【トーヨーセフティー】職人御用達image_maidoya3
日本には「刃物の町」と呼ばれる土地がいくつかある。包丁で有名な堺もあれば、日本刀の高級ブランド「関の孫六」でおなじみの岐阜県関市、農具や金物に強い新潟県三条市などがまず思い浮かぶだろう。しかし、本誌『月刊まいど屋』の読者なら兵庫県三木市の名前を挙げる人も多いのではないか。そう、同地を中心に生産されている播州三木刃物は主に「大工道具」。中世からノコギリや小刀、カンナ、ノミなど職人御用達の刃物で栄えた場所なのである--。そんなプロ志向な刃物の町に生まれた保護具メーカー・トーヨーセフティーの主力商品は産業用ヘルメット。近年は熱中症対策として、通気性の高い涼感ヘルメットのほか、伝統的な「笠」のスタイルを現場に持ち込んだ「竹バイザー」などでも存在感を高めている。おりしも今年は災害級の猛暑。トーヨーの考える夏を乗り越えるためのヘルメットとは?

トーヨーセフティー
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かぶり心地について語る近藤さん
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後頭部にセットできる「外付け送風機」
●大ヒットの理由
 
  「今年もすごい暑さですから、やはり猛暑対策グッズが売れてますね。通気孔付きのヘルメットをはじめ、外付けファンとか竹バイザーとか。うちの商品はネーミングがカッコ悪いという説もあるんですけど(笑)、そのぶんユーザーさんに覚えてもらえるからいいかな、と思っています」
 
  こう語るのは、トーヨーセフティー営業部の近藤さん。ヘルメットから防護メガネ、高所作業用のハーネス、防災用品まで、豊富な開発経験と商品知識を持つ保護具のプロフェッショナルだ。そんな近藤さんが、今の時季におすすめの商品として挙げるのはヘルメットに取り付ける汗対策グッズ「デコパッド」。通算40万枚突破の大ヒット商品である。
 
  「ただ汗を吸い取るだけの商品なんですが、これが売れたのは『タオル』にこだわったからでしょう。それもただのタオルじゃなくて今治産の高級素材を使った。こんな小さな布にそこまでいいものを使う必要はなかったし、化繊とかにした方がずっと低コストで作れるんです。でも私は、絶対タオルじゃなきゃダメだ、と言って今治のメーカーを回りました。やっぱり職人さんはタオルが好きだからね。吸水力とか肌触りといった機能面もあるけど、それ以上にみんなシンプルにタオルが好きなんです」
 
  こう言われて、改めてデコパッドを触ってみると、タオル地のキメは非常に細やかで、思わず頬ずりしたくなる。化繊の冷感タオルや3枚1000円で叩き売られている格安タオルとの差は明らか。こんな数百円の商品にこのクラスの生地が使われているというのは、よく考えればものすごいインパクトだ。
 
  近藤さんによれば、現在3色展開のデコパッドは来年からカラーバリエーションを追加するとのこと。気化熱による冷却機能を持たせた兄弟商品「アクアデコパッド」と併せて、ヘルメットユーザーのための暑さ対策商品を拡大していく。
 
  ●遮熱モデル新登場!
 
  さて、本題のヘルメットの話に入ろう。近藤さんが最初に取り出したのは2022年7月発表の最新作「397FSH」。直射日光や熱気にさらされた場合でも帽体内の温度上昇を抑える「遮熱仕様」が売りのモデルだ。その体感温度は通常の帽体と比べてマイナス10℃というから、劇的な差である。
 
  「遮熱性能も単純にすごいけれど、注目してほしいのはその性能がずっとキープされるってことかな。遮熱モデルというと一般的には特殊な塗装や表面加工をした商品が多いのですが、このヘルメットは遮熱材を練り込んだABS樹脂を成形することで帽体を作りました。つまり素材そのものが遮熱機能を持っているので、表面を擦ってキズがついたり剥がれたりしても遮熱性能の低下はありません。使い込んでもずっと熱を反射してくれるので、真夏の高所作業なんかにおすすめです」
 
  しかも、この「397FSH」は顔のサイドまで保護するワイドシールド内蔵。横からの飛来物から目を守ることができ、現場によっては簡易的な保護メガネとしても使える。シールドは特殊ハードコート加工で、取替もできるので、キズや汚れを気にしなくていい。
 
  「炎天下の作業を想定して作ったモデルですが、通気孔がないので電気工事にも使えるし、ゴミやホコリなどで目を痛めそうな現場でも積極的に使ってもらえると思います。また、暑さを防ぐだけでなく内装全体が夏を意識した快適仕様になっているのもポイントです。あご紐は備長炭入り、汗止めは抗菌・防臭加工、ハンモックテープは光触媒加工と、あらゆるパーツが汗や蒸れの不快感を抑える機能を持っているので、過酷な現場でこそ性能を発揮するでしょう。来年の夏に向けてこれから本格的にアピールしていきたい商品ですね」
 
  ●「外付けファン」も
 
  続いて登場したのは、送風機内蔵ヘルメット「395F」と外付け式の送風機「7703」の“空調ヘルメット”シリーズ。帽体内部の空気の通りを良くした通気孔付きモデルはどこのメーカーも販売しているけれど、ファンで強制的に風を送り込むのはトーヨーセフティー独自のコンセプトだ。しかも、ファン内蔵タイプに加えて通常のヘルメットに取り付けて使う「外付けユニット」までそろえているのだから、同社の送風ファンにかける熱意はただ事ではない。
 
  「ファン内蔵式が登場したのが5年ほど前。その数年後に発表した外付け式も、今年で2年目になります。内蔵式は外から中へ風を取り入れる通常回転だけでなく、中から外に空気を排出する“逆回転”ができるのが売りです。一方、外付け式は風の取り入れしかできませんが、風量では内蔵モデルを上回っています。オプションの防暑タレと組み合わせることで、さらに涼感をアップさせることができます。通常のヘルメットを送風機付きにできるというアピールがウケて、今年も売れ行きは好調です」
 
  外付けユニットは帽体の後ろのヘリをつかむように取り付ける。すると後頭部に垂れ下がるようなかたちでファンが付き、カーブに沿った幅の広い送風口から、帽体とベルトの間に風が吹き込んでくる仕組みとなっている。ヘルメットはそもそも内装に空洞があって一定の通気性は確保されているので、小さなファンでも風の量はじゅうぶんだ。
 
  「当社の商品に限らず、一般的なヘルメットならだいたい取り付け可能です。外付けなら夏の間だけファン付きにして、それ以外の季節は普通のヘルメットとして使うこともできるので、ひじょうにコストパフォーマンスがいい。また組み合わせるヘルメットも、通気孔付きのものを選べば、さらに風抜けが良くなり快適性もアップします。もちろん電気工事の時は、通気孔なしのヘルメットに付け替えたりといった具合に、臨機応変にお使いいただけます」
 
  ●決め手は「かぶり心地」
 
  次々と新作が出る一方で、登場から数年経って定番化していく商品もある。大きな通気孔の付いたヘルメット「Ventiシリーズ」がその代表だろう。なかでもカジュアルな見た目とカラーバリエーションが魅力の「390F」とシャープなデザインが特徴的な「396F」は、いまや主力商品となっている。
 
  「390Fは帽体が8カラーあって、白の帽体に合わせる通気孔カバーも6色から選ぶことができます。チームで帽体カラーを統一したり、ピンクや黄色の通気孔カバーで明るい雰囲気を出したりするのもいいですね。デザイン的にも見栄えがするし、親しみの持てる印象なので女性にも好評です。いっぽう「396F」はクール系というか、引き締まった造形が持ち味。帽体の上から後頭部にかけて取り付けた通気孔カバーのおかげで、スマートなルックスに仕上がっています。こちらも帽体は4カラーからお選びいただけます」
 
  両モデルとも通気性や視野の広さは文句なし。帽体には帯電防止の処理がなされており、ホコリも付きにくくなっている。通気孔のある帽体を使えない電気工事などの現場でない限りは、この「Ventiシリーズ」を買っておけば間違いないだろう。それでも頭のムレを感じるなら外付けファンを、というわけだ。
 
  「Ventiシリーズのような通気性のいいヘルメットは他社からも出ているけれど、やはり『かぶり心地』を重視して選んでほしいですね。ただ軽い、メンテナンスがしやすいということじゃなくて、作業中に安定するかどうか。それを左右するのは全体のバランスであったり、内装のつくりだったりするわけですが、当社では、帽体を浮かせるハンモック部分にテープや樹脂を使うことでワンランク上のフィット感を実現しています。カタログ上の数字だけでなく、実際の現場での着用感で選んでください」
 
  職人道具の街に、職人保護具のメーカーあり--。トーヨーはいつも現場の人々のことを考えている。
 
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折りたたみヘルメットも好調
 

    

もう炎天下の作業も怖くない! 温度上昇を防ぐ遮熱モデル「397FSH」

直射日光や熱気にさらされた場合でも、内部の温度上昇を防ぐ遮熱仕様のヘルメット。帽体は遮熱材を練り込んだABS樹脂製のため、キズがついたり剥がれたりしても性能低下の心配なし。シールドは顔のサイドまで保護するワイド型で、横方向の飛来物からも目を守れる。


これがあればどんな現場もOK! ハードコーティング加工のシールド内蔵ヘルメット

高所作業から電気工事までオールマイティーに使える幅広シールド付きヘルメット。涼しい通気孔付きモデルと電気工事対応の通気孔なしモデルの2種類を用意。紫外線99.9%カットの内蔵シールドは、顔のサイドまでカバーするほか、特殊ハードコート仕様で傷の心配もなし。