まいど通信
まいど! 「元月刊まいど屋」編集長の奥野です。今回は恒例の秋冬ワークウェア特集をお送りしました。定番の上下作業着だけでなく、ツナギにサロペット、軽防寒ジャケットなど、多種多様なアイテムのおかげで、読み応えのあるコンテンツとなりました。日々、秋が深まり、朝は冷え込みも感じるようになってきた今日このごろ、現場で職場で、またはプライベートで、キラリと光る作業服をお求めの方は、ぜひ「まいど屋」で!
●「綿100%」の魅力
今回は、珍しくワークウェアの話をしてみようと思います。といってもファッションの流行や業界構造の分析といったことではなく、ごく個人的な「意外といいアイテム」の体験談です。
名付けて「綿100%のススメ」。コットン作業着といえば、ストレッチしない、重い、乾かないといったデメリットばかりで、火の粉が飛ぶ溶接などの現場を除いて、ほぼ消えたと言っていいカテゴリですけれど、意外なメリットや特有の魅力といったことを語っていきます。
きっかけは今年の春のこと。暖かくなってきたので、長袖のシャツでも羽織って出かけようというとき、適当なものがない。そこで、5年ほど前に買ったカーキ色のワークジャケット(綿100%)に袖を通してみました。かなり使用感があるし、適当に丸めて衣装ケースに放り込んでいたので、シワシワです。これはちょっと街ではダメかも、と思いつつ鏡を見たときに気づきました。あれ? 意外と成立している……。カッコいいとかオシャレではなく「成立」。さほどお気に入りでもなかった作業服がクタクタになったことで、古着のような“味”が出ていることに気付いた瞬間でした。
これにはショックを受けました。ちょうど、3、4年ほど前からしょっちゅう着ているポリエステルのウインドブレーカーが明らかにボロくなってきていて、そろそろ限界だな、と思っていたタイミングだったからです。くすんだ色にハリ・コシがない化繊ウェアは、あまり見れたものではない。なのに、コットンは古くなって「ヤレ感」が出ると逆に良くなるケースもある! その日から、このGジャン風デザインのジャケットは、お気に入りの一着となったのです。
このアイテムを仕事や作業にお出かけに、と着回しているうちに気付いたことがあります。それは、コットンの上着はあまり見かけないこと。男性ならほぼGジャンのみで、たまにデニムのカバーオール。女性はデニムを中心に、さまざまな綿アイテムを活用していますが、男女とも、綿素材のアウターを着ている人はほとんどいません。季節の変わり目に薄手の長袖シャツを羽織るパターンはあっても、上着となるのは、たいてい化繊ウェア。なかでも男性は、中高年以上になると、撥水加工のシェルジャケットのようなものを着ているケースがすごく多い。気がつけば「街着」は、アウトドア・テック系ばかりになっていた(自分もそうだけど)。この事実に驚かされました。
今回、発掘したジャケットも、2010年代に発売されてすでに廃番になった商品。ストレッチしない綿100%ウェアなんて、もうだれも着ないわけで、消えるのも当たり前でしょう。しかし、上下ユニフォームではなく、「使いまわしの効く上着」と捉えれば、このアイテムはかなり便利なのです。
最大のメリットは、汚れやシワ、ヨレを気にしないでいいことです。コットンリップの生地は、多少の食べこぼしや汗のシミくらいなら違和感なく受け入れてくれる。もし撥水のジャケットにラーメンの汁が飛び散っていたら、ちょっと悲惨でしょう。また、脱いだときもハンガーに掛けず、そのへんに転がしておけば問題なし。さらに硬くて重いコットンは、ポケットにものを入れたときの着崩れもなく、風でむやみにパタパタすることもありません。もちろん作業服なので、生地のダメージもどんとこい。
それでいて、記号的な「意味」をまとわなくて済む点もメリットです。Gジャンを着ていると「アメカジ系」とか、カバーオールを着ていると「古着好き」とか、余計な属性を帯びてしまうのに対し、ヨレヨレの作業着ジャケットは「家にあったのを着てるだけ」というのが成立する。これは、Tシャツやパーカーが似合わなくなる中高年にとって、福音と言えるのではないでしょうか。
●中途半端が、いい
このジャケットを通じて、綿100%素材の魅力も再発見しました。といっても「この機能がすごい」といったことではありません。逆に実感したのは、コットンの上着は「あらゆる面でパッとしない」ということ。ポリエステルなどの化繊ジャケットであれば軽くて速乾性があるし、スポーツ・アウトドア系ウェアならば、防風・撥水といった機能面ではるかに優れている。しかし、「とりあえず羽織っておく」なら、綿100%がいいのです。
どういうことか。たとえば、シャカシャカしたシェル系のジャケットは、長時間のハイキングや自転車の運転などにはすごく快適です。しかし、電車の中でウトウトしたり、喫茶店でパソコン作業をしたりするときは、落ち着かないというか、持て余してしまいます。家の中でも着たままとか、寝室で寒いときに羽織るとかいったことはまずありえない。一方、綿のジャケットは活動中の機能はそこそこなぶん、電車を待つとか、メシを食うとかいった場面にうまく調和する。着たまま寝てしまってもOKどころか、さらにクタクタになって洗い加工のような風合いが出てきたりする。要するに、気楽なんですね。
綿の布帛はゴワゴワする、というのはその通り。といっても、肌当たりがいいので、重さや硬さは思ったほどマイナスには感じません。これが化繊ジャケットだと、肌触りでコットンに劣るし、着古してテカってきたり毛羽立ちや毛玉ができたりすると、かなり残念な感じになってしまう。つまり、コットンは中途半端だけれど、どんなシーンでも60点が取れるのです。
ストレッチしないという欠点は、上着ならさほど問題ないと思います。そもそもワークウェアの場合、だいたいダーツやノーフォークといった立体縫製があるので、肘が突っ張るようなケースは少ない。趣味の作業やお出かけ程度なら、ほとんど気にならないでしょう。
要するに、綿のワークジャケットはオールマイティーな「ザ・上着」です。寒さや雨を防ぐ効果はあまりないけれど、Tシャツの上に羽織って外出し、日焼け予防やエアコンの冷え対策にするには充分。暑くなってきたら、腕まくりするなり脱ぐなりすればいいし、生地に重量があるから「寅さん」のような肩掛けスタイルもできる。シャツほど生地が体に沿わず、袖ぐりも広いので、さっと脱いでパッと羽織れるのも利点です。
このような点に着目すると、コットン上着は外套、言い換えればポンチョやマントのような「汎用の布」、と呼べるかもしれません。つまり、光や風を和らげるシェルであり、汚れを防ぐエプロンでもあり、かぶって昼寝するストールでもあり、寝間着の上に羽織る半纏でもある。そうやって酷使し、色落ちしたり擦り切れたりしても、綿100%なら「使用済み製品」ではなく「使い込んだ服」として成立するのです。
さて、以上のように利点を語ってきましたが、綿100%ジャケットにはひとつ、どうにもならない弱点があります。それは、乾かないこと。真夏以外は洗濯したら「一回休み」になる。ただ、会社の制服ならすごく不便なものの、私服として着るなら問題ないでしょう。また、気に入ったら「洗い替え」を買う手もあるわけで。
私の場合、この綿100%ジャケットがあまりに気に入ったので、同じ型番を追加で注文し(店頭在庫はまだある)、ついでに同デザインの秋冬モデル(こちらも綿100%)も購入してしまいました。これでガンガン洗濯できて、冬になっても同じスタイルが継続可能。こんなことができるなんて、ユニフォームって本当に素晴らしいですね。
この綿100%ジャケットを「ワーク&ライフウェア」として日々、使いまくる。そして、ジーンズや古着のように経年変化を楽しんでいく——。われながら、けっこういい趣味ではないかと思っています。
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というわけで、今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。次回は、防寒特集でお会いしましょう!
