まいど通信


        

まいど! 編集長の奥野です。今月は2018年以来となる「ヘルメット特集」をお送りしました。よく考えてみれば、ヘルメットというのは現場で毎日使うものであって出番だって多いのに、なかなか話題に上ることってないですよね。作業服は毎シーズン取り上げているのにヘルメットは数年に1回ってさぁ、まいど屋さん、ちょっとおかしいんじゃないのぉ? とお嘆きの産ヘル愛好家の皆様に刺さる特集になったと自負しております。メーカーによればヘルメットの交換時期は2、3年。というわけで、このタイミングで買い替えを検討してはいかがでしょうか。ご注文はぜひ、まいど屋へ!

●我が闘病

じつは編集長は8月27日現在、新型コロナで自宅療養中です。今月号の原稿は、猛烈な熱と頭痛が収まってからコツコツ書き進めたため、公開が遅れてしまいました。発症から5日目の今はノドの痛みくらいで大した症状はないものの、妙に疲れやすく、一日に何度も横にならないと体が持たない。食欲はあるけれど、味覚がヘン(塩分が強調されている?)でおいしくないのと胃がすぐ音を上げるのとで、自動的に素麺やゼリーなんかに落ち着きます。言ってしまえばぜんぜん軽症なのですが、不快な症状が長引くのは風邪でもインフルエンザでもなくやっぱりコロナだなぁ、としみじみ思います。

そして、感染したのは私だけでなく家族4人すべて。絵に描いたような家庭内感染です。過去最高の感染者数を記録した第7波ですが、今後、似たような状況に陥るひとも増えるでしょうから、今回どのように家の中で感染が広がったか、その経緯を記しておきましょう。

発端は8月16日、長女の発熱でした。夕方、家に帰ると熱を出して寝込んでいたので、妻に話を聞く。昼過ぎに熱が出て38℃近くまで一気に上昇したとのこと。この時点で「まあコロナだろうな」と二人の意見は一致しました。18日には出張の予定があったのですが、1日あれば先方に連絡できる。不幸中の幸い。このタイミングで助かった、と思いました。これから行動制限がかかるのに備えて、スーパーで食料品を買い込んで明日に備えます。

翌17日、長女はかかりつけの小児科でPCR検査を受けに行きました。結果が出るまで数日かかるので、出張が翌日に迫っている私は薬局で無料配布の抗原検査キットをもらって長女をチェックしてみることにしました。予想通り、陽性。この瞬間、コロナ感染者1名と濃厚接触者3名(私・妻・次女)が発生です。行動制限により出張はキャンセルとなり、リモート取材に変更。感染者は10日間の自宅療養、濃厚接触者は5日間の外出自粛(食料品の買い出しはOK)です。このときは娘の病状も心配だったけれど、それ以上に「5日もジムのプールに行けないのか」なんてことを考えていました。家の中にコロナ感染者が出たからといって何ができるわけでもなく、カレンダーに外出解禁日を書き込んで仕事の段取りをするくらいです。

そして18日、今度は次女が発症です。これは想定内。前日、小児科で「しんどいときはこれでしのいで」と頓服薬をもらっていたので、薬も使いつつ高熱を乗り越えて行きました。子供は回復が早く、長女は元気そうに歩き回っているので安心です。問題は濃厚接触者の方で、家庭内に感染者が追加発生すると「行動制限の5日間」の起点がリセットされてしまいます。はぁ……、こりゃ当分どこにも行けないな、と。

続く8月19日、妻が発症。これも覚悟はしていましたが、「ワクチン効果で逃げ切れるかも」と心のどこかで思っていたのか、ガッカリしました。次女はまだ熱が下がりきらないけれど、長女はほぼ回復しており、子供は心配ありません。行動制限はさらに延長され、もはやカレンダーを見るのも嫌になってきました。こうなったらもう仕事は諦めて、全力で家族のケアと家事に当たります。

翌日以降は、大きな異変はありませんでした。長女は家で遊び回り、次女も回復傾向。妻も熱が引いて喉の痛みがある程度。8月20日・21日・22日とコロナ患者は静かに療養する一方、濃厚接触者の私は買い出しが許されています。「食べるしか楽しみがないから」といって、コンビニでふだん買わないような甘いものを買って食べていると、妻から「食べれるだけいいよね」と言われました。喉の痛みで食べられないとのこと。かわいそうに、まあでもすぐによくなるよ、といったことを答えつつ、私はある計算をしていました。

ウイルスとの接触から発症までの期間です。長女の発症からカウントして次女の発症が「2日後」で、妻が「3日後」。この差は体のサイズのせいだろう。では、自分はどうか。22日時点で長女の発症(ウイルス暴露)から「6日後」、妻の発症からカウントしても「3日後」。これだけの期間、発症していないということは、“逃げ切り”に成功しつつあるのかもしれない。ひょっとしたらすでに感染して無症状なだけかもしれないけれど、ワクチンや自己免疫で感染を防いだ可能性もある。自分で検査さえしなければ「陽性者」にはならず、濃厚接触者のままでいられるわけで、妻の発症から6日目の8月25日には行動制限が外れる……。

あとたった3日で外出解禁! そう考えると小躍りしそうでした。行動制限がかかってからというもの、喫茶店での仕事をはじめ、自転車での近所まわりや日課のプールにも行けないので、運動不足が大きな問題でした。家から出ないと活動量がものすごく下がる。毎朝やっている散歩(濃厚接触者でもこれはOK)を6kmから9kmに延長することで対処してきたものの、これが暑い。この季節では朝からヘトヘトになる苦行で、継続にも限界を感じていたのでした。やはり人間は、通学や通勤をはじめ、日中に買物したり外食したりとチャカチャカと動き回ることで摂取カロリーを消費できるわけで、朝にドカンと一日分を! というアプローチは無理があるのです。よし、解禁日はプールで1時間は泳ごう、とカレンダーにマルを書きます。コロナとの闘いはこのまま終了だと何の疑いもなく信じていました。

●自宅軟禁は続く

ところが、翌23日になってまさかの事態が起きます。朝起きてからずっと体の怠さがあったものの、それでも9km歩いてヘロヘロに。仕事中に「ちょっとやばいかも」と念の為、体温を測ると「38℃」という目を疑うような数値が出ました。熱っぽさは全然ないのに。これは体温計が壊れているに違いない、と家族に話したら「いや、オデコめちゃくちゃ熱いよ」と。なんと、妻の感染から4日も経ってから発症です!

なんだよこれ、わけわかんねぇ、今日からまた10日も外出制限ってマジかよ……。しかも、今や濃厚接触者ではなく感染者だから、食料品の買い出しはもちろん散歩にすら行けない! スーパーの惣菜はもちろんコンビニでアイスも買えない! ほかの3人もまだ10日経ってないからお使いも頼めない! ぐっひゃあーーっ!

しかし、こういうときこそ冷静にならねばなりません。熱はどんどん上がってきており、数時間後には呻き声すら出せない発熱と頭痛が襲ってくることは3人の症状を見てよくわかっている。この1,2時間がラストチャンスです。山の中で急に天気が崩れてきたときのように、落ち着いて最善の手を打っておこう。そう自分に言い聞かせながら、スマホからアマゾンで4500円の「踏み台」を注文しました。小学校の体力測定でやった「踏み台昇降」をやるための専用ステップです。これから熱を出して2、3日は使い物にならないだろう。しかし、それから回復傾向に入ったときどうするか? 家から一歩も出られない状態で体を動かすには踏み台昇降しかない--。2020年に出された緊急事態宣言にともなう「外出自粛」のときにも、同じことを考えたのですが、結局「外で運動したほうが気晴らしになっていい」と考えて見送っていたのでした。このタイミングで「踏み台」が必要不可欠なアイテムとして浮上してくるとは自分でも驚きです。

なぜ発症がひとりだけ遅れたのか、原因のひとつに寝室があるかもしれません。じつは長女が発症した日の夜から、私はみんなで寝ている和室をやめて、ひとり仕事部屋のフローリングにマットを敷いて寝ていたのでした。すでに発症者と同じ空間で過ごしてしまった以上、家庭内で感染を免れるのはほぼ不可能(と身近な人たちの体験談から確信)。しかし、感染を数日でも遅らせることができれば、その間に食料品や必要な物資の買い出しなど、さまざまな手が打てる、と考えたのです。もし妻と私が同じタイミングで発症したら誰も子供の世話ができないわけで、療養以前に生活の質がガタ落ちすることは容易に想像できました。つまり、たとえ1、2日でも「ずらし」に成功すればいいという賭けです。しかし、一方でオミクロン株の感染力の前では、そんな程度の対策は何の効果もないだろうとも思っていました。まあ、ほとんど気持ちを落ち着かせるための「おまじない」ですね。

その因果関係はさておき、ひとりだけ大幅にずれたせいで、月の半分以上も自宅軟禁になってしまいました。7月は北海道まで放浪して、8月初旬はテントを持って山に行っていたのが遠い昔のようです。研究のためにチェックしていた水泳の動画も、通っていたスパイスカレーの店のインスタグラムも長女の発症以降は見ないようにしています。ただ、旅の計画だけはいつの間にか出来上がってくるのが恐ろしい。バックパックは家の中で何度も整理を繰り返すうちにいつでも旅に出られる仕様になってしまいました。9月はのんびり歩き旅がしたいと思っています。

毎朝、散歩の代わりに踏み台昇降を30分やって、夕方にまた30分やります。すでに多くの人が気づいていると思いますが、コロナが恐ろしいのは症状より行動制限のほうです。コロナの診療には公費負担がありますが、自宅に閉じ込められた結果、体力が衰えて働けなくなろうが鬱になろうが、だれも元に戻してくれません。政府のコロナ対策は政治上の課題であって、個人の健康とは無関係と考えるべきでしょう。現在のように“お上”があれこれ言ってくるときほど、みずからの頭と体を使って考えることが大事です。各種法令や自治体のガイドラインより大切な原則は「自分の身は自分で守る」なのです。

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というわけで、今月も最後までありがとうございました。次回も『月刊まいど屋』をお楽しみに!