」が数分おきに切り替わる設定。バッテリーを長持ちさせつつ、涼感をキープするための工夫です。デバイスを起動させるとこのゆらぎモードで始まるので、基本的にこれで使っていましたが、結論から言うとすごくいい! たぶん数値的にはずっと「強」で回し続けた方が涼しいんでしょうけれど、感覚的にはこっちのほうが「効いてる感」があります。ファンが「中」で回っていて「ちょっと風量が足りないかも……」ってなったタイミングで自動的に「強」に切り替わって「おお、涼しい!」となる。例えるならスイカの甘みを増すために塩をかけるようなものでしょうか。人間心理をよくわかった“憎い機能”だと思います。
そして、2つ目の新機能は「ターボモード」。14.4vバッテリーのフルパワーを解放し、毎秒76リットル(左右合計)の猛烈な風を送り込みます。ただしこのモードは5分限定で、それ以降は「強」に切り替わる。「人体への影響を考慮し、酷暑やハードワークによる大量発汗時だけ使用してください」という注意書きでも話題になった目玉機能です。編集長もめちゃくちゃ暑いとき何度か使ってみました。確かに涼しい……けれど音がすごいんですよ、これ。ONにすると20mくらい先を歩いている人が振り返るくらい。誰もいないタイミングを見計らってターボモードON! というのもアホらしいので、ほとんど使わなくなりました。結局のところ「ゆらぎ」で充分だと思います。
あと強調しておきたいのはインナーの重要性です。私は「コンプレッション」「速乾素材」「綿100%」の3種類のTシャツを使っていますが、涼しさは明らかにこの順。つまり「コンプレッションインナーが最強」です。ただ、コンプレッションではリラックスできないし上着を脱いだときサマにならないので、細身の速乾Tシャツを一番よく着ています。そして綿のTシャツを着た場合、効果は大幅に落ちます。最悪なのは、インナーの上に何かシャツとかを着て空調服を身につけることで、これはほとんど効果ありません。空調服とは要するに汗を気化させることによる「インナー冷却装置」なので、肌に密着する速乾素材のウェアが一番なのです。
●夏の旅が変わる!
こんな生活を1カ月も続けると、もう普通の服は着れなくなります。コンビニに行くときも空調服。自転車に乗るときも空調服。家族と遊びに行く時も空調服。そうこうするうち、ついに禁断の領域に足を踏み入れてしまいました。空調服を着ての出張です。「邪魔になるかも」とギリギリまで迷ったけれど、汗をダラダラかきながら移動するなんてもう耐えられませんでした。
問題はカバンです。愛用のバックパックを背負うと背中に空気が流れません。ただ涼しくないだけでなく、通気性のないウェアを着ているぶん逆に暑くなってしまう。かといって手提げカバンは手が疲れる。キャスター付きのキャリーバッグを使えば解決するけれど、1泊や2泊でアレをつかうのは大袈裟だし……。と、いろいろ考えた結果、サイクリングで使っているメッセンジャーバッグにしました。要するに斜めがけのバッグです。荷物を体に密着させる構造になっているので、身につけるとバックパックと同じで空調服は意味をなさなくなります。しかし、ビジネスバッグのように片方の肩だけにかけることもできる。こちらなら空調服はしっかり風抜けします。体から離すと荷物は重く感じるけれど、何キロも歩き回るわけではないので大丈夫だろう、との判断です。もし涼しいショッピングセンターの中なら、スイッチをOFFにして斜めがけにすればいいわけです。
というわけで空調服をONにして自宅を出発。電車に乗ったら風量を最弱にします。音を出さないようにするためですが、冷房の効いた車内では最弱でもめちゃくちゃ涼しい。あっという間に背中も脇もサラサラで「空調服で来てよかった」としみじみ実感。ところが、新大阪駅で新幹線に乗り込むと予想外のことが起きました。ファンが当たるから座席にもたれられない! ま、新幹線や飛行機なら脱げばいいわけですけど、通勤電車だとちょっと面倒ですね。旅行にはフォークリフトのオペレーターが使うようなファンを横に取り付ける空調服の方がいいのかもしれません。
新型ファンは暑さ4cm程度と薄型なので、携帯するのにも便利です。バッテリーを外してウェアでくるくる巻いてしまえば、弁当箱くらいのサイズに収まる。ただし充電用のアダプターはデカいしプラグも畳めないので、持ち運びには向いていません。ホテルでの充電を考えて持っていきたかったのですが、どうしても収まりが悪いので結局、家に置いて行きました。バッテリーが切れたら、レターパックか何かで自宅に送ればいいか、と。バッテリーを2個買うのもアリだけどさすがに重いですよね。
ところが、またしても予想は覆されました。家を出るとき、満タンの「9」だったバッテリーは、東京で1日目の予定を終えたときには「8」に。意外と--いや、ぜんぜん減っていません。これには驚きました。考えてみれば、電車の中や駅の構内では「弱」か「中」。外を歩いているときだけ「ゆらぎモード(中と強を自動切り替え)」にしていたのがよかったんでしょう。それに新幹線や食事中、取材中はOFFにしていたからバッテリー消費はゼロ。要するに屋外作業で7、8時間も連続稼働できる大容量バッテリーにとって、タウンユースなど楽勝だったのです。
翌日、2日目の予定をこなして東京駅で新幹線に乗り込みました。自宅のドアを開けたときには、バッテリー残量はなんと「6」。あと1泊くらいなら余裕でしょう。つまり「出張に充電用アダプターは必要なし」です。ちなみに、カタログには「弱」で回し続けた場合には17時間稼働するとあるので、バッテリーを満タンにしておけば、5時間×3日は大丈夫ということです。「弱」でも炎天下でなければ十分涼しいし、エアコンの効いた場所だと寒いくらいですよ。
屋外作業はもちろん、真夏の旅にも革命を起こす「空調服」。みなさんもぜひプライベートで活用してみてください!
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というわけで、今月も最後までお付き合いいただきありがとうございました。次回も『月刊まいど屋』をお楽しみに!